2015/04/29(水) - 07:25
標高1850mの1級山岳ゴグベリ峠の頂上に先頭でやってきたのはオレンジ色が眩しいCCCスプランディポルコウィチェのジャージ。プロ24年目の43歳ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディポルコウィチェ)がクイーンステージを制しました。
ツアー・オブ・ターキーの名物となりつつある1級山岳ゴグベリ峠(標高1850m)の山頂フィニッシュが設定された第3ステージ。コース全長は165kmで、序盤に2級山岳、中盤に1級山岳アブランベリ峠、そして終盤に1級山岳ゴグベリ峠が設定されている。
1日の獲得標高差は平坦ステージ揃いトルコ一周の中では段違いに大きな3100m。最初の2級山岳でマルコ・バンディエラ(イタリア、アンドローニジョカトリ)、フアンパブロ・バレンシア(コロンビア、コロンビア)、サムエル・スポークス(オーストラリア、ドラパック)、ソンゲゾ・ジム(南アフリカ、MTNキュベカ)、ホセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カハルーラル)の5名が飛び出すと、メイン集団はスロットルを緩めた。
トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)まで牽引に加わる豪華なプロトンに対し、逃げグループは3分リードでレース中盤の1級山岳アブランベリ峠へ。登りでエティックス・クイックステップに代わって集団を率いたのはブルターニュ・セシェやロット・ソウダル、そして地元トルコのトルク・セケルスポールだった。
標高1200mのアブランベリ峠に続く長い山道を進むうちに先頭はバレンシア、ジム、ゴンサルベスの3名に絞られ、メイン集団からはリーダージャージのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)が脱落。最終的にメイン集団は50名弱に人数を減らした状態でアブランベリ峠を通過したが、その中にはアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)やボーネンの姿もあった。
逃げグループ吸収を控えたメイン集団ではにわかにアタックがかかり、追い風吹く平坦路で飛び出したトーマス・デヘントとヘルト・ドックス(ベルギー、ロット・ソウダル)にボーネンが反応。ここにツール・ド・ランカウイ覇者ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)やイェーレ・ワレイス(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)、パヴェル・ブラット(ロシア、ティンコフ・サクソ)が合流し、先頭3名を吸収して先を急ぐ。
慌てて追撃したアスタナとCCCスプランディポルコウィチェ率いるメイン集団に対し、30秒のリードを得たボーネン含む先頭グループ。しかし協調体制を築けずに分裂し、レグイグイ、ワレイス、ブラットだけが生き残って最後の1級山岳ゴグベリ峠に差し掛かった。
トルコの特徴として、観光地を離れると途端に道路の舗装が荒くなる。アスファルトとは呼べないような小石が敷き詰められた凸凹路で、選手たちはハンドルに伝わる細かい振動を抑え込みながら走る。観光地から離れたエリアを走るため、トルコ国旗をもった地元の人々が沿道に詰め掛けるのが第3ステージの特徴でもある。
最後に待ち構える1級山岳ゴグベリ峠は登坂距離11kmで平均勾配6.3%。先頭を逃げていたレグイグイ、ワレイス、ブラットを飲み込んだメイン集団の先頭ではアスタナとCCCスプランディポルコウィチェが引き続きペースを刻む。
先陣を切ってアタックしたルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)が吸収されると、フィニッシュまで7kmを残して早くもレベッリンが動く。43歳のベテランのアタックに反応出来たのは27歳の中堅クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)だけだった。
早めの仕掛けで先頭に立ったレベッリンとデュラセックが後続を突き放した。時折デュラセックがペースアップを試みるも、ポーカーフェイスを貫くレベッリンは離れない。「2回アタックしたけど、レベッリンはその度に反応してぴったりと後ろについた。それ以上なす術がなかった」とデュラセック。平均勾配が9%を刻む残り3kmを切ってもなお先頭2名のランデブー走行は続いた。
急勾配のスイッチバックを経て残り1kmを切ったレベッリンとデュラセック。付かず離れずの攻防は残り200mで崩れ、一気に仕掛けたレベッリンにデュラセックが反応出来ない。1971年生まれのレベッリンが単独でフィニッシュラインに姿を現した。
デュラセックを7秒差で下したレベッリンが勝利。プロとして24シーズン目を迎えながら今なお第一線で走る大ベテランは「長年プロとして活動しているけど、毎レースにかける意気込みは今も昔も変わらない。いつも全力で闘うだけ。特に今日のような自分向きのステージで全力を出さないわけにはいかない。去年よりも調子は良いし、登りを事前に知っていたことがアドバンテージになった」とコメントする。
総合リーダージャージを手にしたレベッリンは「クイーンステージは終わったけど、ライバルたちは必ず攻撃してくるだろうし、まだ何があるか分からない。去年は平坦ステージの集団分裂で10秒を失い、その10秒が仇となって総合表彰台を逃した思い出ある」と警戒心を弱めないが、同時にレベッリンはポーランドチームの強さに自信を見せる。
ステージ16位にニコライ・ミハイロフ(ブルガリア)、ステージ26位にステファン・シューマッハー(ドイツ)を送り込んだCCCスプランディポルコウィチェはチーム総合成績でもトップに。レベッリンは「リードを守るための強いチームメイトたちが揃っているので心強いよ」とコメントしている。
ボーナスタイムが設定されないため、ステージトップ10の成績がタイム差も含めてそのまま総合トップ10の成績に。単独追走を仕掛けてステージ3位に入った23歳のエドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ブルターニュ・セシェ)が50秒差の総合3位につけている。
ツアー・オブ・ターキー2015第3ステージ結果
1位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディポルコウィチェ) 4h34’11”
2位 クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ) +07”
3位 エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ブルターニュ・セシェ) +50”
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ・サクソ) +1’20”
5位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ) +1”23”
6位 エンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF) +1’29”
7位 エイネル・パッラ(コロンビア、コロンビア) +1’32”
8位 ダニエーレ・ラット(イタリア、ユナイテッドヘルスケア) +1’42”
9位 アレックス・カノアルディラ(コロンビア、コロンビア) +1’46”
10位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル) +1’57”
66位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) +18’55”
105位 黒枝士揮(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) +24’56”
個人総合成績
1位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディポルコウィチェ) 12h13’41”
2位 クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ) +07”
3位 エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ブルターニュ・セシェ) +50”
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ・サクソ) +1’20”
5位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ) +1”23”
6位 エンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF) +1’29”
7位 エイネル・パッラ(コロンビア、コロンビア) +1’32”
8位 ダニエーレ・ラット(イタリア、ユナイテッドヘルスケア) +1’42”
9位 アレックス・カノアルディラ(コロンビア、コロンビア) +1’46”
10位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル) +1’57”
ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)
山岳賞
フアンパブロ・バレンシア(コロンビア、コロンビア)
ビューティーズオブターキースプリント賞
ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
チーム総合成績
CCCスプランディポルコウィチェ
text&photo:Kei Tsuji in Elmali, Turkey
ツアー・オブ・ターキーの名物となりつつある1級山岳ゴグベリ峠(標高1850m)の山頂フィニッシュが設定された第3ステージ。コース全長は165kmで、序盤に2級山岳、中盤に1級山岳アブランベリ峠、そして終盤に1級山岳ゴグベリ峠が設定されている。
1日の獲得標高差は平坦ステージ揃いトルコ一周の中では段違いに大きな3100m。最初の2級山岳でマルコ・バンディエラ(イタリア、アンドローニジョカトリ)、フアンパブロ・バレンシア(コロンビア、コロンビア)、サムエル・スポークス(オーストラリア、ドラパック)、ソンゲゾ・ジム(南アフリカ、MTNキュベカ)、ホセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カハルーラル)の5名が飛び出すと、メイン集団はスロットルを緩めた。
トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)まで牽引に加わる豪華なプロトンに対し、逃げグループは3分リードでレース中盤の1級山岳アブランベリ峠へ。登りでエティックス・クイックステップに代わって集団を率いたのはブルターニュ・セシェやロット・ソウダル、そして地元トルコのトルク・セケルスポールだった。
標高1200mのアブランベリ峠に続く長い山道を進むうちに先頭はバレンシア、ジム、ゴンサルベスの3名に絞られ、メイン集団からはリーダージャージのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)が脱落。最終的にメイン集団は50名弱に人数を減らした状態でアブランベリ峠を通過したが、その中にはアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)やボーネンの姿もあった。
逃げグループ吸収を控えたメイン集団ではにわかにアタックがかかり、追い風吹く平坦路で飛び出したトーマス・デヘントとヘルト・ドックス(ベルギー、ロット・ソウダル)にボーネンが反応。ここにツール・ド・ランカウイ覇者ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)やイェーレ・ワレイス(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)、パヴェル・ブラット(ロシア、ティンコフ・サクソ)が合流し、先頭3名を吸収して先を急ぐ。
慌てて追撃したアスタナとCCCスプランディポルコウィチェ率いるメイン集団に対し、30秒のリードを得たボーネン含む先頭グループ。しかし協調体制を築けずに分裂し、レグイグイ、ワレイス、ブラットだけが生き残って最後の1級山岳ゴグベリ峠に差し掛かった。
トルコの特徴として、観光地を離れると途端に道路の舗装が荒くなる。アスファルトとは呼べないような小石が敷き詰められた凸凹路で、選手たちはハンドルに伝わる細かい振動を抑え込みながら走る。観光地から離れたエリアを走るため、トルコ国旗をもった地元の人々が沿道に詰め掛けるのが第3ステージの特徴でもある。
最後に待ち構える1級山岳ゴグベリ峠は登坂距離11kmで平均勾配6.3%。先頭を逃げていたレグイグイ、ワレイス、ブラットを飲み込んだメイン集団の先頭ではアスタナとCCCスプランディポルコウィチェが引き続きペースを刻む。
先陣を切ってアタックしたルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)が吸収されると、フィニッシュまで7kmを残して早くもレベッリンが動く。43歳のベテランのアタックに反応出来たのは27歳の中堅クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)だけだった。
早めの仕掛けで先頭に立ったレベッリンとデュラセックが後続を突き放した。時折デュラセックがペースアップを試みるも、ポーカーフェイスを貫くレベッリンは離れない。「2回アタックしたけど、レベッリンはその度に反応してぴったりと後ろについた。それ以上なす術がなかった」とデュラセック。平均勾配が9%を刻む残り3kmを切ってもなお先頭2名のランデブー走行は続いた。
急勾配のスイッチバックを経て残り1kmを切ったレベッリンとデュラセック。付かず離れずの攻防は残り200mで崩れ、一気に仕掛けたレベッリンにデュラセックが反応出来ない。1971年生まれのレベッリンが単独でフィニッシュラインに姿を現した。
デュラセックを7秒差で下したレベッリンが勝利。プロとして24シーズン目を迎えながら今なお第一線で走る大ベテランは「長年プロとして活動しているけど、毎レースにかける意気込みは今も昔も変わらない。いつも全力で闘うだけ。特に今日のような自分向きのステージで全力を出さないわけにはいかない。去年よりも調子は良いし、登りを事前に知っていたことがアドバンテージになった」とコメントする。
総合リーダージャージを手にしたレベッリンは「クイーンステージは終わったけど、ライバルたちは必ず攻撃してくるだろうし、まだ何があるか分からない。去年は平坦ステージの集団分裂で10秒を失い、その10秒が仇となって総合表彰台を逃した思い出ある」と警戒心を弱めないが、同時にレベッリンはポーランドチームの強さに自信を見せる。
ステージ16位にニコライ・ミハイロフ(ブルガリア)、ステージ26位にステファン・シューマッハー(ドイツ)を送り込んだCCCスプランディポルコウィチェはチーム総合成績でもトップに。レベッリンは「リードを守るための強いチームメイトたちが揃っているので心強いよ」とコメントしている。
ボーナスタイムが設定されないため、ステージトップ10の成績がタイム差も含めてそのまま総合トップ10の成績に。単独追走を仕掛けてステージ3位に入った23歳のエドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ブルターニュ・セシェ)が50秒差の総合3位につけている。
ツアー・オブ・ターキー2015第3ステージ結果
1位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディポルコウィチェ) 4h34’11”
2位 クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ) +07”
3位 エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ブルターニュ・セシェ) +50”
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ・サクソ) +1’20”
5位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ) +1”23”
6位 エンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF) +1’29”
7位 エイネル・パッラ(コロンビア、コロンビア) +1’32”
8位 ダニエーレ・ラット(イタリア、ユナイテッドヘルスケア) +1’42”
9位 アレックス・カノアルディラ(コロンビア、コロンビア) +1’46”
10位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル) +1’57”
66位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) +18’55”
105位 黒枝士揮(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) +24’56”
個人総合成績
1位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディポルコウィチェ) 12h13’41”
2位 クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ) +07”
3位 エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ブルターニュ・セシェ) +50”
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ・サクソ) +1’20”
5位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ) +1”23”
6位 エンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF) +1’29”
7位 エイネル・パッラ(コロンビア、コロンビア) +1’32”
8位 ダニエーレ・ラット(イタリア、ユナイテッドヘルスケア) +1’42”
9位 アレックス・カノアルディラ(コロンビア、コロンビア) +1’46”
10位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル) +1’57”
ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)
山岳賞
フアンパブロ・バレンシア(コロンビア、コロンビア)
ビューティーズオブターキースプリント賞
ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
チーム総合成績
CCCスプランディポルコウィチェ
text&photo:Kei Tsuji in Elmali, Turkey
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