2017/07/19(水) - 20:23
いよいよ最終週を迎えたツール・ド・フランス。年々厳しさを増す警備体制を象徴するように、クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)には個人ボディガードが常に付き添っています。危険が及ばないか常に目を光らせている彼に、いくつか質問をぶつけてみました。
アルプス決戦の週が始まりました。山岳で驚くのは、観客の近さとその熱狂ぶり。どのスポーツをとってみても、この選手との近さはロードレースならではと言えるでしょう。手を伸ばせばすぐ届く距離を選手が走っていくのです。選手の表情、呼吸、汗、坂道なのにぐんぐんのぼっていくそのスピードに感動を覚えます。
しかし泥酔客や一部の心無い人々によって、選手に危険がおよぶ行為が増えていることは否めません。100年以上続くツール・ド・フランスというイベントは、スポーツの枠を超えており、そのような観客が増えることは仕方ない部分なのかもしれません。
かと言って、全長3500kmに及ぶ全ての沿道に、仕切りや柵や警備員を配置する、ということは、コスト面、交通規制面をとっても現実的ではありません。
昨年の第12ステージ、モンヴァントゥーにおいて発生した、クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)のランニング事件も記憶に新しいところです。かつてフルームのアシストを務めていたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)も、沿道の観客から殴られたと語っていますし、2015年には、観客に尿をかけられるショッキングなアクシデントもあったことから、フルームには専属のボディガードがつくようになりました。
そんなフルームのボディガードマンの名前は、ファビアンさん(フルネームは勘弁してほしいとのことでした)。スキンヘッドに黒いサングラスと口ひげがトレードマークで、タトゥーも入った腕は太くて、みるからに強面で屈強そう。スタート地点ではフルームと一緒にサイン台へ走り、フィニッシュでもフィニッシュ直後からポディウム、チームバスに戻るまでつきっきりです。はじめはチームスタッフかと思っていたのですが、A.S.O.から要請を受けて派遣されているセキュリティー会社のスタッフだそう。そんなファビアンさんに話を聞いてみました。
ーいつからフルームのボディガードを務めているのですか?どこから派遣されてきているのでしょうか?
2016年からです。派遣要請はA.S.O.からです。正確には、A.S.O.からのオーダーを受けて、フランスのEPRというセキュリティーの会社から派遣されてきています。
ーボディガードという仕事は非常に大変なように映ります。
タフではないと務まりません。例えば移動する時も基本的にフルームは自転車で、自分はランニングですから。サイン台へ向かうときなどはフルームの荷物を背負い、変な観客が寄ってこないか、怪しい物はいないか等、まわりに目を光らせながら走ります。普段から鍛えていますが、バイクに乗ったフルームは速くて大変です(笑)
ーフルームはどんな人ですか?
いつも穏やかで、僕に対してもすごく気を遣ってくれます。彼はとてもジェントルマンで常に優しいんです。マイヨジョーヌをファビオ・アル(イタリア、アスタナ)に譲ってしまった時でさえも、いつもと変わらずでした。
ーこれまで「危ないな」等、ハッとしたことはありましたか?
幸い今年はありませんね。以前、フルームに心ない観客からのアクシデントがあってから、このボディガードが採用されているのですから、選手を守ることは大切な役目だと思っています。
ー1日の仕事の内容は?
フルームが朝ホテルから出て、夜ホテルに戻るまでが僕の仕事時間。スタートやフィニッシュ地点でフルームがチームバスに入っている間も、バスの周りを監視しています。バスを降りて、ホテルへ出入りするときも気を抜けません。
ーファビアンさんはロードレースの知識はこれまであったのですか?
ロードレースは好きでよく見ていました。実は2010年にランス・アームストロングのボディガードも務めていましたよ。ちなみにランスとフルームは全然違って、ランスはアメリカンです。少し気分屋でしたかね。でも、その年は大きな事件もなくて安心したことを覚えています。
フルームのボディガードに限らず、ツール・ド・フランスでは2015年のパリ同時多発テロ事件以来、かなりセキュリティーが厳しくなっています。スタートとフィニッシュでのコントロールチェックポイントでは必ずIDのチェックが入り、ヴィラージュやプレスセンター入口でもIDのチェックのほか、かばんの中身も検査され、黄色のタグが貼られます。拳銃を抱え重装備の警備員が、警察犬と一緒に不審な人がいないか常に目を光らせています。今日から始まる山岳ステージではVIPの来場も予定されているそうです。さらに警備が強化されることでしょう。
text&photo:Seiko.Meguro
筆者プロフィール:目黒 誠子(めぐろせいこ)
2006年ジャパンカップサイクルロードレースに業務で携わってからロードレースの世界に魅了される。2014年よりツアー・オブ・ジャパンでは海外チームの招待・連絡を担当していた。ロードバイクでのサイクリングを楽しむ。趣味はバラ栽培と鑑賞。航空会社の広報系の仕事にも携わり、折り紙飛行機の指導員という変わりダネ資格を持つ。ライター、自転車とまちづくり・クリーン工房アドバイザー、ジャパン・マルベロ・フォーラム代表。
https://www.facebook.com/maruvelo/
アルプス決戦の週が始まりました。山岳で驚くのは、観客の近さとその熱狂ぶり。どのスポーツをとってみても、この選手との近さはロードレースならではと言えるでしょう。手を伸ばせばすぐ届く距離を選手が走っていくのです。選手の表情、呼吸、汗、坂道なのにぐんぐんのぼっていくそのスピードに感動を覚えます。
しかし泥酔客や一部の心無い人々によって、選手に危険がおよぶ行為が増えていることは否めません。100年以上続くツール・ド・フランスというイベントは、スポーツの枠を超えており、そのような観客が増えることは仕方ない部分なのかもしれません。
かと言って、全長3500kmに及ぶ全ての沿道に、仕切りや柵や警備員を配置する、ということは、コスト面、交通規制面をとっても現実的ではありません。
昨年の第12ステージ、モンヴァントゥーにおいて発生した、クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)のランニング事件も記憶に新しいところです。かつてフルームのアシストを務めていたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)も、沿道の観客から殴られたと語っていますし、2015年には、観客に尿をかけられるショッキングなアクシデントもあったことから、フルームには専属のボディガードがつくようになりました。
そんなフルームのボディガードマンの名前は、ファビアンさん(フルネームは勘弁してほしいとのことでした)。スキンヘッドに黒いサングラスと口ひげがトレードマークで、タトゥーも入った腕は太くて、みるからに強面で屈強そう。スタート地点ではフルームと一緒にサイン台へ走り、フィニッシュでもフィニッシュ直後からポディウム、チームバスに戻るまでつきっきりです。はじめはチームスタッフかと思っていたのですが、A.S.O.から要請を受けて派遣されているセキュリティー会社のスタッフだそう。そんなファビアンさんに話を聞いてみました。
ーいつからフルームのボディガードを務めているのですか?どこから派遣されてきているのでしょうか?
2016年からです。派遣要請はA.S.O.からです。正確には、A.S.O.からのオーダーを受けて、フランスのEPRというセキュリティーの会社から派遣されてきています。
ーボディガードという仕事は非常に大変なように映ります。
タフではないと務まりません。例えば移動する時も基本的にフルームは自転車で、自分はランニングですから。サイン台へ向かうときなどはフルームの荷物を背負い、変な観客が寄ってこないか、怪しい物はいないか等、まわりに目を光らせながら走ります。普段から鍛えていますが、バイクに乗ったフルームは速くて大変です(笑)
ーフルームはどんな人ですか?
いつも穏やかで、僕に対してもすごく気を遣ってくれます。彼はとてもジェントルマンで常に優しいんです。マイヨジョーヌをファビオ・アル(イタリア、アスタナ)に譲ってしまった時でさえも、いつもと変わらずでした。
ーこれまで「危ないな」等、ハッとしたことはありましたか?
幸い今年はありませんね。以前、フルームに心ない観客からのアクシデントがあってから、このボディガードが採用されているのですから、選手を守ることは大切な役目だと思っています。
ー1日の仕事の内容は?
フルームが朝ホテルから出て、夜ホテルに戻るまでが僕の仕事時間。スタートやフィニッシュ地点でフルームがチームバスに入っている間も、バスの周りを監視しています。バスを降りて、ホテルへ出入りするときも気を抜けません。
ーファビアンさんはロードレースの知識はこれまであったのですか?
ロードレースは好きでよく見ていました。実は2010年にランス・アームストロングのボディガードも務めていましたよ。ちなみにランスとフルームは全然違って、ランスはアメリカンです。少し気分屋でしたかね。でも、その年は大きな事件もなくて安心したことを覚えています。
フルームのボディガードに限らず、ツール・ド・フランスでは2015年のパリ同時多発テロ事件以来、かなりセキュリティーが厳しくなっています。スタートとフィニッシュでのコントロールチェックポイントでは必ずIDのチェックが入り、ヴィラージュやプレスセンター入口でもIDのチェックのほか、かばんの中身も検査され、黄色のタグが貼られます。拳銃を抱え重装備の警備員が、警察犬と一緒に不審な人がいないか常に目を光らせています。今日から始まる山岳ステージではVIPの来場も予定されているそうです。さらに警備が強化されることでしょう。
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筆者プロフィール:目黒 誠子(めぐろせいこ)
2006年ジャパンカップサイクルロードレースに業務で携わってからロードレースの世界に魅了される。2014年よりツアー・オブ・ジャパンでは海外チームの招待・連絡を担当していた。ロードバイクでのサイクリングを楽しむ。趣味はバラ栽培と鑑賞。航空会社の広報系の仕事にも携わり、折り紙飛行機の指導員という変わりダネ資格を持つ。ライター、自転車とまちづくり・クリーン工房アドバイザー、ジャパン・マルベロ・フォーラム代表。
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