凍ったステルヴィオ峠の下りが物議を呼んでいる。マリアローザを獲得したナイロ・キンタナは喜びを語りつつも「ニュートラルは聞いていなかった」と言い、遅れたリゴベルト・ウランらは「ニュートラルだと聞いていた」とコメントしている。



マリアローザを手に入れたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)

ヘシェダルを振り切って独走でフィニッシュするナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)ヘシェダルを振り切って独走でフィニッシュするナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji僕はルートについて良く知っていたよ。僕はジロの下見をするために事前に訪れているけれど、雪に覆われてしまってステルヴィオ峠のほとんどを走ることができなかったんだ。もちろんそこからの下りやヴァルマルテッロも下見していたよ。

ステージ優勝を飾ったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)ステージ優勝を飾ったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsujiステルヴィオを集団で登ったあと、下りでユーロップカーとヘジダルがペースを上げて、それに僕とイサギーレがついていった。下りきったあとに後続とのタイム差がついていることに気づいたんだ。アタックした訳では全く無かったよ。

ニュートラルになるなんて情報は聞いていなかったし、競技無線からもそんなことは聞こえなかった。なぜあんなにタイム差がついたのか分からないけれど、実際に僕らはヴァルマルテッロの前に大きなリードを奪うことができた。

僕はまだ風邪っぽくて咳が出ている状態なんだ。ライバル達が攻撃してくることは分かっているけれど、僕は日に日に復調しているし、強力なチームメイトが守ってくれている。ステルヴィオでチームの走りを見たはずだ。皆アレルギーや落車の影響を持っているけれど、克服できている。最終日まで彼らがレースをコントロールしてくれると確かに思っているよ。

マリアローザに袖を通したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)マリアローザに袖を通したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji
僕はシーズンの序盤からサンルイスで勝ち、ティレーノで2位になり、カタルーニャで5位になったりと、3週間のステージレースで戦えるように努力してきたよ。僕は表彰台争いをするためにここに来たし、今僕らはマリアローザを手に入れた。何人かは僕を総合争いから排除しようとしたけれど、でもそのことで集中できたし、こんな結果を手に入れることができた。チームを誇りに思うよ。

ステージ2位でゴールするライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)ステージ2位でゴールするライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ) photo:Cor.Vos粘りの走りを見せたライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)

ステージ3位のピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)ステージ3位のピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) photo:Cor.Vos何て日だ…みんなありがとう!今日のステージを終えて、マウイキャンプ(ヘシェダルが主催するサイクリングキャンプ)のことばかり考えているよ。

ステージ3位のピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)

クレイジーな一日だ!凍った下りは嬉しくも、不安でもあった。今年のカタルーニャで同じような状況になって、全くペダリングもシフティングもできない状況になってしまった。だから今回は身体を冷やさないようにできる限りのことをした。食べることも飲むことも最小限にとどめたけれど、でも恐れていた状況にはならなかったから良かったよ。いつもそばでサポートしてくれたロマンには感謝したい。

ステルヴィオの下りでリスクを抑えるために先頭で下っていたら、キンタナが彼のチームメイトと一緒にフルスピードで下っていくのが見えた。すぐに追っていこうと決めたんだ。この濡れたテクニカルな下りが違いを生み出した。

僕は3位でフィニッシュして、総合順位を4位に上げた。チーム監督のジャンルネのようにはいかなかったけれど、とても嬉しく思っているよ。他のスポーツだったらキャンセルになっている天候だ。今日走りきった全ての選手達にリスペクトをしたい。

マリアローザを手放したリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)

キンタナグループを追うマリアローザのリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)キンタナグループを追うマリアローザのリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsujiステルヴィオでブラマーティ監督から、下りは安全のためにオートバイによってコントロールされ、僕らのポジションはアタックによって危ぶまれることがないと聞いていた。彼は僕らにレインジャケットを着て、いかなるトラブルの原因にも注意を払うように伝えたんだ。

山頂まで300〜400m地点でレインジャケットを受け取って、頂上に着く前に走りながら羽織った。だから山頂では止まらなかった。ダウンヒルに入ってもオートバイの姿は無く、僕はあたりを見回してみた。マイカや他の選手は姿はそこにあったけれど、キンタナがいないことには気づかなかった。ブラマーティが無線で伝えてきた時にはもう既に差は大きくなっていて、僕らは追走を始めた。これが今日のストーリーだ。

多分普通のレース展開であれば、今日のシナリオは変わっていたと思う。キンタナから総合で1分41秒遅れだけれども、またマリアローザを奪うために挑戦していく。ジロはまだ終わってはいないし、僕らの戦いも終わってやしない。

積極的にペースを上げたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)

積極的にペースを上げるウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)積極的にペースを上げるウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン) photo:Kei Tsujiスペシャルな一日だった。こんな特別な日を経験することはないからハッピーさ。ガヴィア峠ではそれほどでもなかったけれど、その下りで大雪になってしまった。最悪なほどに寒くて、僕の手はもう手じゃなくなっていた。めちゃくちゃに危険だったし、雪で視界も悪かった。

ステルヴィオを登っていると身体が温かくなってきた。僕は下りがニュートラルになるだろうと聞いていたので頂上で止まってレインジャケットを着込んだよ。そして集団に戻っている途中で、キンタナとロラン、そしてヘシェダルが行ってしまったことに気づいた。

ロランは僕よりも総合順位が良くなったから、彼の動きについていくことになるだろう。少しばかりツキがあれば総合順はすぐに上がると思う。まだあらゆることが可能だと思う。

ライバルたちのペースアップについていけないカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)ライバルたちのペースアップについていけないカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiライバルの先行を許したカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)

最後は痙攣が出てしまった。普通ならばこういった究極なコンディションが得意なはずなのに、今日は違った。片足で登りをこなすことはできないよ。なんとかエネルギーをセーブして生き残るような大変な一日だった。最初の登りでは着込みすぎてしまったし、その下りでは雪でほとんど前が見えない状況だった。ステルヴィオでは良い感じだったが、下りで痙攣が始まってしまった。

86位でゴールした別府史之(トレックファクトリーレーシング)

約18分遅れでステルヴィオ峠をクリアした別府史之(トレックファクトリーレーシング)約18分遅れでステルヴィオ峠をクリアした別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji今日のステージは自分のキャリアでワースト3にランクインする過酷なステージになった。勾配が厳しい上に距離も長く、なおかつ標高が高くて酸素が薄い。頂上に近づくにつれて雪が降ってきてやがて吹雪になり、レインジャケットを止まって羽織ったり、防寒装備も完璧してたのにも関わらず、吹雪で前は見えなくなり、勘でカーブを曲がるような危険な状況だった。そして雪と雨で凍りつくような寒さの中、再びステルヴィオへ。

今年のチマコッピに設定されていて永遠に終わりがこないよな長い坂。だけど2年前のジロで経験していたため終わりがあるのを知っていた。全身が寒さで痙攣する中、問答無用にひたすら下って走り続け身体を温めて最後の登りへ。

こんな生命が危険に感じるようなスポーツはこの自転車競技だけだろうと思いつつも、なんとかゴール、と言うよりも『無事に生還できた』。

グルペットで走りきった新城幸也(ユーロップカー)

この寒さは今年のミラノ~サンレモを思い出した。雨が雪に変わって、同じ感じだった。なんとか無事にゴールできてよかった。塩化カリウムなどでしっかり除雪もしてあったし、道路が凍らなかったオーガナイザーの努力と言うか、昨年の(雪でステージガキャンセルになったため。)リベンジへの執念を感じた(笑) ピエールがステージ3位に総合4位。こんな強いエースがいてくれて凄く刺激になる。今日はスタートから何もしてあげられなかったが、残り5ステージ、自分の出来るところはしっかりと彼の手助けをしたいと思う。

各コメントはチーム/個人公式ウェブサイトなど、新城幸也のコメントはTeamユキヤ通信より。

text:So.Isobe

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