2017/05/03(水) - 17:03
マリアローザを狙って国内外のグランツールレーサーがサルデーニャ島に集結する。ヴィンチェンツォ・ニーバリやナイロ・キンタナ、ティボー・ピノ、ゲラント・トーマスの他、第100回大会の総合優勝候補に挙がる選手たちをチェックしておこう。
ジロ総合リーダーの証「バラ色ジャージ」マリアローザ
ジロ総合リーダーの証であるマリアローザは直訳すると「バラ色ジャージ」。独特の淡いピンク色はガゼッタ・デッロ・スポルト紙の紙の色に由来する。イタリア最大手のスポーツ新聞であるガゼッタ紙が発行部数増加のためにジロを初開催したのは今から108年前の1909年。以降、これまでに99回開催されてきた。現在はガゼッタ紙と同じメディアグループのRCSスポルトが大会を主催している。ジャージスポンサーは元国営電力会社のエネル社。
他のステージレースと同様に、マリアローザ着用の権利を有するのは「最も少ない合計時間で前日までのステージを走りきっている選手」。つまりミラノの最終ステージ後にマリアローザを受け取った選手が総合優勝となる。また、総合優勝者には「トロフェオ・センツァフィーネ(終わりのないトロフィー)」と呼ばれる螺旋状の黄金トロフィーが贈られる。
ボーナスタイムは今年も健在で、タイムトライアル(第10ステージと第21ステージ)を除くステージのフィニッシュ地点で1位に10秒、2位に6秒、3位に4秒、そして2つあるうちの2つ目の中間スプリントポイントで1位3秒、2位2秒、3位1秒のボーナスタイムが与えられる。特に序盤のステージはレースの中でタイム差がつきにくく、ボーナスタイムによるマリアローザの移動もあり得る。たかが数秒のボーナスタイムと侮るなかれ、地道にタイムを積み重ねた選手が最終的にマリアローザ争いや総合表彰台争い、総合トップ10争いで笑うことになるかもしれない。
なお、総合優勝者に与えられる賞金は115,668ユーロ(約1,420万円)で、100回記念大会のため2017年はここに90,000ユーロ(約1,100万円)が追加。マリアローザ着用者は1日につき1,000ユーロ(約12万2500円)が与えられる。
出場メンバーの中で総合優勝経験があるのは2013年と2016年大会覇者のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)と2014年大会覇者のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)のみ。自身6回目のジロ出場となるニーバリは2010年総合3位、2011年総合2位、2013年総合1位、2016年総合1位と、これまで輝かしい成績を残してきた。今シーズンは3月のティレーノ〜アドリアティコで総合下位に沈んだものの、4月のツアー・オブ・クロアチアで総合優勝。アルデンヌクラシックを全てパスし、このジロに調整を合わせてきた。
元チームメイトのサルデーニャ出身ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が膝の故障で欠場するため、ニーバリがイタリアの期待を一身に背負うことになる。地元シチリアのメッシーナにフィニッシュするステージもあり、ニーバリのモチベーションが高いことは間違いない。山岳とTTがバランス良く組み合わされたコースはニーバリ向きだ言われる。
ニーバリの前に立ちはだかるのが、ティレーノ〜アドリアティコを制し、直前のブエルタ・アストゥリアスで好調ぶりを見せたキンタナだ。「ダブルツール(ジロとツール同年制覇)」を狙うと公言しているコロンビアンクライマーがアルプスとドロミテの山々で主導権を握ると見られる。2014年ジロ覇者をバックアップするモビスターは、アンドレイ・アマドール(コスタリカ)やゴルカ・イサギレ(スペイン)ら強力な山岳アシストを揃えての出場だ。
2014年ツール総合3位のティボー・ピノ(フランス、エフデジ)は、ツールではなく、5月のジロを中心に年間スケジュールを組んできた。前哨戦ツアー・オブ・アルプスでは山岳ステージで連日アタックを仕掛けるなどアグレッシブな走りを披露して総合2位。ジロ初出場のピノは、1989年のローラン・フィニョン以来27年間達成されていないフランス人によるジロ制覇を狙う。フランス人選手としてはピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)もツールではなくジロにフォーカスする。
前哨戦ツアー・オブ・アルプスを制したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)は、2015年ジロ総合3位ミケル・ランダ(スペイン)とのダブルエース体制でマリアローザを狙う。トラックレーサーからステージレーサーに進化したトーマスにとって初めてエースとして挑むグランツール。トップクライマーを凌駕する登坂力を有しており、TTでリードを奪うことができればマリアローザに手が届く。山岳ステージでのランダとのタッグは見ものだ。
1年前のジロで5日間マリアローザを着ながら、雪山アニェッロ峠の下りで落車してチャンスを失ったステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)はリベンジに燃えていることだろう。オランダ勢としてはクライスヴァイクの他にもTTスペシャリストのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が揃う。2015年ブエルタ総合6位のデュムランはさらに登坂力に磨きをかけているはずだ。
2016年のツールでマイヨブランを獲得(総合4位)したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)はジロ初出場。24歳の次世代ブリティッシュオールラウンダーはジロでさらなる進化を見せるか。なお、ツール・ド・ロマンディで総合2位に入った双子の兄弟サイモンはツールに出場する予定。
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)をはじめ、登坂力に秀でたイタリアンライダーたちも開催100回目という記念すべき大会を狙っているはず。2016年大会の第19ステージで落車リタイアするまで総合5位で走っていたイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)やボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)、ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)も総合上位候補に挙げられる。
歴代マリアローザ獲得選手
2016年 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2015年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2014年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2013年 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2012年 ライダー・ヘシェダル(カナダ)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2009年 デニス・メンショフ(ロシア)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2005年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2001年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2000年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
1999年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1996年 パヴェル・トンコフ(ロシア)
1995年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1994年 エフゲニー・ベルツィン(ロシア)
1993年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1991年 フランコ・キオッチォーリ(イタリア)
1990年 ジャンニ・ブーニョ(イタリア)
text:Kei Tsuji in Alghero, Italy
ジロ総合リーダーの証「バラ色ジャージ」マリアローザ
ジロ総合リーダーの証であるマリアローザは直訳すると「バラ色ジャージ」。独特の淡いピンク色はガゼッタ・デッロ・スポルト紙の紙の色に由来する。イタリア最大手のスポーツ新聞であるガゼッタ紙が発行部数増加のためにジロを初開催したのは今から108年前の1909年。以降、これまでに99回開催されてきた。現在はガゼッタ紙と同じメディアグループのRCSスポルトが大会を主催している。ジャージスポンサーは元国営電力会社のエネル社。
他のステージレースと同様に、マリアローザ着用の権利を有するのは「最も少ない合計時間で前日までのステージを走りきっている選手」。つまりミラノの最終ステージ後にマリアローザを受け取った選手が総合優勝となる。また、総合優勝者には「トロフェオ・センツァフィーネ(終わりのないトロフィー)」と呼ばれる螺旋状の黄金トロフィーが贈られる。
ボーナスタイムは今年も健在で、タイムトライアル(第10ステージと第21ステージ)を除くステージのフィニッシュ地点で1位に10秒、2位に6秒、3位に4秒、そして2つあるうちの2つ目の中間スプリントポイントで1位3秒、2位2秒、3位1秒のボーナスタイムが与えられる。特に序盤のステージはレースの中でタイム差がつきにくく、ボーナスタイムによるマリアローザの移動もあり得る。たかが数秒のボーナスタイムと侮るなかれ、地道にタイムを積み重ねた選手が最終的にマリアローザ争いや総合表彰台争い、総合トップ10争いで笑うことになるかもしれない。
なお、総合優勝者に与えられる賞金は115,668ユーロ(約1,420万円)で、100回記念大会のため2017年はここに90,000ユーロ(約1,100万円)が追加。マリアローザ着用者は1日につき1,000ユーロ(約12万2500円)が与えられる。
出場メンバーの中で総合優勝経験があるのは2013年と2016年大会覇者のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)と2014年大会覇者のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)のみ。自身6回目のジロ出場となるニーバリは2010年総合3位、2011年総合2位、2013年総合1位、2016年総合1位と、これまで輝かしい成績を残してきた。今シーズンは3月のティレーノ〜アドリアティコで総合下位に沈んだものの、4月のツアー・オブ・クロアチアで総合優勝。アルデンヌクラシックを全てパスし、このジロに調整を合わせてきた。
元チームメイトのサルデーニャ出身ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が膝の故障で欠場するため、ニーバリがイタリアの期待を一身に背負うことになる。地元シチリアのメッシーナにフィニッシュするステージもあり、ニーバリのモチベーションが高いことは間違いない。山岳とTTがバランス良く組み合わされたコースはニーバリ向きだ言われる。
ニーバリの前に立ちはだかるのが、ティレーノ〜アドリアティコを制し、直前のブエルタ・アストゥリアスで好調ぶりを見せたキンタナだ。「ダブルツール(ジロとツール同年制覇)」を狙うと公言しているコロンビアンクライマーがアルプスとドロミテの山々で主導権を握ると見られる。2014年ジロ覇者をバックアップするモビスターは、アンドレイ・アマドール(コスタリカ)やゴルカ・イサギレ(スペイン)ら強力な山岳アシストを揃えての出場だ。
2014年ツール総合3位のティボー・ピノ(フランス、エフデジ)は、ツールではなく、5月のジロを中心に年間スケジュールを組んできた。前哨戦ツアー・オブ・アルプスでは山岳ステージで連日アタックを仕掛けるなどアグレッシブな走りを披露して総合2位。ジロ初出場のピノは、1989年のローラン・フィニョン以来27年間達成されていないフランス人によるジロ制覇を狙う。フランス人選手としてはピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)もツールではなくジロにフォーカスする。
前哨戦ツアー・オブ・アルプスを制したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)は、2015年ジロ総合3位ミケル・ランダ(スペイン)とのダブルエース体制でマリアローザを狙う。トラックレーサーからステージレーサーに進化したトーマスにとって初めてエースとして挑むグランツール。トップクライマーを凌駕する登坂力を有しており、TTでリードを奪うことができればマリアローザに手が届く。山岳ステージでのランダとのタッグは見ものだ。
1年前のジロで5日間マリアローザを着ながら、雪山アニェッロ峠の下りで落車してチャンスを失ったステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)はリベンジに燃えていることだろう。オランダ勢としてはクライスヴァイクの他にもTTスペシャリストのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が揃う。2015年ブエルタ総合6位のデュムランはさらに登坂力に磨きをかけているはずだ。
2016年のツールでマイヨブランを獲得(総合4位)したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)はジロ初出場。24歳の次世代ブリティッシュオールラウンダーはジロでさらなる進化を見せるか。なお、ツール・ド・ロマンディで総合2位に入った双子の兄弟サイモンはツールに出場する予定。
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)をはじめ、登坂力に秀でたイタリアンライダーたちも開催100回目という記念すべき大会を狙っているはず。2016年大会の第19ステージで落車リタイアするまで総合5位で走っていたイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)やボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)、ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)も総合上位候補に挙げられる。
歴代マリアローザ獲得選手
2016年 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2015年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2014年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2013年 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2012年 ライダー・ヘシェダル(カナダ)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2009年 デニス・メンショフ(ロシア)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2005年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2001年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2000年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
1999年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1996年 パヴェル・トンコフ(ロシア)
1995年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1994年 エフゲニー・ベルツィン(ロシア)
1993年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1991年 フランコ・キオッチォーリ(イタリア)
1990年 ジャンニ・ブーニョ(イタリア)
text:Kei Tsuji in Alghero, Italy
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