2017/12/04(月) - 17:29
シクロクロス全日本選手権まで1週間。宇都宮ろまんちっく村で豪華海外勢が集った宇都宮シクロクロスが開催され、男子はフェリペ・オルツ(スペイン、GINESTAR - DELIKIA)が、女子は野辺山でも勝利したサミエル・ルーネルズ(アメリカ、Squid Bikes)が圧勝した。
男子エリート:世界基準の走りを披露したスペインのオルツが圧勝
2日間に渡って開催された宇都宮シクロクロスの2日目。男女UCIレース開催日とあって、昨年全日本選手権を招致した宇都宮ろまんちっく村には関東勢を中心に多くのエリートレーサーが集結。コース沿いには宇都宮ブリッツェンの応援旗が翻り、地元ファンの声援が選手たちを後押しした。
細かな修正こそ行われたものの、高低差のある斜面登りやシングルトラックの下り、スリッピーなキャンバー、パワーを要する芝の直線区間、そして砂セクションなど、おおよそは昨年同様。変化に富むコースレイアウトが選手たちの総合力を試すこととなる。
野辺山からの連戦となるクリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood)やアンソニー・クラーク(アメリカ、Squid Bikes)らに加え、主催者は目玉選手として2月にルクセンブルクで開催された世界選手権U23で銀メダルに輝いたフェリペ・オルツ(スペイン、GINESTAR - DELIKIA)を招聘。海外経験豊富な竹之内悠(東洋フレーム)や、地元の声援を一身に受ける小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)、今期好調をキープしている前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)ら国内トップ選手が海外勢を迎え撃った。
号砲と共にダッシュを決めたのはオルツだった。ヨンゲワールドや竹之内を引き連れながら猛烈な勢いで加速し、第1コーナーを抜けた時点で集団は長く引き伸ばされる。足首に故障を抱える竹之内はペースダウンを余儀なくされ、前田がヨンゲワールドに合流。やや間隔を開けて小坂とクラーク、横山航太(シマノレーシング)、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、ケヴィン・ブラッドフォード(アメリカ、SET/Coaching.com)、竹内遼(drawer THE RACING)が3位集団を作った。
レース前に「時差ぼけと疲れがあるのでベストコンディションではないけれど、テクニカルなコースは自分向き」と語っていたオルツの走りは正に圧倒的だった。コーナーを抜けるたびにスプリントし、シケインをバニーホップで飛び越え、タイトターンが連続するシングルトラックを流れるように抜けるその走りは世界基準。異次元のスピードに3周目から80%ルール適用による足切りが発生し、出走71人中11名のみ完走というサバイバルレースが展開されることとなる。
2位グループでは前田がヨンゲワールドから遅れ、後続のクラークと小坂に合流。こうしてオルツ、ヨンゲワールド、そして3名の3位グループという、フィニッシュまで続くオーダーが生まれた。
険しい表情でプッシュを続けるオルツは、普段C1の上位に食い込む選手たちを足切りに追い込みながら、ヨンゲワールドから2分半以上ものリードを得てフィニッシュ。ゴールライン上では世界選手権と同じウイリーを決めてみせた。
「今日は野辺山初日と同じようにエンジンの掛かりが悪かったのもあるけれど、今日はオルツがとにかく速かった。彼は若く、そしてテクニックもある。これからどんどん力を伸ばしていくだろう」と、2位のヨンゲワールドに言わしめた22歳のスペイン王者。「日本のシクロクロスがこんなにも盛り上がっているとは知らなかった。ファンもすごく多かったし、暖かく迎えてくれたことが嬉しくて、まずは感謝を伝えたい」とコメントする。
「身体は100%じゃなかったけれど、気持ち的には100%でプッシュした。日本のシクロクロスのレベルは決して低くないし、だからこそ全力で立ち向かおうと思ったんだ。ワールドサーキットと一番違うのはテクニック面。ここを改善すればもっと世界で通用する選手が生まれると思う」と日本国内のシクロクロスを評した。
その後方では、前田と小坂、そしてクラークが激しい3位争いを繰り広げた。最終周回突入時の4連キャンバー登りを乗車でこなした前田が数秒差を得たが、シケインのバニーホップでミス。3名一丸となってゴール前の折り返し区間に現れた。3番手につけた前田が立ち上がり重視のコーナーワークでクラークをパスし、最終コーナーを抜けてロングスプリント。「賭けでしたが、思った以上に脚が残っていた」と振り返る前田は、脚攣りで伸び悩む小坂をパスし、日本人選手最上位として表彰台の一角に食い込んだ。
女子エリート:與那嶺を引き離したルーネルズが独走勝利
23名が出走した女子エリートでは、野辺山からの連戦を選んだエミリー・カチョレック(アメリカ、Squid Bikes)がホールショットを奪う。すぐにサミエル・ルーネルズ(アメリカ、Squid Bikes)と與那嶺恵理(FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope)がパスし、野辺山で2日連続表彰台を射止めた今井美穂(CO2 bicycle)は砂セクションでラインを失って前転。こうしてルーネルズと與那嶺が2名で抜け出した。
二人は暫くランデブーを続けたが、キャンバー区間の処理で決定的な差が生まれ、ルーネルズが勝利へと続く独走態勢へと持ち込んだ。「直線のパワーセクションが多くてすごくキツいコースだった。オフキャンバーには苦手意識があったけれど、10回以上も練習したから上手く走れたように思う」と振り返るルーネルズの走りは圧倒的。MTB選手としてのテクニックと、クリテリウム選手としてのパワーを活かし、誰よりもスムーズに高速サーキットを駆け抜けた。「日本で3レースを走り2勝だなんて素晴らしい結果。すごく嬉しいし、日本に招待してくれたAbove Bike Storeの皆に感謝したい」。
テクニックの差を持ち前のパワーでカバーし、2位をひた走った與那嶺。野辺山で苦戦したため、食事制限によって1週間で体重を落とし臨んでいた。「シクロクロス特有の乗り方ができないなりに頭を使ったし、すごくレースを楽しむことができました」と満足げに答える。今週末の全日本選手権終了後すぐにオーストラリアに渡り、ツアー・ダウンアンダーに向けての合宿に入るという。
男子エリート同様、最も白熱したのが3位争いだ。共に野辺山の表彰台に登った今井とエイプリル・マクドノー(オーストラリア、Flanders JBlood)、そして脚力に勝る唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)が接戦を繰り広げ、最終周回のパワー区間で唐見が先行したものの、滑りやすいキャンバー区間でスリップダウンを喫した。
これによって唐見が脱落し、「キャンバーは自分が一番乗れていたので、少し離されても大丈夫と余裕を持っていた」と言う今井がマクドノーを従えて最終区間へ。マクドノーもプッシュするが、僅か数秒のリードを固持した今井が気迫の走りで先着。熾烈な勝負を制して3位表彰台に滑り込んだ。
野辺山と宇都宮で海外勢と渡り合った前田や小坂、そして調子を上げている與那嶺と今井。調整のためにレース出場を見送った現全日本王者の沢田時(ブリヂストンアンカー)や、復調が待たれる竹之内らが一堂に会する全日本選手権はいよいよ今週末。2週間前にRaphaスーパークロス野辺山を開催した滝沢牧場が決戦の舞台だ。
男子エリート:世界基準の走りを披露したスペインのオルツが圧勝
2日間に渡って開催された宇都宮シクロクロスの2日目。男女UCIレース開催日とあって、昨年全日本選手権を招致した宇都宮ろまんちっく村には関東勢を中心に多くのエリートレーサーが集結。コース沿いには宇都宮ブリッツェンの応援旗が翻り、地元ファンの声援が選手たちを後押しした。
細かな修正こそ行われたものの、高低差のある斜面登りやシングルトラックの下り、スリッピーなキャンバー、パワーを要する芝の直線区間、そして砂セクションなど、おおよそは昨年同様。変化に富むコースレイアウトが選手たちの総合力を試すこととなる。
野辺山からの連戦となるクリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood)やアンソニー・クラーク(アメリカ、Squid Bikes)らに加え、主催者は目玉選手として2月にルクセンブルクで開催された世界選手権U23で銀メダルに輝いたフェリペ・オルツ(スペイン、GINESTAR - DELIKIA)を招聘。海外経験豊富な竹之内悠(東洋フレーム)や、地元の声援を一身に受ける小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)、今期好調をキープしている前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)ら国内トップ選手が海外勢を迎え撃った。
号砲と共にダッシュを決めたのはオルツだった。ヨンゲワールドや竹之内を引き連れながら猛烈な勢いで加速し、第1コーナーを抜けた時点で集団は長く引き伸ばされる。足首に故障を抱える竹之内はペースダウンを余儀なくされ、前田がヨンゲワールドに合流。やや間隔を開けて小坂とクラーク、横山航太(シマノレーシング)、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、ケヴィン・ブラッドフォード(アメリカ、SET/Coaching.com)、竹内遼(drawer THE RACING)が3位集団を作った。
レース前に「時差ぼけと疲れがあるのでベストコンディションではないけれど、テクニカルなコースは自分向き」と語っていたオルツの走りは正に圧倒的だった。コーナーを抜けるたびにスプリントし、シケインをバニーホップで飛び越え、タイトターンが連続するシングルトラックを流れるように抜けるその走りは世界基準。異次元のスピードに3周目から80%ルール適用による足切りが発生し、出走71人中11名のみ完走というサバイバルレースが展開されることとなる。
2位グループでは前田がヨンゲワールドから遅れ、後続のクラークと小坂に合流。こうしてオルツ、ヨンゲワールド、そして3名の3位グループという、フィニッシュまで続くオーダーが生まれた。
険しい表情でプッシュを続けるオルツは、普段C1の上位に食い込む選手たちを足切りに追い込みながら、ヨンゲワールドから2分半以上ものリードを得てフィニッシュ。ゴールライン上では世界選手権と同じウイリーを決めてみせた。
「今日は野辺山初日と同じようにエンジンの掛かりが悪かったのもあるけれど、今日はオルツがとにかく速かった。彼は若く、そしてテクニックもある。これからどんどん力を伸ばしていくだろう」と、2位のヨンゲワールドに言わしめた22歳のスペイン王者。「日本のシクロクロスがこんなにも盛り上がっているとは知らなかった。ファンもすごく多かったし、暖かく迎えてくれたことが嬉しくて、まずは感謝を伝えたい」とコメントする。
「身体は100%じゃなかったけれど、気持ち的には100%でプッシュした。日本のシクロクロスのレベルは決して低くないし、だからこそ全力で立ち向かおうと思ったんだ。ワールドサーキットと一番違うのはテクニック面。ここを改善すればもっと世界で通用する選手が生まれると思う」と日本国内のシクロクロスを評した。
その後方では、前田と小坂、そしてクラークが激しい3位争いを繰り広げた。最終周回突入時の4連キャンバー登りを乗車でこなした前田が数秒差を得たが、シケインのバニーホップでミス。3名一丸となってゴール前の折り返し区間に現れた。3番手につけた前田が立ち上がり重視のコーナーワークでクラークをパスし、最終コーナーを抜けてロングスプリント。「賭けでしたが、思った以上に脚が残っていた」と振り返る前田は、脚攣りで伸び悩む小坂をパスし、日本人選手最上位として表彰台の一角に食い込んだ。
女子エリート:與那嶺を引き離したルーネルズが独走勝利
23名が出走した女子エリートでは、野辺山からの連戦を選んだエミリー・カチョレック(アメリカ、Squid Bikes)がホールショットを奪う。すぐにサミエル・ルーネルズ(アメリカ、Squid Bikes)と與那嶺恵理(FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope)がパスし、野辺山で2日連続表彰台を射止めた今井美穂(CO2 bicycle)は砂セクションでラインを失って前転。こうしてルーネルズと與那嶺が2名で抜け出した。
二人は暫くランデブーを続けたが、キャンバー区間の処理で決定的な差が生まれ、ルーネルズが勝利へと続く独走態勢へと持ち込んだ。「直線のパワーセクションが多くてすごくキツいコースだった。オフキャンバーには苦手意識があったけれど、10回以上も練習したから上手く走れたように思う」と振り返るルーネルズの走りは圧倒的。MTB選手としてのテクニックと、クリテリウム選手としてのパワーを活かし、誰よりもスムーズに高速サーキットを駆け抜けた。「日本で3レースを走り2勝だなんて素晴らしい結果。すごく嬉しいし、日本に招待してくれたAbove Bike Storeの皆に感謝したい」。
テクニックの差を持ち前のパワーでカバーし、2位をひた走った與那嶺。野辺山で苦戦したため、食事制限によって1週間で体重を落とし臨んでいた。「シクロクロス特有の乗り方ができないなりに頭を使ったし、すごくレースを楽しむことができました」と満足げに答える。今週末の全日本選手権終了後すぐにオーストラリアに渡り、ツアー・ダウンアンダーに向けての合宿に入るという。
男子エリート同様、最も白熱したのが3位争いだ。共に野辺山の表彰台に登った今井とエイプリル・マクドノー(オーストラリア、Flanders JBlood)、そして脚力に勝る唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)が接戦を繰り広げ、最終周回のパワー区間で唐見が先行したものの、滑りやすいキャンバー区間でスリップダウンを喫した。
これによって唐見が脱落し、「キャンバーは自分が一番乗れていたので、少し離されても大丈夫と余裕を持っていた」と言う今井がマクドノーを従えて最終区間へ。マクドノーもプッシュするが、僅か数秒のリードを固持した今井が気迫の走りで先着。熾烈な勝負を制して3位表彰台に滑り込んだ。
野辺山と宇都宮で海外勢と渡り合った前田や小坂、そして調子を上げている與那嶺と今井。調整のためにレース出場を見送った現全日本王者の沢田時(ブリヂストンアンカー)や、復調が待たれる竹之内らが一堂に会する全日本選手権はいよいよ今週末。2週間前にRaphaスーパークロス野辺山を開催した滝沢牧場が決戦の舞台だ。
男子エリート結果
1位 | フェリペ・オルツ(スペイン、GINESTAR - DELIKIA) | 1h1’41” |
2位 | クリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood) | 1h04’04” |
3位 | 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 1h04’09” |
4位 | 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) | |
5位 | アンソニー・クラーク(アメリカ、Squid Bikes) | 1h04’13” |
6位 | ケヴィン・ブラッドフォード(アメリカ、SET/Coaching.com) | 1h5’13” |
7位 | 竹之内悠(東洋フレーム) | 1h05’24” |
8位 | 横山航太(シマノレーシング) | 1h05’37” |
9位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 1h05’54” |
10位 | 竹内遼(drawer THE RACING) | 1h06’04” |
女子エリート
1位 | サミエル・ルーネルズ(アメリカ、Squid Bikes) | 50’04” |
2位 | 與那嶺恵理(FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope) | 50’39” |
3位 | 今井美穂(CO2 bicycle) | 51’50” |
4位 | エイプリル・マクドノー(オーストラリア、Flanders JBlood) | 51’53” |
5位 | 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 52’02” |
6位 | エミリー・カチョレック(アメリカ、Squid Bikes) | 52’39” |
7位 | 西山みゆき(東洋フレーム) | 55’19” |
8位 | 中村千佳(ライブガーデン・ビチステンレ) | 56’12” |
9位 | 高橋織江(PEDAL NATION) | 56’33” |
10位 | 福田咲絵(AX) | 56’48” |
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano
photo:Makoto.Ayano
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