2016/12/26(月) - 18:11
野辺山シクロクロスと全日本選手権を終え、後半戦へと入りつつあるシクロクロスシーズン。トップシクロクロッサーが駆るバイクを全3編にて紹介します。今回は2連覇を飾った女子チャンピオン坂口聖香、ディスクブレーキを投入した竹之内悠ほか、松本駿、竹内遼という4名の機材にクローズアップ。
坂口聖香(パナソニックレディース) パナソニック FCXT09
2年連続の全日本王者に輝いた坂口聖香(パナソニックレディース)は、今シーズンからいよいよ2台のディスクブレーキバイクを投入。新しくカタログに加わったPOS(パナソニックオーダーシステム)のチタンモデル「FCXT09」に乗って最高の結果を導き出した。3AL2.5Vパイプを採用し、チタン独自のしなやかさと軽快感を高めたことがFCXT09の特徴で、フィードバックを活かし、リアブレーキホース/アウターをあえて外出しルーティングに設定しているなど、レースでの緊急時の作業性まで踏まえた実戦仕様のレースバイクだ。
一般販売品との違いは、小型のリアドロップアウトを採用していること。これによってチェーンステー長を伸ばし、しなやかさ・振動吸収性を増していることが特徴だ。各部寸法はもちろん坂口のためのカスタムジオメトリーで、ここにフレームとのマッチペイントを施した(一台は市販品と同じブラック)、ワンバイエスのOBS-CBDフォークを組み合わせている。
コンポーネントは9000系デュラエースを基本に、クラックセットのみ46-36Tの設定が用意されているアルテグラ。リアスプロケットは最大28Tという組み合わせだ。足回りは今シーズンからラインナップされているマヴィックのディスクブレーキ用カーボンチューブラー、Cosmic Pro Carbon SL Tubuler Discをセットし、プロトタイプの刻印があるチャレンジのTEAM EDITION(ソフト版)を履く。
その他パーツはワンバイエスで統一されており、握りやすいグランモンローハンドルやブレンドステム、カーボンアキレスシートポスト、ナロウサーティー ソウル サドルなど、小回りの効く日本人向けの部品が選択されている。なお坂口自身がデザインしたチョコレート柄のサドルは予備車として持ち込まれたカンチブレーキバイクにセットされていた。
竹之内悠(東洋フレーム)東洋フレーム プロトタイプディスク
連勝記録が途絶えてしまった竹之内悠(東洋フレーム)だが、今シーズンは新型ディスクブレーキバイクを投入という別の話題を提供してくれた。野辺山シクロクロスから投入され、その際の好感触をもとにスペアバイクを急遽用意して全日本選手権にはカラーを変えた2台が持ち込まれた。
最たる特徴は、ハンドメイドバイクながら、ディスクブレーキと前後12mmスルーアクスルに対応していること。フォークの都合からフロントブレーキのみポストマウントだが、リアのフラットマウント台座採用や、142mm幅エンドなど、ディスクブレーキロード/シクロクロスバイクのスタンダード規格を盛り込んでいる。
フレームはこれまでの東洋フレーム製レーシングバイクの系譜に倣ったスチール+カーボンのハイブリッド式であり、ダウンチューブとトップチューブのカーボンパイプにはグラファイトデザインの「M40J」を採用。これはディスクブレーキの重さを補う俊敏な走りを目指したことに理由がある。142mmエンドに対応しながらタイヤやホイールとのクリアランス、そして剛性を調整すべく、3次元的に曲げたチェーンステーが見どころで、日本でCNC加工を行った専用設計のアルミ製リアエンドを溶接している。まだ車名は未決定だが、市販化まであまり時間は要さないとのことだ。
ディスクブレーキ化に伴い、ホイールはベルギーのトッププロチームであるマーラックス・ナポレオンゲームスも使用するファストフォワードの本国販売モデルである「F3D」。竹之内のリクエストで特別に入荷させたというが、同ブランドを取り扱うジェイピースポーツグループでは受注発注での販売が可能だという。組み合わせるタイヤはデュガスで、全日本選手権本番ではサイコロのような巨大ノブを互い違いに配置したプロトパターンを使用していた。
コンポーネントは9070系デュラエースを基本に、チェーンリングのみ46-36Tのアルテグラ。ペダルは一貫して愛用している旧型のタイムATACだ。駆動系のケミカルチューンはレーシングカーのオイルを専門に開発するミッドランドが担当し、竹之内のアドバイスをもとに改良を続けている特殊な自転車競技用オイルを塗布していた。
松本駿(SCOTT) スコット ADDICT CX
スコットとシマノのフルサポートを受ける松本駿(SCOTT)。本業はMTBながら、シクロクロスにも力を注いで参戦している。その走りを支えるのはスコットのハイエンドカーボンレーサーであるADDICT CX。今年からディスクブレーキを投入しているが、もともとMTBで慣れていることからより安心してコントロールできるようになったと言う。
バイクについては「リアバックのしなりがあって、反則なくらい良く進みますね。加えて軽量ですから、下り坂を使って加速する際の伸びがものすごいんです。特に多少強引な走りになるレースでは特にそれを強く感じますね」と太鼓判。
コンポーネントはMTB選手らしくXTRDi2のリアディレイラーをST-R785で動かす仕組みで、取材時は上山田の高速コースに合わせてデュラエースのフロントチェーンリングをシングルに。歯数はやや軽めの39T、スプロケットはXTRの12-31Tを組み合わせていた。アウターリングはチェーン落ちガードとしての役目を与えるために残し、歯は削り落としている。
またDi2のシフトインジケーターをハンドルに装備し、常時バッテリー残量と使用中のギアが把握できるようにしている。「シクロクロスだとあまり付けている選手を見ませんが、Di2ユーザーなら是非お勧めしたいですね。私はロードバイクも含めて全てのバイクに装備していますよ」と言う。また、フロントのディスクブレーキローターは純正の160mmローターから、タイヤの許容力を踏まえて140mmに変更。タイヤはIRCのSERACシリーズをコンディションによって使い分けている。
竹内遼(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)ミヤタ The Elevation CX
MTBクロスカントリーレースを本業としながら、今年のシクロクロス全日本選手権男子U23に出場した竹内遼(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)。普段はメリダのMTBでレースを走っているが、シクロクロスはメリダの輸入販売を行うミヤタのオリジナルスチールバイク「The Elevation CX」を駆る。
コロンバスがミヤタサイクルのためだけに製造するFORCELITE Nbチューブ(ニオブを添加したクロモリ鋼)を使い、さらにチューブ内側には螺旋状の溝を設けることで剛性と軽量化を狙ったThe Elevation CX。竹内は「重量こそありますが、走り自体は軽いフィーリングで良いですね。しなやかです」とコメント。
コンポーネントは変速系がスラムの10速Force、ブレーキキャリパーはシマノ(チドリはダイアコンペ)、チェーンがKMCと、チームのサプライヤーを基本に各ブランドをミックスしている。クランクセットは高い楕円率のインナーリングと真円のアウターリングを組み合わせ、更に独自の機構を搭載したことで話題のスギノCXC901Dだ。
また、ハンドルやステム、シートポストはコントロールテック製で、ホイールは同じく長野出身の先輩である横山航太(シマノレーシング)から譲ってもらったというノバテック。タイヤはチャレンジのTEAM EDITIONだった。
text:So.Isobe
坂口聖香(パナソニックレディース) パナソニック FCXT09
2年連続の全日本王者に輝いた坂口聖香(パナソニックレディース)は、今シーズンからいよいよ2台のディスクブレーキバイクを投入。新しくカタログに加わったPOS(パナソニックオーダーシステム)のチタンモデル「FCXT09」に乗って最高の結果を導き出した。3AL2.5Vパイプを採用し、チタン独自のしなやかさと軽快感を高めたことがFCXT09の特徴で、フィードバックを活かし、リアブレーキホース/アウターをあえて外出しルーティングに設定しているなど、レースでの緊急時の作業性まで踏まえた実戦仕様のレースバイクだ。
一般販売品との違いは、小型のリアドロップアウトを採用していること。これによってチェーンステー長を伸ばし、しなやかさ・振動吸収性を増していることが特徴だ。各部寸法はもちろん坂口のためのカスタムジオメトリーで、ここにフレームとのマッチペイントを施した(一台は市販品と同じブラック)、ワンバイエスのOBS-CBDフォークを組み合わせている。
コンポーネントは9000系デュラエースを基本に、クラックセットのみ46-36Tの設定が用意されているアルテグラ。リアスプロケットは最大28Tという組み合わせだ。足回りは今シーズンからラインナップされているマヴィックのディスクブレーキ用カーボンチューブラー、Cosmic Pro Carbon SL Tubuler Discをセットし、プロトタイプの刻印があるチャレンジのTEAM EDITION(ソフト版)を履く。
その他パーツはワンバイエスで統一されており、握りやすいグランモンローハンドルやブレンドステム、カーボンアキレスシートポスト、ナロウサーティー ソウル サドルなど、小回りの効く日本人向けの部品が選択されている。なお坂口自身がデザインしたチョコレート柄のサドルは予備車として持ち込まれたカンチブレーキバイクにセットされていた。
竹之内悠(東洋フレーム)東洋フレーム プロトタイプディスク
連勝記録が途絶えてしまった竹之内悠(東洋フレーム)だが、今シーズンは新型ディスクブレーキバイクを投入という別の話題を提供してくれた。野辺山シクロクロスから投入され、その際の好感触をもとにスペアバイクを急遽用意して全日本選手権にはカラーを変えた2台が持ち込まれた。
最たる特徴は、ハンドメイドバイクながら、ディスクブレーキと前後12mmスルーアクスルに対応していること。フォークの都合からフロントブレーキのみポストマウントだが、リアのフラットマウント台座採用や、142mm幅エンドなど、ディスクブレーキロード/シクロクロスバイクのスタンダード規格を盛り込んでいる。
フレームはこれまでの東洋フレーム製レーシングバイクの系譜に倣ったスチール+カーボンのハイブリッド式であり、ダウンチューブとトップチューブのカーボンパイプにはグラファイトデザインの「M40J」を採用。これはディスクブレーキの重さを補う俊敏な走りを目指したことに理由がある。142mmエンドに対応しながらタイヤやホイールとのクリアランス、そして剛性を調整すべく、3次元的に曲げたチェーンステーが見どころで、日本でCNC加工を行った専用設計のアルミ製リアエンドを溶接している。まだ車名は未決定だが、市販化まであまり時間は要さないとのことだ。
ディスクブレーキ化に伴い、ホイールはベルギーのトッププロチームであるマーラックス・ナポレオンゲームスも使用するファストフォワードの本国販売モデルである「F3D」。竹之内のリクエストで特別に入荷させたというが、同ブランドを取り扱うジェイピースポーツグループでは受注発注での販売が可能だという。組み合わせるタイヤはデュガスで、全日本選手権本番ではサイコロのような巨大ノブを互い違いに配置したプロトパターンを使用していた。
コンポーネントは9070系デュラエースを基本に、チェーンリングのみ46-36Tのアルテグラ。ペダルは一貫して愛用している旧型のタイムATACだ。駆動系のケミカルチューンはレーシングカーのオイルを専門に開発するミッドランドが担当し、竹之内のアドバイスをもとに改良を続けている特殊な自転車競技用オイルを塗布していた。
松本駿(SCOTT) スコット ADDICT CX
スコットとシマノのフルサポートを受ける松本駿(SCOTT)。本業はMTBながら、シクロクロスにも力を注いで参戦している。その走りを支えるのはスコットのハイエンドカーボンレーサーであるADDICT CX。今年からディスクブレーキを投入しているが、もともとMTBで慣れていることからより安心してコントロールできるようになったと言う。
バイクについては「リアバックのしなりがあって、反則なくらい良く進みますね。加えて軽量ですから、下り坂を使って加速する際の伸びがものすごいんです。特に多少強引な走りになるレースでは特にそれを強く感じますね」と太鼓判。
コンポーネントはMTB選手らしくXTRDi2のリアディレイラーをST-R785で動かす仕組みで、取材時は上山田の高速コースに合わせてデュラエースのフロントチェーンリングをシングルに。歯数はやや軽めの39T、スプロケットはXTRの12-31Tを組み合わせていた。アウターリングはチェーン落ちガードとしての役目を与えるために残し、歯は削り落としている。
またDi2のシフトインジケーターをハンドルに装備し、常時バッテリー残量と使用中のギアが把握できるようにしている。「シクロクロスだとあまり付けている選手を見ませんが、Di2ユーザーなら是非お勧めしたいですね。私はロードバイクも含めて全てのバイクに装備していますよ」と言う。また、フロントのディスクブレーキローターは純正の160mmローターから、タイヤの許容力を踏まえて140mmに変更。タイヤはIRCのSERACシリーズをコンディションによって使い分けている。
竹内遼(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)ミヤタ The Elevation CX
MTBクロスカントリーレースを本業としながら、今年のシクロクロス全日本選手権男子U23に出場した竹内遼(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)。普段はメリダのMTBでレースを走っているが、シクロクロスはメリダの輸入販売を行うミヤタのオリジナルスチールバイク「The Elevation CX」を駆る。
コロンバスがミヤタサイクルのためだけに製造するFORCELITE Nbチューブ(ニオブを添加したクロモリ鋼)を使い、さらにチューブ内側には螺旋状の溝を設けることで剛性と軽量化を狙ったThe Elevation CX。竹内は「重量こそありますが、走り自体は軽いフィーリングで良いですね。しなやかです」とコメント。
コンポーネントは変速系がスラムの10速Force、ブレーキキャリパーはシマノ(チドリはダイアコンペ)、チェーンがKMCと、チームのサプライヤーを基本に各ブランドをミックスしている。クランクセットは高い楕円率のインナーリングと真円のアウターリングを組み合わせ、更に独自の機構を搭載したことで話題のスギノCXC901Dだ。
また、ハンドルやステム、シートポストはコントロールテック製で、ホイールは同じく長野出身の先輩である横山航太(シマノレーシング)から譲ってもらったというノバテック。タイヤはチャレンジのTEAM EDITIONだった。
text:So.Isobe
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