2018/02/25(日) - 11:07
ベルギーにクラシックシーズンがやってきた。ミュールやボズベルグを含む第73回オンループ・ヘットニュースブラッド(UCIワールドツアー)で精鋭グループから抜け出したミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)が独走勝利を飾った。與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)出場の女子レースも合わせてお伝えする。
「フランドルクラシック」の開幕戦オンループ・ヘットニュースブラッドは、ベルギーのヘットニュースブラッド紙が1913年に創設したロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)に対抗して、ヘットフォルク紙がオンループ・ヘットフォルクとして1945年に創設したセミクラシックレース。2009年にヘットフォルク紙がヘットニュースブラッド紙と合併したことから現在の名称に改められた。2017年にHC(超級)からUCIワールドツアーに格上げされている。
2018年の第73回大会は、かつてのロンド・ファン・フラーンデレンのフィニッシュを踏襲する伝統的なレイアウトが採用された。モーレンベルグやレベルグなど合計13カ所の定番坂を越え、残り20kmを切ってからミュール・ヴァン・ヘラールツベルヘンとボズベルグをクリアする。最後のボズベルグから12km先のニノーヴェにフィニッシュする全長196kmコースで争われた。
まだまだ冬の寒さが残るスタート地点ヘントに集まったのは25チーム、175名の選手たち。ディフェンディングチャンピオンのグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がゼッケン1をつけて出場した一方で、昨年2位のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)はスペインで高地トレーニング中のため出場を見送った。サガンの次戦は3月3日のストラーデビアンケで、その後ティレーノ〜アドリアティコとミラノ〜サンレモに出場。サガンのフランドルクラシック初戦は1ヶ月後のレコードバンク・E3ハーレルベーケを予定している。
ロード世界選手権3連覇のサガンは欠場したが、シクロクロス世界選手権3連覇のワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ベランダスヴィレムス・クレラン)が初出場した。シクロクロスシーズンを終えたばかりのヴァンアールトは、ストラーデビアンケやヘント〜ウェヴェルヘム、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベにも出場予定だ。
午前11時45分に正式なスタートが切られるとすぐ、2016年ロード世界選U23個人TT優勝者のマルコ・マティス(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)やアレクセイ・サラモティンス(ラトビア、ボーラ・ハンスグローエ)ら10名が逃げグループを形成して5分のリードを稼ぎ出す。レースが中盤に差し掛かり、石畳や急坂が登場するとタイム差は縮小していった。
レースが動き出したのは4つめの急坂レベルグで、フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)のアタックによって集団セレクションがスタート。続くコケレールやウォルヴェンベルグ、モーレンベルグの登りでティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)やゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)を含む13名ほどの精鋭グループが形成されたが、決定的なリードは奪えずに引き戻される。
先頭で逃げ続けていたサラモティンスらは吸収され、集団先頭では引き続きアタックの応酬に。9つめの急坂ベレンドリーシュでウェレンスとヴァンアーヴェルマートらが飛び出したが、この動きもメイン集団によって吸収。コースが西から東に向かう中、東から西に吹く風に向かってティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)が独走に持ち込んだものの、クイックステップフロアーズやBMCレーシング、アスタナの組織的な追走によって残り26km地点で吸収された。
そして迎えた最大の難所ミュール・ヴァン・ヘラールツベルヘン。100名弱に絞られた集団が中切れを生みながら石畳坂に突入すると、勾配が増したところでセップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)が加速する。スティバルやヴァンアーヴェルマートを振り切ったヴァンマルクがそのまま頂上の教会前を通過した。
先頭ヴァンマルクにすぐさま合流したのはスティバルで、続いてヴァンアーヴェルマートやヴァンアールト、マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)、ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)を含む追走グループがジョイン。こうして13名まで人数を増やした先頭グループが、ベルギーチャンピオンのナーセンを先頭に最後の急坂ボズベルグをクリアした。
アスタナが3名を揃える先頭グループと、ロット・スーダルやFDJ、サンウェブが率いる後方の大集団とのタイム差は30秒強。フィニッシュ地点ニノーヴェに向かう平坦区間で、先頭ではスプリントに持ち込みたくないナーセンらがアタックを繰り出すが決まらない。残り3kmを切るとヴァンマルクが強力なアタックを仕掛け、吸収された一瞬の隙をついてヴァルグレンが飛び出す。それまで数回アタックしていたヴァルグレンが独走に持ち込んだ。
牽制によってペースが上がらない追走グループからヴァンマルクやルーカス・ヴィシニオウスキー(ポーランド、チームスカイ)がカウンターアタックで飛び出すも届かない。大集団に吸収される追走グループを尻目に最終ストレートに入ったヴァルグレンが独走でフィニッシュした。
「最後のミュール通過後に形成された先頭グループにジョイン。スピードのある選手を振り切るために、チームメイトのオスカル・ガットとアレクセイ・ルツェンコにスプリント勝負を任せて、自分がアタックした。セップ・ヴァンマルクのカウンターで飛び出して、彼らが5秒ほど躊躇した間にリードを広げたんだ」。勝負が決まった決定的瞬間についてヴァルグレンはそう説明する。デンマーク出身の26歳にとって初のクラシックタイトル獲得。オンループでデンマーク出身選手が勝利するのはこれが初めて。北欧出身選手としては、2009年のトール・フースホフト(ノルウェー)に続く2人目となる。
2014年から3年間ティンコフに所属し、2017年からアスタナで活動しているヴァルグレン。クラシックレーサーとして2014年ジャパンカップ4位、2016年アムステル・ゴールド・レース2位という成績を残しており、2017年はビンクバンクツアー総合6位、E3ハーレルベーケ6位、ロンド・ファン・フラーンデレンで11位に入っている。「ロンド・ファン・フラーンデレンのようなビッグレースで再び優勝争いに加わりたい。昨年ロンドに初出場して11位。もちろんこのオンループよりもっとストレスフルで、常に全開走行で、落車を回避する運も必要になるけど、クラシックレースは楽しい」と語るヴァルグレンは翌日のクールネ〜ブリュッセル〜クールネにも出場予定だ。
女子レース「スパー・オンループ・ファン・ヘットハーゲルラント」に與那嶺恵理が出場
オンループ・ヘットニュースブラッドの翌日には、同じくオンループの名を冠した女子のワンデークラシックレース、スパー・オンループ・ファン・ヘットハーゲルラント(UCI1.1)が行われ、與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)が出場。チームメイトの欠場により急遽メンバー入りし、苦手とするクラシックレースながら好走を見せた。
昨年に続き2年連続で同レースを走ることとなった與那嶺。チームメイトのアシストをこなしつつ、最終盤まで先頭集団に残り存在感をアピールした。フィニッシュまでの距離が短くなると集団から逃げのアタックも生まれる中、ラストの10km付近で與那嶺含む6人が逃げグループを形成。グループを牽引するため與那嶺が先頭を引くシーンも見られるなど、シーズン序盤から仕上がりの良さを見せつけた。
レースはその後サンウェブが2人を先行させ、昨年のツール・ド・おきなわ女子国際レースにて與那嶺とゴールスプリントを繰り広げたエレン・ファンダイク(オランダ、サンウェブ)が独走で優勝を飾っている。また與那嶺は最後チームメイトのポジションを上げる仕事をこなし、そのまま集団内ゴールの26位でレースを終えている。
與那嶺は自身のブログにて「無事にヨーロッパのレースに帰ってきて、走れた自分にまずはホッとした初戦でした。そして、ちゃんとチームのオーダーと仕事ができたことに、よりホッとしました。いろいろありながらも、この土曜日はストラーデビアンケ。女子ワールドツアーの初戦であり、昨年のチャンピオンであるエリーザとレースを走ります。なかなかの天気の悪さと寒さみたいですが、レースと与えられた仕事を楽しんでこようと思います」とコメントしている。
「フランドルクラシック」の開幕戦オンループ・ヘットニュースブラッドは、ベルギーのヘットニュースブラッド紙が1913年に創設したロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)に対抗して、ヘットフォルク紙がオンループ・ヘットフォルクとして1945年に創設したセミクラシックレース。2009年にヘットフォルク紙がヘットニュースブラッド紙と合併したことから現在の名称に改められた。2017年にHC(超級)からUCIワールドツアーに格上げされている。
2018年の第73回大会は、かつてのロンド・ファン・フラーンデレンのフィニッシュを踏襲する伝統的なレイアウトが採用された。モーレンベルグやレベルグなど合計13カ所の定番坂を越え、残り20kmを切ってからミュール・ヴァン・ヘラールツベルヘンとボズベルグをクリアする。最後のボズベルグから12km先のニノーヴェにフィニッシュする全長196kmコースで争われた。
まだまだ冬の寒さが残るスタート地点ヘントに集まったのは25チーム、175名の選手たち。ディフェンディングチャンピオンのグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がゼッケン1をつけて出場した一方で、昨年2位のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)はスペインで高地トレーニング中のため出場を見送った。サガンの次戦は3月3日のストラーデビアンケで、その後ティレーノ〜アドリアティコとミラノ〜サンレモに出場。サガンのフランドルクラシック初戦は1ヶ月後のレコードバンク・E3ハーレルベーケを予定している。
ロード世界選手権3連覇のサガンは欠場したが、シクロクロス世界選手権3連覇のワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ベランダスヴィレムス・クレラン)が初出場した。シクロクロスシーズンを終えたばかりのヴァンアールトは、ストラーデビアンケやヘント〜ウェヴェルヘム、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベにも出場予定だ。
午前11時45分に正式なスタートが切られるとすぐ、2016年ロード世界選U23個人TT優勝者のマルコ・マティス(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)やアレクセイ・サラモティンス(ラトビア、ボーラ・ハンスグローエ)ら10名が逃げグループを形成して5分のリードを稼ぎ出す。レースが中盤に差し掛かり、石畳や急坂が登場するとタイム差は縮小していった。
レースが動き出したのは4つめの急坂レベルグで、フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)のアタックによって集団セレクションがスタート。続くコケレールやウォルヴェンベルグ、モーレンベルグの登りでティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)やゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)を含む13名ほどの精鋭グループが形成されたが、決定的なリードは奪えずに引き戻される。
先頭で逃げ続けていたサラモティンスらは吸収され、集団先頭では引き続きアタックの応酬に。9つめの急坂ベレンドリーシュでウェレンスとヴァンアーヴェルマートらが飛び出したが、この動きもメイン集団によって吸収。コースが西から東に向かう中、東から西に吹く風に向かってティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)が独走に持ち込んだものの、クイックステップフロアーズやBMCレーシング、アスタナの組織的な追走によって残り26km地点で吸収された。
そして迎えた最大の難所ミュール・ヴァン・ヘラールツベルヘン。100名弱に絞られた集団が中切れを生みながら石畳坂に突入すると、勾配が増したところでセップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)が加速する。スティバルやヴァンアーヴェルマートを振り切ったヴァンマルクがそのまま頂上の教会前を通過した。
先頭ヴァンマルクにすぐさま合流したのはスティバルで、続いてヴァンアーヴェルマートやヴァンアールト、マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)、ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)を含む追走グループがジョイン。こうして13名まで人数を増やした先頭グループが、ベルギーチャンピオンのナーセンを先頭に最後の急坂ボズベルグをクリアした。
アスタナが3名を揃える先頭グループと、ロット・スーダルやFDJ、サンウェブが率いる後方の大集団とのタイム差は30秒強。フィニッシュ地点ニノーヴェに向かう平坦区間で、先頭ではスプリントに持ち込みたくないナーセンらがアタックを繰り出すが決まらない。残り3kmを切るとヴァンマルクが強力なアタックを仕掛け、吸収された一瞬の隙をついてヴァルグレンが飛び出す。それまで数回アタックしていたヴァルグレンが独走に持ち込んだ。
牽制によってペースが上がらない追走グループからヴァンマルクやルーカス・ヴィシニオウスキー(ポーランド、チームスカイ)がカウンターアタックで飛び出すも届かない。大集団に吸収される追走グループを尻目に最終ストレートに入ったヴァルグレンが独走でフィニッシュした。
「最後のミュール通過後に形成された先頭グループにジョイン。スピードのある選手を振り切るために、チームメイトのオスカル・ガットとアレクセイ・ルツェンコにスプリント勝負を任せて、自分がアタックした。セップ・ヴァンマルクのカウンターで飛び出して、彼らが5秒ほど躊躇した間にリードを広げたんだ」。勝負が決まった決定的瞬間についてヴァルグレンはそう説明する。デンマーク出身の26歳にとって初のクラシックタイトル獲得。オンループでデンマーク出身選手が勝利するのはこれが初めて。北欧出身選手としては、2009年のトール・フースホフト(ノルウェー)に続く2人目となる。
2014年から3年間ティンコフに所属し、2017年からアスタナで活動しているヴァルグレン。クラシックレーサーとして2014年ジャパンカップ4位、2016年アムステル・ゴールド・レース2位という成績を残しており、2017年はビンクバンクツアー総合6位、E3ハーレルベーケ6位、ロンド・ファン・フラーンデレンで11位に入っている。「ロンド・ファン・フラーンデレンのようなビッグレースで再び優勝争いに加わりたい。昨年ロンドに初出場して11位。もちろんこのオンループよりもっとストレスフルで、常に全開走行で、落車を回避する運も必要になるけど、クラシックレースは楽しい」と語るヴァルグレンは翌日のクールネ〜ブリュッセル〜クールネにも出場予定だ。
女子レース「スパー・オンループ・ファン・ヘットハーゲルラント」に與那嶺恵理が出場
オンループ・ヘットニュースブラッドの翌日には、同じくオンループの名を冠した女子のワンデークラシックレース、スパー・オンループ・ファン・ヘットハーゲルラント(UCI1.1)が行われ、與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)が出場。チームメイトの欠場により急遽メンバー入りし、苦手とするクラシックレースながら好走を見せた。
昨年に続き2年連続で同レースを走ることとなった與那嶺。チームメイトのアシストをこなしつつ、最終盤まで先頭集団に残り存在感をアピールした。フィニッシュまでの距離が短くなると集団から逃げのアタックも生まれる中、ラストの10km付近で與那嶺含む6人が逃げグループを形成。グループを牽引するため與那嶺が先頭を引くシーンも見られるなど、シーズン序盤から仕上がりの良さを見せつけた。
レースはその後サンウェブが2人を先行させ、昨年のツール・ド・おきなわ女子国際レースにて與那嶺とゴールスプリントを繰り広げたエレン・ファンダイク(オランダ、サンウェブ)が独走で優勝を飾っている。また與那嶺は最後チームメイトのポジションを上げる仕事をこなし、そのまま集団内ゴールの26位でレースを終えている。
與那嶺は自身のブログにて「無事にヨーロッパのレースに帰ってきて、走れた自分にまずはホッとした初戦でした。そして、ちゃんとチームのオーダーと仕事ができたことに、よりホッとしました。いろいろありながらも、この土曜日はストラーデビアンケ。女子ワールドツアーの初戦であり、昨年のチャンピオンであるエリーザとレースを走ります。なかなかの天気の悪さと寒さみたいですが、レースと与えられた仕事を楽しんでこようと思います」とコメントしている。
オンループ・ヘットニュースブラッド2018結果
1位 | ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ) | 4:50:14 |
2位 | ルーカス・ヴィシニオウスキー(ポーランド、チームスカイ) | 0:00:12 |
3位 | セップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | |
4位 | ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
5位 | フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) | |
6位 | エドワード・トゥーンス(ベルギー、サンウェブ) | |
7位 | ベアト・ヴァンレルベルゲ(ベルギー、コフィディス) | |
8位 | ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | |
9位 | アルノー・デマール(フランス、FDJ) | |
10位 | マークス・ブルグハート(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) |
スパー・オンループ・ファン・ヘットハーゲルラント2018結果
1位 | エレン・ファンダイク(オランダ、サンウェブ) | 3:36:14 |
2位 | クロエ・ホスキング(オーストラリア、アレ・チポッリーニ) | 0:12 |
3位 | ジョリーン・ドール(ベルギー、ミッチェルトン・スコット) | |
4位 | マリアジウリア・コンファロニエーリ(イタリア、ヴァルカーPBM) | |
5位 | ジョルジャ・ブロンツィーニ(イタリア、サイレンス・プロサイクリング) | |
26位 | 與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) |