激坂の名手ロドリゲスが頂上フィニッシュへと飛翔　独走勝利で総合争いはクライマックスへ

難関山岳2日目のフィニッシュは1級山岳ソトレス・カブラレス。最終盤の急勾配区間で飛び出したホアキン・ロドリゲスが独走勝利を飾り、遅れたファビオ・アルに総合で1秒差まで迫る躍進を見せた。

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風光明媚なビスケー湾を横目にプロトンが走る photo:CorVos

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ナタナエル・ベルハネ（エリトリア、MTNキュベカ）ら9名が逃げる photo:CorVos岩山に囲まれたブエルタ初登場の1級山岳ソトレス・カブラレス photo:CorVosブエルタ山岳3連戦の2日目、第15ステージの舞台となるのは前日に引き続きスペイン北部のカンタブリア州。大西洋を眺める海岸線に沿ってコミーリャスから西を目指し、カンタブリア州からアストゥリアス州に入ったところでUターン。2級山岳アルト・デル・トルノを経て内陸部に向かう175.8km。

集団内でしのぐファビオ・アル（イタリア、アスタナ） photo:CorVos遅れながらも粘ったトム・ドゥムラン（オランダ、ジャイアント・アルペシン）　　 photo:CorVosそして一日を締めくくるのは、ブエルタ初登場の1級山岳ソトレス・カブラレスだ。ソトレス・カブラレスは登坂距離12.7km/高低差1010m/平均勾配8%。しかし中盤に平坦区間を含むため、実質的な平均勾配は10%前後。残り3kmを切ってから最大13.3%の急勾配区間も登場し、選手たちに休む間を与えない11〜13％の勾配がフィニッシュラインまで続いている。カテゴリーは1級だが、前日の超級山岳アルト・カンポよりも破壊力は上だ。予想通り、この峠で激しいバトルが繰り広げられることとなった。

この日の逃げは9名という大所帯。総合上位陣こそ含まないものの、ナタナエル・ベルハネ（エリトリア、MTNキュベカ）やアイマル・スベルディア（スペイン、トレックファクトリーレーシング）、ピエール・ローラン（フランス、ユーロップカー）、ビエル・カドリ（フランス、AG2ラモンディアール）、ニコラス・マース（ベルギー、エティックス・クイックステップ）ら強力なメンバーがジョイン。タイム差は大きく広がらなかったものの、ステージ優勝の可能性を残した状態で距離を消化していった。

ホアキン・ロドリゲス（スペイン、カチューシャ）がフィニッシュに向けて独走する photo:CorVos風光明媚なビスケー湾を横目に集団を牽いたのはモビスター。終盤になるとその後方にアスタナ、カチューシャ、ジャイアント・アルペシン、チームスカイが順に控え、勝負に向けての体制を徐々に整えていった。

級山岳ソトレス・カブラレスの麓に到着した時点でのタイム差はおよそ1分半。ドロミテ山塊のような切り立った岩山の谷を縫うように走る登りの序盤では、まず逃げ集団からビエル・カドリ（フランス、AG2ラモンディアール）がアタック。この動きで9名はバラバラとなり、この中から今大会最年長、38歳スベルディアが先頭に立ち踏み始める。一方登りで有利と思われたローランは遅れを喫してしまった。

「逃げの中で僕が一番強いクライマーだった。暫くタイム差をキープできていたが、途中から集団がペースアップしたことで急激にリードを失ってしまったんだ。もう2分差があればもっと何かしらできたと思う」と語るスベルディア。後方ではナイロ・キンタナ（コロンビア）のアタックや、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ（イタリア）らモビスター勢がペースアップしたことで、頂上まで残り3km地点でタイム差は30秒に。

モビスターのアシスト陣が力尽きると、エステバン・チャベス（コロンビア、オリカ・グリーンエッジ）に「強すぎる」と言わしめたアスタナがいよいよペースアップを開始する。この動きで総合3位トム・ドゥムラン（オランダ、ジャイアント・アルペシン）や総合10位のロメン・シカール（フランス、ヨーロッパカー）が千切れ、粘っていたスベルディアも吸収。

ラファル・マイカ（ポーランド）の総合順位を上げたいティンコフ・サクソもペースアップに加わったが、集団を崩壊させるには至らない。有力勢が互いに見合うジリジリとした展開のまま、急勾配のつづら折れをクリアしていく。すると残り1kmを前にした急勾配区間でホアキン・ロドリゲス（スペイン、カチューシャ）がジワジワと速度を上げ、ライバルを振るい落としに掛かる。

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独走で飛び込むホアキン・ロドリゲス（スペイン、カチューシャ） photo:CorVos

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苦しい展開となったファビオ・アル（イタリア、アスタナ） photo:CorVos"激坂の名手"ロドリゲスによって集団は徐々に解体され、マイヨロホを着るファビオ・アル（イタリア、アスタナ）も苦しい展開に。ラファル・マイカ（ポーランド、ティンコフ・サクソ）が単独で追ったものの、総合首位浮上を狙うロドリゲスのリードは崩れず、最後は両手を広げガッツポーズ。

マイヨプントスを手に入れたホアキン・ロドリゲス（スペイン、カチューシャ）　 photo:CorVos12秒遅れの2位にはマイカ、14秒遅れの3位にはダニエル・モレーノ（スペイン、カチューシャ）、15秒遅れの4位と5位にキンタナ、アルが続いて入り、アルはボーナスタイムの獲得ならず。

総合ではアルが僅か1秒差で首位を守り、粘りながらも遅れたドゥムランを1秒かわしてマイカが3位に。アルとロドリゲスの首位争い、そしてマイカ、ドゥムラン、チャベス、モレーノらによる総合3位争いがぐっと接近した形で難関山岳3連戦2日目を終えることとなった。

翌日は3級、2級、3級、2級、2級、1級、超級と立て続けに計7つの山岳が登場し、獲得標高が5000mを超える難関山岳3連戦の最終日。最大勾配20%オーバーを含む超級山岳アルト・エルミタ・デ・アルバが控えるクライマックスだ。ここで熾烈極める総合争いの大局が決まる。

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ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第15ステージ
1位　ホアキン・ロドリゲス（スペイン、カチューシャ） 　　　　　　　　4h33'31"
2位　ラファル・マイカ（ポーランド、ティンコフ・サクソ）　　　　　　　　　+12"
3位　ダニエル・モレーノ（スペイン、カチューシャ）　　　　　　　　　　　　+14"
4位　ナイロ・キンタナ（コロンビア、モビスター）　　　　　　　　　　　　　+15"
5位　ファビオ・アル（イタリア、アスタナ） 　　　　　　　　　　　　
6位　ミケル・ランダ（スペイン、アスタナ）　　　　　　　　　　　　　　　　+18"
7位　エステバン・チャベス（コロンビア、オリカ・グリーンエッジ）　　　　　+20"
8位　ミケル・ニエベ（スペイン、チームスカイ）　　　　　　　　　　　　　　+24"
9位　アレハンドロ・バルベルデ（スペイン、モビスター）　　　　　　　　　　+29"
10位　ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ（イタリア、AG2Rラモンディアール）　　+41"

個人総合成績
1位　ファビオ・アル（イタリア、アスタナ）　　　　　　　　　　　　　　61h53'56"
2位　ホアキン・ロドリゲス（スペイン、カチューシャ）　　　　　　　　　　　+01"
3位　ラファル・マイカ（ポーランド、ティンコフ・サクソ）　　　　　　　　+1'24"
4位　トム・ドゥムラン（オランダ、ジャイアント・アルペシン）　　　　　　+1'25"
5位　エステバン・チャベス（コロンビア、オリカ・グリーンエッジ）　　　　+1'34"
6位　ダニエル・モレーノ（スペイン、カチューシャ）　　　　　　　　　　　+2'08"
7位　ミケル・ニエベ（スペイン、チームスカイ）　　　　　　　　　　　　　+2'19"
8位　アレハンドロ・バルベルデ（スペイン、モビスター）　　　　　　　　　+2'25"
9位　ナイロ・キンタナ（コロンビア、モビスター）　　　　　　　　　　　　+3'00"
10位　ルイス・マインティーズ（南アフリカ、MTNキュベカ）　　　　　　　+5'07"

マイヨプントス（ポイント賞）
1位　ホアキン・ロドリゲス（スペイン、カチューシャ）　　　　　　　　　99pts
2位　エステバン・チャベス（コロンビア、オリカ・グリーンエッジ）　　　96pts
3位　アレハンドロ・バルベルデ（スペイン、モビスター）　　　　　　　　84pts

マイヨモンターニャ（山岳賞）
1位　オマール・フライレ（スペイン、カハルーラル）　　　　　　　　　　55pts
2位　ルーベン・プラサ（スペイン、ランプレ・メリダ）　　　　　　　　　27pts
3位　ミケル・ランダ（スペイン、アスタナ）　　　　　　　　　　　　　　25pts

マイヨコンビナーダ（複合賞）
1位　トム・ドゥムラン（オランダ、ジャイアント・アルペシン）　　　　　15pts
2位　ファビオ・アル（イタリア、アスタナ）　　　　　　　　　　　　　　18pts
3位　エステバン・チャベス（コロンビア、オリカ・グリーンエッジ）　　　25pts

チーム総合成績
1位　チームスカイ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　185h54'22"
2位　モビスター　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　+10'56"
3位　アスタナ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　+16'00"

ステージ敢闘賞
ブラヤン・ラミレス（コロンビア、コロンビア）

text:So.Isobe
photo:CorVos