2014/05/15(木) - 14:40
イタリアのバジリカータ州は日本になじみの薄い州だと言っていいだろう。20ある州の中で、人口も人口密度も下から3番目。長靴(イタリア半島)の土踏まずのあたりを走る選手たちに雨風が吹き付けた。
日本人のことをジャポネーゼと呼ぶように、ナポリ生まれの人をナポリターノと呼ぶように、タラント生まれの人のことをタランティーノと呼ぶ。かと言って映画監督クエンティン・タランティーノはタラント出身ではない。おそらく先祖がタラント出身からの移民だと思われる。
そんな(?)タラントを出発するジロ・デ・イタリア第5ステージは、朝から強い北風に見舞われた。タラントの街を、時折、台風のレポーターが屈んでしまいそうなぐらいの暴風が吹き抜ける。青い海には白波が立った。
しかしスタート地点に詰めかけた地元の観客たちは文字通りそんなことどこ吹く風で、ヴィラッジョ(スポンサーエリア)に群がってバナナやクッキーの争奪戦を繰り広げていた。南イタリアの人の熱気は凄い。
ちなみに(現地レポートには「ちなみに」が多いですね)昨年までは大会の招待パスがなければ入れなかったヴィラッジョが、今年は全ての人に開放されている。中には、持参したビニール袋いっぱいに無料のバナナを詰め込んで、ウキウキとレースなんか見ずに帰るご婦人も。
残念なことに、ヴィラッジョが一般の観客に開放された代わりに、出走サイン後の選手たちには選手専用の待機エリアが設けられた。この選手専用エリアにはフォトグラファーもジャーナリストも入れない。観客はフェンス越しに選手の名前を叫ぶしかない。
ただでさえスタート直前にしか選手たちはチームバスから出てこないのに、観客やメディアと選手の距離がさらに遠くなったことは残念でならない。
ステージの前半は、遮るもののない平野部の高速道路。エシュロンが形成されるような展開を想像してしまうが、別府史之(トレックファクトリーレーシング)は「ジロはクライマーが多いから(ごついルーラーがいないから)大変なことにはならない」と読む。
確かにその言葉通りビュンビュン横風が吹き付ける高速道路で大きなトラブルは起こらなかった(小さな落車はいくつかあった)。
新城幸也(ユーロップカー)は「最後はおそらく50〜60人のスプリントになるんじゃないですか?そうなったら僕ですね」と笑いながらスタートの支度を整える。各メディアで取り上げられたパールピンクのコルナゴC60は相変わらず注目の的だ。普段はカンパニョーロのボーラウルトラ50を多用しているが、この日は強風のコンディションを考慮してボーラウルトラ35をチョイスした。
まるで選挙ポスターのようなドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)の応援ポスターが沿道のあちこちに掲げられていた。あまりの多さに途中で数えるのを諦めたが、おそらく500枚以上あった。ポッツォヴィーヴォの笑顔の祝福を500回以上受けながらプレスカーを走らせた。
どれも全てポッツォヴィーヴォファンクラブによるもの。何と言ってもこの日はポッツォヴィーヴォの出身地ポリコロの近くを通る。数少ないバジリカータ州出身選手であり、必然的に人気は地元出身選手に集中する。ちなみにフィニッシュ地点ヴィジャーノが今年のジロの南端だ。
イオニア海を離れて内陸に入ると、風は少し弱まった。だが選手たちの行く手には黒い雲が鎮座している。勝負に向けてレースが活発化するタイミングで、風とともに流れ行く雨雲がジロを覆った。晴れと雨を交互に繰り返す天候。しかも気温が13度前後なんて、まるでアイルランドに戻ってきたみたいだ。
他選手の投げ捨てたボトルが前輪に挟まり、補給地点で全日本チャンピオンが落車した。目撃者によると、新城は前転してそのまま地面に叩き付けられたという。
ショーツのお尻の部分が破れ、肘と手に血をにじませながらも、新城はスペアバイクで再スタートした(とは言えC60は無事だった)。
その後もピエール・ロラン(フランス)のアシストを勤め上げた新城は、落車による足止めの影響もあって先頭から10分遅れでフィニッシュに戻ってきた。
落車で一番強く打ちつけたのはお尻。新城は痛みに耐えながら支度をし、一息つき、やりきれない表情で下山していった。レース後、新城は自身のFacebookにこのように書き込んでいる。「久しぶりにヤバイと思いました。明日、明後日は辛い日々が続きそうですが耐えるしか無い」。
チームドクターの診断の結果、新城は第6ステージはスタートする予定。スタートして実際に走りながら様子を見る。とにかく怪我が大事に至ってないことを願うばかりだ。
第6ステージはサッサーノからモンテカッシーノまでの247kmで行なわれる...予定だったが、悪天候による道路環境の悪化でコースの一部を迂回。本来のコースよりも10km延長され、今大会最長の257kmコースで行なわれることが決定している。
text&photo:Kei Tsuji in Viggiano, Italy
日本人のことをジャポネーゼと呼ぶように、ナポリ生まれの人をナポリターノと呼ぶように、タラント生まれの人のことをタランティーノと呼ぶ。かと言って映画監督クエンティン・タランティーノはタラント出身ではない。おそらく先祖がタラント出身からの移民だと思われる。
そんな(?)タラントを出発するジロ・デ・イタリア第5ステージは、朝から強い北風に見舞われた。タラントの街を、時折、台風のレポーターが屈んでしまいそうなぐらいの暴風が吹き抜ける。青い海には白波が立った。
しかしスタート地点に詰めかけた地元の観客たちは文字通りそんなことどこ吹く風で、ヴィラッジョ(スポンサーエリア)に群がってバナナやクッキーの争奪戦を繰り広げていた。南イタリアの人の熱気は凄い。
ちなみに(現地レポートには「ちなみに」が多いですね)昨年までは大会の招待パスがなければ入れなかったヴィラッジョが、今年は全ての人に開放されている。中には、持参したビニール袋いっぱいに無料のバナナを詰め込んで、ウキウキとレースなんか見ずに帰るご婦人も。
残念なことに、ヴィラッジョが一般の観客に開放された代わりに、出走サイン後の選手たちには選手専用の待機エリアが設けられた。この選手専用エリアにはフォトグラファーもジャーナリストも入れない。観客はフェンス越しに選手の名前を叫ぶしかない。
ただでさえスタート直前にしか選手たちはチームバスから出てこないのに、観客やメディアと選手の距離がさらに遠くなったことは残念でならない。
ステージの前半は、遮るもののない平野部の高速道路。エシュロンが形成されるような展開を想像してしまうが、別府史之(トレックファクトリーレーシング)は「ジロはクライマーが多いから(ごついルーラーがいないから)大変なことにはならない」と読む。
確かにその言葉通りビュンビュン横風が吹き付ける高速道路で大きなトラブルは起こらなかった(小さな落車はいくつかあった)。
新城幸也(ユーロップカー)は「最後はおそらく50〜60人のスプリントになるんじゃないですか?そうなったら僕ですね」と笑いながらスタートの支度を整える。各メディアで取り上げられたパールピンクのコルナゴC60は相変わらず注目の的だ。普段はカンパニョーロのボーラウルトラ50を多用しているが、この日は強風のコンディションを考慮してボーラウルトラ35をチョイスした。
まるで選挙ポスターのようなドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)の応援ポスターが沿道のあちこちに掲げられていた。あまりの多さに途中で数えるのを諦めたが、おそらく500枚以上あった。ポッツォヴィーヴォの笑顔の祝福を500回以上受けながらプレスカーを走らせた。
どれも全てポッツォヴィーヴォファンクラブによるもの。何と言ってもこの日はポッツォヴィーヴォの出身地ポリコロの近くを通る。数少ないバジリカータ州出身選手であり、必然的に人気は地元出身選手に集中する。ちなみにフィニッシュ地点ヴィジャーノが今年のジロの南端だ。
イオニア海を離れて内陸に入ると、風は少し弱まった。だが選手たちの行く手には黒い雲が鎮座している。勝負に向けてレースが活発化するタイミングで、風とともに流れ行く雨雲がジロを覆った。晴れと雨を交互に繰り返す天候。しかも気温が13度前後なんて、まるでアイルランドに戻ってきたみたいだ。
他選手の投げ捨てたボトルが前輪に挟まり、補給地点で全日本チャンピオンが落車した。目撃者によると、新城は前転してそのまま地面に叩き付けられたという。
ショーツのお尻の部分が破れ、肘と手に血をにじませながらも、新城はスペアバイクで再スタートした(とは言えC60は無事だった)。
その後もピエール・ロラン(フランス)のアシストを勤め上げた新城は、落車による足止めの影響もあって先頭から10分遅れでフィニッシュに戻ってきた。
落車で一番強く打ちつけたのはお尻。新城は痛みに耐えながら支度をし、一息つき、やりきれない表情で下山していった。レース後、新城は自身のFacebookにこのように書き込んでいる。「久しぶりにヤバイと思いました。明日、明後日は辛い日々が続きそうですが耐えるしか無い」。
チームドクターの診断の結果、新城は第6ステージはスタートする予定。スタートして実際に走りながら様子を見る。とにかく怪我が大事に至ってないことを願うばかりだ。
第6ステージはサッサーノからモンテカッシーノまでの247kmで行なわれる...予定だったが、悪天候による道路環境の悪化でコースの一部を迂回。本来のコースよりも10km延長され、今大会最長の257kmコースで行なわれることが決定している。
text&photo:Kei Tsuji in Viggiano, Italy
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