2015/04/13(月) - 10:48
連続するパヴェ(石畳)を越えてもなお20名が勝負に残った。例年よりもずっと大きな集団から残り11kmで飛び出したのはジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)。先行する選手を捉え、数の上では不利な状況でのスプリントでジャイアント・アルペシンのエースが勝利を手にした。
路面はドライ。しかし前週の大雨によって泥や砂がパヴェの両脇に溜まっている状態。強い追い風によって、レース最初の1時間の平均スピードが50.4km/hというハイスピードな幕開けとなった第113回パリ〜ルーベ。絶対的王者を欠く「北のクラシック」最終戦が始まった。
先頭で最初のパヴェ区間No.27 トロワヴィルに到達したのはグレゴリー・ラスト(スイス、トレックファクトリーレーシング)、ショーン・デビー(ベルギー、ロット・ソウダル)、アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)、アダム・ブライス(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)を含む9名の逃げグループ。そこからフィニッシュまでの約150kmにわたって、最大10分差にまで広がったメイン集団は着々と縮めることになる。
チームスカイやエティックス・クイックステップがメイン集団の主導権を握ったものの、この日最初の5つ星No.18 アランベールを前に優勝候補ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がパンクし、さらに「アランベールの森」を貫く直線路でブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)が後退するなどイギリスチームは防戦一方。その後トーマスは落車によって戦線を離脱した。
残り85km地点で電車の踏切がメイン集団を二分する事態が起きたものの、コミッセールの判断によって集団は一つに戻る(遮断機が下がった状態で渡った選手のペナルティーは無し)。逃げグループとのタイム差が4分台にまで縮まる中、エティックス・クイックステップが攻撃を開始した。
No.16 オルネンのパヴェでベルギーチームがメンバー5人でのアタックを敢行すると、ウィギンズやアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)がメイン集団から脱落。しかし決定的なギャップは生まれず集団は一つに戻り、続けざまにロット・ソウダルがアタックを連発したが決まらない。
アタックの応酬が続いたまま5つ星No.10 モンサンペヴェルをクリアするとレースは残り45km。人数を揃えたエティックス・クイックステップからステイン・ファンデンベルフ(ベルギー)がアタック&独走に持ち込み、FDJやチームスカイ、トレックファクトリーレーシング、ロット・ソウダルのアシストを疲弊させる作戦に。すると、それまで集団後方に位置し、アタックに遅れ気味だったウィギンズがNo.7 タンプルーヴで動いた。
フィニッシュまで33kmを残して勢いよく飛び出したウィギンズは瞬く間にファンデンベルフに追いつき、イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)とゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)を連れて追走グループを形成する。エティックス2名を含むこの危険なウィギンズグループを、好調クリストフ擁するカチューシャが慌てて追撃。残り27kmでウィギンズらは引き戻された。
グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)のカウンターアタックは決まらず、No.6 ブルゲルでラース・ボーム(オランダ、アスタナ)やセプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)、ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)らが先頭に立ってペースを上げると、序盤から逃げていた選手たちは吸収される。
約20名に絞られた集団からユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)とボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)が抜け出し、ルーランズが独走で最後の5つ星No.4 カルフール・ド・ラルブルに突入する。鈴なりの観客に覆われ、向かい風が吹く荒れたパヴェを進む精鋭集団。しかしテルプストラらのペースアップにも集団の形は崩れず、飛び出していたルーランズも残り14kmで吸収された。
例年よりもずっと大きな先頭集団。ボームのアタックが封じられたタイミングで、フィニッシュまで12kmを残して勝敗を左右する大きな動きが生まれる。イヴ・ランパート(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とファンアフェルマートの2名が集団から抜け出すことに成功。ベルト・デバッカー(ベルギー、ジャイアント・アルペシン)が単独ブリッジを試みる中、その後ろでデゲンコルブが動いた。
フィニッシュまで11kmを残して集団から飛び出したデゲンコルブは、先行していたチームメイトのデバッカーを抜き、そのまま残り6km地点で先頭ランパートとファンアフェルマートにジョインする。メカトラでバイク交換を強いられたサガンや遅れて追撃アタックを仕掛けたウィギンズらを尻目に、ボーム、スティバル、イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)、マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)の4名も残り2kmで先頭3名に追いついた。
こうして形成された先頭グループ7名がルーベのヴェロドロームに差し掛かる。複数名選手を送り込んでいたエティックス・クイックステップのランパートがスティバルをリードしたが、その後ろにはデゲンコルブの姿。ファンアフェルマートとスティバル相手にスプリントを開始したデゲンコルブの力は圧倒的だった。
常にパヴェを集団先頭でクリアし、ライバルたちのアタックにも反応し、残り11kmで自ら動き、そしてスプリントで悠々と勝利したデゲンコルブ。前年度の2位からステップアップし、ミラノ〜サンレモに続く今シーズン2つめの「モニュメント」制覇を果たした。
「正しいタイミングでアタックした。あと少しアタックが遅れていれば、昨年の二の舞(2位)になっていた可能性もあった。スプリンターとしてマークされる立場だったので、勝つためには早めにアタックするしかなかったんだ」とデゲンコルブは残り11kmからのアタックを振り返る。
「とにかく落ち着いて、本能に従って勝負に持ち込んだ。スプリントはパーフェクトだった。ミラノ〜サンレモとの連勝はスペシャルだ」。ドイツ人のパリ〜ルーベ制覇は1896年の第1回大会を制したヨーゼフ・フィッシャーに続く史上2人目。サンレモとルーベの同年制覇は1908年のシリル・ファンハウワールト(ベルギー)と1986年のショーン・ケリー(アイルランド)に続く3人目だ。
2位には前年5位のスティバルが入り、ロンド・ファン・フラーンデレン3位のファンアフェルマートが再び3位に入って表彰台。10番手争いを繰り広げた31秒遅れの集団の先頭はクリストフ。このパリ〜ルーベを最後にチームスカイを離れるウィギンズはライバルたちからのマークから抜け出せずに18位だった。
選手コメントはチーム公式サイトより。
パリ〜ルーベ2015
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) 5h49’51”
2位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)
3位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
4位 ラース・ボーム(オランダ、アスタナ)
5位 マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)
6位 イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)
7位 イヴ・ランパート(ベルギー、エティックス・クイックステップ) +07”
8位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ) +28”
9位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル) +29”
10位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) +31”
11位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)
12位 ベルト・デバッカー(ベルギー、ジャイアント・アルペシン)
13位 アレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)
14位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)
15位 ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)
16位 アンドレアス・シリンガー(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)
17位 フロリアン・セネシャル(フランス、コフィディス)
18位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)
19位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)
20位 グレゴリー・ラスト(スイス、トレックファクトリーレーシング)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano
路面はドライ。しかし前週の大雨によって泥や砂がパヴェの両脇に溜まっている状態。強い追い風によって、レース最初の1時間の平均スピードが50.4km/hというハイスピードな幕開けとなった第113回パリ〜ルーベ。絶対的王者を欠く「北のクラシック」最終戦が始まった。
先頭で最初のパヴェ区間No.27 トロワヴィルに到達したのはグレゴリー・ラスト(スイス、トレックファクトリーレーシング)、ショーン・デビー(ベルギー、ロット・ソウダル)、アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)、アダム・ブライス(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)を含む9名の逃げグループ。そこからフィニッシュまでの約150kmにわたって、最大10分差にまで広がったメイン集団は着々と縮めることになる。
チームスカイやエティックス・クイックステップがメイン集団の主導権を握ったものの、この日最初の5つ星No.18 アランベールを前に優勝候補ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がパンクし、さらに「アランベールの森」を貫く直線路でブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)が後退するなどイギリスチームは防戦一方。その後トーマスは落車によって戦線を離脱した。
残り85km地点で電車の踏切がメイン集団を二分する事態が起きたものの、コミッセールの判断によって集団は一つに戻る(遮断機が下がった状態で渡った選手のペナルティーは無し)。逃げグループとのタイム差が4分台にまで縮まる中、エティックス・クイックステップが攻撃を開始した。
No.16 オルネンのパヴェでベルギーチームがメンバー5人でのアタックを敢行すると、ウィギンズやアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)がメイン集団から脱落。しかし決定的なギャップは生まれず集団は一つに戻り、続けざまにロット・ソウダルがアタックを連発したが決まらない。
アタックの応酬が続いたまま5つ星No.10 モンサンペヴェルをクリアするとレースは残り45km。人数を揃えたエティックス・クイックステップからステイン・ファンデンベルフ(ベルギー)がアタック&独走に持ち込み、FDJやチームスカイ、トレックファクトリーレーシング、ロット・ソウダルのアシストを疲弊させる作戦に。すると、それまで集団後方に位置し、アタックに遅れ気味だったウィギンズがNo.7 タンプルーヴで動いた。
フィニッシュまで33kmを残して勢いよく飛び出したウィギンズは瞬く間にファンデンベルフに追いつき、イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)とゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)を連れて追走グループを形成する。エティックス2名を含むこの危険なウィギンズグループを、好調クリストフ擁するカチューシャが慌てて追撃。残り27kmでウィギンズらは引き戻された。
グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)のカウンターアタックは決まらず、No.6 ブルゲルでラース・ボーム(オランダ、アスタナ)やセプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)、ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)らが先頭に立ってペースを上げると、序盤から逃げていた選手たちは吸収される。
約20名に絞られた集団からユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)とボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)が抜け出し、ルーランズが独走で最後の5つ星No.4 カルフール・ド・ラルブルに突入する。鈴なりの観客に覆われ、向かい風が吹く荒れたパヴェを進む精鋭集団。しかしテルプストラらのペースアップにも集団の形は崩れず、飛び出していたルーランズも残り14kmで吸収された。
例年よりもずっと大きな先頭集団。ボームのアタックが封じられたタイミングで、フィニッシュまで12kmを残して勝敗を左右する大きな動きが生まれる。イヴ・ランパート(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とファンアフェルマートの2名が集団から抜け出すことに成功。ベルト・デバッカー(ベルギー、ジャイアント・アルペシン)が単独ブリッジを試みる中、その後ろでデゲンコルブが動いた。
フィニッシュまで11kmを残して集団から飛び出したデゲンコルブは、先行していたチームメイトのデバッカーを抜き、そのまま残り6km地点で先頭ランパートとファンアフェルマートにジョインする。メカトラでバイク交換を強いられたサガンや遅れて追撃アタックを仕掛けたウィギンズらを尻目に、ボーム、スティバル、イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)、マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)の4名も残り2kmで先頭3名に追いついた。
こうして形成された先頭グループ7名がルーベのヴェロドロームに差し掛かる。複数名選手を送り込んでいたエティックス・クイックステップのランパートがスティバルをリードしたが、その後ろにはデゲンコルブの姿。ファンアフェルマートとスティバル相手にスプリントを開始したデゲンコルブの力は圧倒的だった。
常にパヴェを集団先頭でクリアし、ライバルたちのアタックにも反応し、残り11kmで自ら動き、そしてスプリントで悠々と勝利したデゲンコルブ。前年度の2位からステップアップし、ミラノ〜サンレモに続く今シーズン2つめの「モニュメント」制覇を果たした。
「正しいタイミングでアタックした。あと少しアタックが遅れていれば、昨年の二の舞(2位)になっていた可能性もあった。スプリンターとしてマークされる立場だったので、勝つためには早めにアタックするしかなかったんだ」とデゲンコルブは残り11kmからのアタックを振り返る。
「とにかく落ち着いて、本能に従って勝負に持ち込んだ。スプリントはパーフェクトだった。ミラノ〜サンレモとの連勝はスペシャルだ」。ドイツ人のパリ〜ルーベ制覇は1896年の第1回大会を制したヨーゼフ・フィッシャーに続く史上2人目。サンレモとルーベの同年制覇は1908年のシリル・ファンハウワールト(ベルギー)と1986年のショーン・ケリー(アイルランド)に続く3人目だ。
2位には前年5位のスティバルが入り、ロンド・ファン・フラーンデレン3位のファンアフェルマートが再び3位に入って表彰台。10番手争いを繰り広げた31秒遅れの集団の先頭はクリストフ。このパリ〜ルーベを最後にチームスカイを離れるウィギンズはライバルたちからのマークから抜け出せずに18位だった。
選手コメントはチーム公式サイトより。
パリ〜ルーベ2015
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) 5h49’51”
2位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)
3位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
4位 ラース・ボーム(オランダ、アスタナ)
5位 マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)
6位 イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)
7位 イヴ・ランパート(ベルギー、エティックス・クイックステップ) +07”
8位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ) +28”
9位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル) +29”
10位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) +31”
11位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)
12位 ベルト・デバッカー(ベルギー、ジャイアント・アルペシン)
13位 アレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)
14位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)
15位 ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)
16位 アンドレアス・シリンガー(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)
17位 フロリアン・セネシャル(フランス、コフィディス)
18位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)
19位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)
20位 グレゴリー・ラスト(スイス、トレックファクトリーレーシング)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano
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