2017/07/18(火) - 15:53
ツール・ド・フランス第2回めの休息日をオーヴェルニュ地方の巡礼地ル・ピュイ=アン=ヴレで迎えた新城幸也(バーレーン・メリダ)に話を聞いた。残すところ6ステージ、総合112位につけるユキヤはパリまでをどう走るのか?意気込みを聞いた。
リラックスした表情でインタビューに応じる新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Makoto.AYANO
ー 2週間が終わりましたが、率直な感想は?
とくに2週目はあっという間でしたね。1週目はいつもどおりツール特有のごちゃごちゃしたことがあって、2週目は何かできると思っていたんですが、チームとしての成果もあげられませんでした。
ー 今日発表された賞金総額ではバーレーン・メリダが最下位でした。
でしょうね(苦笑)。何もしていないですからね。とうとう昨日はチームカー序列も最後になりました。
ー チームとして目標を失っている感じでしょうか?
2週間のツールを終えての日焼けが肌に刻まれる photo:Makoto.AYANOいえいえ、目標は失っていなくて、早いうちにヨン・イザギレが居なくなって(落車でリタイア)しまったのが痛いんです。彼がこのチームで唯一総合上位陣に絡める選手だったんです。それからコルブレッリでスプリントを狙うことにスイッチしましたが、ツールで勝つのは難しく...。上手く行かずで今に至っていますが、決して諦めているわけじゃないんです。
今のところチームで逃げにのせられたのも登りあるステージです。(スプリントになる)平坦ステージの逃げは必ず捕まっていますから、チームとしては極力無駄な力は使っていないんです。賢くはいっているんですが、成績は出せていないということですね。まだツールは6日残っています。TTを抜くとチャンスが有るのは実質4日ほどなので、そこで見せ場をつくるしかないです。ガンバリます。
ー アルプス山岳の厳しい最終週です。どういったことが狙えるでしょうか?
ステージ優勝を狙いますし、シャンゼリゼこそコルブレッリで勝てるかもしれない。それはやってみないとわからないです。チームメイト任せではないですが、最後の1週でクライマーたちが頑張ってくれるかもしれないし。明日のステージも山で逃げができるような展開だときついですが、スタートからのアタック合戦になれば挑戦しますよ。今まで脚を使わずにきたので、これからは攻撃あるのみです。
ー これまでの「少人数の逃げだったら乗らない」というのはフィリップ(モデュイ)監督の指示ですか?
ル・ピュイ・アン・ヴレのホテルで行われたインタビューは終始和やかな雰囲気 photo:Makoto.AYANOそうです。3人ぐらいでアタックして行ってもしょうがない(逃げ切れない)し、行くメンバーも見極めないといけない。デヘントとか引ける選手が入った逃げには乗っていこう、という。と言っても激しいアタック合戦の中でなかなか選べないですが。
キッテルらの大型選手が入った逃げに加わったディエゴ・ウリッシ(UAEチームエミレーツ/昨年までチームメイト)が死に体で集団に戻ってきた日がありました。あの逃げに入った登れる選手でも、平坦でキッテルらに引きずられると脚が削られてしまい、逃げ切れなくなってしまうんです。だから難しいところなんです。
ー 今まで所属したチームに比べて、今のチーム戦略についてはどう思いますか?
チーム戦略というよりは、予期せずエースが不在になってしまってのツールなんです。プレッシャーもないぶん成績も出しにくいな、というのはあります。
ー 自身の総合成績については?
余裕と同時に、残されたステージで何かしたいという闘志を感じる photo:Makoto.AYANO今、総合112位ぐらい? 順位はぜんぜん気にしていない。いつも通りですね(笑)。走りもいつもな感じですね。なかなか逃げれないのは悔しいですけれどね。一日ぐらいは逃げたいんですが、張り切って行った日はあるんですが、決まらなかったですね。運もあるのでしかたがないです。
ー アルプスとピレネーの順番や並びは気にしますか? 今までではデータ上では第7ステージ(ナントゥア〜シャンベリー)がいちばん厳しかったようです。
その日は確かにキツかったです。ルクセンブルグのステージもじつは厳しかった。前半からなにげにキツかったんです。でもこれからがきつそうですね。後半にこんな山場を集中的にもってこられても、という感じです。明後日の水曜のガリビエ峠は 雨になりそうです。超級、1級、超級、そして雨。アルプスの登りは20kmとか続いて長いですからね。厳しくなりそうです。
ー 走りながらパワーメーターなどデータをチェックしていますか?
データなどはあまり見ないんです。レース中はほとんど見ていないですね。とにかく前に着いていかないといけないですからね。自分ひとりで走っているわけじゃないですから。
ー 今の疲労具合は?
今回のツールに関して言えば大きな疲れも無いですし、落車もないですし、今のところは順調にきていますね。
ー とても楽そうに見えるんですが、それは誤解ですか?
いえ、本当です。リーダーがいないぶん、そのぶんの仕事が無いというだけで、楽になっています。イザギレがもし居たら総合5位ぐらいを走れる選手なので、毎日スカイやアージェードゥーゼルと戦わないといけなかった。それを考えると、自分の成績のために走れるツールになっているんですが、今年のツールに限っては平坦は平坦、登りは登りと、ステージの性格がきっぱり分かれすぎている。
ー まだ逃げに乗るというモチベーションは残していますか?
はい。もちろんです。明日から必殺技を出します。300g軽い新型バイク(メリダREACTO)を使います。良く走るバイクですからね。走りも違ってくるかもしれませんよ!
ー チームに総合成績を狙える選手が居なくなってしまったことは?
「日本のファンって今年、毎日スタートからフィニッシュまで放送を観ているんですか!?」 photo:Makoto.AYANOそれはもう残念です。イサギレのためにフィリップ監督はじめ春先のアルデンヌクラシックからほぼ同じメンバーで走ってきたので、皆がコミュニケーションが取れているし、それぞれの役割分担もしっかりできている。そのリーダーがいなくなってしまったら...。
ー これからの残りステージで、この日はチャンスと決めている日は?
明日しかないでしょう。山岳が3級、4級で平坦ゴールですから。アタックするなら明日かマルセイユの前日(19ステージ)でしょうね。超級山岳の日は行っても戻ってきちゃいます。
ー もちろん日本のファンとしては新城選手が逃げて勝つ姿を観たいと思っていますが、チームとして勝つことを考えると、チャンスはどこに残っていますか?
シャンゼリゼでしょうね。でも監督は毎日皆に火を点けています。決して「シャンゼリでのためにとっておけ」ではないです。ソニー(コルブレッリ)はアシストが何もしなくても6位に入ったステージもありました。彼も驚くような力を発揮しますからまだまだ最後まで諦めることはできないです。
ー 沿道に日の丸が増えてきたようです。7年前と比べると日本人の応援は?
確かに日の丸が増えましたね。あと自転車でコースを回って応援する人も増えましたね。だいたい皆さん日の丸を持ってきているので、目につきますね。日の丸が標準装備になった?(笑)平坦路でも大きな国旗に気づきました。見つけるとボトルを投げてあげたくなります。
ー まだ余裕があるということですが、逆に言うと力を出し切れていないということに不満はありますか?
力が残っていなくて、身体を引きずるようにしているよりはマシかな、と思います。思い通りにならない身体で苦痛を感じながら走るよりも、自分の思い通りに走れる、自分のために何かしようと思える今のほうがまだ幸せかな、と。身体が動かないと悔しさしか溜まっていかないですから。自分の動きたいところで動けて、ただ今一歩のところで力が足りなくて、逃げに乗れなくて、仕方なく一日を集団のなかで過ごす、ということになっているので。
逃げに乗るときのMAXパワーがもう少し高くて逃げに入ってしまえれば一日使い切ることができるんですが、それに今一歩で届かない悔しさです。そうなると気持ちを切り替えて、また次の日に狙おう、とするしかない。
ー プロトンのなかでの人間関係は変わりましたか?
移籍するからでしょう、変わりますね。今までイタリア人とは話さなかったのが、イタリアチームを経験して、今その元チームメイトが各チームに散らばって、多くのチームと話すようになった。顔見知りが集団内に増えましたね。そのつながりでチームとの接点が増えた。ユーロップカーはフランス色が強かったですからね。前の方に居るチームスカイとかはあまり会わないですが(笑)。
ー このままじゃ終われない、というような気持ちがありますか?
日の丸をあしらった扇子はシャンゼリゼでの最終日を見越した「仕込み」だ photo:Makoto.AYANOありますね。あと1週間弱、全開で頑張るしかないです。そうしなければ今年のツールは終わってしまう。このチームにとっての最初のツール・ド・フランスでもありますし。何かをしたいですね。イサギレはまだ回復していないので自転車にも乗れていないそうです。
チームの雰囲気はいいですし、皆が何もしていないというとこではないんです。0km地点も後ろに居るわけじゃなく、前で展開しながら逃げに乗れていないということなんです。いつか順番は回ってきます。
ー 総合争いが拮抗していてやりにくい、ということはない?
それは無いです。とにかく結果を出したいですね。
ー 今日は休息日で、休息日ならではのことをした、ということは?
とくに何もしていないですね。ビールも飲んでいないし。街全体のお祭り気分を感じますが、いつもどおりです。良く寝て、トレーニングに出て、マッサージを受けて、休む。J SPORTSの生放送に顔を出した、というのが唯一の違いですね。今年は皆さんスタートからTVを観ていてくれているようなので、頑張っている姿を観てもらえるようにしたいですね。
ル・ピュイ・アン・ヴレの街はツールを迎えてお祭り騒ぎだ photo:Makoto.AYANO
街中ではミニコンサートなども開催されていた
photo&text:Makoto.AYANO
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ー 2週間が終わりましたが、率直な感想は?
とくに2週目はあっという間でしたね。1週目はいつもどおりツール特有のごちゃごちゃしたことがあって、2週目は何かできると思っていたんですが、チームとしての成果もあげられませんでした。
ー 今日発表された賞金総額ではバーレーン・メリダが最下位でした。
でしょうね(苦笑)。何もしていないですからね。とうとう昨日はチームカー序列も最後になりました。
ー チームとして目標を失っている感じでしょうか?
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今のところチームで逃げにのせられたのも登りあるステージです。(スプリントになる)平坦ステージの逃げは必ず捕まっていますから、チームとしては極力無駄な力は使っていないんです。賢くはいっているんですが、成績は出せていないということですね。まだツールは6日残っています。TTを抜くとチャンスが有るのは実質4日ほどなので、そこで見せ場をつくるしかないです。ガンバリます。
ー アルプス山岳の厳しい最終週です。どういったことが狙えるでしょうか?
ステージ優勝を狙いますし、シャンゼリゼこそコルブレッリで勝てるかもしれない。それはやってみないとわからないです。チームメイト任せではないですが、最後の1週でクライマーたちが頑張ってくれるかもしれないし。明日のステージも山で逃げができるような展開だときついですが、スタートからのアタック合戦になれば挑戦しますよ。今まで脚を使わずにきたので、これからは攻撃あるのみです。
ー これまでの「少人数の逃げだったら乗らない」というのはフィリップ(モデュイ)監督の指示ですか?
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キッテルらの大型選手が入った逃げに加わったディエゴ・ウリッシ(UAEチームエミレーツ/昨年までチームメイト)が死に体で集団に戻ってきた日がありました。あの逃げに入った登れる選手でも、平坦でキッテルらに引きずられると脚が削られてしまい、逃げ切れなくなってしまうんです。だから難しいところなんです。
ー 今まで所属したチームに比べて、今のチーム戦略についてはどう思いますか?
チーム戦略というよりは、予期せずエースが不在になってしまってのツールなんです。プレッシャーもないぶん成績も出しにくいな、というのはあります。
ー 自身の総合成績については?
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ー アルプスとピレネーの順番や並びは気にしますか? 今までではデータ上では第7ステージ(ナントゥア〜シャンベリー)がいちばん厳しかったようです。
その日は確かにキツかったです。ルクセンブルグのステージもじつは厳しかった。前半からなにげにキツかったんです。でもこれからがきつそうですね。後半にこんな山場を集中的にもってこられても、という感じです。明後日の水曜のガリビエ峠は 雨になりそうです。超級、1級、超級、そして雨。アルプスの登りは20kmとか続いて長いですからね。厳しくなりそうです。
ー 走りながらパワーメーターなどデータをチェックしていますか?
データなどはあまり見ないんです。レース中はほとんど見ていないですね。とにかく前に着いていかないといけないですからね。自分ひとりで走っているわけじゃないですから。
ー 今の疲労具合は?
今回のツールに関して言えば大きな疲れも無いですし、落車もないですし、今のところは順調にきていますね。
ー とても楽そうに見えるんですが、それは誤解ですか?
いえ、本当です。リーダーがいないぶん、そのぶんの仕事が無いというだけで、楽になっています。イザギレがもし居たら総合5位ぐらいを走れる選手なので、毎日スカイやアージェードゥーゼルと戦わないといけなかった。それを考えると、自分の成績のために走れるツールになっているんですが、今年のツールに限っては平坦は平坦、登りは登りと、ステージの性格がきっぱり分かれすぎている。
ー まだ逃げに乗るというモチベーションは残していますか?
はい。もちろんです。明日から必殺技を出します。300g軽い新型バイク(メリダREACTO)を使います。良く走るバイクですからね。走りも違ってくるかもしれませんよ!
ー チームに総合成績を狙える選手が居なくなってしまったことは?
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明日しかないでしょう。山岳が3級、4級で平坦ゴールですから。アタックするなら明日かマルセイユの前日(19ステージ)でしょうね。超級山岳の日は行っても戻ってきちゃいます。
ー もちろん日本のファンとしては新城選手が逃げて勝つ姿を観たいと思っていますが、チームとして勝つことを考えると、チャンスはどこに残っていますか?
シャンゼリゼでしょうね。でも監督は毎日皆に火を点けています。決して「シャンゼリでのためにとっておけ」ではないです。ソニー(コルブレッリ)はアシストが何もしなくても6位に入ったステージもありました。彼も驚くような力を発揮しますからまだまだ最後まで諦めることはできないです。
ー 沿道に日の丸が増えてきたようです。7年前と比べると日本人の応援は?
確かに日の丸が増えましたね。あと自転車でコースを回って応援する人も増えましたね。だいたい皆さん日の丸を持ってきているので、目につきますね。日の丸が標準装備になった?(笑)平坦路でも大きな国旗に気づきました。見つけるとボトルを投げてあげたくなります。
ー まだ余裕があるということですが、逆に言うと力を出し切れていないということに不満はありますか?
力が残っていなくて、身体を引きずるようにしているよりはマシかな、と思います。思い通りにならない身体で苦痛を感じながら走るよりも、自分の思い通りに走れる、自分のために何かしようと思える今のほうがまだ幸せかな、と。身体が動かないと悔しさしか溜まっていかないですから。自分の動きたいところで動けて、ただ今一歩のところで力が足りなくて、逃げに乗れなくて、仕方なく一日を集団のなかで過ごす、ということになっているので。
逃げに乗るときのMAXパワーがもう少し高くて逃げに入ってしまえれば一日使い切ることができるんですが、それに今一歩で届かない悔しさです。そうなると気持ちを切り替えて、また次の日に狙おう、とするしかない。
ー プロトンのなかでの人間関係は変わりましたか?
移籍するからでしょう、変わりますね。今までイタリア人とは話さなかったのが、イタリアチームを経験して、今その元チームメイトが各チームに散らばって、多くのチームと話すようになった。顔見知りが集団内に増えましたね。そのつながりでチームとの接点が増えた。ユーロップカーはフランス色が強かったですからね。前の方に居るチームスカイとかはあまり会わないですが(笑)。
ー このままじゃ終われない、というような気持ちがありますか?
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ー 総合争いが拮抗していてやりにくい、ということはない?
それは無いです。とにかく結果を出したいですね。
ー 今日は休息日で、休息日ならではのことをした、ということは?
とくに何もしていないですね。ビールも飲んでいないし。街全体のお祭り気分を感じますが、いつもどおりです。良く寝て、トレーニングに出て、マッサージを受けて、休む。J SPORTSの生放送に顔を出した、というのが唯一の違いですね。今年は皆さんスタートからTVを観ていてくれているようなので、頑張っている姿を観てもらえるようにしたいですね。
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