3月9日、イタリア・トスカーナ州のシエナ近郊を舞台に第8回ストラーデビアンケ(UCI1.1)が開催。超強力な先頭グループから終盤に飛び出したミカル・クヴィアトコウスキーが、ペーター・サガンをゴール手前の激坂で置き去りにして勝利を飾った。



丘陵地帯を縫うストラーデ・ビアンケを走るプロトン丘陵地帯を縫うストラーデ・ビアンケを走るプロトン photo:Cor.Vos
サン・ジミニャーノのスタート地点に集った選手たちサン・ジミニャーノのスタート地点に集った選手たち (c)www.gazzetta.itベルギーや北フランスでセミクラシックが開催され、いよいよパリ〜ルーベやロンド・ファン・フラーンデレンに向けての機運が高まる中、イタリアはトスカーナ州で開催されたストラーデビアンケ。直訳で「白い道(Strade Bianche)」を意味するこのレースは、石畳を走る「北のクラシック」とは異なり、その名の通り丘陵地帯に続く未舗装路を駆け抜ける特殊なもの。

硬く踏みしめられた未舗装路区間を行く硬く踏みしめられた未舗装路区間を行く (c)www.gazzetta.it北イタリアの丘陵地帯を巡り、サン・ジミニャーノからシエナへと至るコースは昨年よりもやや長い197km。コース中には山岳こそ無いものの細かいアップダウンが絶えず連続し、計10カ所登場する未舗装路の総延長は45.1kmを数える。世界遺産に登録されるシエナの街に用意されたゴール手前1kmには最大斜度18%の激坂が控えるなど、クラシックレースの魅力が凝縮された美しいレースだ。

青空の下丘陵地帯を駆けるメイン集団青空の下丘陵地帯を駆けるメイン集団 (c)www.gazzetta.it昨年キャノンデールのモレノ・モゼール(イタリア)とペーター・サガン(スロバキア)が席巻したストラーデ・ビアンケだが、今年は各チームがそれに対抗すべくスター選手を多くラインナップ。18チーム、143名の選手達が快晴のサン・ジミニャーノからスタートを切った。

メイン集団から抜け出した23名のトップグループメイン集団から抜け出した23名のトップグループ (c)Cor.Vosスタートフラッグからおよそ25kmを経て決まった逃げグループを構成したのは、アンジェロ・パガーニ(バルディアーニ・CSF)ら4名のイタリア人選手たち。順調にアップダウンをこなす4名は最大で10分以上のタイム差を得たものの、残り100kmを切ると追走するメイン集団は落ち着いてギャップを削り取りに掛かる。

砂埃を蹴立てて逃げるミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)とペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)砂埃を蹴立てて逃げるミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)とペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール) photo:Cor.Vosぶどう畑や林をその背に乗せた、延々と続く丘陵地帯の中、選手達は白く煙る砂埃を蹴立て「ストラーデ・ビアンケ」を行く。メイン集団の先頭でペースを整えるのは、主にオメガファーマ・クイックステップ勢だ。

そしてゴールまで残りおよそ40kmを切ったところで逃げグループは吸収され、いよいよ各チームが勝負に向けた段取りを開始。するとその末に、各チームのエース級選手ばかりが揃った23名の大きなグループが抜け出した。

サガンやファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)らの入った先行グループでは、クヴィアトコウスキーやマッテオ・トレンティン(イタリア)、ワウテル・ポエルス(オランダ)らを送り込んだオメガファーマ勢が高速で牽引したため、メイン集団との差は確固たるものとなっていく。

レースの主導権を握った23名の中からは、まずトレンティンのアタックをきっかけとした6名の逃げが発生する。これを嫌ってロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)が追走集団のペースを上げると、追いつきざまにサガンが強烈なアタックを敢行。唯一反応できたクヴィアトコウスキーが合流し、ここから2人のナショナルチャンピオンによる逃げが始まった。

先行する2名を追うロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)やファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)ら先行する2名を追うロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)やファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)ら photo:Cor.Vos全力では無く、少しの余裕を持ったペースで先行するサガンとクヴィアトコウスキーは、メンバーが揃いすぎた(=思惑の交錯する)追走集団を尻目に、タイム差を20秒、40秒と着実に拡大していく。1分以上にまで差が広がってようやくバルベルデらが追走を試みたものの、時既に遅し。2人が稼いだタイム差を全て切り崩すには至らなかった。

先頭2名の協調体制は最後まで崩れず、もつれるようにしてシエナ市街の城壁をクリア。サガン有利かと思われた展開の中、最大18%の勾配を擁する最終の登坂で抜け出しに成功したのはクヴィアトコウスキーだった。

サガンがすぐに諦めるほどの強烈な加速で一発抜け出したクヴィアトコウスキーは、そのままテクニカルなコーナーをクリアし先頭でカンポ広場へと飛び込み勝利。ヴォルタ・アン・アルガルヴェでのステージ2勝&総合優勝など今期絶好調を見せる23歳のポーランドチャンピオンが、ここシエナでも輝いた。



独走でシエナのカンポ広場にゴールするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)独走でシエナのカンポ広場にゴールするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor.Vos
表彰台  ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)を囲む表彰台 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)を囲む (c)www.gazzetta.itシャンパンを開けるミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)シャンパンを開けるミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) (c)www.gazzetta.it




「カンポ広場の最後のコーナーを回ってゴールが見えた時、それはそれは美しかった。昨日シエナを見て回ったときも綺麗だな、と思ったけれど、ファンや観客たちに埋め尽くされたそれはもっと良かった。特別だったね。

サガンは今日のようなビッグレースでの最後(の駆け引き)を知っていると分かっていた。でも彼は最後のスプリントまで待たなかった。彼が失速し始めた時、とても苦しんでいるように見えた。だから僕は全速力で最後まで踏み抜いたんだ。それが勝てた理由。これは多分僕にとってベストで、もっとも感動的な勝利だと思っている。今日サポートしてくれた全てのチームメイトやみんなには感謝してもし足りない。」とクヴィアトコウスキーは語った。

3位は追走グループから一人追い上げたバルベルデ、4位はダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)。フランドルクラシックを見据えるカンチェラーラは6位フィニッシュだった。


ストラーデ・ビアンケ2014 結果
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)
6位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)
7位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
8位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
9位 ワウテル・ポエルス(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)
10位 サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
5h20'33"
+18"
+35"
+39"
+40"
+58"
+1'42"
+2'01"
+2'10"
+2'50"


text:So.Isobe
photo:Cor.Vos


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