2016/11/26(土) - 22:35
雪と泥に覆われたRaphaスーパークロス野辺山初日。UCIレース男子エリートは是が非でも2週間後の全日本選手権を獲りたい小坂光が勝利。女子は坂口聖香が貫禄さえ漂わせる圧勝で制した。
C1:沢田を振り切った小坂光が勝利。初の全日本タイトルに向けて弾み
エリート男子 第1コーナーになだれ込む選手たち photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート男子 好スタートを切ったギャリー・ミルバーン(Speedvagen MAAP) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート男子 2番手で1周目を走る竹之内悠(東洋フレーム) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート男子 中盤まで先頭パックをリードした沢田時(ブリヂストンアンカー) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc毎年多くの参加者・ファンを集めるRaphaスーパークロス野辺山(通称野辺山シクロクロス)。今年は大会2日前の木曜日に雪が降り積もり、朝の会場は見渡す限り雪と氷。それでもスタート地点となる滝沢牧場前の舗装路は関係者の除雪によってドライな状態が守られた。
固く凍りついた路面もスケジュールの進行とともに緩み、14:45のUCIエリート男子レーススタートの頃には硬い地面をチョコレート状の緩い泥が覆う状態に。しかし11月下旬の野辺山だけあって、レース中盤にはマイナスとなった気温が表面の水分を凍らせ、コースをスリッピーに、そして選手のコンディションを大きく乱す要因となった。
UCIエリート男子レースでホールショットを奪ったのは、オーストラリアから参戦しているギャリー・ミルバーン(Speedvagen MAAP)。ここに全日本王者の竹之内悠(東洋フレーム)や、丸山厚(BOMA Racing)、小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)が続く形で60分レースの幕が開けた。
そして2周目の舗装路の登り。後方から一気に沢田時(ブリヂストンアンカー)が仕掛けて先頭に立つと、ここから激しいアタック合戦が勃発する。このシャッフルによって先頭グループは沢田、小坂、横山航太(シマノレーシング)、キャメロン・ベアード(Cannondale/Cyclocrossworld.com)に絞りこまれ、全日本王者の竹之内はその後ろから追う苦しいレースを強いられた。
今シーズン絶好調をキープする沢田が積極的にリードを続け、追走する選手たちは苦しい表情を見せ始める。沢田は10秒ほどのリードを得て逃げ続けたが、5周目に痛恨の落車。これによって「落ち着いて走れば必ず追いつけると思っていました」と追走していた小坂が合流を果たし、続けざまにアタック。渾身の踏み込みでリードを奪うと、後ろを振り返らずにペダルを踏みつけた。
エリート男子 先頭パックで走るキャメロン・ベアード(Cannondale/Cyclocrossworld.com) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート男子 後方から追い上げた阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート男子 先頭を奪った小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート男子 沢田と横山を引き離す小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート男子 ガッツポーズでフィニッシュする小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.ccここまで各選手が代わる代わる主導権を奪い合うシーソーゲームが続いたが、このアタックによってレースは完全に小坂有利に傾いた。追走に回ってからどこかリズムを掴みきれない様子の沢田は徐々に水を開けられ、6周回目突入時には8秒、7周回突入時には13秒と二人の間隔は広がっていった。
しかし小坂がミスしたこともあり、最終周回にその差は2秒ほどまでに縮まった。このアナウンスに会場は大きくどよめいたが、終始落ち付き払った小坂は冷静にテクニカルセクションで縮まった差を挽回し、ここで勝負あり。これまで勝ちたくとも勝てずにいたここ野辺山での勝利を確信し、最終ストレートでは何度も力強いガッツポーズを見せてフィニッシュ。歓喜の表情でバイクを降りた小坂は、チームの田村メカと固く抱き合った。
「とても嬉しい。今日はイメージ通りのレース運びができたんです」と語る小坂。「野辺山は生まれ故郷である長野のレースですし、2週間後に宇都宮で開催される全日本選手権にも良いイメージを繋ぐことができます」と大一番に向けて弾みをつけた様子。2位に甘んじた沢田も「勝負を繰り返しているうちに冷静さを欠いてしまった。どこかバタバタしてうまく走れませんでしたが、試合運びの中での負けなので明日に繋がりますね」とレース内容に満足した表情を見せた。
そしてベアードの追撃を抑えた横山が残る表彰台の一角を抑え、「今シーズンのシクロクロス初戦でどれぐらい走れるかわかりませんでしたが、今回は100点満点の走り」と。こちらも年齢的に最後となるアンダータイトル獲得に向けて好感触を掴んだようだ。
エリート男子 チームスタッフと抱き合う小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート男子 健闘を称える小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)と沢田時(ブリヂストンアンカー) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート男子表彰台 2位沢田時(ブリヂストンアンカー)、1位小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)、3位横山航太(シマノレーシング) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
C1結果
1位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) 58'30"
2位 沢田時(ブリヂストンアンカー) +11"
3位 横山航太(シマノレーシング) +19"
4位 キャメロン・ベアード(Cannondale/Cyclocrossworld.com) +58"
5位 ギャリー・ミルバーン(Speedvagen MAAP) +1'41"
6位 丸山厚(BOMA Racing) +1'51"
7位 武井亨介(TEAM FORZA) +2'01"
8位 ケヴィン・ブラッドフォード(SET/Coaching.com) +2'10"
9位 前田公平(弱虫ペダルサイクリング) +3'03"
10位 竹之内悠(東洋フレーム) +3'07"
CL1:全日本王者の坂口聖香(パナソニックレディース)が貫禄の独走勝利
エリート女子 宮内佐季子(Club La.sista Offroad Team)を先頭に第1コーナーに向かう photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート女子 序盤から独走に持ち込んだ坂口聖香(パナソニックレディース) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート女子 坂口を追走する與那嶺恵理(TEAM・eriy.jp)と今井美穂(CycleClub.jp) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート女子 坂口を追走し続ける今井美穂(CycleClub.jp) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート女子 3位争いを繰り広げる與那嶺恵理(TEAM・eriy.jp) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc男子レースに先立って、13時30分にスタートの号砲が鳴ったUCIエリート女子レース。スタートダッシュでは元全日本王者の宮内佐季子(Club La.sista Offroad Team)が先行したものの、すぐに全日本チャンピオンジャージを纏う坂口聖香(パナソニックレディース)と與那嶺恵理(TEAM・eriy.jp)がパス。
次いで今井美穂(CycleClub.jp)、武田和佳(Liv)が続き、ここまでの5名が抜け出す形となり、福本千佳(東洋フレーム)や唐見実世子(弱虫ペダルサイクリング)ら後続との間隔を広げていく。その中から抜け出したのは、テクニックを問われる滑りやすい泥コースを得意とする坂口、そして今井だった。
コーナーでも、泥区間でも、そして登り舗装路でも力強い走りを見せる坂口は今井を突き放し、1周目から独走態勢を築き上げる。10秒、15秒とその間隔を徐々に広げ、共に女子エリートレースを走った選手に「あの走りは凄かった」と言わしめるパワーとテクニックで淡々とペースを刻んだ。
後続では武田、與那嶺、そして宮内の3名が前を追う形となったが、それぞれの得意・不得意分野が異なることで思うようにペースが上がらず、結果的に前を行く2人を逃してしまうことに。フラストレーションを感じた武田が抜け出しを図ったが、柵に引っかかるミスを喫して再びキャッチされた。
「3周目まで呼吸が苦しかった」と後に振り返る坂口だが、毎周ピットでのバイク交換を行いながらハイペースをキープしていく。「今シーズンは思うように練習を重ねることができていませんが、野辺山だけは良い走りをしたかった」と言う今井も粘りの追走を試みたが、最終的に二人の差は1分台にまで広がった。
来年からオランダ籍のロードチーム加入を決めている20歳の全日本王者。その走りは40分間衰えることなく、最後は力強くガッツポーズを繰り出してフィニッシュ。「スタートから前に出れた時、直感で今日はそのまま前に出て走ったほうがいいなと思い、力を緩めませんでした」と貫禄のレース運びを見せつけた。
大声援に迎えられながら2位フィニッシュした今井は「とにかく走って楽しかったです。コーナーなどの細かいところミスを少なくするように心がけて走りました。野辺山は自分の中で特別な思いがあるので、表彰台は外せないなと思って走りました。悪天候のほうが自分には向いているので、明日は雨が降ってドロドロになればいいですね!」と力強くコメント。3位パックから抜け出した與那嶺が表彰台の一角を抑え、4位に武田、5位に宮内と続いた。
エリート女子 5番手にポジションを上げた武田和佳(Liv) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート女子 独走でフィニッシュする坂口聖香(パナソニックレディース) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
エリート女子表彰台 2位今井美穂(CycleClub.jp)、1位坂口聖香(パナソニックレディース)、3位與那嶺恵理(TEAM・eriy.jp) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc
CL1結果
1位 坂口聖香(パナソニックレディース) 41'50"
2位 今井美穂(CycleClub.jp) +1'09"
3位 與那嶺恵理(TEAM・eriy.jp) +1'54"
4位 武田和佳(Liv) +2'02"
5位 宮内佐季子(Club La.sista Offroad Team) +3'02"
6位 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリング) +4'00"
7位 林口ゆきえ(SNEL CYCLOCROSS TEAM) +5'16"
8位 上田順子(ダム部) +5'55"
9位 モリス・フィオナ(MAAP) +6'02"
10位 西山みゆき(東洋フレーム) +6'38"
tex:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji
C1:沢田を振り切った小坂光が勝利。初の全日本タイトルに向けて弾み
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固く凍りついた路面もスケジュールの進行とともに緩み、14:45のUCIエリート男子レーススタートの頃には硬い地面をチョコレート状の緩い泥が覆う状態に。しかし11月下旬の野辺山だけあって、レース中盤にはマイナスとなった気温が表面の水分を凍らせ、コースをスリッピーに、そして選手のコンディションを大きく乱す要因となった。
UCIエリート男子レースでホールショットを奪ったのは、オーストラリアから参戦しているギャリー・ミルバーン(Speedvagen MAAP)。ここに全日本王者の竹之内悠(東洋フレーム)や、丸山厚(BOMA Racing)、小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)が続く形で60分レースの幕が開けた。
そして2周目の舗装路の登り。後方から一気に沢田時(ブリヂストンアンカー)が仕掛けて先頭に立つと、ここから激しいアタック合戦が勃発する。このシャッフルによって先頭グループは沢田、小坂、横山航太(シマノレーシング)、キャメロン・ベアード(Cannondale/Cyclocrossworld.com)に絞りこまれ、全日本王者の竹之内はその後ろから追う苦しいレースを強いられた。
今シーズン絶好調をキープする沢田が積極的にリードを続け、追走する選手たちは苦しい表情を見せ始める。沢田は10秒ほどのリードを得て逃げ続けたが、5周目に痛恨の落車。これによって「落ち着いて走れば必ず追いつけると思っていました」と追走していた小坂が合流を果たし、続けざまにアタック。渾身の踏み込みでリードを奪うと、後ろを振り返らずにペダルを踏みつけた。
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しかし小坂がミスしたこともあり、最終周回にその差は2秒ほどまでに縮まった。このアナウンスに会場は大きくどよめいたが、終始落ち付き払った小坂は冷静にテクニカルセクションで縮まった差を挽回し、ここで勝負あり。これまで勝ちたくとも勝てずにいたここ野辺山での勝利を確信し、最終ストレートでは何度も力強いガッツポーズを見せてフィニッシュ。歓喜の表情でバイクを降りた小坂は、チームの田村メカと固く抱き合った。
「とても嬉しい。今日はイメージ通りのレース運びができたんです」と語る小坂。「野辺山は生まれ故郷である長野のレースですし、2週間後に宇都宮で開催される全日本選手権にも良いイメージを繋ぐことができます」と大一番に向けて弾みをつけた様子。2位に甘んじた沢田も「勝負を繰り返しているうちに冷静さを欠いてしまった。どこかバタバタしてうまく走れませんでしたが、試合運びの中での負けなので明日に繋がりますね」とレース内容に満足した表情を見せた。
そしてベアードの追撃を抑えた横山が残る表彰台の一角を抑え、「今シーズンのシクロクロス初戦でどれぐらい走れるかわかりませんでしたが、今回は100点満点の走り」と。こちらも年齢的に最後となるアンダータイトル獲得に向けて好感触を掴んだようだ。
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C1結果
1位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) 58'30"
2位 沢田時(ブリヂストンアンカー) +11"
3位 横山航太(シマノレーシング) +19"
4位 キャメロン・ベアード(Cannondale/Cyclocrossworld.com) +58"
5位 ギャリー・ミルバーン(Speedvagen MAAP) +1'41"
6位 丸山厚(BOMA Racing) +1'51"
7位 武井亨介(TEAM FORZA) +2'01"
8位 ケヴィン・ブラッドフォード(SET/Coaching.com) +2'10"
9位 前田公平(弱虫ペダルサイクリング) +3'03"
10位 竹之内悠(東洋フレーム) +3'07"
CL1:全日本王者の坂口聖香(パナソニックレディース)が貫禄の独走勝利
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次いで今井美穂(CycleClub.jp)、武田和佳(Liv)が続き、ここまでの5名が抜け出す形となり、福本千佳(東洋フレーム)や唐見実世子(弱虫ペダルサイクリング)ら後続との間隔を広げていく。その中から抜け出したのは、テクニックを問われる滑りやすい泥コースを得意とする坂口、そして今井だった。
コーナーでも、泥区間でも、そして登り舗装路でも力強い走りを見せる坂口は今井を突き放し、1周目から独走態勢を築き上げる。10秒、15秒とその間隔を徐々に広げ、共に女子エリートレースを走った選手に「あの走りは凄かった」と言わしめるパワーとテクニックで淡々とペースを刻んだ。
後続では武田、與那嶺、そして宮内の3名が前を追う形となったが、それぞれの得意・不得意分野が異なることで思うようにペースが上がらず、結果的に前を行く2人を逃してしまうことに。フラストレーションを感じた武田が抜け出しを図ったが、柵に引っかかるミスを喫して再びキャッチされた。
「3周目まで呼吸が苦しかった」と後に振り返る坂口だが、毎周ピットでのバイク交換を行いながらハイペースをキープしていく。「今シーズンは思うように練習を重ねることができていませんが、野辺山だけは良い走りをしたかった」と言う今井も粘りの追走を試みたが、最終的に二人の差は1分台にまで広がった。
来年からオランダ籍のロードチーム加入を決めている20歳の全日本王者。その走りは40分間衰えることなく、最後は力強くガッツポーズを繰り出してフィニッシュ。「スタートから前に出れた時、直感で今日はそのまま前に出て走ったほうがいいなと思い、力を緩めませんでした」と貫禄のレース運びを見せつけた。
大声援に迎えられながら2位フィニッシュした今井は「とにかく走って楽しかったです。コーナーなどの細かいところミスを少なくするように心がけて走りました。野辺山は自分の中で特別な思いがあるので、表彰台は外せないなと思って走りました。悪天候のほうが自分には向いているので、明日は雨が降ってドロドロになればいいですね!」と力強くコメント。3位パックから抜け出した與那嶺が表彰台の一角を抑え、4位に武田、5位に宮内と続いた。
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CL1結果
1位 坂口聖香(パナソニックレディース) 41'50"
2位 今井美穂(CycleClub.jp) +1'09"
3位 與那嶺恵理(TEAM・eriy.jp) +1'54"
4位 武田和佳(Liv) +2'02"
5位 宮内佐季子(Club La.sista Offroad Team) +3'02"
6位 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリング) +4'00"
7位 林口ゆきえ(SNEL CYCLOCROSS TEAM) +5'16"
8位 上田順子(ダム部) +5'55"
9位 モリス・フィオナ(MAAP) +6'02"
10位 西山みゆき(東洋フレーム) +6'38"
tex:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji
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