2015/11/12(木) - 12:39
サイクルモードに集まった各種ブースから、注目のアイテムを紹介する第8弾。日本人にマッチしたオリジナルパーツを提案する東京サンエス、カーボンバイクの祖ことルック、那須ブラーゼンを支える国内ブランドのボーマ、はたらく自転車をテーマとしたオリジナルバイクを展示した東京サイクルデザイン専門学校をピックアップします。
東京サンエス
日本人の体格やライディングスタイルに適した独自開発のプロダクトを展開する東京サンエス。例年サイクルモードにて新製品発表することもあり、ショップ関係者からの注目度も高いブースの1つである。ブース正面には同社のフレームとパーツで組み上げたバイクが用意され、バランスの取りにくい3本ローラーで試乗することで、日本人に最適化したバイクの高い安定感を感じてもらおうという取り組みが行われていた。
昨年より展開が開始された、東京サンエスのオリジナルフレームブランド「JFF」からは、ディスクブレーキ仕様のクロモリCXバイク「#801」にグラベルロード風の完成車が登場。ブラウン系にフレームカラーに合わせて、装備されるパーツも同トーンのカラーとされており、レースだけではない幅広い楽しみ方に対応してくれそうだ。
また、全日本シクロクロス選手権9連覇の偉業を誇り、現在は東京サンエスのスタッフとして働く辻浦圭一さんが監修したカンチブレーキ仕様のアルミCXバイク「#803」が参考出品されていた。こちらは、単体で1,250gというアルミ製フレームに、オリジナルのテーパードヘッド対応カーボンフォークを組み合わせており、ホイール以外のパーツをアッセンブルした、いわば「セミ完成車」状態で販売されるとのこと。開発スタッフの上司辰治さん曰く「フォークの曲線は1mm単位でこだわって造りあげました。フレームに加え、パーツアッセンブルにも辻浦の理想を取り入れた1台で、比較的リーズナブルに仕上がる予定です」とのこと。
ロード系パーツのOne by Esuのイチオシは「スージーステム」。曲線的なデザインはカーボン製の高級モデルを思わせるが実はアルミ製で、価格5,300円(税抜)とこなれており、80mmで128gと比較的軽量だ。加えてコラム部のハイトを33mmと抑え、クランプ部の中心をボディー部の中心から下側に7mmオフセットさせており、70°のステムと同等にハンドル位置を低くすることができる。
そして、ドロップハンドルのブラケット取付部の下側を削ぐことでバーの下側から握り込みやすくした「FitZone」デザインの取り入れたモデルが増加。徹底的に各部の曲げにこだわったディズナのブルホーンバー「アーク ヨークバー」も上司さんのイチオシだ。
MTB系オリジナルブランドのグランジからは、カラフルかつコンパクトデザインのSPDペダルが、昨年デビューしたアーバンバイク系パーツブランドのヴェノからはクッション性に富むシームレス設計のサドルがそれぞれ登場。ロコゴワやテリーなどのウェアは、ビギナーを中心とした女性来場者から好評な様であった。
ルック(ユーロスポーツインテグレーション)
多くのサイクリストが憧れるカーボンバイクの祖ことフランスのルック。今回のサイクルモードでのイチオシは新たなエントリーグレードの「765」だ。ブース担当の岡部秀克さん曰く「従来のハイエンドである695をお求めやすくしたバイク」と説明する1台で、スクエア断面のチューブ形状を多用している点は695と共通。チェーンステーには麻繊維のシートを挟み込んでおり、シートステーの末端形状とあわせて優れた振動吸収性を実現している。
シマノULTEGRA完成車で380,000円(税抜)と、高嶺の花というイメージが強いルックながら、比較的こなれた価格設定となっている。また、今まではハイエンド機のみに用意されていたルック伝統のモンドリアンカラーがラインアップされることも765の大きなトピックスと言えよう。
そして、国内初お披露目となった新型TTバイク「796 MONOBLADE」も見逃せない1台だ。非常にシンプルな1台ながら、TTバイクの先駆者としての創意工夫を各部に見て取ることができる。ケーブル類は専用設計のハンドルからステムを経てフレーム内へと内蔵しており、板の様に薄いヘッドチューブやフレーム一体式のブレーキとあわせて、空気抵抗の極限まで抑えることに成功。そしてシートポストにはルック定番のE-POST機構が組み込まれている。
昨年デビューしたフラッグシップモデルの「795」や、セカンドグレード「695」、そして「796」に採用されているルックオリジナルのクランク「ZED」は第3世代へと進化。スパイダー部を円盤状としたエアロデザインとされており、剛性面でも、ルックス面でもブラッシュアップされている。
もちろん、愛用者の多いKeOペダルも国内取扱の全ラインアップが背揃い。また、ブースの正面にはKEOと共に世界選手権を制したペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)の大きなポスターが貼られていた。
ボーマ(ASK)
カーボン繊維商社を前身とするASKトレーディングを母体とし、特にリアルレーサーから支持を集めている国内ブランドのボーマ。2016ラインアップでは「VIDE pro」と「Cofy II」という2つの新モデルが登場している。
新たなハイエンドに位置づけられる「VIDE pro」は、同社がサポートを行う那須ブラーゼンとのコラボレーションより誕生した2作目のレーシングモデル。ベースとなったエアロ系モデル「VIDE」の形状をそのままにカーボンを60t及び1K(仕上げ用)の組み合わせに変更。レイアリングについてもブラッシュアップされており、更なる高剛性化を果たしているという。
「Cofy II」はトップチューブからシートステーにかけての大きなカーブによって振動吸収性を高めたロングライド系モデル。化粧カーボンを廃すことで価格を抑えている一方で、塗装に仕上がりはイタリアンブランドの上位モデルにも劣らない仕上がり。ブース担当の菊地啓之さんによると「技術的に難しいトップチューブのグラデーションに注目して頂きたいですね。我々もこだわりましたが、『やり過ぎだろう』と我々が思うぐらい塗装工場のスタッフが丹念にペイントしてくれました」という自信作とのことだ。
東京サイクルデザイン専門学校
2年連続でブースを構えた、日本初の自転車を学ぶための専門学校「東京サイクルデザイン専門学校」。今年も夢とアイディアに溢れた多数の自転車がブースを彩った。その中から4台のメッセージ性あふれる「はたらく自転車」を紹介しよう。
まず最初は、市場で見かけるターレのような外観の「CHARI-OT(チャリオット)」。最近増えている大型スーパーで使うことを想定したもので、なんとキャリアラックにはレジカゴを4つ搭載できるという積載能力を持った3輪車だ。乗り降りしやすいようにトップチューブを下げ、前面のカバーは万が一接触した場合も相手を傷つけないように、という配慮からの装備だそう。かなり完成度の高いこのバイク、実際に大型スーパーの中を走る近未来が浮かんできそう。
そしてクラシック実用車のような一台は「SHOE SHINE」という一台で、その名の通りいまだ屋外で活動するインドの靴磨き職人がターゲット。ダブルチェーンがトップチューブのブラシを回転させ、キャリアにもなるスタンドに乗せたまま作業ができる。実用性に加えて日常に映える美しさまで求めたことが特徴だ。
無骨なMTBタイプのマシンは「RIDE AND SEEK」の頭文字を取ったRAS。野原を駆け回るアウトドアカメラマンのためのバイクで、重装備のカメラバックをいくつも搭載できるキャリアラックや、重たい三脚をセットできるオリジナルフォークなどが見所だ。
ロングテール型で最も目立っていた「FOUNTAIN BIKE」は、水道の整わない海外で、長い時間をかけて水汲みに出かける人の生活を改善するためのコンセプトモデル。重たい水を運ぶためにラックの搭載位置をギリギリまで下げ、ロングテールにすることで直進安定性を稼いでいる。荒れた土地で酷使することを踏まえ、フレームやホイールの補強まで行った「現地目線」が興味深い。
ブースでは他にも卒業制作として作られたコンセプトモデルや、授業の一環を知ることのできる展示など、夢と希望にあふれる内容で興味を惹きつけていた。
text&photo:CW編集部
東京サンエス
日本人の体格やライディングスタイルに適した独自開発のプロダクトを展開する東京サンエス。例年サイクルモードにて新製品発表することもあり、ショップ関係者からの注目度も高いブースの1つである。ブース正面には同社のフレームとパーツで組み上げたバイクが用意され、バランスの取りにくい3本ローラーで試乗することで、日本人に最適化したバイクの高い安定感を感じてもらおうという取り組みが行われていた。
昨年より展開が開始された、東京サンエスのオリジナルフレームブランド「JFF」からは、ディスクブレーキ仕様のクロモリCXバイク「#801」にグラベルロード風の完成車が登場。ブラウン系にフレームカラーに合わせて、装備されるパーツも同トーンのカラーとされており、レースだけではない幅広い楽しみ方に対応してくれそうだ。
また、全日本シクロクロス選手権9連覇の偉業を誇り、現在は東京サンエスのスタッフとして働く辻浦圭一さんが監修したカンチブレーキ仕様のアルミCXバイク「#803」が参考出品されていた。こちらは、単体で1,250gというアルミ製フレームに、オリジナルのテーパードヘッド対応カーボンフォークを組み合わせており、ホイール以外のパーツをアッセンブルした、いわば「セミ完成車」状態で販売されるとのこと。開発スタッフの上司辰治さん曰く「フォークの曲線は1mm単位でこだわって造りあげました。フレームに加え、パーツアッセンブルにも辻浦の理想を取り入れた1台で、比較的リーズナブルに仕上がる予定です」とのこと。
ロード系パーツのOne by Esuのイチオシは「スージーステム」。曲線的なデザインはカーボン製の高級モデルを思わせるが実はアルミ製で、価格5,300円(税抜)とこなれており、80mmで128gと比較的軽量だ。加えてコラム部のハイトを33mmと抑え、クランプ部の中心をボディー部の中心から下側に7mmオフセットさせており、70°のステムと同等にハンドル位置を低くすることができる。
そして、ドロップハンドルのブラケット取付部の下側を削ぐことでバーの下側から握り込みやすくした「FitZone」デザインの取り入れたモデルが増加。徹底的に各部の曲げにこだわったディズナのブルホーンバー「アーク ヨークバー」も上司さんのイチオシだ。
MTB系オリジナルブランドのグランジからは、カラフルかつコンパクトデザインのSPDペダルが、昨年デビューしたアーバンバイク系パーツブランドのヴェノからはクッション性に富むシームレス設計のサドルがそれぞれ登場。ロコゴワやテリーなどのウェアは、ビギナーを中心とした女性来場者から好評な様であった。
ルック(ユーロスポーツインテグレーション)
多くのサイクリストが憧れるカーボンバイクの祖ことフランスのルック。今回のサイクルモードでのイチオシは新たなエントリーグレードの「765」だ。ブース担当の岡部秀克さん曰く「従来のハイエンドである695をお求めやすくしたバイク」と説明する1台で、スクエア断面のチューブ形状を多用している点は695と共通。チェーンステーには麻繊維のシートを挟み込んでおり、シートステーの末端形状とあわせて優れた振動吸収性を実現している。
シマノULTEGRA完成車で380,000円(税抜)と、高嶺の花というイメージが強いルックながら、比較的こなれた価格設定となっている。また、今まではハイエンド機のみに用意されていたルック伝統のモンドリアンカラーがラインアップされることも765の大きなトピックスと言えよう。
そして、国内初お披露目となった新型TTバイク「796 MONOBLADE」も見逃せない1台だ。非常にシンプルな1台ながら、TTバイクの先駆者としての創意工夫を各部に見て取ることができる。ケーブル類は専用設計のハンドルからステムを経てフレーム内へと内蔵しており、板の様に薄いヘッドチューブやフレーム一体式のブレーキとあわせて、空気抵抗の極限まで抑えることに成功。そしてシートポストにはルック定番のE-POST機構が組み込まれている。
昨年デビューしたフラッグシップモデルの「795」や、セカンドグレード「695」、そして「796」に採用されているルックオリジナルのクランク「ZED」は第3世代へと進化。スパイダー部を円盤状としたエアロデザインとされており、剛性面でも、ルックス面でもブラッシュアップされている。
もちろん、愛用者の多いKeOペダルも国内取扱の全ラインアップが背揃い。また、ブースの正面にはKEOと共に世界選手権を制したペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)の大きなポスターが貼られていた。
ボーマ(ASK)
カーボン繊維商社を前身とするASKトレーディングを母体とし、特にリアルレーサーから支持を集めている国内ブランドのボーマ。2016ラインアップでは「VIDE pro」と「Cofy II」という2つの新モデルが登場している。
新たなハイエンドに位置づけられる「VIDE pro」は、同社がサポートを行う那須ブラーゼンとのコラボレーションより誕生した2作目のレーシングモデル。ベースとなったエアロ系モデル「VIDE」の形状をそのままにカーボンを60t及び1K(仕上げ用)の組み合わせに変更。レイアリングについてもブラッシュアップされており、更なる高剛性化を果たしているという。
「Cofy II」はトップチューブからシートステーにかけての大きなカーブによって振動吸収性を高めたロングライド系モデル。化粧カーボンを廃すことで価格を抑えている一方で、塗装に仕上がりはイタリアンブランドの上位モデルにも劣らない仕上がり。ブース担当の菊地啓之さんによると「技術的に難しいトップチューブのグラデーションに注目して頂きたいですね。我々もこだわりましたが、『やり過ぎだろう』と我々が思うぐらい塗装工場のスタッフが丹念にペイントしてくれました」という自信作とのことだ。
東京サイクルデザイン専門学校
2年連続でブースを構えた、日本初の自転車を学ぶための専門学校「東京サイクルデザイン専門学校」。今年も夢とアイディアに溢れた多数の自転車がブースを彩った。その中から4台のメッセージ性あふれる「はたらく自転車」を紹介しよう。
まず最初は、市場で見かけるターレのような外観の「CHARI-OT(チャリオット)」。最近増えている大型スーパーで使うことを想定したもので、なんとキャリアラックにはレジカゴを4つ搭載できるという積載能力を持った3輪車だ。乗り降りしやすいようにトップチューブを下げ、前面のカバーは万が一接触した場合も相手を傷つけないように、という配慮からの装備だそう。かなり完成度の高いこのバイク、実際に大型スーパーの中を走る近未来が浮かんできそう。
そしてクラシック実用車のような一台は「SHOE SHINE」という一台で、その名の通りいまだ屋外で活動するインドの靴磨き職人がターゲット。ダブルチェーンがトップチューブのブラシを回転させ、キャリアにもなるスタンドに乗せたまま作業ができる。実用性に加えて日常に映える美しさまで求めたことが特徴だ。
無骨なMTBタイプのマシンは「RIDE AND SEEK」の頭文字を取ったRAS。野原を駆け回るアウトドアカメラマンのためのバイクで、重装備のカメラバックをいくつも搭載できるキャリアラックや、重たい三脚をセットできるオリジナルフォークなどが見所だ。
ロングテール型で最も目立っていた「FOUNTAIN BIKE」は、水道の整わない海外で、長い時間をかけて水汲みに出かける人の生活を改善するためのコンセプトモデル。重たい水を運ぶためにラックの搭載位置をギリギリまで下げ、ロングテールにすることで直進安定性を稼いでいる。荒れた土地で酷使することを踏まえ、フレームやホイールの補強まで行った「現地目線」が興味深い。
ブースでは他にも卒業制作として作られたコンセプトモデルや、授業の一環を知ることのできる展示など、夢と希望にあふれる内容で興味を惹きつけていた。
text&photo:CW編集部