2014/05/17(土) - 14:56
「自分のスターはマイク・タイソン。彼の自伝を読んでいる」というナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)が、エアロスーツを着て、ジロのゴール前を支配している。今大会始まって以来初めての雨が降らない一日を振り返る。
前日の第6ステージで落車したのは合計60人にのぼった。そのうちビシオソとブライコヴィッチとヴィレッラとカルーゾがDNF。まさに「ここでジロは勝てないが、ジロを失うことはある」といったステージだった。
第7ステージのDNSはランカスターとロドリゲスの2人で、DNFはメドレルとカッレテロの2人。ここまでジロの3分の1が終了して、すでに12名がリタイアしている。
やはり最も被害が大きかったのはカチューシャだ。エースのロドリゲスに加え、ビシオソとカルーゾを失ってしまった。開幕前に総合優勝候補に挙げられていたチームにとっては悪夢としか言いようがない。
会う度にカメラの話題で盛り上がるカチューシャのヴィアチェスラ・エキモフ監督に「昨日は大変だったね」と声をかけると、意外にも笑顔で返事が戻ってきた。「ま〜だジロは終わってないぜ。ステージ優勝を狙える。パオリーニもいる。チームは前を向いているんだぜ」。全く気持ちを落としていない。
カチューシャはマトリョーシカのデザインが入ったボトルを使用している。エキモフ監督いわく、マトリョーシカボトルは巷で大人気で、ebayでは高値で取引されているらしい。なお、ボトルの中から小さなボトルが出てきて、その中から小さなボトルが出てくる仕組みにはなっていない。
別府史之(トレックファクトリーレーシング)は「今日はゴー(逃げに乗っていい)の指示が出たので行きますよ」と意気揚々と出走サインに向かった。スタート後すぐに高出力のアタック合戦が始まるため、心なしか別府の表情はいつもより固い。
スイッチオンの選手もいればオフの選手もいる。2日前に落車した新城幸也(ユーロップカー)は「今日はリカバリーデーです。スプリントと逃げは五分五分じゃないですか?」と笑うが、落車で打った尾てい骨はまだまだ痛む様子。チームの仕事をこなしながらも、しばらくは痛みとの闘いになりそうだ。
46年ぶりにジロのフィニッシュを迎えたフォリーニョの街には、クインターナ祭りというイベントがある。毎年9月に開催される「馬上槍突き競技会」で、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)の名字と綴りが全く一緒(イタリア語とスペイン語の読み方が違うだけ)。クライマーのキンタナが勝てるようなステージではないのが残念だ。
レースがフィニッシュする1時間ほど前には小雨が降ったが、選手たちが到着する頃には路面はほぼ完全に乾いた。ここまで6ステージ連続で雨が降っていたが、第7ステージにしてようやく雨に降られなかった。
ジロの公式Twitterアカウントが「速報!今日は雨が降らなかった!」と興奮気味にツイートするぐらいの大事件だ。おそらく選手たちにはパラパラと雨粒が当たったはずだが、それは雨降りにはカウントしない。
この予想不可能で、コロコロと変化する天候はチームスタッフを悩ましている。ティンコフ・サクソの宮島正典マッサーは、朝からチームカーの周りをテキパキと小走りで動き回っていた。
この日もティンコフ・サクソは念のために冷たい氷からホットティー用のお湯まで一通り用意したと言う。ここまで落車多発のステージが多かったこともあり、メカニックもマッサーも連日大変だ。
別府が「450〜500Wで」メイン集団を引くシーンがフィニッシュのスクリーンに映し出されると、会場のMCが高らかに「日本から参戦しているフミユキーベップー」とアナウンスする。3度目のジロ出場で、しかもイタリア人っぽいBEPPUという名前のおかげで、別府の知名度は高い。もちろん新城と別府の名前がごちゃごちゃになっている観客も多いが。
睫毛の長いキラキラした目の持ち主ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)の2勝目で、今年のジロ史上最も平穏な一日が終わった。エアロスーツを着るブアニのVサインが炸裂した。
翌日からの2連続山岳を前に、総合狙いの選手たちはようやく一息つけたはず。第8ステージのスタート地点はフォリーニョなので、選手たちはいつもよりゆっくりとした時間をホテルで過ごすことが出来る。イタリア半島の"かかと"の辺りで再スタートしたジロは、"膝"の辺りまで北上してきた。
text&photo:Kei Tsuji in Foligno, Italy
前日の第6ステージで落車したのは合計60人にのぼった。そのうちビシオソとブライコヴィッチとヴィレッラとカルーゾがDNF。まさに「ここでジロは勝てないが、ジロを失うことはある」といったステージだった。
第7ステージのDNSはランカスターとロドリゲスの2人で、DNFはメドレルとカッレテロの2人。ここまでジロの3分の1が終了して、すでに12名がリタイアしている。
やはり最も被害が大きかったのはカチューシャだ。エースのロドリゲスに加え、ビシオソとカルーゾを失ってしまった。開幕前に総合優勝候補に挙げられていたチームにとっては悪夢としか言いようがない。
会う度にカメラの話題で盛り上がるカチューシャのヴィアチェスラ・エキモフ監督に「昨日は大変だったね」と声をかけると、意外にも笑顔で返事が戻ってきた。「ま〜だジロは終わってないぜ。ステージ優勝を狙える。パオリーニもいる。チームは前を向いているんだぜ」。全く気持ちを落としていない。
カチューシャはマトリョーシカのデザインが入ったボトルを使用している。エキモフ監督いわく、マトリョーシカボトルは巷で大人気で、ebayでは高値で取引されているらしい。なお、ボトルの中から小さなボトルが出てきて、その中から小さなボトルが出てくる仕組みにはなっていない。
別府史之(トレックファクトリーレーシング)は「今日はゴー(逃げに乗っていい)の指示が出たので行きますよ」と意気揚々と出走サインに向かった。スタート後すぐに高出力のアタック合戦が始まるため、心なしか別府の表情はいつもより固い。
スイッチオンの選手もいればオフの選手もいる。2日前に落車した新城幸也(ユーロップカー)は「今日はリカバリーデーです。スプリントと逃げは五分五分じゃないですか?」と笑うが、落車で打った尾てい骨はまだまだ痛む様子。チームの仕事をこなしながらも、しばらくは痛みとの闘いになりそうだ。
46年ぶりにジロのフィニッシュを迎えたフォリーニョの街には、クインターナ祭りというイベントがある。毎年9月に開催される「馬上槍突き競技会」で、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)の名字と綴りが全く一緒(イタリア語とスペイン語の読み方が違うだけ)。クライマーのキンタナが勝てるようなステージではないのが残念だ。
レースがフィニッシュする1時間ほど前には小雨が降ったが、選手たちが到着する頃には路面はほぼ完全に乾いた。ここまで6ステージ連続で雨が降っていたが、第7ステージにしてようやく雨に降られなかった。
ジロの公式Twitterアカウントが「速報!今日は雨が降らなかった!」と興奮気味にツイートするぐらいの大事件だ。おそらく選手たちにはパラパラと雨粒が当たったはずだが、それは雨降りにはカウントしない。
この予想不可能で、コロコロと変化する天候はチームスタッフを悩ましている。ティンコフ・サクソの宮島正典マッサーは、朝からチームカーの周りをテキパキと小走りで動き回っていた。
この日もティンコフ・サクソは念のために冷たい氷からホットティー用のお湯まで一通り用意したと言う。ここまで落車多発のステージが多かったこともあり、メカニックもマッサーも連日大変だ。
別府が「450〜500Wで」メイン集団を引くシーンがフィニッシュのスクリーンに映し出されると、会場のMCが高らかに「日本から参戦しているフミユキーベップー」とアナウンスする。3度目のジロ出場で、しかもイタリア人っぽいBEPPUという名前のおかげで、別府の知名度は高い。もちろん新城と別府の名前がごちゃごちゃになっている観客も多いが。
睫毛の長いキラキラした目の持ち主ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)の2勝目で、今年のジロ史上最も平穏な一日が終わった。エアロスーツを着るブアニのVサインが炸裂した。
翌日からの2連続山岳を前に、総合狙いの選手たちはようやく一息つけたはず。第8ステージのスタート地点はフォリーニョなので、選手たちはいつもよりゆっくりとした時間をホテルで過ごすことが出来る。イタリア半島の"かかと"の辺りで再スタートしたジロは、"膝"の辺りまで北上してきた。
text&photo:Kei Tsuji in Foligno, Italy
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