残り18kmで先頭に出たのは志野安樹(同志社大)。プロ選手や実業団選手らとの戦いに勝ったのは、優勝が初めての大学生。高校生も先頭で戦う熱い走りを見せた。

クラス1+2 スタート前クラス1+2 スタート前 photo:Hideaki TAKAGI8月11日(日)、長野県大町市美麻で行われた全日本学生ロードレースカップシリーズ第6戦 大町美麻ラウンド。インカレや個人ロードなどが行われてきた丘陵地帯のコース。毎年多くの賞品や地元の応援などのある場所だ。
3周目、先頭の4人3周目、先頭の4人 photo:Hideaki TAKAGI
1周12.6kmの公道は上りが2箇所、繋ぐ区間は緩傾斜の直線。坂の勾配と距離は大きなものではないが周回を重ねるごとに脚に来る。当日は標高900mの美麻でも最高気温30度と高め。下界よりは低いがそれでも暑さ対策は必須。
5周目の先頭7人5周目の先頭7人 photo:Hideaki TAKAGI
昨年の大会はヒルクライムを組み合わせた2日間2ステージでチーム単位参加のレースだったが、今年は学連のRCS第6戦として組み入れられたワンデイレースとして開催された。ただし個人参加もでき、コンチネンタルチームやクラブチーム、高校生などが参加できるようになった。

このためチームNIPPOデ・ローザの福島晋一、昨年中央大学で参加して活躍した郡司昌紀が宇都宮ブリッツェンで、そしてシクロクロスジュニアチャンピオンの横山航太(篠ノ井高)、10日前のインターハイロード2位の小山貴大(前橋育英高)も出場。横山と小山はジュニアの規定上、10周120kmでレースを終える。

クラス1+2
5周目、先頭を引き続ける福島晋一(チームNIPPOデ・ローザ)5周目、先頭を引き続ける福島晋一(チームNIPPOデ・ローザ) photo:Hideaki TAKAGI
学連上位クラスと上級者中心のレースがクラス1+2で、13周163.8kmを走る。ジュニアの横山と小山は、ジュニア規定の120km、10周完了時点でレースを降りる。6km地点のリアルスタート後から活発な動きに。1周目で先頭は5人、追走は6人に。

2周目に追走6人が追いついたタイミングで4人が抜け出す。佐々木勇輔(早稲田大)、徳田優(鹿屋体育大)、中村龍太郎(イナーメ信濃山形)、そして高校2年の小山だ。4周目に郡司、関谷勇人(新潟大)、村上喜昭(慶應義塾大)の3人が追走、5周目に追いつき先頭は7人に。
6周目、先頭の5人6周目、先頭の5人 photo:Hideaki TAKAGI
メイン集団は1分差から2分差で、50km以上の距離を福島が先頭固定でこれを追う。先頭7人対福島一人の構図に近い。周回を重ねるごとに先頭もメインも数を減らしていく。耐久戦の様相に。メイン集団は変わらず福島が先頭でのちに金井誠人(明治大)らも引く。

ジュニア2人の戦い

8周目後半、メイン集団前方にいた横山がアタック、1分前方の先頭集団にいる小山を目指す。ジュニアにとってはあと2周しかない。横山は1周で1分差を詰めて10周目すぐで小山に追いつく。もちろん追いつきざま、下り区間でアタックを掛けるが小山も反応する。
10周目、下りでアタックする横山航太(篠ノ井高)10周目、下りでアタックする横山航太(篠ノ井高) photo:Hideaki TAKAGI
10周目に入った時点で先頭に残っていたのは徳田と小山。徳田はメイン集団に下がり、レースの先頭はジュニア2人だけになる。ここからゴールへ向けて横山と小山が仕掛けあうがお互いを離す事はできない。先頭を引く時間は小山が長い。そしてゴール200m前でスパートした横山が小山を振り切り、ジュニア1位に。

ラスト30kmで3人が抜け出す

先頭でのジュニア2人の戦いのいっぽうで、集団は10周目には11人に。先頭=メイン集団だ。11周目の上りで石橋学(鹿屋体育大)が2度のペースアップ、これに反応できたのは志野と金井のみ。この3人で先行し12周目へ。上り区間で志野が踏み込むと金井が、そして石橋が遅れて志野が単独先頭に。
ジュニア1位の横山航太(篠ノ井高)ジュニア1位の横山航太(篠ノ井高) photo:Hideaki TAKAGI
志野はゴールまでの20kmを衰えないスピードで逃げ続けて優勝。後続は2分半後に福島先頭でゴール。終盤に掛けて強豪選手たちがペースを落としていく中、逆にペースを上げたのが志野。自身初の勝利を、価値あるこの大町美麻ロードで達成した意義は大きい。
11周目、上りで抜け出す3人11周目、上りで抜け出す3人 photo:Hideaki TAKAGI
ニューフェイスの志野安樹

「今まで勝っていなかったので感慨深いです。自分が手を挙げてゴールラインを通過することは想像したことがなかったので。後ろが何分離れていようとも怖かったので何度も後ろを見ました」と優勝した志野。

メイン集団の先頭は福島でも、そのすぐ後方は名だたる選手たちが占めていたが、志野はその一角にいた。それを「アップダウンが多くカーブもあるので、集団の前方で走っていました。今までこういうレースに対応したトレーニングを積んできたので、気持ちを強く持っていました」と語る。
12周目、独走開始の志野安樹(同志社大)12周目、独走開始の志野安樹(同志社大) photo:Hideaki TAKAGI
「上りが得意なので、今日のコースと展開が自分に向いたのかなと思っています」と謙遜するが、同大の長義幸コーチは「今までの最高成績は6月の個人ロード11位。でも逃げに乗ったりと力はあった。ようやく実力に結果が追いついたと言えるかもしれない」と称える。
志野安樹(同志社大)が優勝志野安樹(同志社大)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
「インターハイ第2ラウンド」のジュニア

ジュニア優勝の横山は「福島さん、郡司さんそして大学生と走れて自信がつきました。ジュニア2人の戦いに周りの選手たちが協力してくださったと思っています。1分差ある状態で抜け出したのは賭けでもありました。でも小山には負けられないと思っていましたし。インターハイなど不運なことが続きましたが、今日のレースが自信になりました」と語る。

10日前のインターハイで、優勝候補の横山は落車に巻き込まれ大きくタイムロス。単独で追い上げたものの5分21秒遅れの21位に沈んでいた。この美麻では周囲の大学生達とジュニアのゴール距離が違うため、そのままでは小山に逃げ切られてしまう恐れがあった。それをわずか1周で単独で詰めた実力は極めて高い。
クラス1+2 各賞受賞者クラス1+2 各賞受賞者 photo:Hideaki TAKAGI
2位となった小山は「大学生達と逃げて、山岳賞も取ってジュニアで勝ちたいと思っていたのですが。後ろから横山さんが来たときはやばいなと思ったので必死に踏んだのですが詰められてしまって。自分はラスト100mのコーナーで仕掛けようと思ったのですが、横山さんに先に行かれてしまいました。横山さんは強かったです」と語る。小山は1周目から逃げに入ってじつに120km近くを先頭で走り続けていた。
クラス3 ニュートラルスタートクラス3 ニュートラルスタート photo:Hideaki TAKAGI
「見本となる走りを」福島晋一

「こういうレースで自分は若い選手にプロとして見本となる走りをしようと思いました。集団で脚を貯めてから勝ちに行くこともできたとは思いますが。集団がそのまま逃げを見送ってしまう可能性があったので引きました。ボクの走りを見て若い選手が何かを感じてくれたらと。学生たちには、もっと切磋琢磨して積極的なレースをこれからもしてほしいですね」
クラス3 田中聡一郎(慶應義塾大)が優勝クラス3 田中聡一郎(慶應義塾大)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
クラス3

学連クラス3などで構成される4周50.4kmのレースが朝一番の8時から行われた。アタックはかかるものの大きな逃げには至らず最終周回へ。S/Fラインを過ぎてから澤地陵二(ボンシャンス)がアタック、独走するが約半周で吸収。最後の上り勝負で田中聡一郎(慶應義塾大)が抜け出し優勝。

この大町美麻ロードの特長のひとつは地元の暖かさ。沿道の声援、入賞者や参加者全員への地元産品の賞品、宿舎となる民宿でのもてなしなどが印象に残る。美味しい蕎麦や、もちろんクーラーの無い涼しさも魅力。さらに地元では今後自転車を使った町おこしの仕組みも企画している。これからの大町美麻にも期待したい。


結果

クラス1+2 163.8km(ニュートラル6km含む)
1位 志野安樹(同志社大)4時間25分56秒
2位 福島晋一(チームNIPPOデ・ローザ)+2分37秒
3位 高木三千成(立教大)+2分38秒
4位 金井誠人(明治大)+3分00秒
5位 清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)+3分16秒
6位 石橋学(鹿屋体育大)+6分18秒
7位 倉林巧和(日本体育大)+6分32秒
以上完走者7名

ジュニア 126.0km(ニュートラル6km含む)
1位 横山航太(篠ノ井高)3時間24分02秒
2位 小山貴大(前橋育英高)+03秒

山岳賞 クラス1+2(ジュニア含む)
1位 小山貴大(前橋育英高)12点
2位 石橋学(鹿屋体育大)6点
3位 横山航太(篠ノ井高)5点

クラス3 50.4km(ニュートラル6km含む)
1位 田中聡一郎(慶應義塾大)1時間33分03秒
2位 武田直樹(東京工業大)+07秒
3位 林遼(東京大)+08秒
4位 金子智哉(早稲田大)+09秒
5位 内山雅貴(ボンシャンス)+10秒
6位 村田悠人(新潟大)+12秒

photo&text:高木秀彰

最新ニュース(全ジャンル)