2015/07/08(水) - 05:55
全長13.3kmのパヴェ(石畳)が登場したツール・ド・フランス第4ステージ。砂埃舞う悪路を切り抜けた小集団の中からトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が抜け出し、ステージ優勝とマイヨジョーヌを同時に掴み取った。
「アルデンヌ・クラシック」の翌日は「北のクラシック」。今大会最長223.5kmコースのうち、ベルギー・ワロン地域を駆ける前半はナミュールの街を見下ろす要塞への登り(4級山岳シタデル・ド・ナミュール)を除いて難所は無し。後半に差し掛かってフランス国境が近づくと、パヴェ(石畳)が選手たちの目の前に現れる。
2年連続の登場となるパヴェが7セクター/合計13.3kmにわたって登場。全長1200〜3700mの6セクターがラスト45kmに詰め込まれており、クライマー系選手たちの苦戦が開幕前から予想された。
前日の大落車で怪我を負ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)、ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)、アンドレアス・シリンガー(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)がDNS。192名がスタートを切るとすぐにトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)がアタックを仕掛けた。
デヘントにはリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)、ペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)、フレデリック・ブルン(フランス、ブルターニュ・セシェ)が追いついて4名逃げがスタート。メイン集団に対してリードを9分10秒まで広げ、デヘントを先頭に逃げは4級山岳シタデル・ド・ナミュールをクリアする。
この日最初のパヴェ区間であるセクター7「ポンアセル〜グイレピエトン(1800m)」が近づくとにわかに集団先頭ではペースアップが始まる。チームスカイを中心にした位置取りが繰り広げられたためタイム差は一時的に1分25秒まで縮小。ベルギーからフランスに入り、平坦な舗装路でタイム差は再び広がったが、結局4名は決定的なリードを稼ぎ出すことは出来なかった。
有力選手たちが振動吸収を優先したパヴェ用バイクにスイッチしてしばらくして、レースは後半パヴェ連続区間に突入する。スピードを上げてセクター6「アルトル〜ファマール(1200m)」を通過したメイン集団は、フィニッシュまで40kmを残して逃げを吸収。続くセクター5「ケレネン〜ヴェルシェンモグレ(1600m)」とセクター4「ヴェルシェンモグレ〜ソルゾワール(1200m)」で動きを見せたのは、前年のパヴェで総合リード拡大に成功したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)擁するアスタナだった。
直前に雨雲が通過したもののパヴェは概ねドライ。砂埃を巻き上げながらメイン集団は一列棒状となり、見る見るうちに人数を減らしていく。アスタナやBMCレーシング、エティックス・クイックステップを中心にしたペースアップによって、セクター3「サンピトン(1500m)」で集団は50名ほどにまで絞られた。
最も長いセクター2「キエヴィー(3700m)」でメカトラに遭ったティボー・ピノ(フランス、FDJ)の他、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)やアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)らが相次いで集団から脱落。舗装路に出てからマルティンもパンクに見舞われたが、チームメイトのマッテオ・トレンティン(イタリア)のバイクを借りてレースに復帰する。
続く最後のセクター1「アヴェヌレゾベール〜カルニエール(2300m)」でもアスタナの積極的な走りは続き、ニーバリのアタックにはクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)らがすかさず反応。続くゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)のペースアップによって集団がついに割れる。出遅れたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は後方に取り残された。
続けざまにフルームがアタックするシーンも見られたものの、ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)やゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)といったスペシャリストを含む精鋭集団のローテーションは回らない。協調体制を築けないまま失速した先頭集団には、しばらくしてコンタドールやキンタナは復帰。マイヨジョーヌ候補たちとスプリンターを多く含む37名の集団がカンブレーの街に差し掛かった。
集団スプリント濃厚と思われた矢先、フィニッシュまで3kmを切って、借り物バイクのマルティンがアタック。ライバルチームが躊躇した隙を突いて、独走モードに入ったマルティンが一気にリードを広げる。ジャイアント・アルペシンの追走は届かず、3度の世界TTチャンピオンがフィニッシュまで逃げ切った。
「今朝トム・ボーネンから電話をもらって石畳の走り方について話し、それからスタート地点でエディ・メルクスに直々に励まされたんだ。終盤にパンクしたけど、マッテオ・トレンティンのバイクですぐに再スタート。自分のバイクではないのでブレーキの掛かり方も違うし追走に力を使ってしまった。すでにリミットに近い状態で走っていたので、最後のアタックにはみんな驚いたと思う」。3秒差の逃げ切り勝利を飾ったマルティンはタフなパヴェステージをそう振り返る。
タイム差3秒ボーナスタイム10秒を加算したマルティンが総合首位に。第1ステージで5秒届かず、第2ステージで3秒届かず、第3ステージで1秒届かなかったマイヨジョーヌに袖を通す時が来た。「不運続きの開幕3日間を経てようやく手にしたマイヨジョーヌ。この4日間はまさにジェットコースターだった。久々にツールが中継されているドイツ国内も盛り上がっているはず。このマイヨジョーヌはピレネーまでキープ出来ると思う」。
パヴェステージで前年のような総合シャッフルは起こらず、3分23秒遅れたピノを除いて有力選手たちは集団内でフィニッシュ。12秒差の総合2位につけるフルームは「パヴェを終えた時点で最高の順位につけている」とコメントしている。連日動き続けた総合争いは第5ステージでようやく落ち着きを取り戻す。
ツール・ド・フランス2015第4ステージ結果
1位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 5h28’58”
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) +03”
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
4位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
6位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
7位 ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、カチューシャ)
8位 トニー・ギャロパン(フランス、コフィディス)
9位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)
10位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
68位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +3’23”
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 12h40’26”
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +12”
3位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +25”
4位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +38”
5位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) +39”
6位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +40”
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ) +46”
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) +48”
9位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1’15”
10位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +1’16”
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 84pts
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 78pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) 60pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 2pts
2位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング) 1pt
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) 1pt
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 12h41’05”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +40”
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +1’29”
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 38h02’55”
2位 エティックス・クイックステップ +24”
3位 ティンコフ・サクソ +1’44”
ステージ敢闘賞
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
リタイア
DNS ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)
DNS ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
DNS アンドレアス・シリンガー(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)
text:Kei Tsuji in Cambrai, France
「アルデンヌ・クラシック」の翌日は「北のクラシック」。今大会最長223.5kmコースのうち、ベルギー・ワロン地域を駆ける前半はナミュールの街を見下ろす要塞への登り(4級山岳シタデル・ド・ナミュール)を除いて難所は無し。後半に差し掛かってフランス国境が近づくと、パヴェ(石畳)が選手たちの目の前に現れる。
2年連続の登場となるパヴェが7セクター/合計13.3kmにわたって登場。全長1200〜3700mの6セクターがラスト45kmに詰め込まれており、クライマー系選手たちの苦戦が開幕前から予想された。
前日の大落車で怪我を負ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)、ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)、アンドレアス・シリンガー(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)がDNS。192名がスタートを切るとすぐにトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)がアタックを仕掛けた。
デヘントにはリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)、ペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)、フレデリック・ブルン(フランス、ブルターニュ・セシェ)が追いついて4名逃げがスタート。メイン集団に対してリードを9分10秒まで広げ、デヘントを先頭に逃げは4級山岳シタデル・ド・ナミュールをクリアする。
この日最初のパヴェ区間であるセクター7「ポンアセル〜グイレピエトン(1800m)」が近づくとにわかに集団先頭ではペースアップが始まる。チームスカイを中心にした位置取りが繰り広げられたためタイム差は一時的に1分25秒まで縮小。ベルギーからフランスに入り、平坦な舗装路でタイム差は再び広がったが、結局4名は決定的なリードを稼ぎ出すことは出来なかった。
有力選手たちが振動吸収を優先したパヴェ用バイクにスイッチしてしばらくして、レースは後半パヴェ連続区間に突入する。スピードを上げてセクター6「アルトル〜ファマール(1200m)」を通過したメイン集団は、フィニッシュまで40kmを残して逃げを吸収。続くセクター5「ケレネン〜ヴェルシェンモグレ(1600m)」とセクター4「ヴェルシェンモグレ〜ソルゾワール(1200m)」で動きを見せたのは、前年のパヴェで総合リード拡大に成功したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)擁するアスタナだった。
直前に雨雲が通過したもののパヴェは概ねドライ。砂埃を巻き上げながらメイン集団は一列棒状となり、見る見るうちに人数を減らしていく。アスタナやBMCレーシング、エティックス・クイックステップを中心にしたペースアップによって、セクター3「サンピトン(1500m)」で集団は50名ほどにまで絞られた。
最も長いセクター2「キエヴィー(3700m)」でメカトラに遭ったティボー・ピノ(フランス、FDJ)の他、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)やアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)らが相次いで集団から脱落。舗装路に出てからマルティンもパンクに見舞われたが、チームメイトのマッテオ・トレンティン(イタリア)のバイクを借りてレースに復帰する。
続く最後のセクター1「アヴェヌレゾベール〜カルニエール(2300m)」でもアスタナの積極的な走りは続き、ニーバリのアタックにはクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)らがすかさず反応。続くゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)のペースアップによって集団がついに割れる。出遅れたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は後方に取り残された。
続けざまにフルームがアタックするシーンも見られたものの、ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)やゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)といったスペシャリストを含む精鋭集団のローテーションは回らない。協調体制を築けないまま失速した先頭集団には、しばらくしてコンタドールやキンタナは復帰。マイヨジョーヌ候補たちとスプリンターを多く含む37名の集団がカンブレーの街に差し掛かった。
集団スプリント濃厚と思われた矢先、フィニッシュまで3kmを切って、借り物バイクのマルティンがアタック。ライバルチームが躊躇した隙を突いて、独走モードに入ったマルティンが一気にリードを広げる。ジャイアント・アルペシンの追走は届かず、3度の世界TTチャンピオンがフィニッシュまで逃げ切った。
「今朝トム・ボーネンから電話をもらって石畳の走り方について話し、それからスタート地点でエディ・メルクスに直々に励まされたんだ。終盤にパンクしたけど、マッテオ・トレンティンのバイクですぐに再スタート。自分のバイクではないのでブレーキの掛かり方も違うし追走に力を使ってしまった。すでにリミットに近い状態で走っていたので、最後のアタックにはみんな驚いたと思う」。3秒差の逃げ切り勝利を飾ったマルティンはタフなパヴェステージをそう振り返る。
タイム差3秒ボーナスタイム10秒を加算したマルティンが総合首位に。第1ステージで5秒届かず、第2ステージで3秒届かず、第3ステージで1秒届かなかったマイヨジョーヌに袖を通す時が来た。「不運続きの開幕3日間を経てようやく手にしたマイヨジョーヌ。この4日間はまさにジェットコースターだった。久々にツールが中継されているドイツ国内も盛り上がっているはず。このマイヨジョーヌはピレネーまでキープ出来ると思う」。
パヴェステージで前年のような総合シャッフルは起こらず、3分23秒遅れたピノを除いて有力選手たちは集団内でフィニッシュ。12秒差の総合2位につけるフルームは「パヴェを終えた時点で最高の順位につけている」とコメントしている。連日動き続けた総合争いは第5ステージでようやく落ち着きを取り戻す。
ツール・ド・フランス2015第4ステージ結果
1位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 5h28’58”
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) +03”
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
4位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
6位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
7位 ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、カチューシャ)
8位 トニー・ギャロパン(フランス、コフィディス)
9位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)
10位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
68位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +3’23”
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 12h40’26”
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +12”
3位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +25”
4位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +38”
5位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) +39”
6位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +40”
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ) +46”
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) +48”
9位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1’15”
10位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +1’16”
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 84pts
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 78pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) 60pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 2pts
2位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング) 1pt
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) 1pt
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 12h41’05”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +40”
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +1’29”
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 38h02’55”
2位 エティックス・クイックステップ +24”
3位 ティンコフ・サクソ +1’44”
ステージ敢闘賞
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
リタイア
DNS ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)
DNS ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
DNS アンドレアス・シリンガー(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)
text:Kei Tsuji in Cambrai, France
Amazon.co.jp