2014/11/29(土) - 21:44
泥、泥、泥。前夜から降り続いた強い雨がコースを凶暴なまでに変貌させた。大会名物の「泥Tシャツ」が似合う柔らかい泥に覆われた周回コースで、イタリア勢が一番大きなカウベルを手にした。
11月29日(土)、2日間開催の野辺山シクロクロスの初日は朝から雨降り。高速レースが予想された前日までのドライコースとは打って変わって、舗装路を除いた部分が泥に覆われるマディコースに。UCIレースが行なわれる午後には暖かな太陽に照らされたものの、泥はレースの進行とともに深くなっていった。
最終種目のエリート男子は15時18分にスタート。今年から新たに導入された一般道のストレートを先頭で駆け抜けたのは、シクロクロス東京覇者のザック・マクドナルド(アメリカ、Cyclocross Project 2015)だった。
ホールショットを取ったマクドナルドには全日本チャンピオンジャージを着る前年度覇者の竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ)が続く。その後ろには前週に滋賀県マキノ高原を舞台に開催されたUCIレースで勝利したベルトリーニと、マキノ2位の小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)、そして丸山厚(BOMA RACING)の姿が。
2周目に入る頃には早くもベルトリーニが先頭に立ち、追いすがるザックを引き離しながら先行する。対して竹之内と小坂光、丸山の3人はスピードに対応出来ず、代わってティム・ジョンソン(アメリカ、キャノンデール/シクロクロスワールド.com)が3番手に浮上した。
好スタートを切ったマクドナルドはパンクによって後退し、ピットで交換したバイクがディレイラートラブルでストップ。度重なるトラブルでレースから去ったマクドナルドに代わってジョンソンがリズムよく2番手に上がる。UCIランキング33位のジョンソンが先頭ベルトリーニを視界に捉え、14秒差にまで迫った。
「経験豊かなティム(ジョンソン)が最大のライバルになるかなと予想していた。でも彼はスタートでミスして、代わり素晴らしいスタートを切ったのがザック(マクドナルド)。レース中盤にミスしたタイミングでティムとの距離が一気に縮まってしまった。かなり追い上げの勢いがあったので焦ったよ」とベルトリーニは振り返る。
「後半は落ち着いてプッシュし続けた。持久力が問われる時間に差し掛かってからティムの伸びは素晴らしく、白熱のマッチレースになった」と言うベルトリーニが泥に覆われたコーナーをドリフト気味に攻め、舗装路をハイスピードで駆け上がる。MTBクロスカントリーも得意とする19歳が先頭を明け渡すことはなかった。
ベルトリーニのペースアップによってジョンソンとのタイム差は再び拡大傾向に。ベルトリーニは後半にかけても安定した走りを見せ、最終的に41秒差でフィニッシュした。
「再びタイム差が広がったので落ち着いてリードを守ることを考えながら周回した。間違いなく厳しいコースだったよ。雨で泥が浮いたので昨日の試走が全く役に立たなくなったけど、泥は泥だから仕方がない。泥に合わせて走るしかない。特にフィニッシュのストレートが重くてきつかった。明日はきっと粘性のある泥になるだろうから、もっとハードなコンディションになるかもね」。国内UCIレースで2連勝を飾ったベルトリーニは語る。
敗れはしたものの、観客とハイタッチでフィニッシュして笑顔で表彰台に上がったジョンソンは開口一番「今日は朝から強い雨が降って厳しいレース環境になった。今日のレースを走った選手全員に拍手を送りたい」と語る。「シクロクロス東京には2回来ていて『日本=砂』というイメージがあったが、もちろん全く違った。ずっとランニングをし続けねばならず、死にそうなくらい辛かった。非常に力があるベルトリーニと接近した位置で走ることが出来て良かったと思う。後方からは(山本)カズが追い上げてきているのが分かっていたし、この順位には満足している」。
日本人最高位は山本和弘の3位。表彰台でカウベルを受け取った山本は「スタートで失敗しました。ベストだと思ったラインが実は重くて失速。そこから挽回していったのですが届きませんでした。走り自体は悪くなかったので、明日は序盤から海外勢に食らいついていけば良い結果が出るはずです」と前を向く。
その一方で4位に終わった竹之内は「全然踏めていませんでした」と肩を落とす。「外人選手とも全く絡むことができず、茅の外でヒラヒラしていただけになってしまってて残念です。海外であれだけ走って経験を積んできたのに、こういう結果とは不甲斐ないですね。明日は明日。頑張っていきます」。
80%ルールによって多くの選手が周回遅れ扱いとなり、トップと同一周回でフィニッシュしたのは12名。U23対象選手の中で最高位は横山航太(シマノレーシング)の6位だった。
エリート女子はアリーチェマリア・アルツッフィ(イタリア、セライタリア・グエルチョッティ)の独走劇に。「泥コースでのコントロールには慣れていて、好きかと聞かれたら好き。コースは自分向きだった。泥への対策として毎周回ピットでバイクを交換して万全を期した」と言うアルツッフィが後続を3分引き離す走りを披露した。
アルツッフィの後ろでは豊岡英子(パナソニックレディース)と宮内佐季子(Team CHAINRING)が競り合い、そこから抜け出した豊岡が2位に。「泥が最高でした。日本ではここまで泥のコースが少ないので楽しかったです。4月から思うように練習出来ず、このレースも果たして走れるのかという不安がありましたが、夜からの雨が味方しました」と豊岡。4月に肘の手術を受けた豊岡が久々の出場となったシクロクロスレースを笑顔で終えた。
エリート男子
1位 ジョエーレ・ベルトリーニ(イタリア、セライタリア・グエルチョッティ) 1h01'04"
2位 ティモシー・ジョンソン(アメリカ、Cannonadale/Cyclocrossworld.com) +41"
3位 山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム) +2'09"
4位 竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ) +2'54"
5位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) +3'19"
6位 横山航太(シマノレーシング) +3'24"
7位 沢田時(ブリヂストンアンカー) +3'37"
8位 濱由嵩(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) +3'55"
9位 丸山厚(BOMA RACING) +4'17"
10位 前田公平 +5'34"
エリート女子
1位 アリーチェマリア・アルツッフィ(イタリア、セライタリア・グエルチョッティ) 45'37"
2位 豊岡英子(パナソニックレディース) +3'00"
3位 宮内佐季子(Team CHAINRING) +3'59"
4位 武田和佳(Team CHAINRING) +6'25"
5位 相野田静香(club GROW) -2Laps
text&photo:Kei Tsuji
11月29日(土)、2日間開催の野辺山シクロクロスの初日は朝から雨降り。高速レースが予想された前日までのドライコースとは打って変わって、舗装路を除いた部分が泥に覆われるマディコースに。UCIレースが行なわれる午後には暖かな太陽に照らされたものの、泥はレースの進行とともに深くなっていった。
最終種目のエリート男子は15時18分にスタート。今年から新たに導入された一般道のストレートを先頭で駆け抜けたのは、シクロクロス東京覇者のザック・マクドナルド(アメリカ、Cyclocross Project 2015)だった。
ホールショットを取ったマクドナルドには全日本チャンピオンジャージを着る前年度覇者の竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ)が続く。その後ろには前週に滋賀県マキノ高原を舞台に開催されたUCIレースで勝利したベルトリーニと、マキノ2位の小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)、そして丸山厚(BOMA RACING)の姿が。
2周目に入る頃には早くもベルトリーニが先頭に立ち、追いすがるザックを引き離しながら先行する。対して竹之内と小坂光、丸山の3人はスピードに対応出来ず、代わってティム・ジョンソン(アメリカ、キャノンデール/シクロクロスワールド.com)が3番手に浮上した。
好スタートを切ったマクドナルドはパンクによって後退し、ピットで交換したバイクがディレイラートラブルでストップ。度重なるトラブルでレースから去ったマクドナルドに代わってジョンソンがリズムよく2番手に上がる。UCIランキング33位のジョンソンが先頭ベルトリーニを視界に捉え、14秒差にまで迫った。
「経験豊かなティム(ジョンソン)が最大のライバルになるかなと予想していた。でも彼はスタートでミスして、代わり素晴らしいスタートを切ったのがザック(マクドナルド)。レース中盤にミスしたタイミングでティムとの距離が一気に縮まってしまった。かなり追い上げの勢いがあったので焦ったよ」とベルトリーニは振り返る。
「後半は落ち着いてプッシュし続けた。持久力が問われる時間に差し掛かってからティムの伸びは素晴らしく、白熱のマッチレースになった」と言うベルトリーニが泥に覆われたコーナーをドリフト気味に攻め、舗装路をハイスピードで駆け上がる。MTBクロスカントリーも得意とする19歳が先頭を明け渡すことはなかった。
ベルトリーニのペースアップによってジョンソンとのタイム差は再び拡大傾向に。ベルトリーニは後半にかけても安定した走りを見せ、最終的に41秒差でフィニッシュした。
「再びタイム差が広がったので落ち着いてリードを守ることを考えながら周回した。間違いなく厳しいコースだったよ。雨で泥が浮いたので昨日の試走が全く役に立たなくなったけど、泥は泥だから仕方がない。泥に合わせて走るしかない。特にフィニッシュのストレートが重くてきつかった。明日はきっと粘性のある泥になるだろうから、もっとハードなコンディションになるかもね」。国内UCIレースで2連勝を飾ったベルトリーニは語る。
敗れはしたものの、観客とハイタッチでフィニッシュして笑顔で表彰台に上がったジョンソンは開口一番「今日は朝から強い雨が降って厳しいレース環境になった。今日のレースを走った選手全員に拍手を送りたい」と語る。「シクロクロス東京には2回来ていて『日本=砂』というイメージがあったが、もちろん全く違った。ずっとランニングをし続けねばならず、死にそうなくらい辛かった。非常に力があるベルトリーニと接近した位置で走ることが出来て良かったと思う。後方からは(山本)カズが追い上げてきているのが分かっていたし、この順位には満足している」。
日本人最高位は山本和弘の3位。表彰台でカウベルを受け取った山本は「スタートで失敗しました。ベストだと思ったラインが実は重くて失速。そこから挽回していったのですが届きませんでした。走り自体は悪くなかったので、明日は序盤から海外勢に食らいついていけば良い結果が出るはずです」と前を向く。
その一方で4位に終わった竹之内は「全然踏めていませんでした」と肩を落とす。「外人選手とも全く絡むことができず、茅の外でヒラヒラしていただけになってしまってて残念です。海外であれだけ走って経験を積んできたのに、こういう結果とは不甲斐ないですね。明日は明日。頑張っていきます」。
80%ルールによって多くの選手が周回遅れ扱いとなり、トップと同一周回でフィニッシュしたのは12名。U23対象選手の中で最高位は横山航太(シマノレーシング)の6位だった。
エリート女子はアリーチェマリア・アルツッフィ(イタリア、セライタリア・グエルチョッティ)の独走劇に。「泥コースでのコントロールには慣れていて、好きかと聞かれたら好き。コースは自分向きだった。泥への対策として毎周回ピットでバイクを交換して万全を期した」と言うアルツッフィが後続を3分引き離す走りを披露した。
アルツッフィの後ろでは豊岡英子(パナソニックレディース)と宮内佐季子(Team CHAINRING)が競り合い、そこから抜け出した豊岡が2位に。「泥が最高でした。日本ではここまで泥のコースが少ないので楽しかったです。4月から思うように練習出来ず、このレースも果たして走れるのかという不安がありましたが、夜からの雨が味方しました」と豊岡。4月に肘の手術を受けた豊岡が久々の出場となったシクロクロスレースを笑顔で終えた。
エリート男子
1位 ジョエーレ・ベルトリーニ(イタリア、セライタリア・グエルチョッティ) 1h01'04"
2位 ティモシー・ジョンソン(アメリカ、Cannonadale/Cyclocrossworld.com) +41"
3位 山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム) +2'09"
4位 竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ) +2'54"
5位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) +3'19"
6位 横山航太(シマノレーシング) +3'24"
7位 沢田時(ブリヂストンアンカー) +3'37"
8位 濱由嵩(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) +3'55"
9位 丸山厚(BOMA RACING) +4'17"
10位 前田公平 +5'34"
エリート女子
1位 アリーチェマリア・アルツッフィ(イタリア、セライタリア・グエルチョッティ) 45'37"
2位 豊岡英子(パナソニックレディース) +3'00"
3位 宮内佐季子(Team CHAINRING) +3'59"
4位 武田和佳(Team CHAINRING) +6'25"
5位 相野田静香(club GROW) -2Laps
text&photo:Kei Tsuji
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