2009/09/05(土) - 08:59
3級山岳が3つ設定された第6ステージは、終盤の上りでアタックが連発。しかしスプリンターチームが全てのアタックを封じ込めて集団スプリントに持ち込み、ビッグチームの隙を突いてボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)が勝利。29歳の中堅スプリンターボジッチがグランツール初勝利を飾った。
スペイン東部に位置するバレンシア州のシャティバを起点に行なわれた第6ステージ。176kmのコースには合計3つの3級山岳が設定されており、ゴール10km手前に標高270mのセッラグロサ峠が登場する。特に終盤にかけてアップダウンを繰り返すため、総合有力勢にとっても気が抜けないステージとなった。
冷たく雨降りのオランダと対照的に、暑くて快晴のスペイン。この日も雨とは無縁の好天が選手たちを迎えた。キム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア・HTC)を欠くプロトンは、気温が34度まで上がったシャティバをスタート。開始後間もなく、逃げが決まった。
逃げを成功させたのは、ビンヘン・フェルナンデス(スペイン、コフィディス)とアイトール・ペレス(スペイン、コンテントポリス・アンポ)、そして前日の第7ステージでも逃げていたホセアントニオ・ロペス(スペイン、アンダルシア)とマテウス・プロンク(オランダ、ヴァカンソレイユ)の計4名。
タイム差は瞬く間に7分近くまで拡大。しかしマイヨオロキープとステージ4連勝を狙うチームコロンビア・HTCがレース序盤から状況をコントロールし、逃げを3〜4分の範囲内に抑え込んだ。
やがてレースも終盤に差し掛かり、ゴール24km手前の3級山岳ベニガニム峠に差し掛かる頃にはタイム差が1分台に。この上りで先頭はフェルナンデスとロペスの2人に絞られ、メイン集団からカウンターアタックで飛び出したパオロ・ティラロンゴ(イタリア、ランプレ)が合流。ランプレは早めに一手を打ってきた。
2日連続で逃げたロペスは、この日の3つの3級山岳を全て先頭通過し、18ポイント獲得で一躍山岳賞ランキングトップに。山岳賞ジャージ獲得という目標には手が届いたが、逃げ切りを狙うにはタイム差が小さすぎた。
リクイガスとクイックステップがペースを上げるメイン集団は、ゴールまで16kmを残してロペス、フェルナンデス、ティラロンゴを吸収。そしてこの日最後の難所、ゴール10km手前のセッラグロサ峠でレースは動いた。
登坂距離2.5km・標高差110mのこの上りで攻撃を仕掛けたのは、昨年のロード世界選手権で優勝したアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)と、同レース3位のマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)だ。
この世界選コンビは15秒のリードを得てセッラグロサ峠をクリア。その後の短い上りでダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)とフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)が先頭2名に追いついて先頭は4名に。
しかしこの試みも、スプリンターチームを振り切れずにラスト5kmで吸収。間髪入れずに飛び出したダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)とジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)もラスト2kmで封じ込められ、クイックステップとリクイガスが集団先頭で競り合いながら、スプリンターチームの思惑通り集団スプリントへ。
発射台役のジュリアン・ディーン(ニュージーランド、ガーミン)の献身的な牽きにより、集団先頭の好位置につけたのはタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)。しかし牽く距離が長過ぎたためディーンは徐々に失速し、ファラーが手間取っている間に後方からボジッチが発射。ラスト300mで早めに仕掛けたボジッチは、一気にライバルを突き放した。
ファラーやダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)が追撃を試みたが時すでに遅し。ボジッチは伸びのあるスプリントを続け、1車差をつけてラインを駆け抜ける。並みいるスプリンターを抑え、ボジッチがグランツール初勝利を飾った。
「ブエルタのようなビッグレースで勝利したなんて、まるで夢のようだ」。ボジッチはゴール後、喜びを爆発させた。地元スロベニアチームでデビューし、これまでチームLPRとサイクル・コルストロープに所属。スプリントで安定した成績を残してきた。
今年ツール・ド・ポローニュではグライペルらを下して開幕ステージ制覇。EQA・梅丹本舗・グラファイトデザインが出場したツール・ド・リムザンでも開幕ステージを制している。ツアー・オブ・ベルギーではステージ2連勝を飾った。
母国スロベニアに大きな勝利をもたらしたボジッチは語る。「スロベニアには沢山のチームがあるけど、大きなチームはゼロ。ロードレースシーンにおいてスロベニア人はマイノリティーなんだ。そんなスロベニア人でもビッグレースで活躍できることを示せて良かったよ」。
ヴァカンソレイユはグランツール初勝利。第2ステージから毎日逃げに選手を送り込み、そして集団スプリントではビッグチームに果敢に勝負を挑む。その積極性がチームに勝利をもたらしたと言っていいだろう。この日逃げたプロンクは敢闘賞に輝いている。
総合成績は大きく動かず、アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)がマイヨオロをキープ。集団が割れてゴールしたため、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)が6秒、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)とアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)、シュレク兄弟(ルクセンブルク、サクソバンク)が9秒失った。
翌第7ステージは今大会2度目の個人タイムトライアル。フルフラットな30kmのコースで、50km/hオーバーのハイスピードな闘いが繰り広げられる。地元スイスで開催される世界選手権に向けて調子を上げているファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が総合5位・18秒遅れ。カンチェラーラはステージ優勝&マイヨオロ奪回に期待が掛かる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第6ステージ結果
1位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)4h40'50"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
4位 ダヴィデ・ヴィガーノ(イタリア、フジ・セルヴェット)
5位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)
6位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)
7位 セバスティアン・シャヴァネル(フランス、フランセーズデジュー)
8位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)
9位 マルセル・シーベルグ(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
10位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)24h21'13"
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+06"
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)+09"
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
5位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)+18"
6位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)+23"
7位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+27"
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
9位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+28"
10位 ダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+33"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ホセアントニオ・ロペス(スペイン、アンダルシア)20pts
2位 アイトール・エルナンデス(スペイン、エウスカルテル)10pts
3位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)9pts
プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)84pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)70pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)67pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)105pts
2位 ドミニク・ロエルス(ドイツ、ミルラム)141pts
3位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)160pts
チーム総合成績
1位 リクイガス 73h05'06"
2位 ケースデパーニュ +10"
3位 チームコロンビア・HTC +15"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
スペイン東部に位置するバレンシア州のシャティバを起点に行なわれた第6ステージ。176kmのコースには合計3つの3級山岳が設定されており、ゴール10km手前に標高270mのセッラグロサ峠が登場する。特に終盤にかけてアップダウンを繰り返すため、総合有力勢にとっても気が抜けないステージとなった。
冷たく雨降りのオランダと対照的に、暑くて快晴のスペイン。この日も雨とは無縁の好天が選手たちを迎えた。キム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア・HTC)を欠くプロトンは、気温が34度まで上がったシャティバをスタート。開始後間もなく、逃げが決まった。
逃げを成功させたのは、ビンヘン・フェルナンデス(スペイン、コフィディス)とアイトール・ペレス(スペイン、コンテントポリス・アンポ)、そして前日の第7ステージでも逃げていたホセアントニオ・ロペス(スペイン、アンダルシア)とマテウス・プロンク(オランダ、ヴァカンソレイユ)の計4名。
タイム差は瞬く間に7分近くまで拡大。しかしマイヨオロキープとステージ4連勝を狙うチームコロンビア・HTCがレース序盤から状況をコントロールし、逃げを3〜4分の範囲内に抑え込んだ。
やがてレースも終盤に差し掛かり、ゴール24km手前の3級山岳ベニガニム峠に差し掛かる頃にはタイム差が1分台に。この上りで先頭はフェルナンデスとロペスの2人に絞られ、メイン集団からカウンターアタックで飛び出したパオロ・ティラロンゴ(イタリア、ランプレ)が合流。ランプレは早めに一手を打ってきた。
2日連続で逃げたロペスは、この日の3つの3級山岳を全て先頭通過し、18ポイント獲得で一躍山岳賞ランキングトップに。山岳賞ジャージ獲得という目標には手が届いたが、逃げ切りを狙うにはタイム差が小さすぎた。
リクイガスとクイックステップがペースを上げるメイン集団は、ゴールまで16kmを残してロペス、フェルナンデス、ティラロンゴを吸収。そしてこの日最後の難所、ゴール10km手前のセッラグロサ峠でレースは動いた。
登坂距離2.5km・標高差110mのこの上りで攻撃を仕掛けたのは、昨年のロード世界選手権で優勝したアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)と、同レース3位のマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)だ。
この世界選コンビは15秒のリードを得てセッラグロサ峠をクリア。その後の短い上りでダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)とフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)が先頭2名に追いついて先頭は4名に。
しかしこの試みも、スプリンターチームを振り切れずにラスト5kmで吸収。間髪入れずに飛び出したダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)とジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)もラスト2kmで封じ込められ、クイックステップとリクイガスが集団先頭で競り合いながら、スプリンターチームの思惑通り集団スプリントへ。
発射台役のジュリアン・ディーン(ニュージーランド、ガーミン)の献身的な牽きにより、集団先頭の好位置につけたのはタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)。しかし牽く距離が長過ぎたためディーンは徐々に失速し、ファラーが手間取っている間に後方からボジッチが発射。ラスト300mで早めに仕掛けたボジッチは、一気にライバルを突き放した。
ファラーやダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)が追撃を試みたが時すでに遅し。ボジッチは伸びのあるスプリントを続け、1車差をつけてラインを駆け抜ける。並みいるスプリンターを抑え、ボジッチがグランツール初勝利を飾った。
「ブエルタのようなビッグレースで勝利したなんて、まるで夢のようだ」。ボジッチはゴール後、喜びを爆発させた。地元スロベニアチームでデビューし、これまでチームLPRとサイクル・コルストロープに所属。スプリントで安定した成績を残してきた。
今年ツール・ド・ポローニュではグライペルらを下して開幕ステージ制覇。EQA・梅丹本舗・グラファイトデザインが出場したツール・ド・リムザンでも開幕ステージを制している。ツアー・オブ・ベルギーではステージ2連勝を飾った。
母国スロベニアに大きな勝利をもたらしたボジッチは語る。「スロベニアには沢山のチームがあるけど、大きなチームはゼロ。ロードレースシーンにおいてスロベニア人はマイノリティーなんだ。そんなスロベニア人でもビッグレースで活躍できることを示せて良かったよ」。
ヴァカンソレイユはグランツール初勝利。第2ステージから毎日逃げに選手を送り込み、そして集団スプリントではビッグチームに果敢に勝負を挑む。その積極性がチームに勝利をもたらしたと言っていいだろう。この日逃げたプロンクは敢闘賞に輝いている。
総合成績は大きく動かず、アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)がマイヨオロをキープ。集団が割れてゴールしたため、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)が6秒、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)とアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)、シュレク兄弟(ルクセンブルク、サクソバンク)が9秒失った。
翌第7ステージは今大会2度目の個人タイムトライアル。フルフラットな30kmのコースで、50km/hオーバーのハイスピードな闘いが繰り広げられる。地元スイスで開催される世界選手権に向けて調子を上げているファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が総合5位・18秒遅れ。カンチェラーラはステージ優勝&マイヨオロ奪回に期待が掛かる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第6ステージ結果
1位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)4h40'50"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
4位 ダヴィデ・ヴィガーノ(イタリア、フジ・セルヴェット)
5位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)
6位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)
7位 セバスティアン・シャヴァネル(フランス、フランセーズデジュー)
8位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)
9位 マルセル・シーベルグ(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
10位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)24h21'13"
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+06"
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)+09"
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
5位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)+18"
6位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)+23"
7位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+27"
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
9位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+28"
10位 ダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+33"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ホセアントニオ・ロペス(スペイン、アンダルシア)20pts
2位 アイトール・エルナンデス(スペイン、エウスカルテル)10pts
3位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)9pts
プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)84pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)70pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)67pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)105pts
2位 ドミニク・ロエルス(ドイツ、ミルラム)141pts
3位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)160pts
チーム総合成績
1位 リクイガス 73h05'06"
2位 ケースデパーニュ +10"
3位 チームコロンビア・HTC +15"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
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