2016/04/04(月) - 06:57
先頭グループより抜け出しを図ったペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が、最後の登坂パテルベルグにて力強い走りを見せ後続を引き離しそのまま独走へ。カンチェラーラらによる追走も届かず、自身初となるモニュメント初制覇を飾った。
第100回ロンド・ファン・フラーンデレンは世界遺産の街ブルージュをスタート。切妻屋根のギルドハウスや鐘楼、州庁舎に囲まれたスタート地点マルクト広場は観客で埋まった。
255kmの長丁場は序盤からハイスピード巡航と落車多発のナーバスな展開となる。70km地点でようやくイマノル・エルビーティ(スペイン、モビスター)やヒューゴ・ホール(カナダ、AG2Rラモンディアール)を含む6名が先行開始。チーム全員がディスクブレーキを用意したランプレ・メリダとルームポット・オラニエも逃げに選手を送り込む。
フランドルの丘を縦横無尽に進むメイン集団では、主にベルギーのエティックス・クイックステップとロット・ソウダルが牽引の役割を担った。約4分遅れで進むメイン集団は、逃げとのタイム差調整ではなく、石畳坂に関連した駆け引きによってペースを上げたり下げたり。落ち着かない集団内ではレース後半にかけて落車が多発した。
ミラノ〜サンレモ覇者のアルノー・デマール(フランス、FDJ)に続き、優勝候補の一角であるグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)、ティエシー・ベノート(ベルギー、ロット・ソウダル)が落車に巻き込まれてしまう。残り100kmを前に、鎖骨骨折のファンアフェルマートを含む3名はレースを去った。セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)も地面に投げ出されたが怪我を免れている。
淡々と進むメイン集団で最初に戦略的な動きを見せたのはエティックス・クイックステップ。No.5 モーレンベルグでトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)がアタックを仕掛け、頂上通過後の横風区間で集団が割れて30名が先行する。やがて後続が追いついてレースは落ち着くが、トレック・セガフレードのアシストが削られる結果に。
続くNo.6 レベルグでアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)とニルス・ポリット(ドイツ、カチューシャ)がアタックし、先頭で逃げ続けていたエルビーティとハイス・ファンヘッケ(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)に合流。メイン集団ではカウンターアタックがかかり続け、ディミトリ・クレイス(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)らも遅れて先頭に合流。7名に人数を増やした先頭グループのリードは2分を超えた。
ティンコフ、トレック・セガフレード、チームスカイ、エティックス・クイックステップのアシスト勢が番人のように集団先頭で目を配り、熾烈なポジション争いを経てNo.11 オウデクワレモントに突入する。大観客が詰めかけたこの石畳坂でステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール)がアタック。
集団後方で脚をつく選手が続出する最大勾配22%のNo.13 コッペンベルグ手前で先頭はグライペル、ポリット、クレイス、エルビーティに絞られ、追走していたファンバールレとファンデンベルフが追いついて先頭は新たに7名。ここからフィニッシュまでの1時間は一瞬の判断ミスが命取りとなる緊迫した展開となる。
約40名に縮小したメイン集団からはNo.14 シュテインビークドリシュとNo.15 ターインベルグでカウンターアタックが連発。ファンマルクやユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)、ステイン・デヴォルデル(ベルギー、トレック・セガフレード)、マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)と言ったサブエース級選手がメイン集団から抜け出すと、ここにカンチェラーラとサガン、ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)も追いついた。
No.16 クルイスベルグとNo.17 オウデクワレモント、No.18 パテルベルグを残した残り32kmで勝負のカギを握る大きな動きが生まれる。クヴィアトコウスキーとサガンが抜け出してファンマルクが合流。このエース3名は先頭5名(ファンデンベルフ、グライペル、ファンバールレ、エルビーティ、クレイス)との30秒差を埋めるとともに、カンチェラーラを含む追走集団から40秒のリードを得た。
トレック・セガフレード、カチューシャ、アスタナの牽引によって先頭グループと追走集団のタイム差が25秒まで詰まったところでNo.17 オウデクワレモントの登坂が始まる。先頭ではサガンとファンマルクが抜け出し、一方の追走集団からはカンチェラーラがアタック。食らいついた選手を一瞬で切り離したカンチェラーラが猛追をかけたが、先頭サガンとファンマルクには追いつかない。
サガン&ファンマルク→15秒→カンチェラーラ、テルプストラ、エルビーティ、クレイスという状況で迎えた最後のNo.18 パテルベルグ。最大勾配20.3%の激坂でサガンがファンマルクを切り離し、カンチェラーラに合流を許さないまま頂上をクリアする。
パテルベルグからフィニッシュまで13kmの平坦路。独走に持ち込んだサガンを、カンチェラーラがファンマルクとともに追いかける。1対2の状況にもかかわらずタイム差はむしろ開き、サガンは15秒リードで残り5km。世界チャンピオンはリードを失うことなくそのままオウデナールデまで独走した。
観客の声援に応え、フィニッシュラインを切ってからウィリーを披露したサガンは「落車も多発するレースでサポートしてくれたチームに感謝だ。100km経過してからメカトラで前後のホイール交換を余儀なくされたし、とにかくスタートからフィニッシュまで全開だった。誰も協力してくれなかったので、とてもハードなレースだった。もちろん簡単なことじゃないけど、みんなをふるい落とすのが最良の方法だった」とコメント。これまで輝かしい成績を収めているサガンだが、モニュメント(5大クラシック)制覇は初めて。「先週亡くなったベルギーの2人と、昨日のトレーニング中に落車して出場できなかったマチェイ・ボドナールにこの勝利を捧げたい」。
前週のヘント〜ウェヴェルヘムに続く「北のクラシック」2連勝で、サガンはUCIワールドツアーランキングの首位に浮上。もちろん注目は翌週のパリ〜ルーベでの走りに集まる。「来週のことは来週考える。今はこの勝利を味わいたい」とサガン。同日行われた女子レースでも世界チャンピオンのリジー・アーミステッド(イギリス、ボエルスドルマンス)が勝利しており、2人のアルカンシェルが男女レースを制した。
ロンド・ファン・フラーンデレン2016結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 6h10’37”
2位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード) +25”
3位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ) +28”
4位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) +49”
5位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)
6位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール)
7位 イマノル・エルビーティ(スペイン、モビスター)
8位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)
9位 ディミトリ・クレイス(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)
10位 ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)
11位 ラース・ボーム(オランダ、アスタナ)
12位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
13位 ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)+56”
14位 アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ) +1’00”
15位 トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
16位 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング) +1’02”
17位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル) +1’16”
18位 ローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ)
19位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、BMCレーシング)
20位 スコット・スウェイツ(イギリス、ボーラ・アルゴン18)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano
第100回ロンド・ファン・フラーンデレンは世界遺産の街ブルージュをスタート。切妻屋根のギルドハウスや鐘楼、州庁舎に囲まれたスタート地点マルクト広場は観客で埋まった。
255kmの長丁場は序盤からハイスピード巡航と落車多発のナーバスな展開となる。70km地点でようやくイマノル・エルビーティ(スペイン、モビスター)やヒューゴ・ホール(カナダ、AG2Rラモンディアール)を含む6名が先行開始。チーム全員がディスクブレーキを用意したランプレ・メリダとルームポット・オラニエも逃げに選手を送り込む。
フランドルの丘を縦横無尽に進むメイン集団では、主にベルギーのエティックス・クイックステップとロット・ソウダルが牽引の役割を担った。約4分遅れで進むメイン集団は、逃げとのタイム差調整ではなく、石畳坂に関連した駆け引きによってペースを上げたり下げたり。落ち着かない集団内ではレース後半にかけて落車が多発した。
ミラノ〜サンレモ覇者のアルノー・デマール(フランス、FDJ)に続き、優勝候補の一角であるグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)、ティエシー・ベノート(ベルギー、ロット・ソウダル)が落車に巻き込まれてしまう。残り100kmを前に、鎖骨骨折のファンアフェルマートを含む3名はレースを去った。セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)も地面に投げ出されたが怪我を免れている。
淡々と進むメイン集団で最初に戦略的な動きを見せたのはエティックス・クイックステップ。No.5 モーレンベルグでトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)がアタックを仕掛け、頂上通過後の横風区間で集団が割れて30名が先行する。やがて後続が追いついてレースは落ち着くが、トレック・セガフレードのアシストが削られる結果に。
続くNo.6 レベルグでアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)とニルス・ポリット(ドイツ、カチューシャ)がアタックし、先頭で逃げ続けていたエルビーティとハイス・ファンヘッケ(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)に合流。メイン集団ではカウンターアタックがかかり続け、ディミトリ・クレイス(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)らも遅れて先頭に合流。7名に人数を増やした先頭グループのリードは2分を超えた。
ティンコフ、トレック・セガフレード、チームスカイ、エティックス・クイックステップのアシスト勢が番人のように集団先頭で目を配り、熾烈なポジション争いを経てNo.11 オウデクワレモントに突入する。大観客が詰めかけたこの石畳坂でステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール)がアタック。
集団後方で脚をつく選手が続出する最大勾配22%のNo.13 コッペンベルグ手前で先頭はグライペル、ポリット、クレイス、エルビーティに絞られ、追走していたファンバールレとファンデンベルフが追いついて先頭は新たに7名。ここからフィニッシュまでの1時間は一瞬の判断ミスが命取りとなる緊迫した展開となる。
約40名に縮小したメイン集団からはNo.14 シュテインビークドリシュとNo.15 ターインベルグでカウンターアタックが連発。ファンマルクやユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)、ステイン・デヴォルデル(ベルギー、トレック・セガフレード)、マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)と言ったサブエース級選手がメイン集団から抜け出すと、ここにカンチェラーラとサガン、ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)も追いついた。
No.16 クルイスベルグとNo.17 オウデクワレモント、No.18 パテルベルグを残した残り32kmで勝負のカギを握る大きな動きが生まれる。クヴィアトコウスキーとサガンが抜け出してファンマルクが合流。このエース3名は先頭5名(ファンデンベルフ、グライペル、ファンバールレ、エルビーティ、クレイス)との30秒差を埋めるとともに、カンチェラーラを含む追走集団から40秒のリードを得た。
トレック・セガフレード、カチューシャ、アスタナの牽引によって先頭グループと追走集団のタイム差が25秒まで詰まったところでNo.17 オウデクワレモントの登坂が始まる。先頭ではサガンとファンマルクが抜け出し、一方の追走集団からはカンチェラーラがアタック。食らいついた選手を一瞬で切り離したカンチェラーラが猛追をかけたが、先頭サガンとファンマルクには追いつかない。
サガン&ファンマルク→15秒→カンチェラーラ、テルプストラ、エルビーティ、クレイスという状況で迎えた最後のNo.18 パテルベルグ。最大勾配20.3%の激坂でサガンがファンマルクを切り離し、カンチェラーラに合流を許さないまま頂上をクリアする。
パテルベルグからフィニッシュまで13kmの平坦路。独走に持ち込んだサガンを、カンチェラーラがファンマルクとともに追いかける。1対2の状況にもかかわらずタイム差はむしろ開き、サガンは15秒リードで残り5km。世界チャンピオンはリードを失うことなくそのままオウデナールデまで独走した。
観客の声援に応え、フィニッシュラインを切ってからウィリーを披露したサガンは「落車も多発するレースでサポートしてくれたチームに感謝だ。100km経過してからメカトラで前後のホイール交換を余儀なくされたし、とにかくスタートからフィニッシュまで全開だった。誰も協力してくれなかったので、とてもハードなレースだった。もちろん簡単なことじゃないけど、みんなをふるい落とすのが最良の方法だった」とコメント。これまで輝かしい成績を収めているサガンだが、モニュメント(5大クラシック)制覇は初めて。「先週亡くなったベルギーの2人と、昨日のトレーニング中に落車して出場できなかったマチェイ・ボドナールにこの勝利を捧げたい」。
前週のヘント〜ウェヴェルヘムに続く「北のクラシック」2連勝で、サガンはUCIワールドツアーランキングの首位に浮上。もちろん注目は翌週のパリ〜ルーベでの走りに集まる。「来週のことは来週考える。今はこの勝利を味わいたい」とサガン。同日行われた女子レースでも世界チャンピオンのリジー・アーミステッド(イギリス、ボエルスドルマンス)が勝利しており、2人のアルカンシェルが男女レースを制した。
ロンド・ファン・フラーンデレン2016結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 6h10’37”
2位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード) +25”
3位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ) +28”
4位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) +49”
5位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)
6位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール)
7位 イマノル・エルビーティ(スペイン、モビスター)
8位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)
9位 ディミトリ・クレイス(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)
10位 ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)
11位 ラース・ボーム(オランダ、アスタナ)
12位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
13位 ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)+56”
14位 アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ) +1’00”
15位 トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
16位 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング) +1’02”
17位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル) +1’16”
18位 ローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ)
19位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、BMCレーシング)
20位 スコット・スウェイツ(イギリス、ボーラ・アルゴン18)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano
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