2017/05/27(土) - 03:00
1級山岳ピアンカヴァッロでトム・デュムランが失速。逃げ切りで念願のステージ優勝を飾ったミケル・ランダの10分後方では総合争いが繰り広げられ、ナイロ・キンタナがマリアローザを奪回した。総合争いは1分以内に4名がひしめく混戦状態のまま残り2ステージを迎える。
オーストリア国境に近いサンカンディドをスタートし、ドロミテの山岳地帯を進む photo:Kei Tsuji / TDWsport
ジロ・デ・イタリア2017第19ステージ image:RCSsport難易度4つ星の第19ステージはオーストリア国境に近いサンカンディドをスタート。3級山岳モンテクローチェ・コメリコ(全長7.9km/平均4.3%)と2級山岳キアンズタン(長さ11.8km/平均6.1%)を越えて平野部に入り、1級山岳ピアンカヴァッロ(全長15.4km/平均7.3%/最大14%)を駆け上がってフィニッシュを迎える。
スタート後すぐ、ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)らの活発なアタックによって先頭では16名の逃げグループが形成。ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)やルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)を含むこの大きな逃げグループはメイン集団から6分のリードを得ることに成功する。
逃げグループが先行し、メイン集団が穏やかに追い上げる展開になると予想されたが、約60km地点の下り区間でメイン集団が中切れによって分裂。総合2位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)や総合3位ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、総合5位イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)らが第1集団に入った一方で、マリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)やステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)は第2集団に取り残された。
フィニッシュまでまだ130km以上を残して訪れたマリアローザの危機。約1分のリードを稼ぎ出したモビスターとバーレーン・メリダが牽引する第1集団と、オリカ・スコットやロットNLユンボ、トレック・セガフレードが牽引する第2集団。このマッチレースによって逃げグループのリードは縮小し、第1集団は2級山岳キアンズタンの登りで逃げグループを捉えてしまう。しばらくして第2集団も合流し、デュムランは危機を乗り切るとともにレースは振り出しに戻った。
逃げのきっかけを作るダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)ら photo:Kei Tsuji / TDWsport
カチューシャ・アルペシンやモビスターがメイン集団を分断する photo:Kei Tsuji / TDWsport
レース中盤にデュムランらを引き離しにかかるティボー・ピノ(フランス、エフデジ)やイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) photo:Kei Tsuji / TDWsport
第1集団を牽引するバーレーン・メリダ photo:Kei Tsuji / TDWsport
逃げ吸収後に始まるのはもちろん逃げ形成のための動き。カウンターアタックでコスタ、ロラン、セバスティアン・エナオ(コロンビア、チームスカイ)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)、ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ)、エフゲニー・シャルノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)の6名が新たに逃げグループを形成し、メイン集団から40秒リードを得て2級山岳キアンズタンをクリアする。
このステージ優勝に繋がる逃げには遅れてミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)やジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ホセ・ロハス(スペイン、モビスター)を含む12名の追走グループが合流し、合計18名の逃げグループがメイン集団とのタイム差を3分、6分、9分と広げながらレース後半に突入。総合争いに関係しない18名の逃げを積極的に追走するチームはおらず、タイム差が10分30秒に広がった状態で最後の1級山岳ピアンカヴァッロの登坂が始まった。全長15.4kmの登りで、ステージ優勝争いとマリアローザ争いが同時並行で(10分30秒差で)繰り広げられることになった。
先頭ではLLサンチェスが早めの仕掛けで独走に持ち込むも、エナオ率いるその他の逃げメンバーがペースを刻んだためタイム差は広がらない。やがて追走グループの中からコスタがカウンターアタックを仕掛けて先頭LLサンチェスに合流。続いて、エナオのアシストを受けたランダが加速し、LLサンチェスとコスタを抜いて先頭に躍り出た。
山岳ステージで連日逃げ、圧倒的なポイント差でマリアアッズーラを着用しながらも、ステージ2位が2度続いていたランダが観客をかき分けて独走。追いすがる2番手コスタとロランを引き離しながら最大勾配14%の登りを快調にこなしたランダが、標高1,290mのフィニッシュラインに独走のままやってきた。
「苦しい数ヶ月を過ごし、ジロでは落車に見舞われるなどツキに見放されていたので、フィニッシュでは感極まったよ。チームスカイは思うようなジロを戦えていないものの、山岳ステージで優勝するという目標を達成できたことを誇りに思う」。山岳賞トップのランダが難関山岳制覇。自身3度目のステージ優勝を飾った。
新たに逃げグループを形成するルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)ら photo:Kei Tsuji / TDWsport
1級山岳ピアンカヴァッロで真っ先にアタックするルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
1級山岳ピアンカヴァッロでコスタを抜いて先頭に立つミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
空を見上げ、独走でフィニッシュするミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
10分30秒遅れで1級山岳ピアンカヴァッロの登坂を開始したメイン集団はバーレーン・メリダやモビスターがペースメイク。登りの前半から集団後方に位置していたマリアローザのデュムランは、頂上まで12kmを残して脱落してしまう。サイモン・ゲシュケ(ドイツ、サンウェブ)のアシストを受けながらデュムランは一定ペースを保ったものの、マリアローザの脱落を知ってペースを上げたライバルたちとのタイム差は広がっていった。
キンタナは逃げグループから脱落したロハスに、そしてニーバリは同じく前から降りてきたヴィスコンティにアシストされながら登坂を続行。すると、フィニッシュ7km手前の急勾配区間で総合4位ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)がアタック。ピノを追う形で総合5位ザカリンや総合6位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)もアタックを仕掛け、それぞれ総合トップ3を引き離すことに成功した。
単独ピノ、追走ザカリンとポッツォヴィーヴォの後ろではニーバリが動き、キンタナが出遅れるシーンも。しかしニーバリとキンタナの間に決定的なタイム差は生まれない。ここにマリアビアンカ争いを繰り広げるイェーツやボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)も加わり、フィニッシュ手前の緩斜面に差し掛かった。
1級山岳ピアンカヴァッロでライバルたちから遅れるトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)とステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
1級山岳ピアンカヴァッロでメイン集団のペースを作るフランコ・ペリツォッティ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
1級山岳ピアンカヴァッロでアタックを成功させたティボー・ピノ(フランス、エフデジ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
1級山岳ピアンカヴァッロでアタックするイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)とドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) photo:Kei Tsuji / TDWsport
1級山岳ピアンカヴァッロを登るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji / TDWsport
先頭から8分09秒遅れでフィニッシュしたピノに続いて、ポッツォヴィーヴォとザカリンが8分15秒遅れ、ユンゲルス、イェーツ、キンタナが8分21秒遅れ、そしてモレマとニーバリが8分23秒遅れでフィニッシュ。最終的に9分30秒遅れでフィニッシュしたデュムランは、ピノから1分21秒、キンタナから1分09秒、ニーバリから1分07秒のタイムロスを被った。
デュムランの失速によって総合首位に立ったのはキンタナで、38秒差の総合2位にデュムラン、43秒差の総合3位にニーバリ、そして53秒差の総合4位にピノがつける。総合タイム差1分以内に総合トップ4がひしめく近年稀に見る接戦。キンタナは喜びに満ちた表情でマリアローザに袖を通したが、最終的な総合優勝を目指すためには充分なリードとは言えない。「とても複雑な総合争いだ。この小さな総合タイム差はハイレベルな戦いを意味している。明日も難しい山岳ステージが待っており、危険な存在のニーバリやピノが再びアタックするのは間違いない。そしてデュムランの得意分野では最終日の個人タイムトライアルでは全力を尽くしたい」と新リーダーは語っている。
マリアローザを失ったデュムランは「今日はスタートから調子が良くなくて、下りで集団後方に下がるという初歩的なミスを犯してしまった。ライバルたちの追走に余計な力を使ってしまい、最後の登りではとてもライバルたちについていけなかった。でもタイムロスを最小限に抑える走りとしては良い走りだったと思う。今日は脚が動かなかったけど、明日は調子が戻っていることを願うよ」とコメント。翌日は残り15km地点に1級山岳フォーザ(全長14km/平均6.7%)が登場する今大会最後の山岳ステージだ。
キンタナから12秒、デュムランから1分21秒先行してフィニッシュするティボー・ピノ(フランス、エフデジ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ピノに続いてフィニッシュするイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)とドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) photo:Kei Tsuji / TDWsport
デュムランより1分09秒先にフィニッシュするボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)やアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ライバルたちから遅れたトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
満面の笑みでスプマンテを開けるマリアローザのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ジロ・デ・イタリア2017第19ステージ結果
1位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) 4h53'00"
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +1'49"
3位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック) +1'54"
4位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ) +2'12"
5位 セバスティアン・エナオ(コロンビア、チームスカイ) +3'06"
6位 エフゲニー・シャルノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) +3'51"
7位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
8位 マッテーオ・ブザート(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ) +5'05"
9位 ロレンツォ・ロータ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 イリア・コシェヴォイ(ベラルーシ、ウィリエール・トリエスティーナ) +6'44"
11位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +8'09"
12位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +8'15"
13位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)
14位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +8'21"
15位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
16位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
17位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +8'23"
18位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
22位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) +9'30"
30位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +10'41"
マリアローザ 個人総合成績
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 85h02'40"
2位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) +38"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +43"
4位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +53"
5位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +1'21"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +1'30"
7位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +2'48"
8位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +6'35"
9位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +7'03"
10位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +7'37"
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 325pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 192pts
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 117pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) 224pts
2位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 118pts
3位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 104pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) 85h09'15"
2位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +28"
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2'02"
チーム総合成績
1位 モビスター 255h26'04"
2位 アージェードゥーゼール +1h03'27"
3位 バーレーン・メリダ +1'05'55"
text&photo:Kei Tsuji in Piancavallo, Italy
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スタート後すぐ、ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)らの活発なアタックによって先頭では16名の逃げグループが形成。ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)やルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)を含むこの大きな逃げグループはメイン集団から6分のリードを得ることに成功する。
逃げグループが先行し、メイン集団が穏やかに追い上げる展開になると予想されたが、約60km地点の下り区間でメイン集団が中切れによって分裂。総合2位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)や総合3位ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、総合5位イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)らが第1集団に入った一方で、マリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)やステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)は第2集団に取り残された。
フィニッシュまでまだ130km以上を残して訪れたマリアローザの危機。約1分のリードを稼ぎ出したモビスターとバーレーン・メリダが牽引する第1集団と、オリカ・スコットやロットNLユンボ、トレック・セガフレードが牽引する第2集団。このマッチレースによって逃げグループのリードは縮小し、第1集団は2級山岳キアンズタンの登りで逃げグループを捉えてしまう。しばらくして第2集団も合流し、デュムランは危機を乗り切るとともにレースは振り出しに戻った。
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このステージ優勝に繋がる逃げには遅れてミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)やジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ホセ・ロハス(スペイン、モビスター)を含む12名の追走グループが合流し、合計18名の逃げグループがメイン集団とのタイム差を3分、6分、9分と広げながらレース後半に突入。総合争いに関係しない18名の逃げを積極的に追走するチームはおらず、タイム差が10分30秒に広がった状態で最後の1級山岳ピアンカヴァッロの登坂が始まった。全長15.4kmの登りで、ステージ優勝争いとマリアローザ争いが同時並行で(10分30秒差で)繰り広げられることになった。
先頭ではLLサンチェスが早めの仕掛けで独走に持ち込むも、エナオ率いるその他の逃げメンバーがペースを刻んだためタイム差は広がらない。やがて追走グループの中からコスタがカウンターアタックを仕掛けて先頭LLサンチェスに合流。続いて、エナオのアシストを受けたランダが加速し、LLサンチェスとコスタを抜いて先頭に躍り出た。
山岳ステージで連日逃げ、圧倒的なポイント差でマリアアッズーラを着用しながらも、ステージ2位が2度続いていたランダが観客をかき分けて独走。追いすがる2番手コスタとロランを引き離しながら最大勾配14%の登りを快調にこなしたランダが、標高1,290mのフィニッシュラインに独走のままやってきた。
「苦しい数ヶ月を過ごし、ジロでは落車に見舞われるなどツキに見放されていたので、フィニッシュでは感極まったよ。チームスカイは思うようなジロを戦えていないものの、山岳ステージで優勝するという目標を達成できたことを誇りに思う」。山岳賞トップのランダが難関山岳制覇。自身3度目のステージ優勝を飾った。
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キンタナは逃げグループから脱落したロハスに、そしてニーバリは同じく前から降りてきたヴィスコンティにアシストされながら登坂を続行。すると、フィニッシュ7km手前の急勾配区間で総合4位ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)がアタック。ピノを追う形で総合5位ザカリンや総合6位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)もアタックを仕掛け、それぞれ総合トップ3を引き離すことに成功した。
単独ピノ、追走ザカリンとポッツォヴィーヴォの後ろではニーバリが動き、キンタナが出遅れるシーンも。しかしニーバリとキンタナの間に決定的なタイム差は生まれない。ここにマリアビアンカ争いを繰り広げるイェーツやボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)も加わり、フィニッシュ手前の緩斜面に差し掛かった。
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先頭から8分09秒遅れでフィニッシュしたピノに続いて、ポッツォヴィーヴォとザカリンが8分15秒遅れ、ユンゲルス、イェーツ、キンタナが8分21秒遅れ、そしてモレマとニーバリが8分23秒遅れでフィニッシュ。最終的に9分30秒遅れでフィニッシュしたデュムランは、ピノから1分21秒、キンタナから1分09秒、ニーバリから1分07秒のタイムロスを被った。
デュムランの失速によって総合首位に立ったのはキンタナで、38秒差の総合2位にデュムラン、43秒差の総合3位にニーバリ、そして53秒差の総合4位にピノがつける。総合タイム差1分以内に総合トップ4がひしめく近年稀に見る接戦。キンタナは喜びに満ちた表情でマリアローザに袖を通したが、最終的な総合優勝を目指すためには充分なリードとは言えない。「とても複雑な総合争いだ。この小さな総合タイム差はハイレベルな戦いを意味している。明日も難しい山岳ステージが待っており、危険な存在のニーバリやピノが再びアタックするのは間違いない。そしてデュムランの得意分野では最終日の個人タイムトライアルでは全力を尽くしたい」と新リーダーは語っている。
マリアローザを失ったデュムランは「今日はスタートから調子が良くなくて、下りで集団後方に下がるという初歩的なミスを犯してしまった。ライバルたちの追走に余計な力を使ってしまい、最後の登りではとてもライバルたちについていけなかった。でもタイムロスを最小限に抑える走りとしては良い走りだったと思う。今日は脚が動かなかったけど、明日は調子が戻っていることを願うよ」とコメント。翌日は残り15km地点に1級山岳フォーザ(全長14km/平均6.7%)が登場する今大会最後の山岳ステージだ。
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ジロ・デ・イタリア2017第19ステージ結果
1位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) 4h53'00"
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +1'49"
3位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック) +1'54"
4位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ) +2'12"
5位 セバスティアン・エナオ(コロンビア、チームスカイ) +3'06"
6位 エフゲニー・シャルノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) +3'51"
7位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
8位 マッテーオ・ブザート(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ) +5'05"
9位 ロレンツォ・ロータ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 イリア・コシェヴォイ(ベラルーシ、ウィリエール・トリエスティーナ) +6'44"
11位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +8'09"
12位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +8'15"
13位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)
14位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +8'21"
15位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
16位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
17位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +8'23"
18位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
22位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) +9'30"
30位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +10'41"
マリアローザ 個人総合成績
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 85h02'40"
2位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) +38"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +43"
4位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +53"
5位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +1'21"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +1'30"
7位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +2'48"
8位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +6'35"
9位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +7'03"
10位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +7'37"
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 325pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 192pts
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 117pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) 224pts
2位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 118pts
3位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 104pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) 85h09'15"
2位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +28"
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2'02"
チーム総合成績
1位 モビスター 255h26'04"
2位 アージェードゥーゼール +1h03'27"
3位 バーレーン・メリダ +1'05'55"
text&photo:Kei Tsuji in Piancavallo, Italy
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