2015/08/12(水) - 09:09
メリダの誇るオールラウンドレーシングモデル、SCULTURA(スクルトゥーラ)。7月末に湘南国際村で開催された試乗会にて、フルモデルチェンジを果たした2016年モデルが国内初お披露目となった。その詳細とインプレッションを紹介しよう。
「もっと下りの安定感を!」これが世界トップレベルのUCIワールドチーム、ランプレ・メリダからの要求だったという。むやみな軽量化や剛性強化ではなく、超級山岳の下りを安定して、かつ速くクリアするために。
それに対するメリダの返答が、2016としてジロ・デ・イタリア開催前に発表された4代目となる新型スクルトゥーラ。春のクラシックからプロトタイプが投入され、下りでの安定感はもちろんのこと、軽量化と空力性能の向上も兼ね備えたオールラウンダーとして、その性能により磨きをかけてきた。
一見しただけでは先代との差は大きくない。しかしCFD解析やモックアップを用いた風洞実験を繰り返し行うことによりエアロダイナミクスを向上させた、完全なる別物として生まれ変わっている。ダウンチューブやフォークブレードに導入された「NACA Fastback」チューブは、TTバイクWARP TTやエアロロードREACTOにも使われているもの。
空力と走行性能という相反する要素を兼ね備えることができたのは、熟練した職人による手作業があったからという。400枚にものぼるカーボンプリプレグシートを正確に配することで、フレームの最薄部(トップチューブ)はなんと0.4mm。積層間のエアポケットやチューブ内面のしわを徹底的に排除し、強度と剛性を確保しているのだ。
更にジオメトリーもランプレ・メリダからの要求によって改良されており、よりアグレッシブなポジションをとるべくヘッドチューブが短く、そしてチェーンステーは瞬発力を高めるため通常よりも5~10mm短い400mmに設定されている。
結果的にスクルトゥーラは軽量バージョンの「CF5」において、フレーム重量は720g、フォークは265g、フレームセット重量で985gという圧倒的な軽さを実現。しかもこの数値は56サイズ、塗装ありというから驚いてしまう。
プロ選手が使うグレード「CF4」は完成車重量6.8kgというUCIレギュレーションを想定し、CF5ほどの軽量化は求められていない。しかしBBやヘッドの強化、カーボン素材変更、チューブ内にリブを設けるメリダ独自の「ダブルチャンバーテクノロジー」を用いた点など全体的な運動性能、そしてサポートカー積載時の意図しない衝撃に対する耐久性を増強した、まさにプロ仕様として仕上げられている。
先代でも好評であった高い振動吸収性も更に強化されている。食物繊維由来の「Bio Fiber Damping Compound」をカーボンレイアップの間に挿入し、シートポストは直径27.2mmに。ブレーキをBB裏取り付けタイプのダイレクトマウント式とすることでブレーキブリッジを廃し、シートステーの柔軟性を向上。結果、3代目と比較して30%高い快適性を実現している。
完成車パッケージにおいてはランプレ・メリダが使うものと同じ「CF4」のチームレプリカのほか、CF5フレームにSRAM REDを用いた最高級モデルなどがラインナップされている。さらにCF5フレームに厳選したメジャーブランドの軽量パーツで武装した超軽量モデル「SCULTURA 9000 LTD」も限定数発売されるという。気になる重量は4.56kgと、量産車の世界軽量記録をあっさりと更新した。
今回インプレッションを行ったのは、プロが乗るものと同じCF4の機械式デュラエース完成車「SCULTURA TEAM」。ランプレ・メリダのスポンサードと同じく、クランクセットはROTOR、ホイールはフルクラムのRacing Zero Carbonがセットされている。
普通、軽量や剛性、エアロを謳う尖ったバイクは、乗り始めてから慣れるまでは少し時間が掛かる。しかしこのスクルトゥーラはダンシングで加速する一漕ぎめから至ってナチュラルで、一瞬で乗り馴れた自転車のように感じてしまった。これはつまり、バランスの良さに他ならない。
踏み心地はレーシングバイクそのもので、BBやヘッドの剛性を増したという謳い文句がスッと理解できるほどだ。強めに踏み込むとBB付近を中心に僅かなウィップが生まれ、その返りを使うと非常に気持ち良くスピードが乗っていく。
ヘッド周りを強化したことでダンシングの振りがとても軽く、リアバックも相当に快適性が高められているのを感じるが、柔らかすぎない絶妙なしなりは加速性にも活きている。テストコースには長い登りが無かったのでその部分は明言しかねるものの、シャキッとしたRacing Zero Carbonも相まってスピードを乗せてからの登り返しは鮮烈な印象を植え付けられた。その分脚への反発もしっかりあるが、綺麗なペダリングを心掛ければシッティングでも疲れないだろう。
300gを大きく下回るフロントフォークも、数字を聞いて不安を覚えたことを反省するほど実に扱いやすかった。軽量バイクにありがちな腰高感も無く、ハードブレーキングや急旋回にもビクともしない。短いヘッドチューブとの兼ね合いで縦方向の剛性が高いため、若干突っ張って路面の凹凸をダイレクトに伝える傾向にあるが、レーシングバイクとして考えるならちょうど良い塩梅だ。
オールラウンドレーサーとしての性能に磨きを掛けたスクルトゥーラだが、驚くべきはその価格。今回試乗したSCULTURA TEAMで830,000円、フレームセットでは269,000円という値付けなのだ。もはやそれは同価格帯の域を完全に脱しており、フレームで50万円と言われても全く不思議ではない、とさえ思えた。CF5でもフレームセットで329,000円と、こちらのパフォーマンスも凄まじいものがある。
ランプレ・メリダとのコラボレーションによって急激に磨きのかかったメリダのロードバイク。今回のインプレッションで、改めて優れた開発力を実感させられたのであった。
text:So.Isobe
「もっと下りの安定感を!」これが世界トップレベルのUCIワールドチーム、ランプレ・メリダからの要求だったという。むやみな軽量化や剛性強化ではなく、超級山岳の下りを安定して、かつ速くクリアするために。
それに対するメリダの返答が、2016としてジロ・デ・イタリア開催前に発表された4代目となる新型スクルトゥーラ。春のクラシックからプロトタイプが投入され、下りでの安定感はもちろんのこと、軽量化と空力性能の向上も兼ね備えたオールラウンダーとして、その性能により磨きをかけてきた。
一見しただけでは先代との差は大きくない。しかしCFD解析やモックアップを用いた風洞実験を繰り返し行うことによりエアロダイナミクスを向上させた、完全なる別物として生まれ変わっている。ダウンチューブやフォークブレードに導入された「NACA Fastback」チューブは、TTバイクWARP TTやエアロロードREACTOにも使われているもの。
空力と走行性能という相反する要素を兼ね備えることができたのは、熟練した職人による手作業があったからという。400枚にものぼるカーボンプリプレグシートを正確に配することで、フレームの最薄部(トップチューブ)はなんと0.4mm。積層間のエアポケットやチューブ内面のしわを徹底的に排除し、強度と剛性を確保しているのだ。
更にジオメトリーもランプレ・メリダからの要求によって改良されており、よりアグレッシブなポジションをとるべくヘッドチューブが短く、そしてチェーンステーは瞬発力を高めるため通常よりも5~10mm短い400mmに設定されている。
結果的にスクルトゥーラは軽量バージョンの「CF5」において、フレーム重量は720g、フォークは265g、フレームセット重量で985gという圧倒的な軽さを実現。しかもこの数値は56サイズ、塗装ありというから驚いてしまう。
プロ選手が使うグレード「CF4」は完成車重量6.8kgというUCIレギュレーションを想定し、CF5ほどの軽量化は求められていない。しかしBBやヘッドの強化、カーボン素材変更、チューブ内にリブを設けるメリダ独自の「ダブルチャンバーテクノロジー」を用いた点など全体的な運動性能、そしてサポートカー積載時の意図しない衝撃に対する耐久性を増強した、まさにプロ仕様として仕上げられている。
先代でも好評であった高い振動吸収性も更に強化されている。食物繊維由来の「Bio Fiber Damping Compound」をカーボンレイアップの間に挿入し、シートポストは直径27.2mmに。ブレーキをBB裏取り付けタイプのダイレクトマウント式とすることでブレーキブリッジを廃し、シートステーの柔軟性を向上。結果、3代目と比較して30%高い快適性を実現している。
完成車パッケージにおいてはランプレ・メリダが使うものと同じ「CF4」のチームレプリカのほか、CF5フレームにSRAM REDを用いた最高級モデルなどがラインナップされている。さらにCF5フレームに厳選したメジャーブランドの軽量パーツで武装した超軽量モデル「SCULTURA 9000 LTD」も限定数発売されるという。気になる重量は4.56kgと、量産車の世界軽量記録をあっさりと更新した。
今回インプレッションを行ったのは、プロが乗るものと同じCF4の機械式デュラエース完成車「SCULTURA TEAM」。ランプレ・メリダのスポンサードと同じく、クランクセットはROTOR、ホイールはフルクラムのRacing Zero Carbonがセットされている。
普通、軽量や剛性、エアロを謳う尖ったバイクは、乗り始めてから慣れるまでは少し時間が掛かる。しかしこのスクルトゥーラはダンシングで加速する一漕ぎめから至ってナチュラルで、一瞬で乗り馴れた自転車のように感じてしまった。これはつまり、バランスの良さに他ならない。
踏み心地はレーシングバイクそのもので、BBやヘッドの剛性を増したという謳い文句がスッと理解できるほどだ。強めに踏み込むとBB付近を中心に僅かなウィップが生まれ、その返りを使うと非常に気持ち良くスピードが乗っていく。
ヘッド周りを強化したことでダンシングの振りがとても軽く、リアバックも相当に快適性が高められているのを感じるが、柔らかすぎない絶妙なしなりは加速性にも活きている。テストコースには長い登りが無かったのでその部分は明言しかねるものの、シャキッとしたRacing Zero Carbonも相まってスピードを乗せてからの登り返しは鮮烈な印象を植え付けられた。その分脚への反発もしっかりあるが、綺麗なペダリングを心掛ければシッティングでも疲れないだろう。
300gを大きく下回るフロントフォークも、数字を聞いて不安を覚えたことを反省するほど実に扱いやすかった。軽量バイクにありがちな腰高感も無く、ハードブレーキングや急旋回にもビクともしない。短いヘッドチューブとの兼ね合いで縦方向の剛性が高いため、若干突っ張って路面の凹凸をダイレクトに伝える傾向にあるが、レーシングバイクとして考えるならちょうど良い塩梅だ。
オールラウンドレーサーとしての性能に磨きを掛けたスクルトゥーラだが、驚くべきはその価格。今回試乗したSCULTURA TEAMで830,000円、フレームセットでは269,000円という値付けなのだ。もはやそれは同価格帯の域を完全に脱しており、フレームで50万円と言われても全く不思議ではない、とさえ思えた。CF5でもフレームセットで329,000円と、こちらのパフォーマンスも凄まじいものがある。
ランプレ・メリダとのコラボレーションによって急激に磨きのかかったメリダのロードバイク。今回のインプレッションで、改めて優れた開発力を実感させられたのであった。
text:So.Isobe
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