典型的な平坦ステージと思いきや、横風区間でのオメガファーマ・クイックステップとサクソ・ティンコフのペースアップによってレースは荒れた展開に。総合上位陣にくっきりと明暗が分かれる中、14名の精鋭グループに残ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)が勝利した。

ツール・ド・フランス2013第13ステージ・高低図ツール・ド・フランス2013第13ステージ・高低図 image:A.S.O.レース序盤に逃げるヨアン・ジェーヌ(フランス、ユーロップカー)らレース序盤に逃げるヨアン・ジェーヌ(フランス、ユーロップカー)ら photo:A.S.O.第12ステージのゴール地点トゥールから、フランスのど真ん中に位置するサンタマン・モンロンまで、173kmをツール・ド・フランス第13ステージ。ピュアスプリンターにとっては実質的に山岳突入前最後のチャンスであり、次回スプリンターにチャンスが回ってくるのは最終日パリ・シャンゼリゼ。総合狙いの選手たちにとって平穏な一日になると思われたが、平野を吹き抜ける風が荒れた展開を演出した。

後輪トラブルでストップするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)後輪トラブルでストップするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:A.S.O.前日の落車で右の肩甲骨を骨折したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)がこの日唯一のDNS。レースはプリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)のファーストアタックで幕開ける。ジロ総合6位のニエミエツには5名が追いつき、徐々にタイム差を広げ始めた。

メイン集団のペースを上げるベルキンプロサイクリングメイン集団のペースを上げるベルキンプロサイクリング photo:Cor Vos広大な麦畑に囲まれた直線的なコースには、時折強い風が吹き付ける。逃げグループとメイン集団のタイム差が4分弱まで広がったところで、オメガファーマ・クイックステップの集団ペースアップが始まる。ベルキンプロサイクリングもこれに加わると、集団はおよそ3つに分断された。

56km地点で急激にペースを上げたメイン集団は、ゴールまで96kmを残して早くも逃げグループを吸収。前日の優勝者マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)や新城幸也(ユーロップカー)は1分遅れの第2集団。ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)らを含む第3集団は1分30秒遅れという展開に。

すると、ちょうどレース中盤の84km地点で総合2位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が後輪のトラブルでストップ。メイン集団から35秒遅れたバルベルデを引き戻そうと、モビスターがチームタイムトライアル状態で追走した。

総合9位のルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)もバルベルデの集団復帰に力を尽くしたが、ベルキンプロサイクリングがペースを上げるメイン集団とのタイム差は広がるばかり。結局バルベルデは後方の第2集団に吸収された。

アルゴス・シマノとモビスター、エウスカルテルが牽引する第2集団は、ゴールまで70kmを残して1分25秒遅れ。先頭ではオメガファーマ・クイックステップとベルキンプロサイクリングが積極的にメイン集団を牽引し、遅れた総合上位のバルベルデやコスタ、ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)らの復帰を許さない。

懸命に集団を追走するモビスタートレイン懸命に集団を追走するモビスタートレイン photo:A.S.O.

マイヨジョーヌを引き離すサクソ・ティンコフのペースアップマイヨジョーヌを引き離すサクソ・ティンコフのペースアップ photo:A.S.O.横風は吹き止まず、メイン集団と第2集団のタイム差が2分45秒まで広がったところで次なる動きが生まれる。ゴールまで31kmを残して今度はサクソ・ティンコフがペースアップを開始。この突然の奇襲によって集団が割れ、マイヨジョーヌのフルームが後方に取り残された。

平野を吹き抜ける横風によって集団が分裂平野を吹き抜ける横風によって集団が分裂 photo:A.S.O.先行したのは14名(コンタドール、ベンナーティ、クロイツィゲル、ロッシュ、ロジャース、トザット、カヴェンディッシュ、シャヴァネル、テルプストラ、サガン、ボドナール、フグルサング、モレマ、テンダム)で、6名を揃えるサクソ・ティンコフが総力を上げてハイペースを刻む。

懸命にコンタドールを追うスカイプロサイクリング率いる大集団懸命にコンタドールを追うスカイプロサイクリング率いる大集団 photo:A.S.O.すでにメンバー2名がリタイアしているスカイプロサイクリングは、サクソ・ティンコフに対抗出来るほどの追走体制を築けず、タイム差は広がり続ける。カチューシャやBMCレーシングチーム、ロット・ベリソルの協力も虚しく、先頭14名とのタイム差はゴールまで10kmを残して40秒、残り5kmで1分に。

1分以上のリードを得た先頭グループの中ではステージ優勝争いが熱を帯び、フラムルージュを前にニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)がアタックすると、サガンのためにマチェイ・ボドナール(ポーランド、キャノンデールプロサイクリング)が反応して吸収。するとそこからシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)のリードアウトが始まった。

シャヴァネルの後ろにはサガンとカヴェンディッシュの2人。最終ストレートで一気に仕掛けたカヴェンディッシュが、マイヨヴェールを着るサガンを振り切った。

横風によって荒れたレースで、今大会ステージ2勝目、ステージ通算25勝目を飾ったカヴェンディッシュ。「表彰台に登ったのは僕一人だが、本来はオメガファーマ・クイックステップの全員が表彰台に登るべき。インクレディブルな走りだった。難しくナーバスなステージの最後にこうして勝つことが出来て本当に嬉しく、興奮している」と感無量の表情でコメントする。オメガファーマ・クイックステップのミッションを完遂した。

余裕のスプリントでサガンを下した加速するマーク・カヴェンディッシュ(スカイプロサイクリング)余裕のスプリントでサガンを下した加速するマーク・カヴェンディッシュ(スカイプロサイクリング) photo:Makoto.AYANO

先頭グループでゴールした総合上位陣は、コンタドール、クロイツィゲル、モレマ、テンダムの4名。フルームを含む大集団が1分09秒遅れでゴールしたため、上記の4名は総合ジャンプアップを果たしている。

コンタドール集団にタイム差を付けられてゴールするクリス・フルーム(スカイプロサイクリング)がゴールコンタドール集団にタイム差を付けられてゴールするクリス・フルーム(スカイプロサイクリング)がゴール photo:Makoto.AYANOサクソ・ティンコフの奇襲によってタイムを失ったフルームは「コンタドールの動きが始まったとき、走っている位置が後ろ過ぎて反応できなかった。まだまだレースは100%オープン(誰にもチャンスがある)だということのリマインダーになった。ここまでチームで築き上げてきたリードのうち、1分を失ったという事実を飲み込むのは辛いよ」と語る。第13ステージを終えて、フルームと総合2位モレマの総合タイム差は2分28秒、総合3位コンタドールとのタイム差は2分45秒まで縮まっている。

メカトラで集団から遅れた総合2位のバルベルデは、この日だけで実に9分54秒を失った。ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)は総合8位に残ったが、バルベルデは総合16位までダウン。モビスターはチーム総合成績トップの座も失ってしまった。バルベルデは以下のようにコメントしている。「今日はただ単にバッドラックな一日だった。チームとして集団前方で、注意深く、自信をもって走っていたところで、後方から誰かが衝突して後輪が壊れた。重要な局面で発生したどうしようもないトラブル。チーム一丸となって追走したが、ベルキンを始めとするチームが集団復帰を許さなかった。でもこれがサイクリングだ。マイヨジョーヌは届かない存在になったけど、プロトンにダメージを与える走りをしてみせるよ」。

ステージ優勝、敢闘賞を獲得したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)ステージ優勝、敢闘賞を獲得したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:A.S.O.コンタドールに対して1分ロスしたクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)コンタドールに対して1分ロスしたクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Cor Vos


選手コメントはレース公式サイトならびにモビスターのチームリリースより。

ツール・ド・フランス2013第13ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)      3h40'08"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)
3位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
4位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
5位 ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
8位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
9位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
10位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)

16位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)    +1'09"
22位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)
25位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)
26位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)
70位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)                  +9'54"
83位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)
106位 新城幸也(日本、ユーロップカー)

敢闘賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)

個人総合成績 マイヨジョーヌ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)               51h00'30"
2位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)                 +2'28"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)              +2'45"
4位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)                +2'48"
5位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)             +3'01"
6位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)                    +4'39"
7位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)    +4'44"
8位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)                   +5'18"
9位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)              +5'39"
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)                   +5'48"

ポイント賞 マイヨヴェール
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)           357pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)      273Pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)                  217pts

山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
1位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)                    50pts
2位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング                 33pts
3位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)              28pts

新人賞 マイヨブラン
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)  51h05'14"  
2位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)                    +34"
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)             +8'27"

チーム総合成績
1位 サクソ・ティンコフ                               152h22'21"
2位 ベルキンプロサイクリング                              +2'32"
3位 アージェードゥーゼル                                +10'37"

text:Kei Tsuji
photo:A.S.O., Cor Vos, Makoto Ayano
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