2017/06/10(土) - 21:20
6月10日から18日までの9日間、スイスで第81回ツール・ド・スイス(UCIワールドツアー)が開催される。クリテリウム・デュ・ドーフィネと肩を並べるもう一つのツール・ド・フランス前哨戦をプレビューします。
標高2,780mの難関山岳と最終TTで総合争いは決着
同時期開催のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並んで、ツール・ド・フランスの重要な前哨戦として知られるツール・ド・スイス。7月のツールを狙うオールラウンダーやスプリンターたちがスイスに集結する。
その歴史は古く、第1回大会が開催されたのは今から84年前の1933年まで遡る。ドーフィネよりも14年も歴史が長く、今年で開催81回目。全9ステージで争われ、歴史だけではなく開催期間もドーフィネよりも長い。かつては2週間の日程で行なわれていたことから「第4のグランツール」とも呼ばれていた。レースの舞台となるのは九州本島よりも少し大きいスイス全域で、今年も隣国オーストリアに足を伸ばす。
初日はスイス最大の都市チューリッヒの南30kmに位置するシャムを発着する6kmの個人タイムトライアル。距離の短さから総合成績は大きく影響せず、プロローグハンターとスプリンターがリーダージャージ争奪戦を繰り広げるだろう。翌日の第2ステージもスタートとフィニッシュがシャムの周回コースで行われ、4回登場する2級山岳ホルベン(登坂距離3.8km/平均6.1%)で絞られた集団によるスプリントが濃厚だ。ベルンにフィニッシュする第3ステージはスプリンター向きだが、2016年のツール第16ステージと似通った登りレイアウトが登場するため単純なスプリントステージではない。
ベルンから南下し、超級山岳ヴィラール=シュル=オロン(登坂距離10km/平均7.5%)にフィニッシュする第4ステージが今大会最初の山岳決戦の舞台となる。イタリア語圏を走る第5ステージと最終日前日の第8ステージは再びスプリンター向きだ。超級山岳サンベルナルディーノ(登坂距離29.1km/平均5.8%)と超級山岳アルブラパス(登坂距離22.6km/平均5.8%)が登場する第6ステージは獲得標高差4,000mの難関山岳コース。山頂フィニッシュではないが、標高2,315mの超級山岳アルブラパスが残り9.3km地点に登場するため総合争いが動くことは間違いない。
そして今大会最難関の山岳が第7ステージに登場する。フィニッシュ地点の超級山岳ティーフェンバッハ氷河(登坂距離11.7km/平均10.5%)は標高2,780mで、あのイズラン峠(標高2,770m)やステルヴィオ峠(標高2,757m)よりも標高がある。しかも空気の薄さに加えて平均勾配が10%を超えるため、トップ選手であっても平均登坂スピードが15km/h程度までしか上がらない。ここでリードを得たクライマーに対し、最終日の28.6km個人タイムトライアルでTTスペシャリストが挽回する形で総合争いはクライマックスを迎える。
ツール・ド・スイス2017ステージリスト
6月10日(土)第1ステージ シャム〜シャム 6km(個人TT)
6月11日(日)第2ステージ シャム〜シャム 172.7km
6月12日(月)第3ステージ メンツィケン〜ベルン 159.3km
6月13日(火)第4ステージ ベルン〜ヴィラール=シュル=オロン 143.2km(山頂)
6月14日(水)第5ステージ ベー〜チェヴィオ 222km
6月15日(木)第6ステージ ロカルノ〜ラ・プント 166.7km
6月16日(金)第7ステージ ツェルネッツ〜ゾルデン(オーストリア)166.3km(山頂)
6月17日(土)第8ステージ シャフハウゼン〜シャフハウゼン 100km
6月18日(日)第9ステージ シャフハウゼン〜シャフハウゼン 28.6km(個人TT)
ジロに続いてデュムランvsクライマーの戦いに?サガンやジルベールも出場
ジロ・デ・イタリアで総合優勝を飾ってすぐハンマーシリーズに出場し、短い休養期間を経てトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)がレースに復帰する。デュムランはツールに出場しないが、ジロから続く好調さを武器にスイスで結果を残したい考え。デュムランは2015年大会で2つの個人TTを制するとともに超級山岳レッテンバッハ氷河(標高2,669m)の山頂フィニッシュでクライマーに混ざって10位。最終的に総合3位の成績を残している。
2016年大会を制したミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)はタイトル防衛をかけて出場。同大会2位のヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)や、2015年総合優勝者シモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)ももちろん総合優勝候補に名前が挙がる。
コロンビアンクライマーとしては、ディフェンディングチャンピオンのロペスの他にも、ハンマーシリーズで圧倒的な登坂力を披露したカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター)やヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、トレック・セガフレード)、ダルウィン・アタプマ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、セバスティアン・エナオ(コロンビア、チームスカイ)らが揃う。
スイス最大のステージレースだけに、セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、エフデジ)やマティアス・フランク(スイス、アージェードゥーゼール)といった地元勢のモチベーションも高いだろう。2012年から大会3連覇を果たしたルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)やティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)、ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)はジロからの連戦組だ。
世界王者ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は2011年から7年連続スイス出場。サガンはこれまで毎年欠かさずステージ優勝を飾っており、通算成績はステージ13勝におよぶ。脚質の似たグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)とともにツール前の仕上がり具合が気になるところ。
平坦ステージではジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)やニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)、マグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)、ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)といったピュアスプリンターたちがチャンスを狙ってくる。
text:Kei Tsuji
標高2,780mの難関山岳と最終TTで総合争いは決着
同時期開催のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並んで、ツール・ド・フランスの重要な前哨戦として知られるツール・ド・スイス。7月のツールを狙うオールラウンダーやスプリンターたちがスイスに集結する。
その歴史は古く、第1回大会が開催されたのは今から84年前の1933年まで遡る。ドーフィネよりも14年も歴史が長く、今年で開催81回目。全9ステージで争われ、歴史だけではなく開催期間もドーフィネよりも長い。かつては2週間の日程で行なわれていたことから「第4のグランツール」とも呼ばれていた。レースの舞台となるのは九州本島よりも少し大きいスイス全域で、今年も隣国オーストリアに足を伸ばす。
初日はスイス最大の都市チューリッヒの南30kmに位置するシャムを発着する6kmの個人タイムトライアル。距離の短さから総合成績は大きく影響せず、プロローグハンターとスプリンターがリーダージャージ争奪戦を繰り広げるだろう。翌日の第2ステージもスタートとフィニッシュがシャムの周回コースで行われ、4回登場する2級山岳ホルベン(登坂距離3.8km/平均6.1%)で絞られた集団によるスプリントが濃厚だ。ベルンにフィニッシュする第3ステージはスプリンター向きだが、2016年のツール第16ステージと似通った登りレイアウトが登場するため単純なスプリントステージではない。
ベルンから南下し、超級山岳ヴィラール=シュル=オロン(登坂距離10km/平均7.5%)にフィニッシュする第4ステージが今大会最初の山岳決戦の舞台となる。イタリア語圏を走る第5ステージと最終日前日の第8ステージは再びスプリンター向きだ。超級山岳サンベルナルディーノ(登坂距離29.1km/平均5.8%)と超級山岳アルブラパス(登坂距離22.6km/平均5.8%)が登場する第6ステージは獲得標高差4,000mの難関山岳コース。山頂フィニッシュではないが、標高2,315mの超級山岳アルブラパスが残り9.3km地点に登場するため総合争いが動くことは間違いない。
そして今大会最難関の山岳が第7ステージに登場する。フィニッシュ地点の超級山岳ティーフェンバッハ氷河(登坂距離11.7km/平均10.5%)は標高2,780mで、あのイズラン峠(標高2,770m)やステルヴィオ峠(標高2,757m)よりも標高がある。しかも空気の薄さに加えて平均勾配が10%を超えるため、トップ選手であっても平均登坂スピードが15km/h程度までしか上がらない。ここでリードを得たクライマーに対し、最終日の28.6km個人タイムトライアルでTTスペシャリストが挽回する形で総合争いはクライマックスを迎える。
ツール・ド・スイス2017ステージリスト
6月10日(土)第1ステージ シャム〜シャム 6km(個人TT)
6月11日(日)第2ステージ シャム〜シャム 172.7km
6月12日(月)第3ステージ メンツィケン〜ベルン 159.3km
6月13日(火)第4ステージ ベルン〜ヴィラール=シュル=オロン 143.2km(山頂)
6月14日(水)第5ステージ ベー〜チェヴィオ 222km
6月15日(木)第6ステージ ロカルノ〜ラ・プント 166.7km
6月16日(金)第7ステージ ツェルネッツ〜ゾルデン(オーストリア)166.3km(山頂)
6月17日(土)第8ステージ シャフハウゼン〜シャフハウゼン 100km
6月18日(日)第9ステージ シャフハウゼン〜シャフハウゼン 28.6km(個人TT)
ジロに続いてデュムランvsクライマーの戦いに?サガンやジルベールも出場
ジロ・デ・イタリアで総合優勝を飾ってすぐハンマーシリーズに出場し、短い休養期間を経てトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)がレースに復帰する。デュムランはツールに出場しないが、ジロから続く好調さを武器にスイスで結果を残したい考え。デュムランは2015年大会で2つの個人TTを制するとともに超級山岳レッテンバッハ氷河(標高2,669m)の山頂フィニッシュでクライマーに混ざって10位。最終的に総合3位の成績を残している。
2016年大会を制したミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)はタイトル防衛をかけて出場。同大会2位のヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)や、2015年総合優勝者シモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)ももちろん総合優勝候補に名前が挙がる。
コロンビアンクライマーとしては、ディフェンディングチャンピオンのロペスの他にも、ハンマーシリーズで圧倒的な登坂力を披露したカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター)やヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、トレック・セガフレード)、ダルウィン・アタプマ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、セバスティアン・エナオ(コロンビア、チームスカイ)らが揃う。
スイス最大のステージレースだけに、セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、エフデジ)やマティアス・フランク(スイス、アージェードゥーゼール)といった地元勢のモチベーションも高いだろう。2012年から大会3連覇を果たしたルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)やティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)、ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)はジロからの連戦組だ。
世界王者ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は2011年から7年連続スイス出場。サガンはこれまで毎年欠かさずステージ優勝を飾っており、通算成績はステージ13勝におよぶ。脚質の似たグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)とともにツール前の仕上がり具合が気になるところ。
平坦ステージではジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)やニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)、マグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)、ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)といったピュアスプリンターたちがチャンスを狙ってくる。
text:Kei Tsuji
Amazon.co.jp