2014年のUCIワールドツアー開幕戦ツアー・ダウンアンダーの主役はサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)とアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)だった。ともに大会の記録を作る走りで6日間の闘いを終えた。



リーダージャージを着て最終ステージを迎えるサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)リーダージャージを着て最終ステージを迎えるサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
ダウンアンダー最終ステージを迎えた新城幸也(ユーロップカー)ダウンアンダー最終ステージを迎えた新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsujiアルヴェセン監督に指示を受けるリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)アルヴェセン監督に指示を受けるリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji



逃げ容認後、オリカ・グリーンエッジがコントロール開始逃げ容認後、オリカ・グリーンエッジがコントロール開始 photo:Kei Tsuji「目を見張るほど素晴らしいチームのおかげで3回目の優勝を果たすことが出来た。オーストラリアデーに、オーストラリアチームが、オーストラリアのUCIワールドツアーレースで勝ったんだ」(ゲランス)

リーダージャージを着て走るサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)リーダージャージを着て走るサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji1月26日はオーストラリア人にとって大切な日。1788年にイギリス艦隊がオーストラリア大陸に到着し、植民地化を開始させた日であり、「オーストラリアデー(オーストラリアの日)」として国民の祝日に指定されている。

1985年から1995年までF1オーストラリアGPのサーキットとして使われていた直線路1985年から1995年までF1オーストラリアGPのサーキットとして使われていた直線路 photo:Kei Tsuji前日の第5ステージで1秒差の総合逆転を果たしたゲランスは、ライバルたちの動きに警戒しながら、オリカ・グリーンエッジの安定したトレインに率いられながら、アデレードの市街地周回コースを駆け抜けた。

1985年から1995年までF1オーストラリアGPが開催されたライミル公園を起点にした、初登場の4.75km周回コース。主催者発表で11万人が詰めかけたコースを選手たちは18周(全長85.5km)する。

最終ゴールスプリントはピュアスプリンターの独壇場になるため、6周目と12周目に設定されたスプリントポイントでのボーナスタイムが総合順位に変動を起こす最後のチャンスとなる。実際に、2013年にはスプリントポイントで果敢に攻めたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が総合5位から総合3位へのジャンプアップを果たしている。

総合首位ゲランスから1秒差でエヴァンス、5秒差でウリッシ、10秒差でポートが続く僅差の総合争い。しかし、マキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ)、ウィリアム・クラーク(オーストラリア、ドラパック)、ジュリアン・ベラール(フランス、アージェードゥーゼル)の3名が集団から飛び出すと、メイン集団はあっさりと逃げを見送った。

ボーナスタイムを独占する3名の逃げにより、メイン集団は"通常の平坦ステージ"の動きを見せる。



協力して逃げ続けるジュリアン・ベラール(フランス、アージェードゥーゼル)ら協力して逃げ続けるジュリアン・ベラール(フランス、アージェードゥーゼル)ら photo:Kei Tsuji大会スポンサーのサントス社の気球を横目に大会スポンサーのサントス社の気球を横目に photo:Kei Tsuji
全日本チャンピオンの新城幸也(ユーロップカー)がアデレード市街地を走る全日本チャンピオンの新城幸也(ユーロップカー)がアデレード市街地を走る photo:Kei Tsuji
リーダージャージを着てアデレード市街地を走るサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)リーダージャージを着てアデレード市街地を走るサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiイェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)が強力にメイン集団を牽引イェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)が強力にメイン集団を牽引 photo:Kei Tsuji



チームメイトたちに守られて走るサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)チームメイトたちに守られて走るサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiリーダージャージ擁するオリカ・グリーンエッジがコントロールし、チームスカイやロット・ベリソルがこれに合流。2つのスプリントポイント通過後に逃げを吸収したメイン集団は、スプリント体勢に入った。

アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)が伸びるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)が伸びる photo:Kei Tsujiこの日の新城幸也(ユーロップカー)は「最終日になって脚が回り始めました」と笑いながら、チームメイトのケヴィン・レザ(フランス、ユーロップカー)のポジション取りに力を尽くす。終盤にかけてエースを集団前方に連れて行き、残り2kmでロット・ベリソルのトレインにレザを乗せたところでペースダウン。新城はスプリントに絡まず81位でフィニッシュしている。

悠々とフィニッシュラインを駆け抜けるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)悠々とフィニッシュラインを駆け抜けるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Mark Gunter/TDWsportスプリントに向けて主導権を握ったのは、前座クリテリウムを制したマルセル・キッテル(ドイツ)擁するジャイアント・シマノではなく、真っ赤なロットトレインだった。

ロット・ベリソルのロゴをアピールするアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)ロット・ベリソルのロゴをアピールするアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsuji台本どおりのリードアウトで、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)がグライペルを発射。ほぼ同時にスプリントを開始したマーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)をグイグイと引き離すグライペル。「今日は初めての周回コースだったので難しかった」と語りながらも、圧勝だった。

グライペルは今大会2勝目。ステージ通算成績を、他の追随を許さない16勝目に伸ばした。「ここ数日で自分の脚にスピードを感じていたので、自信をもってスプリントした。チームの経験値が勝利に繋がったと言える。ツアー・ダウンアンダーの主役の座に戻ってくることが出来て嬉しいよ」。ドイツチャンピオンジャージを着るグライペルは、表彰式で新しいチームロゴをアピールした。

グライペルの後ろでガッツポーズしたのは、安全に、ライバルたちの動きを封じ込めたゲランスだった。「僅差(タイム差ゼロ)の総合優勝だった2年前の経験から、今日どう走れば良いのか心得ていた。ウリッシが何か動きを見せるんじゃないかと警戒していたけど、チームがそんな隙を与えなかった。1週間続いた厳しいレースを走り抜いてくれたチームメイトに感謝だ」。

ゲランスは2006年と2012年に続く自身3回目の総合優勝。これまでグライペルとスチュアート・オグレディ(オーストラリア)がそれぞれ2回の総合優勝を果たしていたが、ゲランスは最多勝記録で頭一つ抜け出した。

総合56位で初めてのツアー・ダウンアンダーを走りきった新城は、翌日のフライトでチームメイトとともにフランスに帰国。その後すぐにマヨルカに渡り、2月9日から14日まで開催されるチャレンジマヨルカに出場する。

2014年の展望について聞いた新城のインタビューや、ツアー・ダウンアンダーを走った全チームのバイク特集は後日お届けする予定です。



3度目の総合優勝を果たしたサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)3度目の総合優勝を果たしたサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
総合2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)総合2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsujiチーム総合成績トップに輝いたオリカ・グリーンエッジチーム総合成績トップに輝いたオリカ・グリーンエッジ photo:Kei Tsuji




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ツアー・ダウンアンダー2014第6ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)            1h55'16"
2位 マーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 アンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 クーン・デコルト(オランダ、ジャイアント・シマノ)
5位 ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、ドラパック)
6位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
8位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)
9位 ミカエル・コラー(スロベニア、ティンコフ・サクソ)
10位 マシュー・ヘイマン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
81位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                    +59"

個人総合成績
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)   19h57'35"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)       +01"
3位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)            +05"
4位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)            +10"
5位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)         +27"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキンプロサイクリング)       +30"
7位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)         +34"
8位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)          +37"
9位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
10位 エゴール・シリン(ロシア、カチューシャ)                +47"
56位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                  +17'43"

スプリント賞
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      75pts
2位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)            56pts
3位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)         50pts

山岳賞
1位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)          28pts
2位 アクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼル)           28pts
3位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)            24pts

ヤングライダー賞
1位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)      19h59'43"
2位 カルロス・ベローナ(スペイン、オメガファーマ・クイックステップ)    +1'09"
3位 ケニー・エリッソンド(フランス、FRJ.fr)              +20'56"

チーム総合成績
1位 オリカ・グリーンエッジ                       59h56'16"
2位 BMCレーシングチーム                          +28"
3位 ドラパック                              +3'58"

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia

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