2017/08/22(火) - 16:34
U23版ツール・ド・フランスと形容されるツール・ド・ラヴニールに挑戦する日本ナショナルチームのレポート。ゴール手前3kmで単独アタックを仕掛けたイギリスU23王者クリストファー・ロウレスが逃げ切りでステージ優勝を決めた。日本勢は小野寺玲が序盤に起きた落車の影響でDNFとなっている。
フランスの自転車首都ブルターニュ地方に別れを告げ、ワイン畑が広がり始めるロワール・アトランティック地方の中心都市ソミュールへと移動の第4ステージ。雨が降らなかったとは言え、真夏日には恵まれなかった昨日までとは打って変わり、各選手ボトルを6本ほど消費する程の真夏日となった。勝負はアルプスに向けてますます厳しさを増す。
■第4ステージ「デルヴァル>ソミュール」=166.6km(獲得標高1383m)
気温30度以上の真夏日の中、スタートから時速45km以上のハイスピードでレースは展開。激しいアタック合戦の中、約27km地点で小野寺が落車し頭を強打するも、執念の再スタートを切る。その間、先頭ではアタックが複数かかり、イギリスU23王者のクリストファー・ロウレスを含む7名のエスケープが形成。その差はみるみるうちに4分30秒に。
約60km地点から、スプリントを狙うノルウェイとオランダがアタック捕まえるべく集団を牽引開始。そんな中、炎天下&集団の高速化に耐えきれず、落車から70km以上走行した小野寺が集団から千切れ無念のリタイア。その後もメイン集団のノルウェイやオランダら、スプリントを狙うチームの牽引が続き徐々にタイム差は縮むことに。ゴールまで残り15km地点までに7名居た逃げは5名、3名、1名へと減り続け、ゴールまで残す所10kmで逃げが全て吸収され、レースが降り出しに。
終盤は日本も岡本隼や岡篤志のスプリント狙いで集団をコントロールする場面があるも、最終周回コース内の短くも勾配のきつい上りで、殆どのチームの組織プレイが崩壊。スプリントの行方は混沌へ。
残り3km。本日100km以上逃げ続けた7名の1人であるイギリスU23王者のクリストファー・ロウレスが、逃げの疲れも何のその、短くきつい上りの前で単独アタック。スプリンターのロウレスが上りアタックを仕掛けた事で誰もが逃げ切りは無理だと踏むも、大方の予想を裏切りそのまま粘って単独でゴールまで飛び込み、圧倒的な力を見せつけた。
ここまでのステージでは、U23個人TT欧州王者、世界U23王者、オランダU23王者、イギリスU23王者が格の違いを見せつける勝利を飾っている。
■U23ジャパンナショナルチーム浅田顕監督のコメント
「風の影響が高いコースレイアウトだが今日はほぼ無風でレースが進行、しかし各国の積極的な攻撃で前半はハイペースでレースが進んだ。その序盤小野寺が中央分離帯に乗り上げる落車、負傷しながらも再スタートし集団復帰を果たすが、100kmを過ぎたあたりで負傷の痛みが改善せず大事を見て棄権させた。
チームとしては前半の逃げに乗れないものの、ゴール前集団が一つに纏まってからの連携はうまく取れ、ラスト1kmまではお小野寺から引き継いだ岡をチーム一丸で良い位置に残した。しかしゴール前最終コーナーで発生した落車に巻き込まれ上位入賞を逃す悔しい結果となった。勝ったのはラスト3km集団に対して単独で飛び出したイギリスのLAWLESS。あり得ないラストスパートのスピードであった。今日のチームの動きを明日、明後日に繋げて行きたい。小野寺は精密検査の結果大きな問題が無く、一日も早く回復し次の目標に準備を進める。」
各選手コメント
ステージ1位:クリストファー・ロウレス(イギリス、2017年イギリスU23王者)
「ボクはどちらかと言うと(特に上りが強いわけではない)伝統的なスプリンターなんだけど、ゴールまで3km地点の上りでアタックしてみたんだ。集団は強力に追ってきたので逃げ切りは無理かと思ったけど、もう選択肢はないと思って全力で踏んだ。そしたら逃げ切れてしまったんだ!本当に信じられない。」
山本大喜(日本U23/鹿屋体育大学)第4ステージ66位(総合+16分40秒)
「レース終盤では調子が良くて13人ぐらいのアタックにも参加しましたが、メイン集団が逃してくれずに吸収されてしまいました。ゴール前10km程度前では日本チームの連携がうまく噛み合って、集団先頭までチームで上がりレースをコントロールする場面も。しかしゴールの街の周回コース(小さなきつい坂を含む周回を2周)での強烈な上りで集団全体が崩壊。そこからはほぼ単騎での戦いになってしまった。でもチームワークが最終局面でうまく噛み合ったのは自身に繋がりましたね。」
雨澤毅明(日本U23/宇都宮ブリッツェン)第4ステージ87位(総合+4秒)
「コースレイアウトのマップを見ていただけでは気が付かなかったんですが、ゴール3km手前にあんな強烈な坂があるなんてびっくりしました。集団が破裂していましたね・・とはいえ、総合成績を狙う僕的には、今日も無事にタイムを失わずにゴールできてホッとしています。」
岡本隼(日本U23/日本大学/愛三工業レーシング)第4ステージ100位(総合+4秒)
「ゴールスプリント一本に賭けて今日は動きました。ゴールの街に入った周回コースにてチームメイトに位置取りをして貰え、チームとしては今レースで一番うまく展開が出来た日でした。しかしゴール5km程度手前での激しい位置取り合戦でチームメイトと離れてしまった。それでも集団の50番手ぐらいには留まれたので、スプリントを相変わらず狙って動きましたが、ゴール3km手前の強烈な坂で千切れてしまった。今日はノルウェイとデンマークが手段を引っ張っていたものの、そんなにペースは速くなかったので、その分ゴールの街ソミュールでの周回が凄まじいスピードに。最後に強烈な戦いが展開されるので、そこで他国に対等に立ち向かえるように一層の努力をします。」
岡篤志(日本U23/宇都宮ブリッツェン)第4ステージ107位(総合+57秒)
「ラスト500mで最終スプリントに絡める位置に居たんですが、最終コーナーの外側に居たら内側の選手が膨らんできて、それをギリギリかわせたかと思いきや、後ろから別の選手に突っ込まれて路肩に落ち落車。今回こそはスプリントに絡めるかと思いきや、本当に残念でした。また明日以降頑張ります。」
石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) 第4ステージ125位(総合+3分37秒)
「最初の40kmぐらい高速展開が続いたところで、脚がだるくなり、丁度そこあたりで逃げか決まった。全般的に身体がきつく感じる日だった。結果論になりますが、序盤のアタック合戦で温存し、最終の周回コースで展開できるようにしたほうがクレバーなペース配分だったと思う。」
■レース会場諜報活動報告
オランダU23ナショナルチーム監督『ペーター・ザイデルフェルド』
1982年のオムロープ・ヘット・ニウスブラットで優勝、ツール・ド・フランスやブエルタにも出場して居る凄い人にも関わらず、非常に謙虚で丁寧。その穏やかで温厚な人柄でオランダU23選手達をきめ細かに指導する老紳士。そんなペーターに「あなたが日本選手を指導する事になったらどんな事を選手に云いますか?」と聞いてみました
「まずは、その選手に適していない事はやらせないね。例えばうちの選手達の大半は山が苦手なんだ。彼らの体躯を見れば分かるだろう?だからその選手個々の適性を徹底的に伸ばすように指導するし、レースでもそれを活かすように指示を出す。ウチのチームにとって、今回のツール・ド・ラヴニールは平坦が終わる第6ステージで終了だよ。山岳のある第7-9ステージはアルプスでバカンスだね(笑)。だからもし私が日本選手を指導する場合は、例えばあの選手(日本U23チーム選手が居る方を見て、岡本隼を指差す)なんかは確実にスプリンターだろ?彼には第6ステージが終わったらアルプスでハイキングに行くように指示を出すよ(笑)
まぁそれは冗談として、ヨーロッパではごく少数の相当な才能がある選手以外は、総合系の選手みたいに何もかもが得意なんてことは有り得ないんだ。日本には競輪選手が沢山いるだろう?テオ・ボスが日本にも行っているはずだ。スプリントと位置取りが得意な競輪選手をロードレースに転向させるのが一番手っ取り早いと思う。日本にとって、その選手リソースを使わない手はないと思うよ。
詰まるところ、世界のトップレベルに上がりたいのならば、自分の適性を探し、それを武器に成績を出す。適性を活かさずに中途半端な特性の無い選手になると、レベルの高い集団については行けるけど、勝てない選手になってしまう。」
フランスの自転車首都ブルターニュ地方に別れを告げ、ワイン畑が広がり始めるロワール・アトランティック地方の中心都市ソミュールへと移動の第4ステージ。雨が降らなかったとは言え、真夏日には恵まれなかった昨日までとは打って変わり、各選手ボトルを6本ほど消費する程の真夏日となった。勝負はアルプスに向けてますます厳しさを増す。
■第4ステージ「デルヴァル>ソミュール」=166.6km(獲得標高1383m)
気温30度以上の真夏日の中、スタートから時速45km以上のハイスピードでレースは展開。激しいアタック合戦の中、約27km地点で小野寺が落車し頭を強打するも、執念の再スタートを切る。その間、先頭ではアタックが複数かかり、イギリスU23王者のクリストファー・ロウレスを含む7名のエスケープが形成。その差はみるみるうちに4分30秒に。
約60km地点から、スプリントを狙うノルウェイとオランダがアタック捕まえるべく集団を牽引開始。そんな中、炎天下&集団の高速化に耐えきれず、落車から70km以上走行した小野寺が集団から千切れ無念のリタイア。その後もメイン集団のノルウェイやオランダら、スプリントを狙うチームの牽引が続き徐々にタイム差は縮むことに。ゴールまで残り15km地点までに7名居た逃げは5名、3名、1名へと減り続け、ゴールまで残す所10kmで逃げが全て吸収され、レースが降り出しに。
終盤は日本も岡本隼や岡篤志のスプリント狙いで集団をコントロールする場面があるも、最終周回コース内の短くも勾配のきつい上りで、殆どのチームの組織プレイが崩壊。スプリントの行方は混沌へ。
残り3km。本日100km以上逃げ続けた7名の1人であるイギリスU23王者のクリストファー・ロウレスが、逃げの疲れも何のその、短くきつい上りの前で単独アタック。スプリンターのロウレスが上りアタックを仕掛けた事で誰もが逃げ切りは無理だと踏むも、大方の予想を裏切りそのまま粘って単独でゴールまで飛び込み、圧倒的な力を見せつけた。
ここまでのステージでは、U23個人TT欧州王者、世界U23王者、オランダU23王者、イギリスU23王者が格の違いを見せつける勝利を飾っている。
■U23ジャパンナショナルチーム浅田顕監督のコメント
「風の影響が高いコースレイアウトだが今日はほぼ無風でレースが進行、しかし各国の積極的な攻撃で前半はハイペースでレースが進んだ。その序盤小野寺が中央分離帯に乗り上げる落車、負傷しながらも再スタートし集団復帰を果たすが、100kmを過ぎたあたりで負傷の痛みが改善せず大事を見て棄権させた。
チームとしては前半の逃げに乗れないものの、ゴール前集団が一つに纏まってからの連携はうまく取れ、ラスト1kmまではお小野寺から引き継いだ岡をチーム一丸で良い位置に残した。しかしゴール前最終コーナーで発生した落車に巻き込まれ上位入賞を逃す悔しい結果となった。勝ったのはラスト3km集団に対して単独で飛び出したイギリスのLAWLESS。あり得ないラストスパートのスピードであった。今日のチームの動きを明日、明後日に繋げて行きたい。小野寺は精密検査の結果大きな問題が無く、一日も早く回復し次の目標に準備を進める。」
各選手コメント
ステージ1位:クリストファー・ロウレス(イギリス、2017年イギリスU23王者)
「ボクはどちらかと言うと(特に上りが強いわけではない)伝統的なスプリンターなんだけど、ゴールまで3km地点の上りでアタックしてみたんだ。集団は強力に追ってきたので逃げ切りは無理かと思ったけど、もう選択肢はないと思って全力で踏んだ。そしたら逃げ切れてしまったんだ!本当に信じられない。」
山本大喜(日本U23/鹿屋体育大学)第4ステージ66位(総合+16分40秒)
「レース終盤では調子が良くて13人ぐらいのアタックにも参加しましたが、メイン集団が逃してくれずに吸収されてしまいました。ゴール前10km程度前では日本チームの連携がうまく噛み合って、集団先頭までチームで上がりレースをコントロールする場面も。しかしゴールの街の周回コース(小さなきつい坂を含む周回を2周)での強烈な上りで集団全体が崩壊。そこからはほぼ単騎での戦いになってしまった。でもチームワークが最終局面でうまく噛み合ったのは自身に繋がりましたね。」
雨澤毅明(日本U23/宇都宮ブリッツェン)第4ステージ87位(総合+4秒)
「コースレイアウトのマップを見ていただけでは気が付かなかったんですが、ゴール3km手前にあんな強烈な坂があるなんてびっくりしました。集団が破裂していましたね・・とはいえ、総合成績を狙う僕的には、今日も無事にタイムを失わずにゴールできてホッとしています。」
岡本隼(日本U23/日本大学/愛三工業レーシング)第4ステージ100位(総合+4秒)
「ゴールスプリント一本に賭けて今日は動きました。ゴールの街に入った周回コースにてチームメイトに位置取りをして貰え、チームとしては今レースで一番うまく展開が出来た日でした。しかしゴール5km程度手前での激しい位置取り合戦でチームメイトと離れてしまった。それでも集団の50番手ぐらいには留まれたので、スプリントを相変わらず狙って動きましたが、ゴール3km手前の強烈な坂で千切れてしまった。今日はノルウェイとデンマークが手段を引っ張っていたものの、そんなにペースは速くなかったので、その分ゴールの街ソミュールでの周回が凄まじいスピードに。最後に強烈な戦いが展開されるので、そこで他国に対等に立ち向かえるように一層の努力をします。」
岡篤志(日本U23/宇都宮ブリッツェン)第4ステージ107位(総合+57秒)
「ラスト500mで最終スプリントに絡める位置に居たんですが、最終コーナーの外側に居たら内側の選手が膨らんできて、それをギリギリかわせたかと思いきや、後ろから別の選手に突っ込まれて路肩に落ち落車。今回こそはスプリントに絡めるかと思いきや、本当に残念でした。また明日以降頑張ります。」
石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) 第4ステージ125位(総合+3分37秒)
「最初の40kmぐらい高速展開が続いたところで、脚がだるくなり、丁度そこあたりで逃げか決まった。全般的に身体がきつく感じる日だった。結果論になりますが、序盤のアタック合戦で温存し、最終の周回コースで展開できるようにしたほうがクレバーなペース配分だったと思う。」
■レース会場諜報活動報告
オランダU23ナショナルチーム監督『ペーター・ザイデルフェルド』
1982年のオムロープ・ヘット・ニウスブラットで優勝、ツール・ド・フランスやブエルタにも出場して居る凄い人にも関わらず、非常に謙虚で丁寧。その穏やかで温厚な人柄でオランダU23選手達をきめ細かに指導する老紳士。そんなペーターに「あなたが日本選手を指導する事になったらどんな事を選手に云いますか?」と聞いてみました
「まずは、その選手に適していない事はやらせないね。例えばうちの選手達の大半は山が苦手なんだ。彼らの体躯を見れば分かるだろう?だからその選手個々の適性を徹底的に伸ばすように指導するし、レースでもそれを活かすように指示を出す。ウチのチームにとって、今回のツール・ド・ラヴニールは平坦が終わる第6ステージで終了だよ。山岳のある第7-9ステージはアルプスでバカンスだね(笑)。だからもし私が日本選手を指導する場合は、例えばあの選手(日本U23チーム選手が居る方を見て、岡本隼を指差す)なんかは確実にスプリンターだろ?彼には第6ステージが終わったらアルプスでハイキングに行くように指示を出すよ(笑)
まぁそれは冗談として、ヨーロッパではごく少数の相当な才能がある選手以外は、総合系の選手みたいに何もかもが得意なんてことは有り得ないんだ。日本には競輪選手が沢山いるだろう?テオ・ボスが日本にも行っているはずだ。スプリントと位置取りが得意な競輪選手をロードレースに転向させるのが一番手っ取り早いと思う。日本にとって、その選手リソースを使わない手はないと思うよ。
詰まるところ、世界のトップレベルに上がりたいのならば、自分の適性を探し、それを武器に成績を出す。適性を活かさずに中途半端な特性の無い選手になると、レベルの高い集団については行けるけど、勝てない選手になってしまう。」
ツール・ド・ラヴニール2017第4ステージ成績
1位 | クリストファー・ロウレス(イギリス) | 3時間43分27秒(平均時速44,171 km/h) |
2位 | イメリオ・チーマ(コロンビア) | +2秒 |
3位 | クリストファー・ハルフォルセン(ノルウェー) | |
66位 | 山本大喜(鹿屋体育大学) | |
87位 | 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) | |
100位 | 岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング) | |
107位 | 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) | +55秒 |
125位 | 石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) | +3分35秒 |
DNF | 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) |
総合成績
1位 | キャスパー・アスグリーン(デンマーク) | 12時間48分56秒 (平均時速44,682 km/h) |
2位 | クリストファー・ロウレス(イギリス) | +2秒 |
3位 | クリストファー・ハルフォルセン(ノルウェー) | +4秒 |
50位 | 岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング) | |
89位 | 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) | |
102位 | 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) | +57秒 |
116位 | 石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) | +3分37秒 |
134位 | 山本大喜(鹿屋体育大学) | +16分40秒 |
*フルリザルト: https://www.tourdelavenir.com/wp-content/uploads/1994/04/Stage-4.pdf
photo&text:Kenichi.YAMAZAKI(Cyclisme Japon)
photo&text:Kenichi.YAMAZAKI(Cyclisme Japon)
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