2016/08/19(金) - 11:35
ブエルタ・ア・エスパーニャの象徴とも言えるマイヨロホを狙って世界最高峰のグランツールレーサーが集結する。フルームやコンタドール、キンタナの他、総合優勝争いに加わる選手たちをピックアップ。
ブエルタ総合リーダーの証 マイヨロホ(レッドジャージ)
ブエルタ・ア・エスパーニャ最高の栄誉、それがレッドジャージを意味するマイヨロホだ。長年にわたって金色のマイヨオロが採用されていたが、2010年にツール主催者ASOがブエルタ主催者Unipublicに資本参入を開始したことを受け、黄色いマイヨジョーヌとの混同を避けるためにスペインのナショナルカラーである赤色に変更された。
ツールのマイヨジョーヌ、ジロのマリアローザにあたる個人総合成績のリーダージャージであり、毎日のステージ成績を積算し、その最も少ない選手が翌日のステージでマイヨロホを着る。つまり最終日にマイヨロホを着る選手がブエルタ総合優勝の栄冠に輝く。2013年からジャージスポンサーを務めるのは売り上げ世界2位のスーパーマーケットチェーン「カルフール」だ。
ボーナスタイムは今年も健在。ブエルタではチームTTと個人TTを除く各ステージの上位3名(1位10秒、2位6秒、3位4秒)と中間スプリントポイント上位3名(1位3秒、2位2秒、3位1秒)にボーナスタイムが与えられるため、山頂フィニッシュで活躍する選手が加速度的に総合リードを広げるだろう。
フルーム、コンタドール、キンタナがマイヨロホ争いの三強
ディフェンディングチャンピオンのファビオ・アル(イタリア、アスタナ)だけではなく、2015年総合2位ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)と総合3位ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)は出場しない。しかし前年度の総合トップスリーの欠場を補って余りある豪華なラインナップが2016年は揃った。
ツール・ド・フランスで3度目の総合優勝を果たし、リオ五輪タイムトライアルで銅メダルを獲得したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は2011年と2014年のブエルタで総合2位を2回経験。2015年もツールとの連戦出場だったが、アンドラを走る山岳ステージで落車して舟状骨を骨折し、リタイアを余儀なくされている。
仮にフルームが総合優勝に輝けば、イギリス人選手初のブエルタ制覇、そして1978年のベルナール・イノー以来果たされていないツール&ブエルタ同年制覇となる。フルームの脇を固めるのはレオポルド・ケーニッヒ(チェコ)やピーター・ケノー(イギリス)、ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)ら。2015年のブエルタでアルの総合優勝をアシストし、自身も難関山岳ステージで優勝を収めたミケル・ランダ(スペイン)も出場予定だったが、怪我により急遽出場をキャンセル。ブエルタではツールで見せた支配的なアシスト体制とチーム力を発揮できないと見られている。
序盤ステージの落車で本領を発揮できないままツールをリタイアしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)は自身4度目のブエルタ出場。コンタドールは出場したすべてのブエルタ(2008年、2012年、2014年)で総合優勝を飾っており、その流れを継続することができれば優勝回数でロベルト・エラスが持つ最多記録4勝に並ぶ。コンタドールは前哨戦のブエルタ・ア・ブルゴスで総合優勝し、復調をアピールしている。
モビスターからは再びナイロ・キンタナ(コロンビア)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)の2人が揃って出場する。ジロで総合優勝、ツールで総合2位を2度経験しているキンタナはまだブエルタの総合表彰台に上ったことがない(2015年の総合4位が最高位)。山岳の比率が高いコースレイアウトはキンタナに味方すると見られている。
リオ五輪ロードレースを走り終えたばかりのバルベルデはジロとツールに続く今シーズン3つ目のグランツール出場。バルベルデは2009年の総合優勝者であり、これまでにステージ通算9勝を飾っている。
2015年ブエルタでステージ2勝を飾ってブレイクし、マイヨロホも着用して総合5位で終えたエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)にも注目だ。26歳のコロンビアンクライマーはジロでステージ1勝&総合2位の活躍。ツールでヤングライダー賞に輝いたアダム・イェーツ(イギリス)の双子の兄弟であるサイモン・イェーツ(イギリス)がチャベスの山岳アシストを務める。
ツール・ド・スイスで総合優勝を飾ったミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)はこのブエルタでグランツールデビューを果たす。ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)をはじめとするベテラン勢が22歳の新星をアシストする。
ジロで王者の走りを見せながらも落車によってチャンスを失い、総合4位でレースを終えたステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)は5年ぶりのブエルタ出場。ジロでの無念をスペインの地で晴らしたいところ。
地元スペイン勢としてはコンタドールとランダの他にもサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)やイゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)、ダビ・アローヨ(スペイン、カハルーラル)らが揃う。BMCレーシングはサンチェスとティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)のダブルエース体制だ。
ブエルタと相性の良いワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)や2012年ブエルタ総合7位のアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)らも総合争いに絡んでくるだろう。ツールを総合8位で終えたルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)は3年連続のブエルタ出場。2015年は総合10位に入り、才能の片鱗を見せていた。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2015個人総合成績
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 85h36’13”
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +0'57"
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) +1'09"
4位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +1'42"
5位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +3'10"
6位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +3'46"
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +6'47"
8位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) +7'06"
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +7'12"
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ) +10'26"
ブエルタ歴代総合優勝者
2015年 ファビオ・アル(イタリア)
2014年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2013年 クリストファー・ホーナー(アメリカ)
2012年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2011年 ファンホセ・コーボ(スペイン)
2010年 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2009年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 デニス・メンショフ(ロシア)
2006年 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)
2005年 デニス・メンショフ(ロシア)
2004年 ロベルト・エラス(スペイン)
2003年 ロベルト・エラス(スペイン)
2002年 アイトール・ゴンザレス(スペイン)
2001年 アンヘル・カセロ(スペイン)
2000年 ロベルト・エラス(スペイン)
1999年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1998年 アブラハム・オラーノ(スペイン)
1997年 アレックス・ツェーレ(スイス)
1996年 アレックス・ツェーレ(スイス)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1993年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1992年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1991年 メルチョル・マウリ(スペイン)
1990年 マルコ・ジョヴァネッティ(イタリア)
text:Kei Tsuji in Ourense, Spain
ブエルタ総合リーダーの証 マイヨロホ(レッドジャージ)
ブエルタ・ア・エスパーニャ最高の栄誉、それがレッドジャージを意味するマイヨロホだ。長年にわたって金色のマイヨオロが採用されていたが、2010年にツール主催者ASOがブエルタ主催者Unipublicに資本参入を開始したことを受け、黄色いマイヨジョーヌとの混同を避けるためにスペインのナショナルカラーである赤色に変更された。
ツールのマイヨジョーヌ、ジロのマリアローザにあたる個人総合成績のリーダージャージであり、毎日のステージ成績を積算し、その最も少ない選手が翌日のステージでマイヨロホを着る。つまり最終日にマイヨロホを着る選手がブエルタ総合優勝の栄冠に輝く。2013年からジャージスポンサーを務めるのは売り上げ世界2位のスーパーマーケットチェーン「カルフール」だ。
ボーナスタイムは今年も健在。ブエルタではチームTTと個人TTを除く各ステージの上位3名(1位10秒、2位6秒、3位4秒)と中間スプリントポイント上位3名(1位3秒、2位2秒、3位1秒)にボーナスタイムが与えられるため、山頂フィニッシュで活躍する選手が加速度的に総合リードを広げるだろう。
フルーム、コンタドール、キンタナがマイヨロホ争いの三強
ディフェンディングチャンピオンのファビオ・アル(イタリア、アスタナ)だけではなく、2015年総合2位ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)と総合3位ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)は出場しない。しかし前年度の総合トップスリーの欠場を補って余りある豪華なラインナップが2016年は揃った。
ツール・ド・フランスで3度目の総合優勝を果たし、リオ五輪タイムトライアルで銅メダルを獲得したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は2011年と2014年のブエルタで総合2位を2回経験。2015年もツールとの連戦出場だったが、アンドラを走る山岳ステージで落車して舟状骨を骨折し、リタイアを余儀なくされている。
仮にフルームが総合優勝に輝けば、イギリス人選手初のブエルタ制覇、そして1978年のベルナール・イノー以来果たされていないツール&ブエルタ同年制覇となる。フルームの脇を固めるのはレオポルド・ケーニッヒ(チェコ)やピーター・ケノー(イギリス)、ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)ら。2015年のブエルタでアルの総合優勝をアシストし、自身も難関山岳ステージで優勝を収めたミケル・ランダ(スペイン)も出場予定だったが、怪我により急遽出場をキャンセル。ブエルタではツールで見せた支配的なアシスト体制とチーム力を発揮できないと見られている。
序盤ステージの落車で本領を発揮できないままツールをリタイアしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)は自身4度目のブエルタ出場。コンタドールは出場したすべてのブエルタ(2008年、2012年、2014年)で総合優勝を飾っており、その流れを継続することができれば優勝回数でロベルト・エラスが持つ最多記録4勝に並ぶ。コンタドールは前哨戦のブエルタ・ア・ブルゴスで総合優勝し、復調をアピールしている。
モビスターからは再びナイロ・キンタナ(コロンビア)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)の2人が揃って出場する。ジロで総合優勝、ツールで総合2位を2度経験しているキンタナはまだブエルタの総合表彰台に上ったことがない(2015年の総合4位が最高位)。山岳の比率が高いコースレイアウトはキンタナに味方すると見られている。
リオ五輪ロードレースを走り終えたばかりのバルベルデはジロとツールに続く今シーズン3つ目のグランツール出場。バルベルデは2009年の総合優勝者であり、これまでにステージ通算9勝を飾っている。
2015年ブエルタでステージ2勝を飾ってブレイクし、マイヨロホも着用して総合5位で終えたエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)にも注目だ。26歳のコロンビアンクライマーはジロでステージ1勝&総合2位の活躍。ツールでヤングライダー賞に輝いたアダム・イェーツ(イギリス)の双子の兄弟であるサイモン・イェーツ(イギリス)がチャベスの山岳アシストを務める。
ツール・ド・スイスで総合優勝を飾ったミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)はこのブエルタでグランツールデビューを果たす。ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)をはじめとするベテラン勢が22歳の新星をアシストする。
ジロで王者の走りを見せながらも落車によってチャンスを失い、総合4位でレースを終えたステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)は5年ぶりのブエルタ出場。ジロでの無念をスペインの地で晴らしたいところ。
地元スペイン勢としてはコンタドールとランダの他にもサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)やイゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)、ダビ・アローヨ(スペイン、カハルーラル)らが揃う。BMCレーシングはサンチェスとティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)のダブルエース体制だ。
ブエルタと相性の良いワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)や2012年ブエルタ総合7位のアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)らも総合争いに絡んでくるだろう。ツールを総合8位で終えたルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)は3年連続のブエルタ出場。2015年は総合10位に入り、才能の片鱗を見せていた。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2015個人総合成績
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 85h36’13”
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +0'57"
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) +1'09"
4位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +1'42"
5位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +3'10"
6位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +3'46"
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +6'47"
8位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) +7'06"
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +7'12"
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ) +10'26"
ブエルタ歴代総合優勝者
2015年 ファビオ・アル(イタリア)
2014年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2013年 クリストファー・ホーナー(アメリカ)
2012年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2011年 ファンホセ・コーボ(スペイン)
2010年 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2009年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 デニス・メンショフ(ロシア)
2006年 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)
2005年 デニス・メンショフ(ロシア)
2004年 ロベルト・エラス(スペイン)
2003年 ロベルト・エラス(スペイン)
2002年 アイトール・ゴンザレス(スペイン)
2001年 アンヘル・カセロ(スペイン)
2000年 ロベルト・エラス(スペイン)
1999年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1998年 アブラハム・オラーノ(スペイン)
1997年 アレックス・ツェーレ(スイス)
1996年 アレックス・ツェーレ(スイス)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1993年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1992年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1991年 メルチョル・マウリ(スペイン)
1990年 マルコ・ジョヴァネッティ(イタリア)
text:Kei Tsuji in Ourense, Spain
Amazon.co.jp