2017/09/22(金) - 15:33
トレーニング日を挟んでロード世界選手権はタイムトライアルからロードレースへ移行。スプリンターやアタッカーにチャンスがあるノルウェー・ベルゲンのコース特性やエリート男子レースの注目選手をチェックしておこう。
サーモンヒルを含む19.1kmのベルゲン周回コース
タイムトライアル(エリート男子を除く)と同様に、ロードレースのフィニッシュラインはベルゲン中心部のクリスティーズゲート通りに引かれている。ロードレースで使用されるのは、主にベルゲンの南東に広がる住宅街をぐるっと回る19.1kmの周回コースだ。ジュニア女子は4周/76.4km、U23男子は10周/191.0km、そしてエリート女子は8周/152.8kmで行われる。
土曜日のジュニア男子と日曜日のエリート男子のみ北海に浮かぶロンゴイ島をスタートし、いくつもの橋を渡って本土のベルゲンへ。幹線道路を39.5km走って19.1kmの周回コースに入る。そこからジュニア男子は周回コースを5周弱、エリート男子は12周弱。それぞれコース全長は133.8kmと267.5kmになる。19.1km周回コースの獲得標高差は1周につき約200m。
19.1kmの周回コースの中で最も長い登りが、中盤に登場するサーモンヒル(長さ1.5km/平均6.4%)。道幅があり、一定勾配が続く登りをエリート男子は12回登ることになる。登り口のコーナーがタイトではあるものの、目を見張るような勾配ではなく、一発でアタックを成功させるには少し難易度が低いと言える。サーモンヒルの頂上からフィニッシュまでは10km強。中央分離帯や減速用バンプが多い下り基調の幹線道路を走り、一旦ベルゲンの街中を通過して同市北東部の沿岸部へ。
残り5km地点に登場するベルゲン市内の石畳区間と、その先にある長さ200mほどの登りがアタッカーにとって最後の発射台となる。タイトコーナーや緩斜面を含む石畳区間で集団は間違いなく縦に伸び、先頭ではアタックがかかるはず。とは言えこの石畳区間と登りも決定的なタイム差を奪うには距離が短い。最後は海沿いの平坦路を3kmほど走ってフィニッシュラインにたどり着く。
サガン史上初の3連覇なるか?地元ノルウェーやベルギーは強力メンバーで挑む
展開によって様々な脚質の選手にチャンスがあるコース。もちろん登坂力がなければ太刀打ちできないが、エリート男子に出場するスプリンターであれば勝負に残ると予想される。集団スプリントに持ち込まれた場合は、どれだけフレッシュな状態で最終勝負に挑めるかが問題。そのためにはもちろんチーム力も鍵を握るだろう。
水曜日に現地入りし、木曜日のトレーニング時間に周回コースを4周こなしてからその後バイクペーサーのトレーニングを行った新城幸也(バーレーン・メリダ)は「誰にでも(どんな脚質の選手にも)チャンスがある」とコースの印象を語る。「集団スプリントの展開になれば(40〜50人は)人数が残るだろうし、スプリンターのいるチームのサブエースがサーモンヒルの麓からペースを上げてアタックして、スプリンターのいないチームの選手が付いていけば、誰も追えなくなってそこで決まる」。
コース的には、2010年の世界チャンピオンで、今大会のアンバサダーを務めるトル・フースホフト(ノルウェー)に代表される「登れるスプリンター」向き。地元ノルウェーが期待を寄せるのはエドヴァルド・ボアッソンハーゲンとアレクサンドル・クリストフの二枚看板だ。両者は直前のツアー・オブ・ブリテンで調子の良さを示しており、ダブルエース体制は大きな強み。しかし同時に、2016年カタール大会で2人揃って先頭集団に残りながら連携が取れず6位と7位に沈んだように、絶対的なエースが確立していないダブルエース体制は弱みにもなり得る。
2015年と2016年に優勝しているペテル・サガン(スロバキア)は大会3連覇に挑む。これまで世界選手権で3回優勝している選手は4名(ビンダ、ヴァンステーンベルヘン、フレイレ、メルクス)いるが、3連覇を果たした選手は未だかつていない。過去2年間の世界選手権で実証したように、自らアタックで突破口を開く展開でも集団スプリントの展開でもサガンは勝利を狙えることができる。
サガンは直前のGPケベックで優勝し、世界選手権に向けて弾みをつけたが、カナダからヨーロッパ帰国のタイミングで体調を崩してしまう。チームタイムトライアルへの出場もキャンセルしたサガンは金曜日に現地入りする予定。どれほどの体調不良だったのか、そしてどれだけ回復しているのか未知数な部分が大きい。
ストラーデビアンケとミラノ〜サンレモで優勝し、ツール・ド・フランスでフルームの総合優勝をアシスト後にクラシカサンセバスティアンで勝利したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)を優勝候補に挙げる声も大きい。2014年の世界チャンピオンは前週のチームタイムトライアルで銅メダルを獲得し、チャンスのある個人タイムトライアルをあえてパス。2年間サガンに奪われたタイトルを奪回すべく、日曜日のロードレースに照準を合わせている。
毎年最強チームを組みながら、2012年以来アルカンシェルから遠ざかっているベルギーチームは、グレッグ・ヴァンアーヴェルマートを中心にフィリップ・ジルベールやティム・ウェレンス、ジャスパー・ストゥイヴェンという強力なアタッカーを揃えてきた。ベルギーとしてはトップスプリンターが残るような集団スプリントの展開には持ち込みたくないところ。ベルギーの他にも、登坂力のあるジュリアン・アラフィリップ(フランス)やルイ・コスタ(ポルトガル)、プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)といった選手たちが登りで仕掛けてくるはずだ。
イタリアチームは集団スプリントに持ち込まれた場合はエリア・ヴィヴィアーニで、そしてサバイバルレースとなった場合はブエルタ・ア・エスパーニャでステージ4勝の活躍を見せたマッテオ・トレンティンで勝利を狙ってくるだろう。コロンビアはフェルナンド・ガビリアをエーススプリンターに据え、リゴベルト・ウランらが登りでの動きをカバーする。
オランダチームはタイムトライアルで二冠を達成したトム・デュムランの他にもツアー・オブ・ブリテン総合優勝のラルス・ボームを揃える。デュムランとともにチームタイムトライアルを制したマイケル・マシューズはオーストラリアチームのエース。ツール・ド・フランスでステージ2勝を飾ってポイント賞に輝いたマシューズも様々な展開に対応できる選手であり、コース的にアルカンシェル獲得のチャンスは十分にある。
サーモンヒルを含む19.1kmのベルゲン周回コース
タイムトライアル(エリート男子を除く)と同様に、ロードレースのフィニッシュラインはベルゲン中心部のクリスティーズゲート通りに引かれている。ロードレースで使用されるのは、主にベルゲンの南東に広がる住宅街をぐるっと回る19.1kmの周回コースだ。ジュニア女子は4周/76.4km、U23男子は10周/191.0km、そしてエリート女子は8周/152.8kmで行われる。
土曜日のジュニア男子と日曜日のエリート男子のみ北海に浮かぶロンゴイ島をスタートし、いくつもの橋を渡って本土のベルゲンへ。幹線道路を39.5km走って19.1kmの周回コースに入る。そこからジュニア男子は周回コースを5周弱、エリート男子は12周弱。それぞれコース全長は133.8kmと267.5kmになる。19.1km周回コースの獲得標高差は1周につき約200m。
19.1kmの周回コースの中で最も長い登りが、中盤に登場するサーモンヒル(長さ1.5km/平均6.4%)。道幅があり、一定勾配が続く登りをエリート男子は12回登ることになる。登り口のコーナーがタイトではあるものの、目を見張るような勾配ではなく、一発でアタックを成功させるには少し難易度が低いと言える。サーモンヒルの頂上からフィニッシュまでは10km強。中央分離帯や減速用バンプが多い下り基調の幹線道路を走り、一旦ベルゲンの街中を通過して同市北東部の沿岸部へ。
残り5km地点に登場するベルゲン市内の石畳区間と、その先にある長さ200mほどの登りがアタッカーにとって最後の発射台となる。タイトコーナーや緩斜面を含む石畳区間で集団は間違いなく縦に伸び、先頭ではアタックがかかるはず。とは言えこの石畳区間と登りも決定的なタイム差を奪うには距離が短い。最後は海沿いの平坦路を3kmほど走ってフィニッシュラインにたどり着く。
サガン史上初の3連覇なるか?地元ノルウェーやベルギーは強力メンバーで挑む
展開によって様々な脚質の選手にチャンスがあるコース。もちろん登坂力がなければ太刀打ちできないが、エリート男子に出場するスプリンターであれば勝負に残ると予想される。集団スプリントに持ち込まれた場合は、どれだけフレッシュな状態で最終勝負に挑めるかが問題。そのためにはもちろんチーム力も鍵を握るだろう。
水曜日に現地入りし、木曜日のトレーニング時間に周回コースを4周こなしてからその後バイクペーサーのトレーニングを行った新城幸也(バーレーン・メリダ)は「誰にでも(どんな脚質の選手にも)チャンスがある」とコースの印象を語る。「集団スプリントの展開になれば(40〜50人は)人数が残るだろうし、スプリンターのいるチームのサブエースがサーモンヒルの麓からペースを上げてアタックして、スプリンターのいないチームの選手が付いていけば、誰も追えなくなってそこで決まる」。
コース的には、2010年の世界チャンピオンで、今大会のアンバサダーを務めるトル・フースホフト(ノルウェー)に代表される「登れるスプリンター」向き。地元ノルウェーが期待を寄せるのはエドヴァルド・ボアッソンハーゲンとアレクサンドル・クリストフの二枚看板だ。両者は直前のツアー・オブ・ブリテンで調子の良さを示しており、ダブルエース体制は大きな強み。しかし同時に、2016年カタール大会で2人揃って先頭集団に残りながら連携が取れず6位と7位に沈んだように、絶対的なエースが確立していないダブルエース体制は弱みにもなり得る。
2015年と2016年に優勝しているペテル・サガン(スロバキア)は大会3連覇に挑む。これまで世界選手権で3回優勝している選手は4名(ビンダ、ヴァンステーンベルヘン、フレイレ、メルクス)いるが、3連覇を果たした選手は未だかつていない。過去2年間の世界選手権で実証したように、自らアタックで突破口を開く展開でも集団スプリントの展開でもサガンは勝利を狙えることができる。
サガンは直前のGPケベックで優勝し、世界選手権に向けて弾みをつけたが、カナダからヨーロッパ帰国のタイミングで体調を崩してしまう。チームタイムトライアルへの出場もキャンセルしたサガンは金曜日に現地入りする予定。どれほどの体調不良だったのか、そしてどれだけ回復しているのか未知数な部分が大きい。
ストラーデビアンケとミラノ〜サンレモで優勝し、ツール・ド・フランスでフルームの総合優勝をアシスト後にクラシカサンセバスティアンで勝利したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)を優勝候補に挙げる声も大きい。2014年の世界チャンピオンは前週のチームタイムトライアルで銅メダルを獲得し、チャンスのある個人タイムトライアルをあえてパス。2年間サガンに奪われたタイトルを奪回すべく、日曜日のロードレースに照準を合わせている。
毎年最強チームを組みながら、2012年以来アルカンシェルから遠ざかっているベルギーチームは、グレッグ・ヴァンアーヴェルマートを中心にフィリップ・ジルベールやティム・ウェレンス、ジャスパー・ストゥイヴェンという強力なアタッカーを揃えてきた。ベルギーとしてはトップスプリンターが残るような集団スプリントの展開には持ち込みたくないところ。ベルギーの他にも、登坂力のあるジュリアン・アラフィリップ(フランス)やルイ・コスタ(ポルトガル)、プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)といった選手たちが登りで仕掛けてくるはずだ。
イタリアチームは集団スプリントに持ち込まれた場合はエリア・ヴィヴィアーニで、そしてサバイバルレースとなった場合はブエルタ・ア・エスパーニャでステージ4勝の活躍を見せたマッテオ・トレンティンで勝利を狙ってくるだろう。コロンビアはフェルナンド・ガビリアをエーススプリンターに据え、リゴベルト・ウランらが登りでの動きをカバーする。
オランダチームはタイムトライアルで二冠を達成したトム・デュムランの他にもツアー・オブ・ブリテン総合優勝のラルス・ボームを揃える。デュムランとともにチームタイムトライアルを制したマイケル・マシューズはオーストラリアチームのエース。ツール・ド・フランスでステージ2勝を飾ってポイント賞に輝いたマシューズも様々な展開に対応できる選手であり、コース的にアルカンシェル獲得のチャンスは十分にある。
ロード世界選手権2017スケジュール
月日 | 時間 | 種目 | 距離 | 日本人選手 |
---|---|---|---|---|
9月17日(日) | 12:05〜13:55 | UCI女子チームTT | 42.5km | |
15:35〜17:25 | UCI男子チームTT | 42.5km | ||
9月18日(月) | 10:35〜11:50 | ジュニア女子TT | 16.1km | 下山 |
13:05〜17:35 | U23男子TT | 37.2km | 小野寺、岡 | |
9月19日(火) | 11:35〜13:30 | ジュニア男子TT | 21.1km | 松田 |
15:55〜17:15 | エリート女子TT | 21.1km | 與那嶺、梶原 | |
9月20日(水) | 13:05〜17:45 | エリート男子TT | 31.0km | |
9月21日(木) | トレーニング | |||
9月22日(金) | 10:05〜12:15 | ジュニア女子ロード | 76.4km | 下山 |
13:15〜17:35 | U23男子ロード | 191.0km | 小野寺、岡本、雨澤、岡、山本 | |
9月23日(土) | 09:30〜12:45 | ジュニア男子ロード | 133.8km | 松田、小野寺、蠣崎 |
13:30〜17:15 | エリート女子ロード | 152.8km | 與那嶺、梶原 | |
9月24日(日) | 10:05〜16:50 | エリート男子ロード | 267.5km | 新城 |
text:Kei Tsuji in Bergen, Norway
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