2013/09/07(土) - 06:14
出場選手の中で2番目に若く、今年プロ入りしたばかりのワレン・バーギル(フランス、アルゴス・シマノ)が、ベテラン勢ひしめく逃げグループの中から残り1kmでアタック。「他の選手が休もうとペースを落としたタイミング」で飛び出した21歳が、先頭でフィニッシュラインまでの登りを突っ切った。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第13ステージのスタート地点は、2年前に事故で他界したシャビエル・トンド(スペイン、当時モビスター)の出身地バルス。119km地点で1級山岳アルト・デル・ラトペナットを越える169kmのコースは、中級山岳ステージに分類されている。
フィナーレが明確だったここまでのステージとは異なり、逃げ切りのチャンスが大きい。そのためどのチームも積極的に逃げに選手を送り込む作戦を取る。トンドを偲ぶファンクラブの人々に見送られてすぐ、ハイスピードなアタック合戦が始まった。
先頭で断続的にアタックがかかる中、集団内では総合17位のローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)やパブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)が落車。両者ともにここでレースを去った。
アタックが決まったのは、レースも中盤に差し掛かる70km地点。すでに総合で大きく遅れているバウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が先導し、イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム)やミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)、シャビエル・ザンディオ(スペイン、スカイプロサイクリング)らが合流。脚の揃った18名による逃げが始まった。
“すでに総合順位を下げてしまい、ステージ優勝に目標を切り替えたオールラウンダーたち”がひしめく逃げグループは、オリカ・グリーンエッジが牽引するメイン集団から3分をリードを得て1級山岳アルト・デル・ラトペナットに差し掛かる。
この1級山岳アルト・デル・ラトペナットは、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)のお膝元。アルゼンチン生まれカタルーニャ育ちのフレチャはこの1級山岳を「海のパノラマが素晴らしい登り」と表現する。その言葉通り、地中海を見下ろす標高485mの山を、わずか4.3kmで駆け上がる。
平均勾配は10.6%で、中盤には20%近いような急勾配区間が何カ所も登場する。この激坂でアタックを仕掛けたスカルポーニが、そのまま先頭で頂上をクリアした。
下り区間でモレマやサンタロミータ、ザンディオ、バーギル、アメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)、リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)、エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)、ジェローム・コッペル(フランス、コフィディス)、ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)らがスカルポーニに合流。逃げグループは10名に再編成された。
一方、3分遅れで1級山岳アルト・デル・ラトペナットに突入したメイン集団は、カチューシャのコントロール下に置かれる。一時的にホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らが飛び出すシーンも見られたが、大きなサプライズが起こらないまま総合上位陣が塊となって頂上をクリア。気付けば、逃げグループとのタイム差は2分を切っていた。
しかし、1級山岳でほとんどのスプリンターが脱落したため、メイン集団を積極的に率いるチームは現れない。逃げグループとメイン集団のタイム差は広がり、再び3分台に突入する。FDJ.frやオメガファーマ・クイックステップが慌てて隊列を組んでメイン集団を率いたが時すでに遅し。先頭10名の逃げ切りが確定的となった。
トンドの事故現場に居合わせたインチャウスティは、旧友に勝利を捧げるべく果敢に逃げたが、暗いトンネルで落車して戦線を離脱してしまう。ゴールまで10kmを切ると、9名に絞られた逃げグループの中でステージ優勝争いが始まった。
残り8kmでコッペルとマルティネス、スカルポーニが先行したが、決定的なリードは奪えない。しばらくして先頭は再び9名に。標高差およそ40mの登りスプリントに向けて各選手が互いの動きに目を光らせる。
すると残り1kmでバーギルが隙を突くアタック。後続の牽制を利用して一気にリードを広げたバーギルは、テクニカルなロータリーを先頭で駆け抜け、フィニッシュラインに至る登りに突入する。名立たる選手たちを振り切って、21歳のネオプロライダーが独走でゴールした。
「プロ1年目でブエルタに出場出来た時点で大きな満足感を得ていた。信頼して僕をブエルタに連れて来てくれたチームに、完走で報いたかった」と、初々しい表情でインタビューに応えるバーギル。
「チャンピオン誕生の瞬間かどうかなんて、そんなことは分からない。これまでの多大なる努力と犠牲がこの勝利に結びついた。今年はとにかく模索の1年だ。キャリアのプランはまだないけど、やっぱりツール・ド・フランスでステージ優勝するのが夢かな」。
1991年10月生まれのバーギルは、若手の登竜門とされるツール・ド・ラヴニールで昨年総合優勝&ステージ1勝&ポイント賞&山岳賞。クライマーとして期待を集めながら、アルゴス・シマノに加入し、このブエルタでグランツールデビューを飾った。
この日、マイヨロホ、マイヨプントス、マイヨモンターニャ、マイヨコンビナーダともに変動は無し。ハチ刺されによって数日間ずっと目が腫れていたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は、久々にサングラス無しで表彰台に登場した。マイヨロホ争いは翌日からのピレネー山岳3連戦で再び加熱する。
スペイン北部は週末にかけて雨。第14ステージの中盤以降、強い雨が降るとの予報が出ている。今大会最高地点・超級山岳ポルト・デ・エンバリラ(標高2410m)は冷たい雨に包まれる可能性が高い。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第13ステージ結果
1位 ワレン・バーギル(フランス、アルゴス・シマノ) 4h00'13"
2位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +07"
3位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
4位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム)
5位 シャビエル・ザンディオ(スペイン、スカイプロサイクリング)
6位 アメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)
7位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)
9位 ジェローム・コッペル(フランス、コフィディス) +24"
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +2'34"
敢闘賞
ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 49h29'02"
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +31"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +46"
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'33"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル) +2'44"
7位 イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) +2'52"
8位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr) +3'35"
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ) +3'46"
10位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +3'56"
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 98pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 92pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 89pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 18pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 15pts
3位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) 13pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 7pts
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 12pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 14pts
チーム総合成績
1位 アスタナ 147h40'02"
2位 サクソ・ティンコフ +04"
3位 モビスター +2'29"
text&photo:Kei Tsuji in Castelldefels, Spain
ブエルタ・ア・エスパーニャ第13ステージのスタート地点は、2年前に事故で他界したシャビエル・トンド(スペイン、当時モビスター)の出身地バルス。119km地点で1級山岳アルト・デル・ラトペナットを越える169kmのコースは、中級山岳ステージに分類されている。
フィナーレが明確だったここまでのステージとは異なり、逃げ切りのチャンスが大きい。そのためどのチームも積極的に逃げに選手を送り込む作戦を取る。トンドを偲ぶファンクラブの人々に見送られてすぐ、ハイスピードなアタック合戦が始まった。
先頭で断続的にアタックがかかる中、集団内では総合17位のローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)やパブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)が落車。両者ともにここでレースを去った。
アタックが決まったのは、レースも中盤に差し掛かる70km地点。すでに総合で大きく遅れているバウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が先導し、イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム)やミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)、シャビエル・ザンディオ(スペイン、スカイプロサイクリング)らが合流。脚の揃った18名による逃げが始まった。
“すでに総合順位を下げてしまい、ステージ優勝に目標を切り替えたオールラウンダーたち”がひしめく逃げグループは、オリカ・グリーンエッジが牽引するメイン集団から3分をリードを得て1級山岳アルト・デル・ラトペナットに差し掛かる。
この1級山岳アルト・デル・ラトペナットは、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)のお膝元。アルゼンチン生まれカタルーニャ育ちのフレチャはこの1級山岳を「海のパノラマが素晴らしい登り」と表現する。その言葉通り、地中海を見下ろす標高485mの山を、わずか4.3kmで駆け上がる。
平均勾配は10.6%で、中盤には20%近いような急勾配区間が何カ所も登場する。この激坂でアタックを仕掛けたスカルポーニが、そのまま先頭で頂上をクリアした。
下り区間でモレマやサンタロミータ、ザンディオ、バーギル、アメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)、リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)、エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)、ジェローム・コッペル(フランス、コフィディス)、ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)らがスカルポーニに合流。逃げグループは10名に再編成された。
一方、3分遅れで1級山岳アルト・デル・ラトペナットに突入したメイン集団は、カチューシャのコントロール下に置かれる。一時的にホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らが飛び出すシーンも見られたが、大きなサプライズが起こらないまま総合上位陣が塊となって頂上をクリア。気付けば、逃げグループとのタイム差は2分を切っていた。
しかし、1級山岳でほとんどのスプリンターが脱落したため、メイン集団を積極的に率いるチームは現れない。逃げグループとメイン集団のタイム差は広がり、再び3分台に突入する。FDJ.frやオメガファーマ・クイックステップが慌てて隊列を組んでメイン集団を率いたが時すでに遅し。先頭10名の逃げ切りが確定的となった。
トンドの事故現場に居合わせたインチャウスティは、旧友に勝利を捧げるべく果敢に逃げたが、暗いトンネルで落車して戦線を離脱してしまう。ゴールまで10kmを切ると、9名に絞られた逃げグループの中でステージ優勝争いが始まった。
残り8kmでコッペルとマルティネス、スカルポーニが先行したが、決定的なリードは奪えない。しばらくして先頭は再び9名に。標高差およそ40mの登りスプリントに向けて各選手が互いの動きに目を光らせる。
すると残り1kmでバーギルが隙を突くアタック。後続の牽制を利用して一気にリードを広げたバーギルは、テクニカルなロータリーを先頭で駆け抜け、フィニッシュラインに至る登りに突入する。名立たる選手たちを振り切って、21歳のネオプロライダーが独走でゴールした。
「プロ1年目でブエルタに出場出来た時点で大きな満足感を得ていた。信頼して僕をブエルタに連れて来てくれたチームに、完走で報いたかった」と、初々しい表情でインタビューに応えるバーギル。
「チャンピオン誕生の瞬間かどうかなんて、そんなことは分からない。これまでの多大なる努力と犠牲がこの勝利に結びついた。今年はとにかく模索の1年だ。キャリアのプランはまだないけど、やっぱりツール・ド・フランスでステージ優勝するのが夢かな」。
1991年10月生まれのバーギルは、若手の登竜門とされるツール・ド・ラヴニールで昨年総合優勝&ステージ1勝&ポイント賞&山岳賞。クライマーとして期待を集めながら、アルゴス・シマノに加入し、このブエルタでグランツールデビューを飾った。
この日、マイヨロホ、マイヨプントス、マイヨモンターニャ、マイヨコンビナーダともに変動は無し。ハチ刺されによって数日間ずっと目が腫れていたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は、久々にサングラス無しで表彰台に登場した。マイヨロホ争いは翌日からのピレネー山岳3連戦で再び加熱する。
スペイン北部は週末にかけて雨。第14ステージの中盤以降、強い雨が降るとの予報が出ている。今大会最高地点・超級山岳ポルト・デ・エンバリラ(標高2410m)は冷たい雨に包まれる可能性が高い。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第13ステージ結果
1位 ワレン・バーギル(フランス、アルゴス・シマノ) 4h00'13"
2位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +07"
3位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
4位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム)
5位 シャビエル・ザンディオ(スペイン、スカイプロサイクリング)
6位 アメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)
7位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)
9位 ジェローム・コッペル(フランス、コフィディス) +24"
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +2'34"
敢闘賞
ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 49h29'02"
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +31"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +46"
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'33"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル) +2'44"
7位 イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) +2'52"
8位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr) +3'35"
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ) +3'46"
10位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +3'56"
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 98pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 92pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 89pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 18pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 15pts
3位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) 13pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 7pts
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 12pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 14pts
チーム総合成績
1位 アスタナ 147h40'02"
2位 サクソ・ティンコフ +04"
3位 モビスター +2'29"
text&photo:Kei Tsuji in Castelldefels, Spain
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