レース時間は7時間22分21秒。ニュートラル走行時間を含めると、選手たちは8時間近くをサドルの上で過ごしたことになります。今大会最長コースで行われたジロ・デ・イタリア第7ステージを振り返ります。



グロッセートの街をパレード走行するグロッセートの街をパレード走行する photo:Kei Tsuji
朝食は切り売りのピッツァ朝食は切り売りのピッツァ photo:Kei Tsujiコース全長は264kmコース全長は264km photo:Kei Tsuji


おじさんとアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)おじさんとアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji第7ステージの全長は264km。ステージ間の移動距離が短く、さらにステージの平均距離が短めに設定された第98回大会は「より人間らしくなった」と言われるが、やはりジロ主催者は選手が顔をしかめるようなステージを放り込んでくる。何と言っても今大会最短の134kmで行われる第17ステージの倍近い距離を走る。

ガーミンのVIRB-Jを装着したネイサン・ブラウン(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)のバイクガーミンのVIRB-Jを装着したネイサン・ブラウン(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)のバイク photo:Kei Tsuji全長293kmで行われる世界最長クラシックのミラノ〜サンレモには及ばないが、ロンド・ファン・フラーンデレンとほぼ同じ長さ。ただ長いだけではなく何気に合計2800mも登り、ずっと向かい風基調だったためスピードは上がらなかった。そのためフィニッシュ時間は予定よりもずっと遅れた。

トスカーニアのサンピエトロ教会を通過トスカーニアのサンピエトロ教会を通過 photo:Kei Tsujiミラノ〜サンレモの優勝タイム6時間46分16秒より36分も長い7時間22分21秒でディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)が勝利した。序盤から240km近くを逃げたニコラ・ボエム(イタリア、バルディアーニCSF)は最終的にグルペットからも遅れて7時間41分41秒でフィニッシュしている。睡眠時間よりもレース時間のほうが長いとコメントする選手もちらほら。フィニッシュ地点が翌日のスタート地点ということが救いだ。

ダウンヒルコーナーをクリアするマルコ・バンディエラ(イタリア、アンドローニジョカトリ)らダウンヒルコーナーをクリアするマルコ・バンディエラ(イタリア、アンドローニジョカトリ)ら photo:Kei Tsujiとは言ってもジロの超ロングステージはそこまで珍しいものではなく、近年では獲得標高差6320m/全長230kmで行われた2011年大会第15ステージが7時間27分14秒かかっている。その日はレース時間が8時間を超える選手が続出した。

全ての道はローマに通ずる全ての道はローマに通ずる photo:Kei Tsuji「今まで走ったレースの中で最長です」と言いながらスタートを切ったのは石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)。コースが長いと完走が難しくなると思われがちだがそれは逆で、レース時間が長いため当然タイムリミットも伸びる。

ルールブックによると第7ステージは低難度ステージにカテゴライズされ、平均スピードが37km/h以下の場合(35.8km/hだった)のリミットは優勝タイムの9%。つまり40分遅れても大丈夫という計算だった。石橋は終盤のアップダウンで遅れながらも18分56秒遅れのグルペットでフィニッシュしている。

ちなみにジロ史上最長ステージは1914年の第6回大会に登場した430kmコース。ルッカからローマまでを駆ける第3ステージで、コスタンテ・ジラルデンゴが17時間28分55秒というタイムで優勝している。また、その日ラウロ・ボルディンがマークした350kmエスケープの記録は今も破られていない。というよりも今後も破られることはないだろう。

なお、今から100年以上前の第6回大会は北イタリアのミラノから反時計回りに都市をつなぎ、南イタリアのバーリで折り返してミラノに戻る正真正銘の「イタリア一周」だった。第1次世界大戦の影響で3年間中断する直前の大会で、その年から総合ポイントではなく総合タイムで総合成績が行われるようになっている。

隔日開催の合計8ステージで争われ、走行距離は3162km。1ステージ平均395kmという長さはジロ史上最長。総合優勝者アルフォンソ・カルツォラーリの総合タイムは135時間17分56秒で、23.437km/hというジロ史上最も遅い平均スピードを記録している。それでも当時の機材と路面状況、そして距離の長さを考えると速いと感じてしまう。その年は81名が出走して完走者は8名だけだった。これも史上最も低い完走率だ。



マリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)に声援が飛ぶマリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)に声援が飛ぶ photo:Kei Tsuji
中継ヘリには目いっぱい手を振ってみる中継ヘリには目いっぱい手を振ってみる photo:Kei Tsujiフィウッジの入り口と残り1kmアーチ 多言語表記が観光地を感じさせるフィウッジの入り口と残り1kmアーチ 多言語表記が観光地を感じさせる photo:Kei Tsuji


集団内で無事にフィニッシュするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)集団内で無事にフィニッシュするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsujiローマから車で1時間ちょっとで到着する山の上の街フィウッジが第7ステージのフィニッシュ地点。温泉保養地として知られており、国内外から観光客が押し寄せる人気スポットだ。温泉だけでなく、ミネラルウオーターの採水地としても有名。

マリアローザを守ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が右手をあげるマリアローザを守ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が右手をあげる photo:Kei Tsuji前日に左肩を脱臼したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)はマリアローザを着て超ロングステージを乗り切った。ロシアチームに所属するスペイン人選手だがイタリアでの人気はめっぽう高い。ティンコフ・サクソのチームバスに集まるファンの数はアスタナのそれよりも多いように感じる。

コンタドールは脱臼の影響を感じさせない走りを見せたが、レースが4時間が経過してからは左手をハンドルのどこに置けばいいのか分からなくなったと言う。脱臼は日を追うごとに快方に向かうが、それは安静にしていた場合の話。医師に「動かさないように」と言われる状況で7時間走ることは想定していない。

なお、表彰台でコンタドールに渡されたマリアローザは、左腕を上げなくても着ることができるよう長袖部分にジッパーが追加された特注品。普段テーラーとして働く大会スタッフが前日に夜なべして作ったという。

とにかくコンタドールはこの週末を乗り切ることができれば希望が見えてくる。脱臼の翌日が超ロングステージで、その翌日が1級山岳の山頂フィニッシュというタイミングの悪さ。ダブルツールに闘志を燃やすコンタドールにとっての正念場がやってきた。



集団から遅れてフィニッシュする別府史之(トレックファクトリーレーシング)集団から遅れてフィニッシュする別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsujiグルペットでフィニッシュする石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)グルペットでフィニッシュする石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji



text&photo:Kei Tsuji in Fiuggi, Italy

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