2017/02/13(月) - 10:03
ついに販売が開始されたシマノの新型電動コンポーネント デュラエースR9150 Di2。より小型化、エアロ化が進んだ新機材の性能を確かめるべくインプレッションを行った。新たに対応したシンクロシフトについても併せて動画で紹介しよう。
2009年に登場しロードバイクの変速機構を1段高いステージへ押し上げた、シマノの革新的な電動変速システム「Di2(デジタル・インテグレイテッド・インテリジェンス)」。ロードコンポーネントの歴史を塗り替えたこの技術は、そのストレスフリーな操作性から現代のプロロードレースのプロトンにおいて圧倒的な使用率を誇る。
デュラエースDi2の歴史は10速時代の7970系に始まる。当時シマノがサポートを行っていたUCIプロチームのスキル・シマノへの供給を皮切りに、まだ機械式コンポーネントが主流であったプロトンに瞬く間に広がっていった。高いエアロ効果と変速性能から、特に導入のメリットが大きかったTTバイクへ早々に採用され、レバーが廃された従来とは形状の全く異なる変速機構に衝撃を受けた人も多いだろう。
2013年にはクランクの4アーム化、そして11速化と大きく進化。電動コンポーネントのベンチマークとなり数多くのビックレースでの勝利に貢献した9070系を経て、この2月より販売を開始したR9100系で第3世代となる(新型デュラエース取扱店はこちら)。先日行われたツアー・ダウンアンダーにおいてもチームスカイが他チームに先駆け使用を開始。今後もシマノのサポートを受けるチームに随時導入が進められることだろう。
「より直感的でシンプルな操作方法」をコンセプトに大幅な進化を遂げたR9150系Di2。一番大きなトピックとしては、そのコンセプトを体現するべく、同社のMTB用コンポーネント「XTR」で初めて採用されたギア比の自動調整機能「シンクロシフト」が投入されたことだ。
このシンクロシフト、2つのモードがプリセットされている。「フルシンクロモード」は、M9050系XTR Di2と同様に、リアディレーラーの変速を基準にフロントを自動変速させ、同じギア比でもより効率の良い歯の組み合わせを選択してくれるというもの。「セミシンクロモード」はフロントディレイラーの変速にあわせてリアが1~4段変速するというもので、変速前のギア比をキープしてくれる。なお、フロントとリアの歯数の組み合わせにより最大変速段数は変化する。もちろん、前後を左右それぞれのスイッチで変速する「マルチシフトモード」も選択できる。
シンクロシフトの設定手順は、シマノが配信するDi2管理用アプリケーション「E-TUBE PROJECT」にてコンポーネントを最新のファームウェアにアップデート。カスタマイズ画面からシフトモードを選択すれば完了だ。設定画面では、どのギア比の時に、何枚目のギアの時に自動で前後ディレイラーを稼働(シンクロ)させるかをシンクロシフトマップにて細かく調整することができ、より自分のフィーリングに合ったシフティングを実現可能となっている。
メカ自体を見ていけば、よりスイッチ面が大きく取られたシフトレバーや、Shadow(シャドー)デザインを導入したリアディレイラー。小型化が進んだフロントディレイラーなど、各パーツデザインに大幅なアップデートが加えられている(詳しいスペックに関してはこちらを参照)。
今回は先日発表されたピナレロの最新モデル、ドグマF10に搭載された形でデュラエースR9150 Di2をテスト。ライダーはツール・ド・おきなわ市民200kmやジャパンカップオープンクラスで優勝経験を持つ、サイクルポイントオーベストの西谷雅史店長だ。早速インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「レバーのフィット感が格段に向上、各メカも完成度は非常に高い」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
9070系と比べて一番良くなったと感じるのはやはりレバーの形状ですね。前作ではブラケット先端が膨らんだ丸みがありましたが、R9150レバーでは面が切られたフラットな形状に変わり、さらに左右非対称のデザインが採用されたことで、フィット感が格段に良くなりました。
シフトスイッチも大きくなって操作性が増しましたし、クリック感が強くなったのも一つトピックですね。スラムのRED eTapほどではありませんが、カチッと確実に押している感覚が指先に伝わります。機械式のR9100レバーと比べても細身で握りやすくなりましたし、ブラケットカバーはゴムの質感がソフトになり、より手にフィットする感じがありました。
もう1つ感動したのがブラケット先端上部にあるスイッチAの配置ですね。9070系では先端のやや後ろに配置され、押す際には指で少し探すような動作になりがちでした。今回のR9150レバーでは、前目に配置される変更が加えられ、明らかに自然な位置で押しやすくなっています。今まではオマケくらいにしか使っていなかったスイッチでしたが、このアップデートにより積極的な変速操作が可能となり、今後は機能を持たせたギミックの1つとして活用していけると思います。
各メカを見ていけば、フロントディレイラーはより小型化しつつもパワフルな変速性能はそのままで、操作性も今までと変わりません。どんなトルクの時でもしっかりと変速する安心感がありますね。
形状が大きく変化したリアディレイラーは、横に出っ張らないルックスも良く、シャドーデザインによるメカ自体の動きも非常にスムーズです。新しいデザインながら変速性能も良く、クオリティの高さを感じました。メカニック目線で言えば、プーリーとスプロケットの距離を調整するBテンションボルトの精度が上がっています。セッティングがしやすくなっており、プーリー位置をきっちり決めることができるので、変速性能の向上に繋がっていると感じました。
一つ欠点を挙げると、このシャドーデザインになったことでホイールが従来よりも外し・嵌めがしづらくなっています。プーリーケージがリアエンドの前に回り込んでいるため、クイックリリース部分が当たってしまい、慣れないとスムーズにセットできない印象を受けました。
全体的に見れば機械としての完成度は非常に高く、他社製品と比べすべての精度が高いのはさすがシマノといったところです。変速部分以外のところで見ても、ブレーキも性能が上がっており、ベストなセッティングができればディスクブレーキと変わらない効きを見せますね。どのメカも細かいところまで作り込んであって、どんなライダーでも満足できる仕上がりではないでしょうか。
インプレッションライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。
サイクルポイント オーベストFacebook
2009年に登場しロードバイクの変速機構を1段高いステージへ押し上げた、シマノの革新的な電動変速システム「Di2(デジタル・インテグレイテッド・インテリジェンス)」。ロードコンポーネントの歴史を塗り替えたこの技術は、そのストレスフリーな操作性から現代のプロロードレースのプロトンにおいて圧倒的な使用率を誇る。
デュラエースDi2の歴史は10速時代の7970系に始まる。当時シマノがサポートを行っていたUCIプロチームのスキル・シマノへの供給を皮切りに、まだ機械式コンポーネントが主流であったプロトンに瞬く間に広がっていった。高いエアロ効果と変速性能から、特に導入のメリットが大きかったTTバイクへ早々に採用され、レバーが廃された従来とは形状の全く異なる変速機構に衝撃を受けた人も多いだろう。
2013年にはクランクの4アーム化、そして11速化と大きく進化。電動コンポーネントのベンチマークとなり数多くのビックレースでの勝利に貢献した9070系を経て、この2月より販売を開始したR9100系で第3世代となる(新型デュラエース取扱店はこちら)。先日行われたツアー・ダウンアンダーにおいてもチームスカイが他チームに先駆け使用を開始。今後もシマノのサポートを受けるチームに随時導入が進められることだろう。
「より直感的でシンプルな操作方法」をコンセプトに大幅な進化を遂げたR9150系Di2。一番大きなトピックとしては、そのコンセプトを体現するべく、同社のMTB用コンポーネント「XTR」で初めて採用されたギア比の自動調整機能「シンクロシフト」が投入されたことだ。
このシンクロシフト、2つのモードがプリセットされている。「フルシンクロモード」は、M9050系XTR Di2と同様に、リアディレーラーの変速を基準にフロントを自動変速させ、同じギア比でもより効率の良い歯の組み合わせを選択してくれるというもの。「セミシンクロモード」はフロントディレイラーの変速にあわせてリアが1~4段変速するというもので、変速前のギア比をキープしてくれる。なお、フロントとリアの歯数の組み合わせにより最大変速段数は変化する。もちろん、前後を左右それぞれのスイッチで変速する「マルチシフトモード」も選択できる。
シンクロシフトの設定手順は、シマノが配信するDi2管理用アプリケーション「E-TUBE PROJECT」にてコンポーネントを最新のファームウェアにアップデート。カスタマイズ画面からシフトモードを選択すれば完了だ。設定画面では、どのギア比の時に、何枚目のギアの時に自動で前後ディレイラーを稼働(シンクロ)させるかをシンクロシフトマップにて細かく調整することができ、より自分のフィーリングに合ったシフティングを実現可能となっている。
メカ自体を見ていけば、よりスイッチ面が大きく取られたシフトレバーや、Shadow(シャドー)デザインを導入したリアディレイラー。小型化が進んだフロントディレイラーなど、各パーツデザインに大幅なアップデートが加えられている(詳しいスペックに関してはこちらを参照)。
今回は先日発表されたピナレロの最新モデル、ドグマF10に搭載された形でデュラエースR9150 Di2をテスト。ライダーはツール・ド・おきなわ市民200kmやジャパンカップオープンクラスで優勝経験を持つ、サイクルポイントオーベストの西谷雅史店長だ。早速インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「レバーのフィット感が格段に向上、各メカも完成度は非常に高い」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
9070系と比べて一番良くなったと感じるのはやはりレバーの形状ですね。前作ではブラケット先端が膨らんだ丸みがありましたが、R9150レバーでは面が切られたフラットな形状に変わり、さらに左右非対称のデザインが採用されたことで、フィット感が格段に良くなりました。
シフトスイッチも大きくなって操作性が増しましたし、クリック感が強くなったのも一つトピックですね。スラムのRED eTapほどではありませんが、カチッと確実に押している感覚が指先に伝わります。機械式のR9100レバーと比べても細身で握りやすくなりましたし、ブラケットカバーはゴムの質感がソフトになり、より手にフィットする感じがありました。
もう1つ感動したのがブラケット先端上部にあるスイッチAの配置ですね。9070系では先端のやや後ろに配置され、押す際には指で少し探すような動作になりがちでした。今回のR9150レバーでは、前目に配置される変更が加えられ、明らかに自然な位置で押しやすくなっています。今まではオマケくらいにしか使っていなかったスイッチでしたが、このアップデートにより積極的な変速操作が可能となり、今後は機能を持たせたギミックの1つとして活用していけると思います。
各メカを見ていけば、フロントディレイラーはより小型化しつつもパワフルな変速性能はそのままで、操作性も今までと変わりません。どんなトルクの時でもしっかりと変速する安心感がありますね。
形状が大きく変化したリアディレイラーは、横に出っ張らないルックスも良く、シャドーデザインによるメカ自体の動きも非常にスムーズです。新しいデザインながら変速性能も良く、クオリティの高さを感じました。メカニック目線で言えば、プーリーとスプロケットの距離を調整するBテンションボルトの精度が上がっています。セッティングがしやすくなっており、プーリー位置をきっちり決めることができるので、変速性能の向上に繋がっていると感じました。
一つ欠点を挙げると、このシャドーデザインになったことでホイールが従来よりも外し・嵌めがしづらくなっています。プーリーケージがリアエンドの前に回り込んでいるため、クイックリリース部分が当たってしまい、慣れないとスムーズにセットできない印象を受けました。
全体的に見れば機械としての完成度は非常に高く、他社製品と比べすべての精度が高いのはさすがシマノといったところです。変速部分以外のところで見ても、ブレーキも性能が上がっており、ベストなセッティングができればディスクブレーキと変わらない効きを見せますね。どのメカも細かいところまで作り込んであって、どんなライダーでも満足できる仕上がりではないでしょうか。
インプレッションライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。
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