113年の長い歴史を有するパリ〜トゥール。スプリンター向きと言われる平坦コースで、フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)が再び逃げた!

ヴァンドームの城の前を通過していく選手たち2ヴァンドームの城の前を通過していく選手たち2 photo:Cor Vos
シーズン終盤、フランスのパリ近郊で開催されるパリ〜トゥールは、1896年に第1回大会が開催された世界屈指の歴史あるワンディクラシック。

プロツアーを離脱した昨年からジャパンカップなどと同じHC(超級)レースとして開催されているが、ヨーロッパでの位置づけは依然として高い。主催はツール・ド・フランスと同じASO(アモリー・スポーツ・オルガニザシオン)だ。

狩猟中のおじさんが立ち止まってレースを見つめる狩猟中のおじさんが立ち止まってレースを見つめる photo:Cor Vos数あるワンディクラシックの中でかなりフラットな部類に入る230kmのコース。レースは20km地点でマルティン・エルミガー(スイス、アージェードゥーゼル)やラスロ・ボドロギ(フランス、カチューシャ)、トム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)を含む10名の逃げが決まった。

タイム差は最大で7分15秒まで広がり、やがて有力選手擁するガーミンやクイックステップ、サイレンス・ロットが集団コントロールを開始。平坦ながら曲がりくねったコースは落車を誘発し、今シーズンすでに20勝を飾っていた優勝候補の一角アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)が落車でリタイアした。

コスモス(?)咲き誇るロワール渓谷を駆け抜けるコスモス(?)咲き誇るロワール渓谷を駆け抜ける photo:A.S.O.ゴール27kmに登場するクロシュ峠の上りでレースは活性化し、先頭ではジョナタン・ティレ(フランス、アウベール93)のアタックによって6名に縮小。30秒後方のメイン集団ではサイレンス・ロット勢がカウンターアタックを仕掛け、別府史之(日本、スキル・シマノ)が反応して追走グループを形成する場面も見られた。

やがてゴール11km手前で逃げグループからフィーラースが飛び出し、独走でゴール8km手前のレパンの上りに突入。すぐ後ろまで迫っていたメイン集団ではフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、サイレンス・ロット)のアタックをきっかけにアタックが続発。

10名の逃げグループが6名に絞られ、トム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)らが逃げ続ける10名の逃げグループが6名に絞られ、トム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)らが逃げ続ける photo:A.S.O.トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)とボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)、ジルベールの3名がファンアフェルマートに合流し、フィーラースを抜き去って先頭に立った。

ジルベールのために逃げのきっかけを作ったファンアフェルマートが脱落し、先頭は3名に。メイン集団はゴール6km手前で発生した落車も影響してペースが上がらず、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)が単独で飛び出して先頭トリオを追った。

レパンの上りでメイン集団からアタックを仕掛けるフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、サイレンス・ロット)レパンの上りでメイン集団からアタックを仕掛けるフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、サイレンス・ロット) photo:A.S.O.脚の揃った先頭のボーネン、ボジッチ、ジルベールの3名が、後続を引き離してグラモン大通りにやってきた。後続は追いつかない。逃げ切りが決まった3名は、牽制しつつ3kmの直線路を駆け抜ける。

ラスト300mで真っ先に仕掛けたのは、スプリントの真っ向勝負ではボーネンとボジッチに敵わないジルベール。アタックとも呼べるほどの急激な加速を見せたジルベールと、追撃したボジッチの距離は開いて行く。ボーネンが慌ててスプリント体勢に入ってジルベールを追ったが、ジルベールを撃ち落とすことは出来なかった。

フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)のペースアップにボーネンとボジッチが食らいつくフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)のペースアップにボーネンとボジッチが食らいつく photo:Cor Vos2年連続、先頭でグラモン大通りを駆け抜けたジルベール。長いレースの歴史の中で、大会2連覇を達成したのは過去に7名しかいない。今年ジロ・デ・イタリアでグランツール初勝利を飾ったジルベールは、直前のコッパ・サバティーニに続く今シーズン5勝目。サイレンス・ロットはエヴァンスのアルカンシェル獲得など、シーズン終盤にかけて勢いを加速させている。

「今日は逃げる選手の選び方をミスした。ボジッチやボーネンのようなスプリンターと3名で逃げ切るのは稀なケースだ」と語ったのはジルベール。「スプリントでは、ボジッチとボーネンの隙を突いてラスト300mで左端から一気に加速した。後ろを振り返ったら距離が開いていたんだ。ハードなレースではスプリント勝負でもチャンスがある。今年の5勝は、どれも長くてセレクティブなレースでのスプリント勝利だった」。

ボーネンをスプリントで下したフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)が優勝ボーネンをスプリントで下したフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)が優勝 photo:Cor Vosパリ〜トゥール初勝利を逃したボーネンは「ジルベールと一緒の逃げに乗れて良かったと思う。彼がレースを作り出したと言っても過言ではないと思う。走りに値する勝利だと思う」と、ジルベールの勝利を賞賛した。

ジルベールは「まだジロ・デル・ピエモンテ(10月17日)とジロ・ディ・ロンバルディア(10月17日)が残っている。野望をもってレースに挑みたいと思う」と、シーズン最後まで全力で駆け抜ける心意気を語った。

表彰台、左から2位トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)、優勝フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)、3位ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)表彰台、左から2位トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)、優勝フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)、3位ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ) photo:Cor Vosレース終盤、ラスト6kmで発生した落車で足止めを食らった新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は5分01秒遅れの121位でゴール。

アタックに反応するなど好調な姿を見せた別府史之は「調子良くて前にいたけど、ラスト6kmでチェーンがBBに絡まって再帰不能に。バイク交換して再出発。 224km走ってあと6km(でレースを失った)」と自身のTwitterでコメント。フミは大活躍のシーズン最終戦を7分04秒遅れの140位で終えた。

選手コメントはフランス・レキップ紙より。


パリ〜トゥール2009
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)5h12'23"
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)
3位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)+02"
4位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)+16"
5位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
6位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)
7位 ヘルベン・ロウィク(オランダ、ヴァカンソレイユ)
8位 パブロ・ラストラス(スペイン、ケースデパーニュ)
9位 マルティン・ライマー(ドイツ、サーヴェロ)
10位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)
121位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+5'01"
140位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+7'04"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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