2017/08/18(金) - 01:50
アンダルシア州のシエラネバダ山脈でバトルを繰り広げた後、カンタブリア州とアストゥリアス州の山岳地帯を進むブエルタ・ア・エスパーニャ後半戦。激坂アングリルでクライマックスを迎える後半ステージを詳しく紹介します。
8月29日(火)第10ステージ カラバカ・アニョ・フビラル2017~エルポソ・アリメンタシオン 164.8km コースマップ
大会最初の休息日を経てブエルタはムルシア州へ。いわゆるトランジションステージ(移動ステージ)だが、単純なスプリンター向きの平坦ステージにならないのがブエルタらしい。残り40kmを切ってから3級山岳モロン・デ・トタナ峠(長さ5.7km/平均5.7%)と1級山岳コリャド・ベルメホ(長さ7.7km/平均6.5%)が立て続けに登場する。
数字の8を描くようにして、残り56km地点でエルポソ・アリメンタシオンのフィニッシュラインを逆向きに通過して山岳地帯へ。3級と1級の山岳セットはスプリンターは生き残れない難易度であり、ずばり逃げ向きのコースレイアウトであると言える。逃げ切りが決まった場合は、逃げグループ内のステージ優勝争いとメイン集団内のマイヨロホ争いが同時進行することになる。休息日でリズムを崩して失速する選手が出てくるかもしれない。
8月30日(水)第11ステージ ロルカ~カラル・アルト天文台 187.5km コースマップ
ブエルタはイベリア半島最南端のアンダルシア州に入る。ビーチが連なる海抜0mのオーシャンロードから内陸に進路をとり、最終的に選手たちは標高2,120mまで登りきる。残り43km地点から本格的な登りが始まり、1級山岳ベレフィケ峠(長さ13.2km/平均8.6%)と1級山岳カラル・アルト天文台(長さ15.5km/平均5.9%)を連続してクリアする。
1級山岳ベレフィケ峠は前半から勾配がコンスタントに10%を超え、頂上手前には15%の急勾配区間も登場する。標高1,800mから一旦標高1,200mまで下ってから迎える1級山岳は、その名の通り標高2,120mのカラル・アルト天文台(ヨーロッパ最大3.5mの反射望遠鏡を保有)への山道。こちらも前半から10%前後の勾配を刻む登りで、中盤にかけて平坦区間を含む。残り2.2km地点から再び勾配が増し、最後は7%の勾配がフィニッシュラインまで続いている。1日の獲得標高差は今大会最大クラスの3,490mだ。
8月31日(木)第12ステージ モトリル~アンテケーラ 160.1km コースマップ
モトリルをスタートし、アンダルシア州の海岸線を西に向かう。ちょうどレースの折り返し地点で補給ポイントを過ぎると1級山岳レオン峠(長さ17.4km/平均4.9%)がスタート。その後さらに内陸へと歩み入り、2級山岳トルカル峠(長さ7.6km/平均7.0%)を経て「アンダルシアの心臓」と呼ばれるアンテケーラでフィニッシュを迎える。
スプリントポイントが2級山岳トルカル峠の中腹に設定されているところがブエルタらしい。2級山岳トルカル峠の頂上からアンテケーラまでは17.5km。序盤に形成された少人数グループの逃げ切りか、それとも逃げを吸収した小集団によるスプリントか。残り1kmを切るとフィニッシュラインまで2〜3%の勾配が続いている。年間平均325日が晴れというこの一帯は白い街並みが特徴だ。
9月1日(金)第13ステージ コイン~トマレス 198.4km コースマップ
山岳ステージと山岳ステージに挟まれたスプリンター向きの平坦ステージ。翌日から最終日前日までマイヨロホをかけた山岳&TT決戦が続くため、ピュアスプリンターが揃う集団スプリントはこのステージが最後になるだろう。すでに暑いスペインを2週間近く走っているため、この時点でピュアスプリンターの数は絞り込まれているかもしれない。
登場するカテゴリー山岳は序盤の3級山岳アルダレス峠だけ。ステージ後半はほぼフルフラットだ。アンダルシア州の州都セビリアに設定されたスプリントポイント(残り15.2km地点)を通過し、郊外のトマレスでフィニッシュ。残り4kmから高低差80mほどの登りをこなすが、スプリンターたちには問題ないレベルだと思われる。街中の連続コーナーやラウンドアバウトをこなして、道幅のある緩斜面でフィニッシュを迎える。
9月2日(土)第14ステージ エシハ~シエラ・デ・ラ・パンデラ 175km コースマップ
この第14ステージと第15ステージのアンダルシア2連続超級山頂フィニッシュでマイヨロホをかけた総合成績に激震が走るだろう。エシハをスタートする175kmコースにはカテゴリー山岳が3つ登場。3級、2級、超級と、階段状に標高と厳しさを上げていく。1日の獲得標高差は3,405m。気温が40度を超えるアンダルシア特有の強烈な暑さが選手たちにダメージを与えるだろう。
今大会最初の超級山頂フィニッシュである超級山岳シエラ・デ・ラ・パンデラ(長さ12km/平均7.3%)の登り口には、最大勾配23%のバルデペニャス・デ・ハエンの名物坂も組み込まれた。残り14.8km地点で登場するこのカテゴリーの付いていない「壁」でメイン集団が絞られた状態のまま、標高1,830mの超級山岳に向かう登りが始まる。コンスタントに勾配が10%を超える(最大18%)残り4km地点から活発なアタックがかかるはずだ。
9月3日(日)第15ステージ アルカラ・ラ・レアル~アルト・オヤ・デ・ラ・モラ 129.4km コースマップ
畳み掛けるように超級山岳が襲いかかる。第15ステージは短いコースに1級山岳が2つと超級山岳が1つ詰め込まれた。129.4kmという短さだが、獲得標高差は3,305mに達する。
最初の1級山岳ハザリャナス峠(長さ16.3km/平均5.5%)は中盤にかけて勾配が19〜22%を刻む激坂区間も登場。ここでメイン集団は一気に人数を減らすことになるだろう。レース時間が3時間半程度と短いため、タイムオーバーの猶予も短い。完走を目指すスプリンターたちにとっても厳しい1日になるのは間違いない。
後半の1級山岳プルケ峠(長さ8.5km/平均8%)は下り区間を含むため実質的な平均勾配は10%近い。そして最後は超級山岳オヤ・デ・ラ・モラ峠(長さ19.3km/5.6%)の長い長い登りが待っている。今大会の最高地点でもある標高2,510mのフィニッシュ地点は、冬場はヨーロッパ最南端のスキーリゾート地として、夏場は様々な競技の高地トレーニングの場として人気を博すシエラネバダ山脈の中心地だ。
9月4日(月)休息日
9月5日(火)第16ステージ シルクイト・デ・ナバラ~ログローニョ 40.2km(個人TT)コースマップ
休息日という名の移動日を挟んでブエルタはスペイン南部のアンダルシア州からスペイン北部のナバラ州まで大移動(空路もしくは陸路で800km)。勝負の最終週は40.2kmの個人タイムトライアルで始まる。
様々なモータースポーツの開催地ナバラ・サーキットのホームストレートを発ち、いくつものコーナーをこなしてから幹線道路へ。州道1110号線と国道111号線を走って、ラ・リオハ州のログローニョにフィニッシュする。中盤にかけて起伏のあるワインディング区間があり、合計で300mほどを登るが、ここでは登坂力よりも平坦独走力がカギを握る。選手たちは1分ごと(最終30名は2分ごと)にスタートし、優勝タイムは48〜49分を想定。休息日明けだけに、リズムを失えば簡単に数分のタイムを失う可能性も。
9月6日(水)第17ステージ ビリャディエゴ~ロス・マチュコス 180.5km コースマップ
内陸のカスティーリャ・イ・レオン州から大西洋沿いのカンタブリア州まで北上。中盤に2級山岳ルナダ峠(長さ8.3km/平均5.7%)を越えてから一気に海岸近くまで高度を下げ、残り28kmから1級山岳アリサス峠(長さ10km/平均6%)の登坂に取り掛かる。最後に待つのは超級山岳ロス・マチュコス峠(長さ7.2km/平均8.7%)の山頂フィニッシュだ。
標高880mしかない山岳がカテゴリー超級である理由はその強烈な勾配にある。残り8.5km地点の集落を抜けると、そこからフィニッシュまでは道幅が3mに満たない農道のような峠道。序盤から最大勾配が26%に達する激坂であり、最大勾配では第20ステージのアングリル峠をも上回る。小刻みに勾配を変化させながらチームカーが前に上がれない急峻な狭路を選手たちは身をよじらせながら登ることになるだろう。さらに、部分的にコンクリートで舗装された路面は荒れ気味。残り4km地点から勾配は落ち着くが、それでも常時10%オーバーだ。石灰石に覆われた山々を眺める地元特産パシエガ牛(実際に放牧牛が多い)のモニュメント前でレースはフィニッシュを迎える。
9月7日(木)第18ステージ スアンセス~サント・トリビオ・デ・リエバナ 169km コースマップ
169kmコースに設定されたカテゴリー山岳は2級〜3級が4つ。カンタブリア州の標高600m級の峠を繋いでいく。いずれも登坂距離は5〜7kmで平均勾配は6〜7%。際立って険しい山岳は登場しないが、こういった警戒心を解きがちな中級山岳ステージでこそ大どんでん返しが起こりやすい。
最後は3級山岳サント・トリビオ・デ・リエバナ(長さ3.2km/平均6.4%)を駆け上がってフィニッシュ。前日の超級山岳とは異なり道幅のある整った登りで、修道院の前に引かれたフィニッシュラインに向かって残り2kmから9%の勾配を刻む。すでに総合上位と下位には大きなタイム差が付いているため、総合に関係しない大人数の逃げ切りが決まる可能性も高い。なお、2012年にコンタドールが独走し、総合優勝につながる大逆転を達成した第17ステージのフエンテ・デ山頂フィニッシュのコースとこの第18ステージのレイアウトは似通っている(当時のフィニッシュはさらに20kmほど山の奥に位置)。
9月8日(金)第19ステージ カソ~ヒホン 149.7km コースマップ
アストゥリアス州の山岳地帯を走って大西洋に面したヒホンを目指す149.7kmの短いステージ。序盤に登場する1級山岳コリャドナ峠(長さ7km/平均6.8%)では逃げ形成のための激しいアタック合戦が繰り広げられるだろう。何しろこの日もコースは逃げ切り向き。中盤からの3連続3級山岳はピュアスプリンターたちには厳しすぎる。
最後の3級山岳サンマルティン・デ・ウエルセス(長さ4.5km/平均7.2%)はフィニッシュの15.2km手前に位置。登りの中盤1kmの平均勾配が12%に達するため、翌日のアングリル決戦を前に揺さぶりをかけてくる総合上位陣も出てくるかもしれない。フィニッシュラインが引かれているのはヒホンの海岸通りだ。
9月9日(土)第20ステージ コルベラ・デ・アストゥリアス~アルト・デ・ラングリル 117.5km コースマップ
超級山岳アングリル峠がついに姿を現す。第20ステージは全長117.5kmと極端に短いが、獲得標高差は3,500mに達する。1級山岳コベルトリア峠(長さ8.1km/平均8.6%)と1級山岳コルダル峠(長さ5.7km/平均8.6%)で縮小したプロトンが、残り12.5km地点からアングリルの登坂をスタートさせる。
「ロードレースのオリンポス(神々が住む最高峰)」や「エル・インフェルノ(地獄)」と呼ばれる超級山岳アングリル峠(長さ12.5km/平均9.8%)の特徴は何と言ってもその猛烈な勾配だ。スペック的にはイタリアのモンテゾンコランやTOJ名物のあざみラインと同等。前半の5kmはどこにでもあるような至って普通の峠道だが、中腹の平坦区間を通過すると残り6km地点から「山羊ゾーン(山羊にしか登れないという意味)」が始まる。最大勾配は23.5%で、後半6kmの平均勾配は15%前後。20%の勾配が延々と続くような激坂で2017年の総合優勝者が決まる。
9月10日(日)第21ステージ アロヨモリノス~マドリード 117.6km コースマップ
アングリル決戦を終えた選手たちはその日のうちに500kmを陸路で移動。午後5時に、マドリードに向かう最終ステージが始まる。ツール・ド・フランスのパリ・シャンゼリゼと同様に、ブエルタも首都の目抜き通りでフィナーレを迎える。
グランツール最終日恒例のパレード走行を経て、リーダーチームを先頭にマドリードに凱旋。最後は5.6kmの周回コースを9周する。2つの90度コーナーと3つの180度ターンを含むT字型の平坦サーキットコースで主役を担うのは、厳しい山々を乗り越えてきたスプリンターたち。マドリードのど真ん中に位置するシベレス広場で第72代チャンピオンはマイヨロホを受け取る。
text:Kei Tsuji
8月29日(火)第10ステージ カラバカ・アニョ・フビラル2017~エルポソ・アリメンタシオン 164.8km コースマップ
大会最初の休息日を経てブエルタはムルシア州へ。いわゆるトランジションステージ(移動ステージ)だが、単純なスプリンター向きの平坦ステージにならないのがブエルタらしい。残り40kmを切ってから3級山岳モロン・デ・トタナ峠(長さ5.7km/平均5.7%)と1級山岳コリャド・ベルメホ(長さ7.7km/平均6.5%)が立て続けに登場する。
数字の8を描くようにして、残り56km地点でエルポソ・アリメンタシオンのフィニッシュラインを逆向きに通過して山岳地帯へ。3級と1級の山岳セットはスプリンターは生き残れない難易度であり、ずばり逃げ向きのコースレイアウトであると言える。逃げ切りが決まった場合は、逃げグループ内のステージ優勝争いとメイン集団内のマイヨロホ争いが同時進行することになる。休息日でリズムを崩して失速する選手が出てくるかもしれない。
8月30日(水)第11ステージ ロルカ~カラル・アルト天文台 187.5km コースマップ
ブエルタはイベリア半島最南端のアンダルシア州に入る。ビーチが連なる海抜0mのオーシャンロードから内陸に進路をとり、最終的に選手たちは標高2,120mまで登りきる。残り43km地点から本格的な登りが始まり、1級山岳ベレフィケ峠(長さ13.2km/平均8.6%)と1級山岳カラル・アルト天文台(長さ15.5km/平均5.9%)を連続してクリアする。
1級山岳ベレフィケ峠は前半から勾配がコンスタントに10%を超え、頂上手前には15%の急勾配区間も登場する。標高1,800mから一旦標高1,200mまで下ってから迎える1級山岳は、その名の通り標高2,120mのカラル・アルト天文台(ヨーロッパ最大3.5mの反射望遠鏡を保有)への山道。こちらも前半から10%前後の勾配を刻む登りで、中盤にかけて平坦区間を含む。残り2.2km地点から再び勾配が増し、最後は7%の勾配がフィニッシュラインまで続いている。1日の獲得標高差は今大会最大クラスの3,490mだ。
8月31日(木)第12ステージ モトリル~アンテケーラ 160.1km コースマップ
モトリルをスタートし、アンダルシア州の海岸線を西に向かう。ちょうどレースの折り返し地点で補給ポイントを過ぎると1級山岳レオン峠(長さ17.4km/平均4.9%)がスタート。その後さらに内陸へと歩み入り、2級山岳トルカル峠(長さ7.6km/平均7.0%)を経て「アンダルシアの心臓」と呼ばれるアンテケーラでフィニッシュを迎える。
スプリントポイントが2級山岳トルカル峠の中腹に設定されているところがブエルタらしい。2級山岳トルカル峠の頂上からアンテケーラまでは17.5km。序盤に形成された少人数グループの逃げ切りか、それとも逃げを吸収した小集団によるスプリントか。残り1kmを切るとフィニッシュラインまで2〜3%の勾配が続いている。年間平均325日が晴れというこの一帯は白い街並みが特徴だ。
9月1日(金)第13ステージ コイン~トマレス 198.4km コースマップ
山岳ステージと山岳ステージに挟まれたスプリンター向きの平坦ステージ。翌日から最終日前日までマイヨロホをかけた山岳&TT決戦が続くため、ピュアスプリンターが揃う集団スプリントはこのステージが最後になるだろう。すでに暑いスペインを2週間近く走っているため、この時点でピュアスプリンターの数は絞り込まれているかもしれない。
登場するカテゴリー山岳は序盤の3級山岳アルダレス峠だけ。ステージ後半はほぼフルフラットだ。アンダルシア州の州都セビリアに設定されたスプリントポイント(残り15.2km地点)を通過し、郊外のトマレスでフィニッシュ。残り4kmから高低差80mほどの登りをこなすが、スプリンターたちには問題ないレベルだと思われる。街中の連続コーナーやラウンドアバウトをこなして、道幅のある緩斜面でフィニッシュを迎える。
9月2日(土)第14ステージ エシハ~シエラ・デ・ラ・パンデラ 175km コースマップ
この第14ステージと第15ステージのアンダルシア2連続超級山頂フィニッシュでマイヨロホをかけた総合成績に激震が走るだろう。エシハをスタートする175kmコースにはカテゴリー山岳が3つ登場。3級、2級、超級と、階段状に標高と厳しさを上げていく。1日の獲得標高差は3,405m。気温が40度を超えるアンダルシア特有の強烈な暑さが選手たちにダメージを与えるだろう。
今大会最初の超級山頂フィニッシュである超級山岳シエラ・デ・ラ・パンデラ(長さ12km/平均7.3%)の登り口には、最大勾配23%のバルデペニャス・デ・ハエンの名物坂も組み込まれた。残り14.8km地点で登場するこのカテゴリーの付いていない「壁」でメイン集団が絞られた状態のまま、標高1,830mの超級山岳に向かう登りが始まる。コンスタントに勾配が10%を超える(最大18%)残り4km地点から活発なアタックがかかるはずだ。
9月3日(日)第15ステージ アルカラ・ラ・レアル~アルト・オヤ・デ・ラ・モラ 129.4km コースマップ
畳み掛けるように超級山岳が襲いかかる。第15ステージは短いコースに1級山岳が2つと超級山岳が1つ詰め込まれた。129.4kmという短さだが、獲得標高差は3,305mに達する。
最初の1級山岳ハザリャナス峠(長さ16.3km/平均5.5%)は中盤にかけて勾配が19〜22%を刻む激坂区間も登場。ここでメイン集団は一気に人数を減らすことになるだろう。レース時間が3時間半程度と短いため、タイムオーバーの猶予も短い。完走を目指すスプリンターたちにとっても厳しい1日になるのは間違いない。
後半の1級山岳プルケ峠(長さ8.5km/平均8%)は下り区間を含むため実質的な平均勾配は10%近い。そして最後は超級山岳オヤ・デ・ラ・モラ峠(長さ19.3km/5.6%)の長い長い登りが待っている。今大会の最高地点でもある標高2,510mのフィニッシュ地点は、冬場はヨーロッパ最南端のスキーリゾート地として、夏場は様々な競技の高地トレーニングの場として人気を博すシエラネバダ山脈の中心地だ。
9月4日(月)休息日
9月5日(火)第16ステージ シルクイト・デ・ナバラ~ログローニョ 40.2km(個人TT)コースマップ
休息日という名の移動日を挟んでブエルタはスペイン南部のアンダルシア州からスペイン北部のナバラ州まで大移動(空路もしくは陸路で800km)。勝負の最終週は40.2kmの個人タイムトライアルで始まる。
様々なモータースポーツの開催地ナバラ・サーキットのホームストレートを発ち、いくつものコーナーをこなしてから幹線道路へ。州道1110号線と国道111号線を走って、ラ・リオハ州のログローニョにフィニッシュする。中盤にかけて起伏のあるワインディング区間があり、合計で300mほどを登るが、ここでは登坂力よりも平坦独走力がカギを握る。選手たちは1分ごと(最終30名は2分ごと)にスタートし、優勝タイムは48〜49分を想定。休息日明けだけに、リズムを失えば簡単に数分のタイムを失う可能性も。
9月6日(水)第17ステージ ビリャディエゴ~ロス・マチュコス 180.5km コースマップ
内陸のカスティーリャ・イ・レオン州から大西洋沿いのカンタブリア州まで北上。中盤に2級山岳ルナダ峠(長さ8.3km/平均5.7%)を越えてから一気に海岸近くまで高度を下げ、残り28kmから1級山岳アリサス峠(長さ10km/平均6%)の登坂に取り掛かる。最後に待つのは超級山岳ロス・マチュコス峠(長さ7.2km/平均8.7%)の山頂フィニッシュだ。
標高880mしかない山岳がカテゴリー超級である理由はその強烈な勾配にある。残り8.5km地点の集落を抜けると、そこからフィニッシュまでは道幅が3mに満たない農道のような峠道。序盤から最大勾配が26%に達する激坂であり、最大勾配では第20ステージのアングリル峠をも上回る。小刻みに勾配を変化させながらチームカーが前に上がれない急峻な狭路を選手たちは身をよじらせながら登ることになるだろう。さらに、部分的にコンクリートで舗装された路面は荒れ気味。残り4km地点から勾配は落ち着くが、それでも常時10%オーバーだ。石灰石に覆われた山々を眺める地元特産パシエガ牛(実際に放牧牛が多い)のモニュメント前でレースはフィニッシュを迎える。
9月7日(木)第18ステージ スアンセス~サント・トリビオ・デ・リエバナ 169km コースマップ
169kmコースに設定されたカテゴリー山岳は2級〜3級が4つ。カンタブリア州の標高600m級の峠を繋いでいく。いずれも登坂距離は5〜7kmで平均勾配は6〜7%。際立って険しい山岳は登場しないが、こういった警戒心を解きがちな中級山岳ステージでこそ大どんでん返しが起こりやすい。
最後は3級山岳サント・トリビオ・デ・リエバナ(長さ3.2km/平均6.4%)を駆け上がってフィニッシュ。前日の超級山岳とは異なり道幅のある整った登りで、修道院の前に引かれたフィニッシュラインに向かって残り2kmから9%の勾配を刻む。すでに総合上位と下位には大きなタイム差が付いているため、総合に関係しない大人数の逃げ切りが決まる可能性も高い。なお、2012年にコンタドールが独走し、総合優勝につながる大逆転を達成した第17ステージのフエンテ・デ山頂フィニッシュのコースとこの第18ステージのレイアウトは似通っている(当時のフィニッシュはさらに20kmほど山の奥に位置)。
9月8日(金)第19ステージ カソ~ヒホン 149.7km コースマップ
アストゥリアス州の山岳地帯を走って大西洋に面したヒホンを目指す149.7kmの短いステージ。序盤に登場する1級山岳コリャドナ峠(長さ7km/平均6.8%)では逃げ形成のための激しいアタック合戦が繰り広げられるだろう。何しろこの日もコースは逃げ切り向き。中盤からの3連続3級山岳はピュアスプリンターたちには厳しすぎる。
最後の3級山岳サンマルティン・デ・ウエルセス(長さ4.5km/平均7.2%)はフィニッシュの15.2km手前に位置。登りの中盤1kmの平均勾配が12%に達するため、翌日のアングリル決戦を前に揺さぶりをかけてくる総合上位陣も出てくるかもしれない。フィニッシュラインが引かれているのはヒホンの海岸通りだ。
9月9日(土)第20ステージ コルベラ・デ・アストゥリアス~アルト・デ・ラングリル 117.5km コースマップ
超級山岳アングリル峠がついに姿を現す。第20ステージは全長117.5kmと極端に短いが、獲得標高差は3,500mに達する。1級山岳コベルトリア峠(長さ8.1km/平均8.6%)と1級山岳コルダル峠(長さ5.7km/平均8.6%)で縮小したプロトンが、残り12.5km地点からアングリルの登坂をスタートさせる。
「ロードレースのオリンポス(神々が住む最高峰)」や「エル・インフェルノ(地獄)」と呼ばれる超級山岳アングリル峠(長さ12.5km/平均9.8%)の特徴は何と言ってもその猛烈な勾配だ。スペック的にはイタリアのモンテゾンコランやTOJ名物のあざみラインと同等。前半の5kmはどこにでもあるような至って普通の峠道だが、中腹の平坦区間を通過すると残り6km地点から「山羊ゾーン(山羊にしか登れないという意味)」が始まる。最大勾配は23.5%で、後半6kmの平均勾配は15%前後。20%の勾配が延々と続くような激坂で2017年の総合優勝者が決まる。
9月10日(日)第21ステージ アロヨモリノス~マドリード 117.6km コースマップ
アングリル決戦を終えた選手たちはその日のうちに500kmを陸路で移動。午後5時に、マドリードに向かう最終ステージが始まる。ツール・ド・フランスのパリ・シャンゼリゼと同様に、ブエルタも首都の目抜き通りでフィナーレを迎える。
グランツール最終日恒例のパレード走行を経て、リーダーチームを先頭にマドリードに凱旋。最後は5.6kmの周回コースを9周する。2つの90度コーナーと3つの180度ターンを含むT字型の平坦サーキットコースで主役を担うのは、厳しい山々を乗り越えてきたスプリンターたち。マドリードのど真ん中に位置するシベレス広場で第72代チャンピオンはマイヨロホを受け取る。
text:Kei Tsuji
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