2009/09/20(日) - 06:02
デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)の独走力が最終日前日の個人タイムトライアルを支配した。ミラーが自身5度目のステージ優勝。総合争いは総合2位のサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が好走したが、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)の優位は揺るがず。バルベルデが初総合優勝に王手をかけた。
ブエルタの総合争いは、トレドの個人タイムトライアル(以下個人TT)で決す。最終マドリードステージを翌日に控えたこの日の闘いが、実質的に総合成績を決定づける。上りが数カ所登場する27.8kmの平坦コースが、64代目のブエルタ総合優勝者を導き出すのだ。
総合下位の選手から一定間隔でスタートしていくのはステージレースの個人TTならでは。3週間を闘い終えんとする選手たちのコンディションとモチヴェーションには大きな開きが有り、ステージトップと最下位の選手は平均スピードで実に7km/hもの差がついた。
快晴のトレドでトップタイムを叩き出したのは、バレンシアで行なわれた第7ステージ・30km個人TTで、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)に次いでステージ2位に入ったミラーだ。
この日はカンチェラーラもいなければ、第7ステージ3位の世界王者ベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア・HTC)もいない。世界選手権を見据えるTTスペシャリストが次々にリタイアした状況で、ミラーの優位を揺るがす選手は現れなかった。
平均46.4km/hで27.8kmを駆け抜けたミラーは、2006年のブエルタに次ぐキャリア5度目のステージ優勝を達成。「今日はやる気がみなぎっていた。コースを見た時は自分向きではないと思ったけど、終わってみればステージ優勝。ガーミンはこのブエルタで総合的にいい走りが出来たと思っている。ステージ3勝。申し分のない結果だ」。ミラーは第11ステージのファラー(アメリカ)と第12ステージのヘジダル(カナダ)に次ぐステージ通算3勝目をチームにもたらした。
やがて、レース後半に入ると人々の関心はステージ優勝の行方からマイヨオロの行方に移り行く。全身ゴールデンジャージに身を包んだ最終走者のバルベルデは、序盤から安定したペースで好タイムを連発。ミラーのタイムには36秒及ばなかったが、総合首位の座を守りきるには充分だった。
バルベルデが、グランツール初制覇に王手をかけた。「プレッシャーから解放された気分だ。いつかはグランツールで総合優勝できると思っていた。今、ようやく“その日”がやってこようとしている。今年のブエルタは余計なエネルギーを極力使わず、最後まで集中力を切らさなかったよ。ブエルタ後の将来を考えたとき、やはりツール・ド・フランスは切っても切れない存在。コンタドールは強いけど、挑戦してみる価値はある」。
9回目のグランツール出場でようやく掴んだ総合優勝のチャンス。これまで2回総合表彰台を経験しているバルベルデが、マドリードで表彰台のテッペンに上る日がやってきた。
総合上位陣の中で最も輝かしい走りを見せたのは、総合首位バルベルデとの総合タイム差1分26秒を詰めようと奮起したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)。前半抑え気味のスタートを切ったサンチェスは後半にかけて大きく挽回し、ミラーから僅か5秒遅れのステージ2位に。バルベルデとのタイム差を31秒詰めることに成功し、2007年に記録した自身最高の総合3位を上回る総合2位を不動のものにした。
同時に注目が集まったのは総合表彰台をかけた闘い。前日の第19ステージを終えた時点で、総合3位イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)と総合4位カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)の総合タイム差は14秒。結果的にバッソはこのリードを守りきれなかった。
エヴァンスはミラーのステージ優勝を阻止しかねないほどのハイペースで走り、2分先にスタートしていたエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)をレース中盤にパス。山岳ステージで何度もパンクに見舞われたエヴァンスがステージ3位。輝きを取り戻した。バッソは結局エヴァンスから54秒遅れ、総合3位の座をエヴァンスに明け渡す結果に。ジロ・デ・イタリアの総合5位に続き、再び総合表彰台に手が届かなかった。
最後の総合争いを終えたブエルタは、翌第21ステージでマドリードに終着する。2009年のグランツール最終戦、3週間の闘いを締めくくるのは、毎年恒例シベレス広場でのスプリントバトルだ。
選手コメントはレース公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第20ステージ結果
1位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)35'53"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+05"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+09"
4位 グスターボ・セサル(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+20"
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+30"
6位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)+34"
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)+36"
8位 ダビド・エッレロ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+37"
9位 ヘスス・デルネロ(スペイン、フジ・セルヴェット)+40"
10位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ)+43"
18位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+1'03"
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)84h10'32"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+55"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+1'32"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+2'12"
5位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+4'27"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+6'40"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)+9'08"
8位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、ランプレ)+9'11"
9位 フィリップ・ダイグナン(アイルランド、サーヴェロ)+11'08"
10位 ファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)+11'27"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)186pts
2位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)99pts
3位 フリアン・サンチェス(スペイン、コンテントポリス・アンポ)73pts
プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)123pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)111pts
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)99pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)7pts
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)16pts
3位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)16pts
チーム総合成績
1位 シャコベオ・ガリシア 252h21'14"
2位 ケースデパーニュ +23'43"
3位 アスタナ +31'23"
リタイア(DNS=未出走・DNF=途中リタイア)
なし
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
ブエルタの総合争いは、トレドの個人タイムトライアル(以下個人TT)で決す。最終マドリードステージを翌日に控えたこの日の闘いが、実質的に総合成績を決定づける。上りが数カ所登場する27.8kmの平坦コースが、64代目のブエルタ総合優勝者を導き出すのだ。
総合下位の選手から一定間隔でスタートしていくのはステージレースの個人TTならでは。3週間を闘い終えんとする選手たちのコンディションとモチヴェーションには大きな開きが有り、ステージトップと最下位の選手は平均スピードで実に7km/hもの差がついた。
快晴のトレドでトップタイムを叩き出したのは、バレンシアで行なわれた第7ステージ・30km個人TTで、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)に次いでステージ2位に入ったミラーだ。
この日はカンチェラーラもいなければ、第7ステージ3位の世界王者ベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア・HTC)もいない。世界選手権を見据えるTTスペシャリストが次々にリタイアした状況で、ミラーの優位を揺るがす選手は現れなかった。
平均46.4km/hで27.8kmを駆け抜けたミラーは、2006年のブエルタに次ぐキャリア5度目のステージ優勝を達成。「今日はやる気がみなぎっていた。コースを見た時は自分向きではないと思ったけど、終わってみればステージ優勝。ガーミンはこのブエルタで総合的にいい走りが出来たと思っている。ステージ3勝。申し分のない結果だ」。ミラーは第11ステージのファラー(アメリカ)と第12ステージのヘジダル(カナダ)に次ぐステージ通算3勝目をチームにもたらした。
やがて、レース後半に入ると人々の関心はステージ優勝の行方からマイヨオロの行方に移り行く。全身ゴールデンジャージに身を包んだ最終走者のバルベルデは、序盤から安定したペースで好タイムを連発。ミラーのタイムには36秒及ばなかったが、総合首位の座を守りきるには充分だった。
バルベルデが、グランツール初制覇に王手をかけた。「プレッシャーから解放された気分だ。いつかはグランツールで総合優勝できると思っていた。今、ようやく“その日”がやってこようとしている。今年のブエルタは余計なエネルギーを極力使わず、最後まで集中力を切らさなかったよ。ブエルタ後の将来を考えたとき、やはりツール・ド・フランスは切っても切れない存在。コンタドールは強いけど、挑戦してみる価値はある」。
9回目のグランツール出場でようやく掴んだ総合優勝のチャンス。これまで2回総合表彰台を経験しているバルベルデが、マドリードで表彰台のテッペンに上る日がやってきた。
総合上位陣の中で最も輝かしい走りを見せたのは、総合首位バルベルデとの総合タイム差1分26秒を詰めようと奮起したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)。前半抑え気味のスタートを切ったサンチェスは後半にかけて大きく挽回し、ミラーから僅か5秒遅れのステージ2位に。バルベルデとのタイム差を31秒詰めることに成功し、2007年に記録した自身最高の総合3位を上回る総合2位を不動のものにした。
同時に注目が集まったのは総合表彰台をかけた闘い。前日の第19ステージを終えた時点で、総合3位イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)と総合4位カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)の総合タイム差は14秒。結果的にバッソはこのリードを守りきれなかった。
エヴァンスはミラーのステージ優勝を阻止しかねないほどのハイペースで走り、2分先にスタートしていたエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)をレース中盤にパス。山岳ステージで何度もパンクに見舞われたエヴァンスがステージ3位。輝きを取り戻した。バッソは結局エヴァンスから54秒遅れ、総合3位の座をエヴァンスに明け渡す結果に。ジロ・デ・イタリアの総合5位に続き、再び総合表彰台に手が届かなかった。
最後の総合争いを終えたブエルタは、翌第21ステージでマドリードに終着する。2009年のグランツール最終戦、3週間の闘いを締めくくるのは、毎年恒例シベレス広場でのスプリントバトルだ。
選手コメントはレース公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第20ステージ結果
1位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)35'53"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+05"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+09"
4位 グスターボ・セサル(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+20"
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+30"
6位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)+34"
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)+36"
8位 ダビド・エッレロ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+37"
9位 ヘスス・デルネロ(スペイン、フジ・セルヴェット)+40"
10位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ)+43"
18位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+1'03"
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)84h10'32"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+55"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+1'32"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+2'12"
5位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+4'27"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+6'40"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)+9'08"
8位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、ランプレ)+9'11"
9位 フィリップ・ダイグナン(アイルランド、サーヴェロ)+11'08"
10位 ファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)+11'27"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)186pts
2位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)99pts
3位 フリアン・サンチェス(スペイン、コンテントポリス・アンポ)73pts
プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)123pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)111pts
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)99pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)7pts
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)16pts
3位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)16pts
チーム総合成績
1位 シャコベオ・ガリシア 252h21'14"
2位 ケースデパーニュ +23'43"
3位 アスタナ +31'23"
リタイア(DNS=未出走・DNF=途中リタイア)
なし
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
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