数日だけ天気が味方していたのに、また雨が降り始めた。今度の雨雲はイタリア全土を覆っているので、もう「ジロが雨雲を連れて来た」とは言わせない。スタート地点のロンガローネは気温10度。山岳地帯はもっと気温が下がっている。ガヴィア峠やステルヴィオ峠には積雪が数メートルあるらしい。

ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)のタイヤの空気圧を入念にチェックブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)のタイヤの空気圧を入念にチェック photo:Kei Tsuji
マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の空気圧をチェックするキャメロン・ウルフ(オーストラリア、キャノンデールプロサイクリング)マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の空気圧をチェックするキャメロン・ウルフ(オーストラリア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Kei Tsujiナセル・ブアニ(フランス、FDJ)は準備OKナセル・ブアニ(フランス、FDJ)は準備OK photo:Kei Tsuji
雨のロンガローネをスタートするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)ら雨のロンガローネをスタートするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)ら photo:Kei Tsuji
気温は10度。山間の村ロンガローネは冷たい雨に包まれていた。

出走サインを済ませた選手たちは、スタート地点すぐ横にある倉庫で雨宿り。嫌気がさしてボ〜っとしている選手や、吹っ切れて笑いが止まらない選手、他の選手のタイヤの空気圧が気になって仕方がない選手など、スタート時間の待ち方は様々。次々に集まってくる選手たちにジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)が笑いながら「いいか〜みんな〜、今日はゆっくり行くぞ〜!」と冗談を交えて問いただす。

気象レーダーによると、イタリア全土が雨雲に覆われているため、どこに行っても雨が降っている。選手たちは黒いレインジャケットをばっちり着込んでスタートして行く。ナポリの熱い太陽を懐かしく思いながら、191名の選手たちはトレヴィーゾに向かった。

雨が降るヴェネト州を南下する雨が降るヴェネト州を南下する photo:Riccardo Scanferla
SELEVのサングラス(プロトタイプ)をかけるファビオ・フェリーネ(イタリア、アンドローニジョカトリ)SELEVのサングラス(プロトタイプ)をかけるファビオ・フェリーネ(イタリア、アンドローニジョカトリ) photo:Riccardo Scanferla
ワインやスプマンテの一大産地であるヴェネト州の平野部を第12ステージは通過する。ジロの表彰台で使われる(フォトグラファーを濡らす)スプマンテ「アストリア 9.5コールドワイン・ピンク」の産地もすぐ近くだ。

冷たい雨が降っているにも関わらず、ロードバイクやMTBで観戦に来ているサイクリストの数は多い。ヴェネトはイタリアの自転車競技と切っては切れない場所。地元に根付いた名門アマチュアチームがいくつもある。

そんなヴェネト州に拠点を置くキャノンデールプロサイクリングや、カヴェンディッシュの100勝目を狙うオメガファーマ・クイックステップに並んで、高いモチベーションでレースに挑んでいたのがヴァカンソレイユ・DCM。昨年トーマス・デヘント(ベルギー)を総合3位に導いたチームだが、前日にヴァカンソレイユ社とDCM社が相次いで今シーズン限りでのスポンサー撤退を発表したのだ。

同じオランダのブランコプロサイクリングとともに、スポンサー獲得に向けてのアピールが必須となったヴァカンソレイユ・DCM。スプリンターを欠くため、アピールするにはアタックするしかない。逃げに2人の選手を送り込むことに成功したが、イタリアの地で大きなインパクトを残すことは出来なかった。

キャリア100勝目に向かってスプリントするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)キャリア100勝目に向かってスプリントするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
チームメイトたちと喜ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)チームメイトたちと喜ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsujiメイン集団から脱落したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)メイン集団から脱落したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsuji

ゴールが近づくにつれて雨は小降りになったものの、路面はしっかり濡れている。ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)がメイン集団から遅れたことがこの日最大のサプライズ。難易度1の平坦ステージで、マリアローザの背中がウィギンズの視界から消えた。

チームのブレイルスフォードGMによると、ここ数日間ウィギンズは風邪と肺の感染症に苦しんでいた。抗生物質を摂取するなどして対処していたが、症状は好転せず。一晩様子を見てレースを続行するかどうか決めると言う。回復傾向であれば、第18ステージの個人タイムトライアルにフォーカスし、山岳ステージではリゴベルト・ウラン(コロンビア)のアシストに回る(※)。

慣れた手つきでスプマンテを開けるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)慣れた手つきでスプマンテを開けるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
3分以上遅れてゴールに向かうスカイプロサイクリングの隊列3分以上遅れてゴールに向かうスカイプロサイクリングの隊列 photo:Kei Tsujiマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)がポイント賞トップに返り咲くマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)がポイント賞トップに返り咲く photo:Kei Tsuji

マリアローザはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がキープマリアローザはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がキープ photo:Kei Tsuji
大雨のステージの全長が短めの134kmだったのはせめてもの救い。コースが発表された際「どうしてこんな難易度の低いステージがこれほど短いのか?」と首を傾げてしまったが、結果的に選手たちが濡れる時間が3時間で済んだ。

平野部で冷たい雨が降っているなら、当然標高のある山岳には雪が降っている。今後6日間にわたって雨雲が北イタリア上空に居座る予報が出ており、気温は例年よりも低め。雨が雪に変わる境界線は標高1400m。第14ステージのバルドネッキアや、第15ステージのガリビエ峠、第19ステージのガヴィア峠とステルヴィオ峠が積雪によってキャンセルされることが現実味を帯びて来た。

特にチーマコッピ(最標高地点)である標高2758mのステルヴィオ峠は積雪が数メートルあり、除雪が間に合わないほど雪に覆われているとの情報もある。レース主催者は天気予報と現地情報を見ながらコースを練り直す。帯同するチームスタッフや報道陣は、サマータイヤを履いた車両で雪道を走る姿を想像する。悪天候に苦しめられているのはウィギンズだけではない。

※第13ステージのスタート前、ウィギンズのリタイアが発表された。

text&photo:Kei Tsuji in Treviso, Italy

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