2016/02/10(水) - 06:48
アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)のスリップストリームからマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)が抜け出す展開は前日と同じ。しかしこの日はカヴは差し切れず、先頭を守ったクリストフが接戦を制した。
ツアー・オブ・カタール第2ステージはドーハ市内のカタール大学を発着する135km。主催者が「テストイベント・ドーハ2016」と銘打った通り、レース終盤にかけてUCIロード世界選手権で使用される周回コースを4周する。
8ヶ月先の本戦に向けたリハーサルレースは、序盤からリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)ら4名が逃げる展開。しかしコースの方向転換とともに風向きが変わり、メイン集団のペースアップが始まる。風によって集団が分裂し、20名の精鋭グループが形成されると、フィニッシュまで100kmを残して逃げていた4名は吸収された。
精鋭グループにはクリストフやエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)らが入り、中間スプリントでクリストフが先着する。一方、リーダージャージのカヴェンディッシュは約1分後方の第2集団で追走を強いられた。
UCIロード世界選手権の周回コースに入るとタイム差は縮まり、カヴェンディッシュ集団はクリストフグループに合流。レースが一旦落ち着いたところでガティス・スムクリス(ラトビア、アスタナ)ら3名が飛び出して1分先行を開始する。しかしこの動きもディメンションデータやBMCレーシング、カチューシャによって封じ込められ、大集団のスプリント勝負に持ち込まれた。
スプリンターチームが競り合いながら残り1kmを切り、エーススプリンターが飛び出すタイミングを計る残り400mで落車が発生する。突如コースの真ん中に中央分離帯が現れ、集団の前から10番手あたりの選手が相次いで接触し、転倒。この落車に巻き込まれたアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)やサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)は勝負に絡めず。
落車を回避した約6名によって争われたスプリント勝負。ボアッソンハーゲンのリードアウトが終わると、その後ろからクリストフとカヴェンディッシュが踏み始める。先行したクリストフを、一歩出遅れたカヴェンディッシュが追いかける。最終的に両者横並びでフィニッシュラインにハンドルを投げ込んだが、僅差のためどちらも手を挙げることが出来ない。写真判定の結果、クリストフの先着が判明した。
「昨日は冴えない1日だったけど、今日は少し登り基調のフィニッシュが自分に味方した。他のチームと同様、カチューシャは良いポジションをキープしてスプリントに挑む作戦。ジャコポ・グアルニエーリの後ろで落ち着いてスプリントに持ち込んだことが勝利につながった。僅差だったけど、カヴェンディッシュをなんとか抑え込むことが出来たんだ。でも数センチ差だったから勝利の確証は無かった」と、今シーズン初勝利を飾ったクリストフは語る。
スプリント一騎打ちで敗れたカヴェンディッシュは「レース中盤の集団分裂は問題ないと思っていたけど、集団を一つにまとめるためにチームの戦力を使ってしまった。今日は常に風向きが変わる神経質な一日だったけどディメンションデータは上手く走った。エドヴァルド(ボアッソンハーゲン)が素晴らしいリードアウトをしてくれて、風が影響しにくいフェンス側のラインでスプリントしたかったけど、クリストフにラインを奪われてしまい、外側から追い上げる不利な展開になってしまった。クリストフは今日のようなスプリントが得意であり、負けたことに大きく凹んでいるわけじゃないよ」とコメント。カヴェンディッシュは総合リーダージャージを守っている。
2015年のロンド・ファン・フラーンデレン覇者クリストフは首位カヴェンディッシュと5秒差の総合2位に浮上。中間スプリントでボーナスタイムを狙う動きも見せており、総合成績も視野に入れる。翌日の第3ステージ・11km個人タイムトライアルに向けてクリストフは「明日はまた違う戦いだ。自分はTTスペシャリストではないけど、出来る限りの走りをしたい」と意気込んでいる。
同じ11kmコースで行われた1年前の個人タイムトライアルで、クリストフはステージ優勝者テルプストラと44秒差のステージ26位。一方、現在総合5位のボアッソンハーゲンは21秒差のステージ8位、総合7位グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)は24秒差のステージ9位という成績を残しており、僅差の総合争いが予想される。
選手コメントは各チーム公式サイトより。
ツアー・オブ・カタール2016第2ステージ結果
1位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) 3h11’26”
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)
3位 ローイ・ヤンス(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)
4位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
6位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)
7位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 アンドレ・ローイ(オランダ、ルームポット)
9位 トマシュ・キエンディス(ポーランド、CCCポルサットポルコウィチェ)
10位 ヴィチェスラフ・クズネツォフ(ロシア、カチューシャ)
104位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
個人総合成績
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 6h39’51”
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) +05”
3位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ) +14”
4位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) +17”
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) +18”
6位 ヴィチェスラフ・クズネツォフ(ロシア、カチューシャ)
7位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +20”
8位 アルノー・ジェラール(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト) +21”
9位 スヴェンエリック・ビストロム(ノルウェー、カチューシャ)
10位 マヌエル・クインツィアート(イタリア、BMCレーシング)
ポイント賞
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)
ヤングライダー賞
1位 スヴェンエリック・ビストロム(ノルウェー、カチューシャ)
チーム総合成績
1位 カチューシャ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
ツアー・オブ・カタール第2ステージはドーハ市内のカタール大学を発着する135km。主催者が「テストイベント・ドーハ2016」と銘打った通り、レース終盤にかけてUCIロード世界選手権で使用される周回コースを4周する。
8ヶ月先の本戦に向けたリハーサルレースは、序盤からリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)ら4名が逃げる展開。しかしコースの方向転換とともに風向きが変わり、メイン集団のペースアップが始まる。風によって集団が分裂し、20名の精鋭グループが形成されると、フィニッシュまで100kmを残して逃げていた4名は吸収された。
精鋭グループにはクリストフやエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)らが入り、中間スプリントでクリストフが先着する。一方、リーダージャージのカヴェンディッシュは約1分後方の第2集団で追走を強いられた。
UCIロード世界選手権の周回コースに入るとタイム差は縮まり、カヴェンディッシュ集団はクリストフグループに合流。レースが一旦落ち着いたところでガティス・スムクリス(ラトビア、アスタナ)ら3名が飛び出して1分先行を開始する。しかしこの動きもディメンションデータやBMCレーシング、カチューシャによって封じ込められ、大集団のスプリント勝負に持ち込まれた。
スプリンターチームが競り合いながら残り1kmを切り、エーススプリンターが飛び出すタイミングを計る残り400mで落車が発生する。突如コースの真ん中に中央分離帯が現れ、集団の前から10番手あたりの選手が相次いで接触し、転倒。この落車に巻き込まれたアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)やサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)は勝負に絡めず。
落車を回避した約6名によって争われたスプリント勝負。ボアッソンハーゲンのリードアウトが終わると、その後ろからクリストフとカヴェンディッシュが踏み始める。先行したクリストフを、一歩出遅れたカヴェンディッシュが追いかける。最終的に両者横並びでフィニッシュラインにハンドルを投げ込んだが、僅差のためどちらも手を挙げることが出来ない。写真判定の結果、クリストフの先着が判明した。
「昨日は冴えない1日だったけど、今日は少し登り基調のフィニッシュが自分に味方した。他のチームと同様、カチューシャは良いポジションをキープしてスプリントに挑む作戦。ジャコポ・グアルニエーリの後ろで落ち着いてスプリントに持ち込んだことが勝利につながった。僅差だったけど、カヴェンディッシュをなんとか抑え込むことが出来たんだ。でも数センチ差だったから勝利の確証は無かった」と、今シーズン初勝利を飾ったクリストフは語る。
スプリント一騎打ちで敗れたカヴェンディッシュは「レース中盤の集団分裂は問題ないと思っていたけど、集団を一つにまとめるためにチームの戦力を使ってしまった。今日は常に風向きが変わる神経質な一日だったけどディメンションデータは上手く走った。エドヴァルド(ボアッソンハーゲン)が素晴らしいリードアウトをしてくれて、風が影響しにくいフェンス側のラインでスプリントしたかったけど、クリストフにラインを奪われてしまい、外側から追い上げる不利な展開になってしまった。クリストフは今日のようなスプリントが得意であり、負けたことに大きく凹んでいるわけじゃないよ」とコメント。カヴェンディッシュは総合リーダージャージを守っている。
2015年のロンド・ファン・フラーンデレン覇者クリストフは首位カヴェンディッシュと5秒差の総合2位に浮上。中間スプリントでボーナスタイムを狙う動きも見せており、総合成績も視野に入れる。翌日の第3ステージ・11km個人タイムトライアルに向けてクリストフは「明日はまた違う戦いだ。自分はTTスペシャリストではないけど、出来る限りの走りをしたい」と意気込んでいる。
同じ11kmコースで行われた1年前の個人タイムトライアルで、クリストフはステージ優勝者テルプストラと44秒差のステージ26位。一方、現在総合5位のボアッソンハーゲンは21秒差のステージ8位、総合7位グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)は24秒差のステージ9位という成績を残しており、僅差の総合争いが予想される。
選手コメントは各チーム公式サイトより。
ツアー・オブ・カタール2016第2ステージ結果
1位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) 3h11’26”
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)
3位 ローイ・ヤンス(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)
4位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
6位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)
7位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 アンドレ・ローイ(オランダ、ルームポット)
9位 トマシュ・キエンディス(ポーランド、CCCポルサットポルコウィチェ)
10位 ヴィチェスラフ・クズネツォフ(ロシア、カチューシャ)
104位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
個人総合成績
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 6h39’51”
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) +05”
3位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ) +14”
4位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) +17”
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) +18”
6位 ヴィチェスラフ・クズネツォフ(ロシア、カチューシャ)
7位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +20”
8位 アルノー・ジェラール(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト) +21”
9位 スヴェンエリック・ビストロム(ノルウェー、カチューシャ)
10位 マヌエル・クインツィアート(イタリア、BMCレーシング)
ポイント賞
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)
ヤングライダー賞
1位 スヴェンエリック・ビストロム(ノルウェー、カチューシャ)
チーム総合成績
1位 カチューシャ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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サイクルスポーツ 2016年 04 月号
八重洲出版