2016/08/31(水) - 23:29
今年で30回目の開催となるツール・ド・北海道(UCI2.2)。例年と比べて山岳が厳しい4ステージ511kmに挑むのは、昨年の覇者リカルド・スタキオッティのNIPPOやラクラン・モートン率いるジェリーベリーなど国内外の20チーム。9月1日(木)朝の個人TTで幕を開ける。
北の大地を駆け巡る日本で唯一のタウン・トゥ・タウンのラインステージレースがツール・ド・北海道(UCI2.2)だ。雄大な風景の中をあるいは急峻な山岳地帯を駆け抜けるレースは北海道ならではのもの。近年は道東、道北、道南と3年で地域を一巡するが、今年の道南はニセコ地方を中心とする3日間4ステージ511kmの設定になっている。
30周年の北海道
このツール・ド・北海道は1987年に第1回大会が開催され、高橋松吉氏(ナカガワFETオークレー)が個人総合優勝している。その後は今中大介氏(シマノ)が総合3勝、宮澤崇史氏(梅丹本舗)が総合2連勝、そして昨年2015年大会はリカルド・スタキオッティ(NIPPOヴィーニファンティーニ)が個人総合優勝している。また大学生が参加できるステージレースとして初期から開催されており、鹿屋体育大学の山本元喜が2010年と2013年に、黒枝士揮が2012年にステージ優勝している。第30回大会の今年は短距離での個人TTが復活し3日間4ステージに、そして新たにU26団体総合時間賞が設定された。札幌を発着点としニセコ周辺をめぐる3日間だ。
各ステージのコース見どころ
9月1日(木)第1ステージ 1km 個人タイムトライアル 札幌市
札幌市豊平区豊平川サイクリングロードを使う個人タイムトライアルで朝8時30分が第1走者スタート。レギュレーションでノーマルバイク&ホイールでヘルメットも通常タイプのもののみ使用可能。一直線の片道コースで純粋に1kmのスピードで優劣が決まる。吉田隼人(マトリックスパワータグ)、倉林巧和(群馬グリフィンレーシングチーム)、原田裕成(愛三工業レーシングチーム)らに加え、大学生の岡本隼(日本大学)、インカレチームスプリント覇者の黒枝咲哉(鹿屋体育大学)、真砂英作(明治大学)らも候補に挙がる。
9月1日(木)第2ステージ 111km 札幌市~倶知安町
午前にTTを終えて、13時00分に宿泊場所でもあるアパホテル&リゾート札幌から111kmのショートステージがスタート。いきなり2km地点から小さな峠を越える。標高差80mほどだが狭く路面も悪いので逃げを決めたい選手がアタックするのは必至。ただしその後に平坦から緩い上りが20kmは続くので吸収されるだろう。
一番の難所は小樽市街から上る2つ目のKOM設定の毛無峠だ。標高差550mの峠は序盤が急でその後が長く緩やかで精神的にもきついもの。ここからフィニッシュ地点まで緩い上りを含む約40km。倶知安町内のフィニッシュ地点は平坦の直線路。毛無峠で抜け出したメンバーで優勝が争われる可能性が高い。
9月2日(金)第3ステージ 180km 倶知安町~俱知安町
倶知安町ヒラフスキー場前からスタートしニセコ山系、羊蹄山をめぐりふたたびスタート地点に戻ってくるコース。山岳と平坦が組み合わさったものでフィニッシュ地点までは“ひらふ坂”の距離600m標高差55mの上り勝負となる。1つ目のKOMは標高差590mの新見峠でここで大きくふるいにかかるだろう。下って平坦な道を西進し日本海を望むと再び内陸方面へ西進。
その後はフィニッシュ地点まで少しのアップダウンを含むおよそ平坦な道がコースだ。序盤に厳しい峠はあるがその後が長いので逃げとメイン集団の攻防が繰り広げられ、リーダーチームの力にもよるが終盤に吸収されて上りゴール勝負になる可能性がある。ただしラスト10kmほどは登坂が主のため、強力な選手ならばここで抜け出しタイム差を稼ぐことは可能だ。なお7月に行われたニセコクラシックのコースの大半はこの第3ステージに組み込まれている。
9月3日(土)第4ステージ 219km 俱知安町~札幌市
最終ステージは219kmと長距離のレース。前日と同じヒラフスタートで標高差600mのKOM、ニセコアンヌプリを越えてニセコ町内を経由、洞爺湖畔、支笏湖畔を経て峠を越えて札幌市真駒内公園へ至る。序盤のニセコアンヌプリへの上りが急で、まずはここで大きく集団が分裂する。さらに35km地点の上りもあり集団はばらけること必至。その後は緩い上りはあるものの、感覚としてはおよそ平坦の道のりが150km以上続く。
平坦が長いため逃げが吸収されやすくもあるが、いっぽうこれだけの距離をコントロールできるチーム力も必要であり、またフィニッシュ地点手前25kmに標高差310mと120mの2つのピークがあり、これらから序盤の逃げが10人程度ならばそのまま逃げ切ってしまうことも十分に考えられる。2007年大会は終盤同じレイアウトで、リーダージャージを着ていた新城幸也(当時梅丹本舗)が首位陥落したこともあった。
第4ステージが勝負どころか
事前にチーム関係者間でもこの最終第4ステージが最大の勝負所ととらえる向きが多く、少なくとも波乱なく終わることはないだろう。NIPPOが昨年同様に個人とチームの力で秒差を制するのか、ジェリーベリーがラクラン・モートンで狙うのか、スプリントで大学生が絡めるか注目だ。また10月のジャパンカップまで最終のUCIレースであり、それの出場権をかけたUCIポイントの獲得状況も気になるところだ。
選手・チーム紹介
今年はプロコンチネンタルチームが1チーム、海外コンチネンタルチームが4チーム、国内コンチネンタルチームが9チーム、大学チームが5チーム、それに北海道地域選抜チームの計20チーム99名が出場する。
今年もレースを席巻するか?NIPPOヴィーニファンティーニ
昨年に続き、唯一のプロコンチネンタルチームでの出場となるNIPPOヴィーニファンティーニ。昨年個人総合優勝したリカルド・スタキオッティを筆頭に、ジャコモ・ベルラート、ダニエーレ・コッリ、ピエールパオロ・デネグリ、そして今年加入した小石祐馬の5名を揃える。昨年は3ステージ全てで優勝し、個人総合優勝、総合優勝、ポイント賞を獲得、レースを席巻。今年も総合優勝の最有力候補だ。
2つのステージレースで総合優勝したモートン擁するジェリーベリー
ジャパンカップでもおなじみのジェリーベーリーP/Bマキシスは、1名少ない4名で出場。注目は今年のツアー・オブ・ザ・ジラとツアー・オブ・ユタの2つのステージレースで総合優勝したラクラン・モートン。若干24歳の選手だが、2014年までの3年間ガーミン・シャープに在籍して、経験豊富な選手。クライマータイプの選手との事なので、長い登りの多い今回の大会で強さを見せる可能性がある。
国内チーム
チーム右京は、ツアー・オブ・ジャパン総合優勝のオスカル・プジョルを外し、平井栄一、住吉宏太ら若手選手を起用。マトリックスパワータグは、Jプロツアーリーダーのホセ・ビセンテ・トリビオをエースナンバーに据え、佐野淳哉、土井雪広ら2人の元全日本チャンピオンを揃える。ブリヂストンアンカー・サイクリングチームは、全日本チャンピオンの初山翔、2013年に個人総合優勝したトマ・ルバら好調な5名。
シマノレーシングは、ツール・ド・北海道初出場を果たす北海道出身の小橋勇利、全日本3位など今季好調の木村圭祐ら若手で構成。愛三工業レーシングは、伊藤雅和、早川朋宏ら、8月にチェコ遠征したメンバー。キナンサイクリングチームは、ツール・ド・シンカラで個人総合3位のリカルド・ガルシアや伊丹健治らシンカラのメンバー5名をエントリー。
宇都宮ブリッツェンは、第2ステージで通過する赤井川村出身の阿部嵩之、先日の「JBCF維新やまぐちクリテリウム」で優勝した大久保陣ら5名。群馬グリフィンはベテラン狩野智也を筆頭に、駒澤大学の杉野元基が出場する。那須ブラーゼンは、吉岡直哉、下島将輝ら、スプリントにも強い選手を揃える。
大学チームは、鹿屋体育大学、明治大学、日本大学、京都産業大学、それに地元の北海道大学が出場する。鹿屋は、先日のインカレでレースを主導した徳田優、山本大喜らが出場。明治大学は、インカレロード優勝の野本空は出場しないものの、昨年の全日本学生ロードレース・カップ・シリーズ年間優勝の小林和希や、2014年全日本ロード男子ジュニア優勝の松本祐典らを揃える。日本大学は、昨年のインカレロードで優勝した吉田悠人、今年の大町美麻ロードで優勝した岡本隼ら、ロードに強い選手を揃える。
北海道地域選抜チームからは、インカレロード3位の中川拳(早稲田大学)が出場する。地元北海道でもインカレの好調を維持して見せたいところだ。
photo:Hideaki TAKAGI
text:Hideaki TAKAGI(コース)、Satoru KATO(選手・チーム)
北の大地を駆け巡る日本で唯一のタウン・トゥ・タウンのラインステージレースがツール・ド・北海道(UCI2.2)だ。雄大な風景の中をあるいは急峻な山岳地帯を駆け抜けるレースは北海道ならではのもの。近年は道東、道北、道南と3年で地域を一巡するが、今年の道南はニセコ地方を中心とする3日間4ステージ511kmの設定になっている。
30周年の北海道
このツール・ド・北海道は1987年に第1回大会が開催され、高橋松吉氏(ナカガワFETオークレー)が個人総合優勝している。その後は今中大介氏(シマノ)が総合3勝、宮澤崇史氏(梅丹本舗)が総合2連勝、そして昨年2015年大会はリカルド・スタキオッティ(NIPPOヴィーニファンティーニ)が個人総合優勝している。また大学生が参加できるステージレースとして初期から開催されており、鹿屋体育大学の山本元喜が2010年と2013年に、黒枝士揮が2012年にステージ優勝している。第30回大会の今年は短距離での個人TTが復活し3日間4ステージに、そして新たにU26団体総合時間賞が設定された。札幌を発着点としニセコ周辺をめぐる3日間だ。
各ステージのコース見どころ
9月1日(木)第1ステージ 1km 個人タイムトライアル 札幌市
札幌市豊平区豊平川サイクリングロードを使う個人タイムトライアルで朝8時30分が第1走者スタート。レギュレーションでノーマルバイク&ホイールでヘルメットも通常タイプのもののみ使用可能。一直線の片道コースで純粋に1kmのスピードで優劣が決まる。吉田隼人(マトリックスパワータグ)、倉林巧和(群馬グリフィンレーシングチーム)、原田裕成(愛三工業レーシングチーム)らに加え、大学生の岡本隼(日本大学)、インカレチームスプリント覇者の黒枝咲哉(鹿屋体育大学)、真砂英作(明治大学)らも候補に挙がる。
9月1日(木)第2ステージ 111km 札幌市~倶知安町
午前にTTを終えて、13時00分に宿泊場所でもあるアパホテル&リゾート札幌から111kmのショートステージがスタート。いきなり2km地点から小さな峠を越える。標高差80mほどだが狭く路面も悪いので逃げを決めたい選手がアタックするのは必至。ただしその後に平坦から緩い上りが20kmは続くので吸収されるだろう。
一番の難所は小樽市街から上る2つ目のKOM設定の毛無峠だ。標高差550mの峠は序盤が急でその後が長く緩やかで精神的にもきついもの。ここからフィニッシュ地点まで緩い上りを含む約40km。倶知安町内のフィニッシュ地点は平坦の直線路。毛無峠で抜け出したメンバーで優勝が争われる可能性が高い。
9月2日(金)第3ステージ 180km 倶知安町~俱知安町
倶知安町ヒラフスキー場前からスタートしニセコ山系、羊蹄山をめぐりふたたびスタート地点に戻ってくるコース。山岳と平坦が組み合わさったものでフィニッシュ地点までは“ひらふ坂”の距離600m標高差55mの上り勝負となる。1つ目のKOMは標高差590mの新見峠でここで大きくふるいにかかるだろう。下って平坦な道を西進し日本海を望むと再び内陸方面へ西進。
その後はフィニッシュ地点まで少しのアップダウンを含むおよそ平坦な道がコースだ。序盤に厳しい峠はあるがその後が長いので逃げとメイン集団の攻防が繰り広げられ、リーダーチームの力にもよるが終盤に吸収されて上りゴール勝負になる可能性がある。ただしラスト10kmほどは登坂が主のため、強力な選手ならばここで抜け出しタイム差を稼ぐことは可能だ。なお7月に行われたニセコクラシックのコースの大半はこの第3ステージに組み込まれている。
9月3日(土)第4ステージ 219km 俱知安町~札幌市
最終ステージは219kmと長距離のレース。前日と同じヒラフスタートで標高差600mのKOM、ニセコアンヌプリを越えてニセコ町内を経由、洞爺湖畔、支笏湖畔を経て峠を越えて札幌市真駒内公園へ至る。序盤のニセコアンヌプリへの上りが急で、まずはここで大きく集団が分裂する。さらに35km地点の上りもあり集団はばらけること必至。その後は緩い上りはあるものの、感覚としてはおよそ平坦の道のりが150km以上続く。
平坦が長いため逃げが吸収されやすくもあるが、いっぽうこれだけの距離をコントロールできるチーム力も必要であり、またフィニッシュ地点手前25kmに標高差310mと120mの2つのピークがあり、これらから序盤の逃げが10人程度ならばそのまま逃げ切ってしまうことも十分に考えられる。2007年大会は終盤同じレイアウトで、リーダージャージを着ていた新城幸也(当時梅丹本舗)が首位陥落したこともあった。
第4ステージが勝負どころか
事前にチーム関係者間でもこの最終第4ステージが最大の勝負所ととらえる向きが多く、少なくとも波乱なく終わることはないだろう。NIPPOが昨年同様に個人とチームの力で秒差を制するのか、ジェリーベリーがラクラン・モートンで狙うのか、スプリントで大学生が絡めるか注目だ。また10月のジャパンカップまで最終のUCIレースであり、それの出場権をかけたUCIポイントの獲得状況も気になるところだ。
選手・チーム紹介
今年はプロコンチネンタルチームが1チーム、海外コンチネンタルチームが4チーム、国内コンチネンタルチームが9チーム、大学チームが5チーム、それに北海道地域選抜チームの計20チーム99名が出場する。
今年もレースを席巻するか?NIPPOヴィーニファンティーニ
昨年に続き、唯一のプロコンチネンタルチームでの出場となるNIPPOヴィーニファンティーニ。昨年個人総合優勝したリカルド・スタキオッティを筆頭に、ジャコモ・ベルラート、ダニエーレ・コッリ、ピエールパオロ・デネグリ、そして今年加入した小石祐馬の5名を揃える。昨年は3ステージ全てで優勝し、個人総合優勝、総合優勝、ポイント賞を獲得、レースを席巻。今年も総合優勝の最有力候補だ。
2つのステージレースで総合優勝したモートン擁するジェリーベリー
ジャパンカップでもおなじみのジェリーベーリーP/Bマキシスは、1名少ない4名で出場。注目は今年のツアー・オブ・ザ・ジラとツアー・オブ・ユタの2つのステージレースで総合優勝したラクラン・モートン。若干24歳の選手だが、2014年までの3年間ガーミン・シャープに在籍して、経験豊富な選手。クライマータイプの選手との事なので、長い登りの多い今回の大会で強さを見せる可能性がある。
国内チーム
チーム右京は、ツアー・オブ・ジャパン総合優勝のオスカル・プジョルを外し、平井栄一、住吉宏太ら若手選手を起用。マトリックスパワータグは、Jプロツアーリーダーのホセ・ビセンテ・トリビオをエースナンバーに据え、佐野淳哉、土井雪広ら2人の元全日本チャンピオンを揃える。ブリヂストンアンカー・サイクリングチームは、全日本チャンピオンの初山翔、2013年に個人総合優勝したトマ・ルバら好調な5名。
シマノレーシングは、ツール・ド・北海道初出場を果たす北海道出身の小橋勇利、全日本3位など今季好調の木村圭祐ら若手で構成。愛三工業レーシングは、伊藤雅和、早川朋宏ら、8月にチェコ遠征したメンバー。キナンサイクリングチームは、ツール・ド・シンカラで個人総合3位のリカルド・ガルシアや伊丹健治らシンカラのメンバー5名をエントリー。
宇都宮ブリッツェンは、第2ステージで通過する赤井川村出身の阿部嵩之、先日の「JBCF維新やまぐちクリテリウム」で優勝した大久保陣ら5名。群馬グリフィンはベテラン狩野智也を筆頭に、駒澤大学の杉野元基が出場する。那須ブラーゼンは、吉岡直哉、下島将輝ら、スプリントにも強い選手を揃える。
大学チームは、鹿屋体育大学、明治大学、日本大学、京都産業大学、それに地元の北海道大学が出場する。鹿屋は、先日のインカレでレースを主導した徳田優、山本大喜らが出場。明治大学は、インカレロード優勝の野本空は出場しないものの、昨年の全日本学生ロードレース・カップ・シリーズ年間優勝の小林和希や、2014年全日本ロード男子ジュニア優勝の松本祐典らを揃える。日本大学は、昨年のインカレロードで優勝した吉田悠人、今年の大町美麻ロードで優勝した岡本隼ら、ロードに強い選手を揃える。
北海道地域選抜チームからは、インカレロード3位の中川拳(早稲田大学)が出場する。地元北海道でもインカレの好調を維持して見せたいところだ。
photo:Hideaki TAKAGI
text:Hideaki TAKAGI(コース)、Satoru KATO(選手・チーム)
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