大会2つ目の山頂フィニッシュが設定されたジロ・デ・イタリア第10ステージで逃げ切りが決まる。優勝候補の一角ランダがリタイアする中、ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)がマリアローザを手にした。



気にせず先に行くことをニエベとロペスガルシアに促すミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)気にせず先に行くことをニエベとロペスガルシアに促すミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) photo:Kei Tsuji


5月17日(火)第10ステージ ☆☆☆ カンピ・ビゼンツィオ〜セストラ 219km5月17日(火)第10ステージ ☆☆☆ カンピ・ビゼンツィオ〜セストラ 219km image:Giro d'Italiaトスカーナ州での休息日を終えたジロは、フィレンツェ近郊のカンピ・ビゼンツィオで動き出す。イタリア半島の背骨を形成するアペニン山脈を横断する219kmコースはアップダウンの連続だ。2つの3級山岳を経てエミリア=ロマーニャ州に入り、山道を走って1級山岳ピアン・デル・ファルコ(16.3km/平均5.2%)をクリア。一旦下って標高998mのセストラの街を目指す。

レース序盤の3級山岳パッソ・デッラ・コッリーナに差し掛かるレース序盤の3級山岳パッソ・デッラ・コッリーナに差し掛かる photo:Kei Tsujiスタート後すぐの平坦路ではアタックが決まらず、レースは高速化したまま3級山岳パッソ・デッラ・コッリーナ(12.7km/平均5.3%)に突入する。エミリア=ロマーニャ州に向かう「前菜」とも言える峠でミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)がメイン集団から脱落した。

66km地点でバイクを降りたミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)66km地点でバイクを降りたミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) photo:Kei Tsuji前夜に判明した体調不良を押してスタートした総合8位ランダは、アスタナ率いるメイン集団からすぐに3分の遅れを被る。ダビ・ロペスガルシア(スペイン)やミケル・ニエベ(スペイン)らが懸命にサポートするもランダのペースは上がらない。メイン集団から6分遅れたところでチームスカイはランダのリタイアを決めた。

メイン集団をコントロールするエティックス・クイックステップメイン集団をコントロールするエティックス・クイックステップ photo:Kei Tsuji先頭ではジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)らが積極的にアタックを仕掛け、続く3級山岳ピエトロコローラ(8.7km/平均6.1%)でヴィスコンティ、ニコラ・ボエム(イタリア、バルディアーニCSF)、プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)の3名が先行を開始する。

メイン集団はペースを落としたものの、3名の逃げに納得がいかないダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)、リカルド・ゾイドル(オーストリア、トレック・セガフレード)ら10名が追走グループを形成。タイム差が2分差を推移したまま距離表示だけが減る状況が続いたが、フィニッシュまで70kmを残して追走グループが先頭に追いついた。

こうして13名の大きな先頭グループがエティックス・クイックステップ率いるメイン集団から5分リードでアペニン山脈の山道を進む。この日最大の難所である1級山岳ピアン・デル・ファルコが近づくとアスタナが集団コントロールを開始した。



ハイスピードで1級山岳ピアン・デル・ファルコを走るアスタナ勢ハイスピードで1級山岳ピアン・デル・ファルコを走るアスタナ勢 photo:Kei Tsuji
独走で1級山岳ピアン・デル・ファルコを目指すゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン)独走で1級山岳ピアン・デル・ファルコを目指すゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン) photo:Kei Tsuji1級山岳ピアン・デル・ファルコを先頭で走るジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)1級山岳ピアン・デル・ファルコを先頭で走るジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF) photo:Kei Tsuji
マリアローザのジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)がメイン集団を牽引マリアローザのジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)がメイン集団を牽引 photo:Kei Tsuji


独走のままフィニッシュしたジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)独走のままフィニッシュしたジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF) photo:Kei Tsuji逃げグループから飛び出したゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン)の独走は長続きせず、最大勾配が13%に達する細い登りで先頭はクネゴ、チッコーネ、ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)の3名に。

アマドールのために先頭を引くジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)アマドールのために先頭を引くジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター) photo:Kei Tsuji1級山岳を先頭で通過したクネゴは35ポイントを獲得してマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)返り咲き。テクニカルな下りに差し掛かるとチッコーネが単独で抜け出し、ピラッツィのコーナーリングミスの巻き添えを食らったクネゴは脱落してしまう。チッコーネはフィニッシュに至る3級山岳セストラの登りで独走態勢をキープし、追いすがるイワン・ロフニー(ロシア、ティンコフ)らを振り切ってフィニッシュした。

メイン集団をリードするボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)メイン集団をリードするボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji「間違いなく人生で最も美しい日だ。現実とは思えない。泡の中に浮かんでいるみたいだ」と、プロ1年目にグランツール初勝利を飾った21歳はうまく状況を飲み込めないような表情で語る。「家族のようなチームの中でプロ初勝利を飾ることができた。自分の走りを犠牲にしてくれたチームメイトたちに感謝している。恩返しとして早く彼らのために走りたいよ」。

集団先頭でフィニッシュするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)集団先頭でフィニッシュするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji一方のメイン集団ではアスタナのペースアップによって総合7位トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が1級山岳で失速し、続いて頂上まで2kmを残してマリアローザのブランビッラが脱落する。先頭から2分30秒遅れで頂上をクリアしたメイン集団からはテクニカルダウンヒルで総合3位アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)が飛び出した。

27分33秒遅れの集団でフィニッシュを目指す山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)27分33秒遅れの集団でフィニッシュを目指す山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji登りで脱落したブランビッラが下りで挽回して集団に復帰すると、チームメイトのユンヘルスのために集団牽引を開始する。マリアローザがアシストとして献身的な走りを見せ、先行するアマドールを追走。結果、力を使い果たしたブランビッラは再び脱落したが、メイン集団がアマドールをほぼ捉えることに成功した。

アマドールから1秒遅れでアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)がフィニッシュ。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)はバルベルデから4秒を失う結果となっている。ライバルたちの攻撃を防ぎきったユンヘルスがチームメイトに代わって総合首位に立った。

自身初のマリアローザに袖を通した23歳はユンヘルスは「ステージレースにおいて総合リーダーが総合2位の選手のために集団を引くなんてそうそう起こることじゃない。今日のブランビッラの働きは信じられないほど素晴らしかった。一回は脱落したのに、復活して、そこから先頭を引いてくれた。本当に信じられなかった。今日は人生の中で最も偉大な一日。チームの中で3人がマリアローザを着るなんて」とコメントする。

第10ステージを終えてアマドールが26秒差の総合2位、バルベルデが50秒差の総合3位につけており、チームスカイがマリアローザ争いから脱落した今、モビスターとアスタナが二強として山岳ステージでバトルを繰り広げることになりそうだ。



マリアローザを手にしたボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)マリアローザを手にしたボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
ステージ初優勝を飾ったジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)ステージ初優勝を飾ったジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF) photo:Kei Tsujiマリアアッズーラを取り返したダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)マリアアッズーラを取り返したダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji



ジロ・デ・イタリア2016第10ステージ結果
1位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)         5h44’32”
2位 イワン・ロフニー(ロシア、ティンコフ)                  +42”
3位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)           +1’20”
4位 ネイサン・ブラウン(アメリカ、キャノンデール)             +1’53”
5位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)      +2’04”
6位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)            +2’10”
7位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)          +2’11”
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
9位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
11位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)              +2’15”
12位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
13位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
14位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
15位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)
16位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)
17位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)

32位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)+3’27”
70位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)        +13’00”
117位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)           +27’33”

マリアローザ 個人総合成績
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) 40h19’52”
2位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)             +26”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)             +50”
4位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)             +52”
6位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ) +1’11”
7位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)               +1’44”
8位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)              +1’46”
9位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)             +2’08”
10位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)      +2’26”

マリアロッサ ポイント賞
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)           119pts
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)                  91pts
3位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)           82pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)      56pts
2位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)          27pts
3位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)            25pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) 40h19’52”
2位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール)           +5’32”
3位 カルロス・ベローナ(スペイン、エティックス・クイックステップ)    +7’01”

チーム総合成績
1位 モビスター                            121h03’59”
2位 エティックス・クイックステップ                     +50”
3位 アスタナ                               +1’54”

text&photo:Kei Tsuji in Sestola, Italy

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