2016/06/18(土) - 08:47
隣国オーストリアの超級山岳ゼルデンにフィニッシュするツール・ド・スイス第7ステージで、前日に調子を落としたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)が勝利。ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)が首位に立った。
超級山岳ホッホタンベルクパスを進むプロトン photo:Tim de Waele
ツール・ド・スイス2016第7ステージ image:Tour de Suisseオーストリアのゼルデンにフィニッシュする224.3kmで行われた今大会のクイーンステージ(最難関ステージ)。まずは超級山岳ホッホタンベルクパス(6.5km/8%)を通過し、オーストリア国内を東に向かう。最後は標高2,669mの超級山岳ゼルデン(10.9km/11%)を駆け上がってフィニッシュを迎える。
レース中盤まで暖かい太陽光が降り注ぐ photo:Tim de Waele獲得標高差が4,294mに達するこの日、元アワーレコード保持者マティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング)とイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)、そして山岳賞ジャージのアントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)がエスケープ。総合争いに関係しないこの3名の逃げは最大12分のリードを得る。
逃げたイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)ら3名 photo:Tim de Waeleトルホックは超級山岳ホッホタンベルクパスを先頭通過し、山岳賞ランキングにおいて他の追随を許さない圧倒的なリードを築くことに成功。ミッションを果たしたトルホックはその後の平坦区間でペースを弱めて集団に吸収。先頭ではブランドルとケイセの2人が逃げ続けた。
第5ステージでイエロージャージを獲得したピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)が気管支炎によりリタイアする中、リーダーチームのロットNLユンボがメイン集団のペースを作って逃げを追う。
逃げとメイン集団のタイム差が7分まで縮まったところで、ヴァンガーデレンが「今まで経験した中で最もハードな登り。これ以上厳しい登りが思い浮かばない」と表現する超級山岳ゼルデンの登坂が始まった。
ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)がメイン集団のペースを作る photo:Tim de Waele
残り5kmを切って飛び出したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waele
集団から遅れるウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Tim de Waele先頭ではブランドルが独走に持ち込んだが、ジャイアント・アルペシンとアスタナがペースを上げるメイン集団とのタイム差は勢いよく縮まっていく。ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)が淡々とハイペースを刻むとイエロージャージのウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)は脱落した。
2番手でフィニッシュを目指すワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele急勾配の登りでスピードを失い、蛇行気味に走るブランドルは残り5.5km地点で吸収される。すると、残り4.6km地点で総合13位・2分09秒遅れのヴァンガーデレンがアタック。引き続きキリエンカがペースを作るメイン集団からは総合2位のワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)が飛び出した。
超級山岳ゼルデンを駆け上がるゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)ら photo:Tim de Waeleバーギルにはヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)が追いつき、2人で先頭ヴァンガーデレンを追ったものの距離が縮まらない。キリエンカの集団牽引が残り2km地点で終わったところでカウンターアタックを仕掛けたミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)がバーギルとパンタノまでブリッジ成功。最終的にバーギルとロペスモレーノが協力して先頭を追ったが、ヴァンガーデレンは最後までリードを守った。
フィニッシュに向かって独走するティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waele寒さに苦しみ、前日の第6ステージで失速したヴァンガーデレンが復活の勝利。「今大会ずっと調子は良かったものの、凍えた昨日のステージで総合優勝のチャンスを失ってしまった。だからせめてステージ優勝でも飾りたいという気持ちで今日のステージに挑んだ。他の選手が苦しんでいると感じたタイミングでアタック。昨日総合タイムを失ったので動きが容認された」とヴァンガーデレンは語る。
また、総合7位まで順位を戻したヴァンガーデレンは「総合順位を上げることができたので、残りの2ステージで総合トップ5もしくは総合表彰台を狙えるかもしれない」とコメントしている。
2分07秒遅れたケルデルマンに代わって総合首位に立ったのはステージ3位のバーギル。21秒差でロペスモレーノ、24秒差でアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)が続いている。
「ヴァンガーデレンがアタックした時、チームスカイがペースを上げて追走すると予想したけど、彼らはそのまま一定ペースで走り続けた。だから自ら動いてヴァンガーデレンを追ったんだ。チームが僕を信頼してくれて、こうして良い成績を残すことができて誇らしい気分。このリーダージャージを守るために全力を尽くすよ」と語るバーギルはイエロージャージを着て個人タイムトライアルに挑む。
選手コメントは各チーム公式サイトより。
独走でフィニッシュするティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waele
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)が、はいチーズ photo:Tim de Waele
イエロージャージに袖を通したワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele
ツール・ド・スイス2016第7ステージ結果
1位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) 6h26’13”
2位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) +16”
3位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
4位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング) +31”
5位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール) +33”
6位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ) +43”
7位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +49”
8位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)
9位 ビクトル・デラパルテ(スペイン、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) +59”
10位 ヤン・ヒルト(チェコ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)
11位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1’08”
13位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ) +2’07”
24位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +4’29”
74位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +16’00”
DNF ピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)
個人総合成績
1位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) 29h09’53”
2位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) +21”
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール) +24”
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター) +55”
5位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング) +1’06”
6位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ) +1’07”
7位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +1’31”
8位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1’36”
9位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ) +1’39”
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +1’55”
ポイント賞
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)
山岳賞
1位 アントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)
スイスライダー賞
1位 マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)
チーム総合成績
1位 カチューシャ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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第5ステージでイエロージャージを獲得したピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)が気管支炎によりリタイアする中、リーダーチームのロットNLユンボがメイン集団のペースを作って逃げを追う。
逃げとメイン集団のタイム差が7分まで縮まったところで、ヴァンガーデレンが「今まで経験した中で最もハードな登り。これ以上厳しい登りが思い浮かばない」と表現する超級山岳ゼルデンの登坂が始まった。
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また、総合7位まで順位を戻したヴァンガーデレンは「総合順位を上げることができたので、残りの2ステージで総合トップ5もしくは総合表彰台を狙えるかもしれない」とコメントしている。
2分07秒遅れたケルデルマンに代わって総合首位に立ったのはステージ3位のバーギル。21秒差でロペスモレーノ、24秒差でアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)が続いている。
「ヴァンガーデレンがアタックした時、チームスカイがペースを上げて追走すると予想したけど、彼らはそのまま一定ペースで走り続けた。だから自ら動いてヴァンガーデレンを追ったんだ。チームが僕を信頼してくれて、こうして良い成績を残すことができて誇らしい気分。このリーダージャージを守るために全力を尽くすよ」と語るバーギルはイエロージャージを着て個人タイムトライアルに挑む。
選手コメントは各チーム公式サイトより。
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ツール・ド・スイス2016第7ステージ結果
1位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) 6h26’13”
2位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) +16”
3位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
4位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング) +31”
5位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール) +33”
6位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ) +43”
7位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +49”
8位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)
9位 ビクトル・デラパルテ(スペイン、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) +59”
10位 ヤン・ヒルト(チェコ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)
11位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1’08”
13位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ) +2’07”
24位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +4’29”
74位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +16’00”
DNF ピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)
個人総合成績
1位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) 29h09’53”
2位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) +21”
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール) +24”
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター) +55”
5位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング) +1’06”
6位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ) +1’07”
7位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +1’31”
8位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1’36”
9位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ) +1’39”
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +1’55”
ポイント賞
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)
山岳賞
1位 アントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)
スイスライダー賞
1位 マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)
チーム総合成績
1位 カチューシャ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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