2017/05/25(木) - 03:09
レース序盤から逃げに乗り、後続に追いつかれながらも終盤にアタック。フィニッシュまで逃げ切った24名の先頭グループから独走に持ち込んだピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)が初優勝を飾った。
アルプスでのクイーンステージを終え、ジロは次なる山岳決戦の舞台ドロミテに向けて東に進む。スイス国境に近い山間の街ティラーノをスタートする第17ステージは、序盤に2級山岳アプリカ(全長12.3km/平均6.3%)と2級山岳トナーレ峠(全長11km/平均5.7%)を越え、中盤にかけて3級山岳ジョーヴォ(全長5.9km/平均6.8%)をクリア。標高1,442mのカナツェイまで勾配2〜3%ほどの緩斜面を駆け上がってフィニッシュを迎える。
スプリンター向きでもなく、クライマー向きでもない。前後を厳しい山岳ステージに挟まれたこの第17ステージは完全な逃げ向きであり、ティラーノを発ってすぐにファーストアタックが決まった。マテイ・モホリッチ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)、ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)、パヴェル・ブラット(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)という今大会お馴染みの逃げメンバーがこの日も元気に逃げを作る。
先頭3名は順調に2級山岳アプリカを越えて先を目指したが、やはり逃げに選手を乗り損ねたチームがメイン集団を率いたためタイム差の広がりは鈍い。タイム差が2分以内に押さえ込まれる中、カウンターアタックが続発したメイン集団から39名という大きな追走集団が抜け出す。この追走集団が形成されたところでようやくメイン集団はペースを弱めている。
続く2級山岳トナーレ峠で先頭3名から2分30秒遅れで追走集団、9分遅れでメイン集団という位置関係に。長い下りで独走に持ち込んだモホリッチにブラットが追いついた一方で、ロランは追走集団に吸収される。巨大な追走集団は協調体制を築けず、分裂と合流を繰り返しながら徐々に先頭とのタイム差を詰めていった。レース中盤の時点で先頭2名とメイン集団のタイム差は最大14分をマークしている。
この日最後の3級山岳ジョーヴォで再びモホリッチが独走に持ち込んだものの、その後の長い平坦区間で細分化した追走集団とのタイム差は縮まり続ける。残り60km地点でモホリッチにまずは12名のグループが追いつき、さらに9名、3名と追走グループが合流して人数を増やす。最終的に25名まで人数を増やした先頭グループがステージ優勝を争うことになった。
集団コントロールを続けたサンウェブは事実上25名の逃げ切りを容認。しかし総合13位/12分13秒遅れのヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や総合15位/14分46秒遅れのマキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)が逃げに入ってたため、サンウェブは安全圏内までタイム差を詰める作業に取り掛かる。ヤングライダー賞4位のポランツェの存在を嫌い、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)のマリアビアンカを守りたいクイックステップフロアーズも集団牽引に合流。マリアチクラミーノを着るフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)も献身的にローテーションに加わった。
先頭では、メンバー4名を揃えたUAEチームエミレーツがステージ優勝とポランツェの総合ジャンプアップを目指して積極的に牽引する。フィニッシュまで30kmを残して先頭25名とメイン集団のタイム差は9分に。やがて残り20kmを切ると先頭グループ内の統率は崩れ、緩斜面を利用したアタックとカウンターアタックが始まる。
ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)やオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)、エンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF)らがアタックを繰り返した結果、脱落者が出て先頭は13〜14名に。アタックを吸収して緩んだ隙をついて残り8km地点でロランがカウンターアタックを仕掛けると、一瞬躊躇した後続との距離が開いた。
一気に15秒までリードを広げたロランが残り8kmを独走する。最大限酸素を取り込むべく口を大きく開いたロランが協調体制を欠いた追走グループを引き離す走りを見せ、谷あいの村カナツェイまで単独で駆け抜けた。最終ストレートで後ろを振り向き、誰も追いついてこないことを悟ったロランがジャージのチーム名をアピールし、両手を広げ、何度も拳を突き上げてフィニッシュラインを切った。
独走勝利を飾ったロランはフィニッシュ地点で待っていたスタッフと抱き合い、バイクを高く掲げて雄叫びをあげた。「この瞬間をずっと待っていた。この勝利に至るまで、数え切れないほど何度も何度もアタック。今日は序盤から逃げに乗り、(モホリッチとブラットを先に行かせて)後続を待つ判断は正しかった。最後は勇気が勝敗を分けたと思う。正しいタイミングで勇気を持ってアタックしたんだ」。ツール・ド・フランスでステージ2勝(2011年と2012年)しているロランだが、ジロでのステージ優勝はこれが初めて。
ロランに先行を許してしまった12名の追走グループはコスタを先頭にフィニッシュ。この追走グループ内でフィニッシュしたモンフォールが総合15位から総合12位にジャンプアップしている。そして、2分14秒遅れの第2追走グループ内でフィニッシュしたポランツェが総合13位から総合10位に順位を上げるとともに、ヤングライダー賞2位(ユンゲルスから1分58秒差)に浮上した。
メイン集団は7分54秒遅れでフィニッシュし、マリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)ら総合上位陣は平穏な1日を安全に終えている。
ジロ・デ・イタリア2017第17ステージ結果
1位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック) 5h42'56"
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +24"
3位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)
4位 ローリー・スザーランド(スペイン、モビスター)
5位 マッテーオ・ブザート(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)
6位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
7位 フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、CCCスプランディ)
8位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)
9位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)
10位 ジュリアン・ベラール(フランス、アージェードゥーゼール)
マリアローザ 個人総合成績
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 76h05'38"
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +31"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1'12"
4位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +2'38"
5位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +2'40"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +3'05"
7位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +3'49"
8位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +4'35"
9位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +6'20"
10位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +6'33"
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 325pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 192pts
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 117pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) 124pts
2位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 108pts
3位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 89pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) 76h10'13"
2位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +1'58"
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +2'25"
チーム総合成績
1位 モビスター 228h30'42"
2位 UAEチームエミレーツ +34'35"
3位 バーレーン・メリダ +51'20"
text&photo:Kei Tsuji in Canazei, Italy
アルプスでのクイーンステージを終え、ジロは次なる山岳決戦の舞台ドロミテに向けて東に進む。スイス国境に近い山間の街ティラーノをスタートする第17ステージは、序盤に2級山岳アプリカ(全長12.3km/平均6.3%)と2級山岳トナーレ峠(全長11km/平均5.7%)を越え、中盤にかけて3級山岳ジョーヴォ(全長5.9km/平均6.8%)をクリア。標高1,442mのカナツェイまで勾配2〜3%ほどの緩斜面を駆け上がってフィニッシュを迎える。
スプリンター向きでもなく、クライマー向きでもない。前後を厳しい山岳ステージに挟まれたこの第17ステージは完全な逃げ向きであり、ティラーノを発ってすぐにファーストアタックが決まった。マテイ・モホリッチ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)、ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)、パヴェル・ブラット(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)という今大会お馴染みの逃げメンバーがこの日も元気に逃げを作る。
先頭3名は順調に2級山岳アプリカを越えて先を目指したが、やはり逃げに選手を乗り損ねたチームがメイン集団を率いたためタイム差の広がりは鈍い。タイム差が2分以内に押さえ込まれる中、カウンターアタックが続発したメイン集団から39名という大きな追走集団が抜け出す。この追走集団が形成されたところでようやくメイン集団はペースを弱めている。
続く2級山岳トナーレ峠で先頭3名から2分30秒遅れで追走集団、9分遅れでメイン集団という位置関係に。長い下りで独走に持ち込んだモホリッチにブラットが追いついた一方で、ロランは追走集団に吸収される。巨大な追走集団は協調体制を築けず、分裂と合流を繰り返しながら徐々に先頭とのタイム差を詰めていった。レース中盤の時点で先頭2名とメイン集団のタイム差は最大14分をマークしている。
この日最後の3級山岳ジョーヴォで再びモホリッチが独走に持ち込んだものの、その後の長い平坦区間で細分化した追走集団とのタイム差は縮まり続ける。残り60km地点でモホリッチにまずは12名のグループが追いつき、さらに9名、3名と追走グループが合流して人数を増やす。最終的に25名まで人数を増やした先頭グループがステージ優勝を争うことになった。
集団コントロールを続けたサンウェブは事実上25名の逃げ切りを容認。しかし総合13位/12分13秒遅れのヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や総合15位/14分46秒遅れのマキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)が逃げに入ってたため、サンウェブは安全圏内までタイム差を詰める作業に取り掛かる。ヤングライダー賞4位のポランツェの存在を嫌い、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)のマリアビアンカを守りたいクイックステップフロアーズも集団牽引に合流。マリアチクラミーノを着るフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)も献身的にローテーションに加わった。
先頭では、メンバー4名を揃えたUAEチームエミレーツがステージ優勝とポランツェの総合ジャンプアップを目指して積極的に牽引する。フィニッシュまで30kmを残して先頭25名とメイン集団のタイム差は9分に。やがて残り20kmを切ると先頭グループ内の統率は崩れ、緩斜面を利用したアタックとカウンターアタックが始まる。
ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)やオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)、エンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF)らがアタックを繰り返した結果、脱落者が出て先頭は13〜14名に。アタックを吸収して緩んだ隙をついて残り8km地点でロランがカウンターアタックを仕掛けると、一瞬躊躇した後続との距離が開いた。
一気に15秒までリードを広げたロランが残り8kmを独走する。最大限酸素を取り込むべく口を大きく開いたロランが協調体制を欠いた追走グループを引き離す走りを見せ、谷あいの村カナツェイまで単独で駆け抜けた。最終ストレートで後ろを振り向き、誰も追いついてこないことを悟ったロランがジャージのチーム名をアピールし、両手を広げ、何度も拳を突き上げてフィニッシュラインを切った。
独走勝利を飾ったロランはフィニッシュ地点で待っていたスタッフと抱き合い、バイクを高く掲げて雄叫びをあげた。「この瞬間をずっと待っていた。この勝利に至るまで、数え切れないほど何度も何度もアタック。今日は序盤から逃げに乗り、(モホリッチとブラットを先に行かせて)後続を待つ判断は正しかった。最後は勇気が勝敗を分けたと思う。正しいタイミングで勇気を持ってアタックしたんだ」。ツール・ド・フランスでステージ2勝(2011年と2012年)しているロランだが、ジロでのステージ優勝はこれが初めて。
ロランに先行を許してしまった12名の追走グループはコスタを先頭にフィニッシュ。この追走グループ内でフィニッシュしたモンフォールが総合15位から総合12位にジャンプアップしている。そして、2分14秒遅れの第2追走グループ内でフィニッシュしたポランツェが総合13位から総合10位に順位を上げるとともに、ヤングライダー賞2位(ユンゲルスから1分58秒差)に浮上した。
メイン集団は7分54秒遅れでフィニッシュし、マリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)ら総合上位陣は平穏な1日を安全に終えている。
ジロ・デ・イタリア2017第17ステージ結果
1位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック) 5h42'56"
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +24"
3位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)
4位 ローリー・スザーランド(スペイン、モビスター)
5位 マッテーオ・ブザート(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)
6位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
7位 フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、CCCスプランディ)
8位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)
9位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)
10位 ジュリアン・ベラール(フランス、アージェードゥーゼール)
マリアローザ 個人総合成績
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 76h05'38"
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +31"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1'12"
4位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +2'38"
5位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +2'40"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +3'05"
7位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +3'49"
8位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +4'35"
9位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +6'20"
10位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +6'33"
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 325pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 192pts
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 117pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) 124pts
2位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 108pts
3位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 89pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) 76h10'13"
2位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +1'58"
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +2'25"
チーム総合成績
1位 モビスター 228h30'42"
2位 UAEチームエミレーツ +34'35"
3位 バーレーン・メリダ +51'20"
text&photo:Kei Tsuji in Canazei, Italy
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