2017/04/22(土) - 21:19
4月23日(日)、ベルギーのワロン地域を舞台に第103回リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(UCIワールドツアー)が開催される。日本人選手2名も出場する最古参レースの見どころをチェックしておこう。
レース中盤に勾配のある3連続登坂が登場 115年の伝統戦
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2017 image:A.S.O.歴史あるクラシックレースは数あれど、このリエージュほど長い歴史のあるロードレースは他に無い。リエージュの第1回大会が開催されたのは今から115年前の1892年。近代オリンピック(1896年〜)や、日本の箱根駅伝(1920年〜)よりも歴史が長く、「La Doyenne(ラ・ドワイエンヌ=最古参)」という愛称で呼ばれることも多い。
2017年は開催103回目。「モニュメント」と呼ばれる世界5大クラシック(サンレモ、ロンド、パリ〜ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)の一つとして数えられており、格式の点ではアルデンヌ3連戦の中で際立って大きい。
ベルギー西部のフランデレン地域を代表するのがロンド・ファン・フラーンデレンであれば、東部ワロン地域を代表するのがリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。レースの舞台となるのは、リエージュの南方に広がる丘陵地帯だ。コースはレース名の通りリエージュとバストーニュの往復。丘陵地帯を逆回りに8の字を描き、リエージュ近郊の街アンスでフィニッシュを迎える。
「アップダウンを繰り返し、最後は短い坂を駆け上がってフィニッシュ」というコースの特性は、他のアルデンヌ2戦(アムステルとフレーシュ)と共通だが、登り一つ一つの距離が長いのがリエージュの特徴だ。アムステルとフレーシュが「丘のレース」なら、リエージュは「山のレース」。ほとんどの登りは全長が2km以上であり、一日の獲得標高差は4,500mに達する。コース全長も258kmと長く、難易度、距離、格式においてアルデンヌナンバーワンと呼ばれるのも頷ける。
細かい上りを数え始めるとキリが無いようなアップダウンコース。そのうち、カテゴリーが付けられた登り坂は10カ所ある。中でも、選手たちが壁をよじ上っているような光景が見られるのが、116.0km地点に登場する「コート・ド・サンロシュ(平均勾配11.1%)」だ。この難所を越え、ラスト100kmを切ってからは断続的に登り坂が襲いかかる。
エディ・メルクスの記念碑が建てられた名物坂「コート・ド・ストック(平均勾配12.4%)」は道路工事によって2年連続回避する。2017年は最大勾配17%のメルクス坂だけでなく、前後の「コート・ド・ワンヌ(平均7.2%)」と「コート・ド・ラ・オートルヴェ(平均5.6%)」も取り払われ、レース主催者は代わりに「コート・ド・ポン(平均10.5%)」「コート・ド・ベルヴォー(平均6.8%)」「コート・ド・ラ・フェルムリベール(平均12.1%/最大19%)」という3つの連続する登り坂を新たに導入している。かつての3連続坂よりも登坂距離は減ったが、勾配のある坂が増えている印象だ。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ名物のコート・ド・サンロッシュを駆け上がる集団 photo:CorVos
牽制しながらフィニッシュ手前の上りを進む photo:CorVos
本格的な闘いのゴングが鳴らされるのが、フィニッシュ36km手前の「コート・ド・ラ・ルドゥット(平均8.9%)」から。フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)の出身地に近く、PHILのペイントが施されたこのラ・ルドゥットは最大勾配が17%に達する。
ラ・ルドゥット通過後は「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(平均9.3%)」と「コート・ド・サンニコラ(平均8.6%)」を立て続けにクリアし、リエージュの街中を抜けてアンスに至る登りに入る。2016年に初めてフィニッシュ直前に導入され、セレクションの場となった石畳坂「コート・ド・ラ・リューナニオ(平均10.5%)」は省略された。
フィニッシュ地点アンスに向かう登りは勾配4%前後。勾配の緩さから決定的なアタックは生まれにくく、後続にも挽回のチャンスはある。厳しい登りのセレクションで生き残った数名もしくは小集団によるスプリントか、それともライバルを振り切った勇者による単独逃げ切りか。天気予報によると日曜日のリエージュは晴れ時々曇りで、風は弱め。最高気温12度・最低気温3度と肌寒いが、降水確率の低さから雨の心配はなさそうだ。
登場する10カ所の登り
1 70.0km コート・ド・ロッシュ・アン・アルデンヌ 長さ2.8km・平均勾配6.2%
2 116.0km コート・ド・サンロシュ 長さ1.0km・平均勾配11.2%
3 168.0km コート・ド・ポン 長さ1.0km・平均勾配10.5%
4 172.0km コート・ド・ベルヴォー 長さ1.1km・平均勾配6.8%
5 180.0km コート・ド・ラ・フェルメリベール 長さ1.2km・平均勾配12.1%
6 198.0km コル・ドゥ・ロジエ 長さ4.4km・平均勾配5.9%
7 211.0km コル・ドゥ・マキサール 長さ2.5km・平均勾配5%
8 222.5km コート・ド・ラ・ルドゥット 長さ2.0km・平均勾配8.9%
9 239.0km コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン 長さ1.5km・平均勾配9.3%
10 252.5km コート・ド・サンニコラ 長さ1.2km・平均勾配8.6%
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2017 image:A.S.O.
バルベルデの快進撃を止めるのは誰?クウィアトやマーティン、GVAが対抗馬
2016年大会を制したワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)は膝の故障により欠場。チームスカイはディフェンディングチャンピオンを欠きながらも、アムステルゴールドレースで2位に入ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)やセルジオルイス・エナオ(コロンビア)、ディエゴ・ローザ(イタリア)ら強力なメンバーを揃えている。
優勝候補の筆頭は2006年、2008年、2015年大会の優勝者で、直前のラ・フレーシュ・ワロンヌで圧巻の5勝目を飾ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)だろう。36歳のバルベルデは世界最高峰の登坂力とパンチのあるスプリント力を兼ね備えている。バルベルデを支えるモビスターのメンバーは25チームの中で最も経験豊富だ(合計出場回数38回、平均年齢31歳129日)。
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:TDWsport
ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:TDWsport
GVAことグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)は自身4回目のリエージュ出走。パリ〜ルーベ覇者は2011年大会で7位に入っており、モニュメント連続制覇を目指す。BMCレーシングからは過去に6回トップ10入りし、13回目の出場となるサムエル・サンチェス(スペイン)も出場する。
2014年大会の優勝者サイモン・ゲランス(オーストラリア)を擁するオリカ・スコットは、アルデンヌスペシャリストのミヒャエル・アルバジーニ(スイス)やイェーツ兄弟(イギリス)を揃える。ワレン・バルギル(フランス)とトム・デュムラン(オランダ)を揃えるサンウェブも強力だ。フレーシュ2位のダニエル・マーティン(アイルランド)は引き続きジルベールとアラフィリップを欠いたクイックステップフロアーズを率いての出場となる。
グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo: TDWsport
ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) photo:CorVos
他にもロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)やルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)といったグランツールレーサーが勢ぞろい。
ホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)は2012年大会3位のエンリーコ・ガスパロット(イタリア)とタッグを組んでの出場で、フレーシュで終盤までアシストをこなした新城幸也もメンバー入り。自身6回目の出場となる別府史之(トレック・セガフレード)はヤルリンソン・パンタノ(コロンビア)やファビオ・フェリーネ(イタリア)をサポートする。
別府史之(トレック・セガフレード) photo:TDWsport
新城幸也(バーレーン・メリダ) photo: CorVos
text:Kei Tsuji
レース中盤に勾配のある3連続登坂が登場 115年の伝統戦
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2017年は開催103回目。「モニュメント」と呼ばれる世界5大クラシック(サンレモ、ロンド、パリ〜ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)の一つとして数えられており、格式の点ではアルデンヌ3連戦の中で際立って大きい。
ベルギー西部のフランデレン地域を代表するのがロンド・ファン・フラーンデレンであれば、東部ワロン地域を代表するのがリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。レースの舞台となるのは、リエージュの南方に広がる丘陵地帯だ。コースはレース名の通りリエージュとバストーニュの往復。丘陵地帯を逆回りに8の字を描き、リエージュ近郊の街アンスでフィニッシュを迎える。
「アップダウンを繰り返し、最後は短い坂を駆け上がってフィニッシュ」というコースの特性は、他のアルデンヌ2戦(アムステルとフレーシュ)と共通だが、登り一つ一つの距離が長いのがリエージュの特徴だ。アムステルとフレーシュが「丘のレース」なら、リエージュは「山のレース」。ほとんどの登りは全長が2km以上であり、一日の獲得標高差は4,500mに達する。コース全長も258kmと長く、難易度、距離、格式においてアルデンヌナンバーワンと呼ばれるのも頷ける。
細かい上りを数え始めるとキリが無いようなアップダウンコース。そのうち、カテゴリーが付けられた登り坂は10カ所ある。中でも、選手たちが壁をよじ上っているような光景が見られるのが、116.0km地点に登場する「コート・ド・サンロシュ(平均勾配11.1%)」だ。この難所を越え、ラスト100kmを切ってからは断続的に登り坂が襲いかかる。
エディ・メルクスの記念碑が建てられた名物坂「コート・ド・ストック(平均勾配12.4%)」は道路工事によって2年連続回避する。2017年は最大勾配17%のメルクス坂だけでなく、前後の「コート・ド・ワンヌ(平均7.2%)」と「コート・ド・ラ・オートルヴェ(平均5.6%)」も取り払われ、レース主催者は代わりに「コート・ド・ポン(平均10.5%)」「コート・ド・ベルヴォー(平均6.8%)」「コート・ド・ラ・フェルムリベール(平均12.1%/最大19%)」という3つの連続する登り坂を新たに導入している。かつての3連続坂よりも登坂距離は減ったが、勾配のある坂が増えている印象だ。
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ラ・ルドゥット通過後は「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(平均9.3%)」と「コート・ド・サンニコラ(平均8.6%)」を立て続けにクリアし、リエージュの街中を抜けてアンスに至る登りに入る。2016年に初めてフィニッシュ直前に導入され、セレクションの場となった石畳坂「コート・ド・ラ・リューナニオ(平均10.5%)」は省略された。
フィニッシュ地点アンスに向かう登りは勾配4%前後。勾配の緩さから決定的なアタックは生まれにくく、後続にも挽回のチャンスはある。厳しい登りのセレクションで生き残った数名もしくは小集団によるスプリントか、それともライバルを振り切った勇者による単独逃げ切りか。天気予報によると日曜日のリエージュは晴れ時々曇りで、風は弱め。最高気温12度・最低気温3度と肌寒いが、降水確率の低さから雨の心配はなさそうだ。
登場する10カ所の登り
1 70.0km コート・ド・ロッシュ・アン・アルデンヌ 長さ2.8km・平均勾配6.2%
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4 172.0km コート・ド・ベルヴォー 長さ1.1km・平均勾配6.8%
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8 222.5km コート・ド・ラ・ルドゥット 長さ2.0km・平均勾配8.9%
9 239.0km コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン 長さ1.5km・平均勾配9.3%
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バルベルデの快進撃を止めるのは誰?クウィアトやマーティン、GVAが対抗馬
2016年大会を制したワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)は膝の故障により欠場。チームスカイはディフェンディングチャンピオンを欠きながらも、アムステルゴールドレースで2位に入ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)やセルジオルイス・エナオ(コロンビア)、ディエゴ・ローザ(イタリア)ら強力なメンバーを揃えている。
優勝候補の筆頭は2006年、2008年、2015年大会の優勝者で、直前のラ・フレーシュ・ワロンヌで圧巻の5勝目を飾ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)だろう。36歳のバルベルデは世界最高峰の登坂力とパンチのあるスプリント力を兼ね備えている。バルベルデを支えるモビスターのメンバーは25チームの中で最も経験豊富だ(合計出場回数38回、平均年齢31歳129日)。
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2014年大会の優勝者サイモン・ゲランス(オーストラリア)を擁するオリカ・スコットは、アルデンヌスペシャリストのミヒャエル・アルバジーニ(スイス)やイェーツ兄弟(イギリス)を揃える。ワレン・バルギル(フランス)とトム・デュムラン(オランダ)を揃えるサンウェブも強力だ。フレーシュ2位のダニエル・マーティン(アイルランド)は引き続きジルベールとアラフィリップを欠いたクイックステップフロアーズを率いての出場となる。
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text:Kei Tsuji
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