2009/05/22(金) - 00:30
ジロ・デ・イタリア開幕に向けて盛り上がる5月上旬のイタリア・ベネト州。ドロミテ山岳に近い渓谷を望む古城の豪華ホテルで、キャノンデールのフラッグシップモデル・新型スーパーシックスHi-Modが華々しくアナウンスされた。
プレゼンテーションは中世の古城の貴賓室で荘厳に行われた
中世の城を舞台に世界の著名バイクジャーナリストに公開された新型スーパーシックスHi-Mod・リクイガスチームモデル
旧型のスーパーシックス誕生から2年。ジロ・デ・イタリア開幕直前の北イタリアで、新型スーパーシックスHi-Modが発表された。
何故キャノンデールはツール・ド・フランスではなくジロ・デ・イタリアを選んだのか? それは同大会との深い繋がりがあるからだ。
1971年にアメリカ・コネティカット州ウォルトンで創設されたキャノンデールは、1990年代からサエコチームにフレーム供給を開始。1997年には当時まだヨーロッパではマイナーブランドだったキャノンデールがマリアローザを獲得。以降、12年間で4大会を制す快挙を遂げている。
プレゼンテーションの舞台となった「カステル・ブランド」は、チゾン・ディ・ヴァルマリーノの渓谷から標高差100mほどの山肌に佇む美城。プレゼンテーションにはツール・ド・ロマンディを制したばかりの若手有力株ロマン・クロイツィゲル(チェコ)も出席し、この製品にかけるキャノンデールの強い意気込みが感じられた。
ジロ・デ・イタリアとキャノンデールの繋がりを紐解く。後方に飾られたマリアローザがその歴史そのものだ
2月のツアー・オブ・カリフォルニアからリクイガスチームにプロトタイプが投入されていたというニュースーパーシックス。旧型と同じなのは名前だけで、プレゼンテーションが進むにつれて、その組成は全くの別物であることが明らかとなる。プレゼンテーションでマイクを握ったのは物静かなクリス・ペック。キャノンデールのトップエンジニアであり、R&D責任者だ。
チェーンステーの根元がBBシェルを包み込むように成型されている。ボリュームがあるが、流れるようなラインが美しい
大径BB30を搭載。キャノンデールご自慢のホログラムクランクも、他社製クランクも装着が可能だ
最も大きな変更点は、フレームそのものの構造にある。旧型は一体成型されたワンピースのBBとチェーンステーがフレームの心臓部を担い、ラグでトップチューブとダウンチューブを接合していた。今回発表されたニュースーパーシックスは技術的に大きく方向転換。フレームの前三角がハイモジュラスカーボンのモノコック構造で製造される。
左右一体成型されたシートステーとチェーンステーをそれぞれ前三角に接合し、強度を上げるためにユニディレクショナルカーボンで接合箇所をオーバーラッピング。カーボン積層方法について詳しいアナウンスは無かったが、チェーンステーの基部はBBシェルを包み込むように成型されており、BB周辺のボリューム感は見た目にも剛性を感じる。
接合部分が広いことで応力の分散が図られ、ラグを使った接合法と比べ、「ビートボックス」と名付けられたこのBB周辺は重量剛性比で剛性が17%アップしているという。
専用のシールドベアリングを圧入する大径のBB30(ビービーサーティー)も継続的に搭載。ホログラムクランク以外の他社クランクとの互換性も保たれている。
トップチューブはシートからヘッドに向かって、横方向に扁平しながらテーパーがかけられている。同じくダウンチューブもテーパーがかけられ、ヘッドチューブに向かって断面が三角へと変化。トップチューブとダウンチューブ、ヘッドチューブの接合部は非常にボリューム感が与えられており、横から見れば旧型との違いは一目瞭然だ。
シートステーはアルミ時代からキャノンデールお家芸であるアワーグラス型を継承しており、優れた振動吸収性を実現。ラウンド形状のスリム(直径13mm)な旧型から、横方向に扁平させたボリューム感あるデザインに変更されている。旧型もハードなプロレースの使用に耐える剛性を誇っていたが、新型は見た目にも力強さを増した。
力強いヘッドチューブは上部がサイズダウンされたテーパー形状を継承し、余分な材料を排除することでステアリング性能と軽量性を両立させている。フォーク、ヘッドチューブ、ボリューム感あるトップチューブ&ダウンチューブの接合部。この三点がステアリングの切れ味の良さに大きく貢献している。
シートチューブをラウンド形状にすることでフロントディレイラーの調整幅が広がり、ノーマルからコンパクトドライブまで幅広くカバー。2001年にスタートしたホログラムクランクは継続して完成車に搭載される。
ヘッドベアリング用カップはアルミを使用せず、カーボン製カップをヘッドチューブに内蔵。ダウンチューブが下側ヘッドセットのベアリング受け部を直接サポートするディープ・レディアス・ヘッドチューブ・デザインを採用
旧型と比べて大幅な軽量化を達成しており、設計の基礎となった56cmサイズで、塗装・ディレーラーハンガーを含めて900gジャスト。もちろんそれ以下のサイズでは900gを切ってくる。軽量性の面ではニュースーパーシックスの上をいく他社のモデルもあるが、プレゼンテーションで示された比較グラフによると、ニュースーパーシックスは、重量剛性比で他社のフラッグシップバイクを凌駕している。
ラグは一切使われておらず、ラインナップは8サイズ(48、50、52、54、56、58、60、63)と幅広い。クリス曰く、サイズ毎に最適化されたカーボン積層方法で製造されており、全てのフレームが最大限のポテンシャルを発揮出来るよう味付けされている。トラブル発生時の対処や、輸送時の取り回しを考慮し、今回はインテグレートシートポストの採用を見送った。
公開される新テクノロジーの数々にジャーナリストからはため息と感嘆の声が漏れた
100周年を迎えるジロ・デ・イタリアでは、イヴァン・バッソ(イタリア)を筆頭に、リクイガスのライダーたちがマリアローザ目指してニュースーパーシックスを駆る。テストライドのインプレッションは次のページから。選手たちのコメントはリクイガス密着レポートにて随時更新していく。
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ライドクオリティーを損なうことなく、軽量化と高剛性化を達成
ジロと切っても切れないキャノンデールの歴史
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何故キャノンデールはツール・ド・フランスではなくジロ・デ・イタリアを選んだのか? それは同大会との深い繋がりがあるからだ。
1971年にアメリカ・コネティカット州ウォルトンで創設されたキャノンデールは、1990年代からサエコチームにフレーム供給を開始。1997年には当時まだヨーロッパではマイナーブランドだったキャノンデールがマリアローザを獲得。以降、12年間で4大会を制す快挙を遂げている。
プレゼンテーションの舞台となった「カステル・ブランド」は、チゾン・ディ・ヴァルマリーノの渓谷から標高差100mほどの山肌に佇む美城。プレゼンテーションにはツール・ド・ロマンディを制したばかりの若手有力株ロマン・クロイツィゲル(チェコ)も出席し、この製品にかけるキャノンデールの強い意気込みが感じられた。
新設計の高剛性モノコック・フロントトライアングル
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2月のツアー・オブ・カリフォルニアからリクイガスチームにプロトタイプが投入されていたというニュースーパーシックス。旧型と同じなのは名前だけで、プレゼンテーションが進むにつれて、その組成は全くの別物であることが明らかとなる。プレゼンテーションでマイクを握ったのは物静かなクリス・ペック。キャノンデールのトップエンジニアであり、R&D責任者だ。
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左右一体成型されたシートステーとチェーンステーをそれぞれ前三角に接合し、強度を上げるためにユニディレクショナルカーボンで接合箇所をオーバーラッピング。カーボン積層方法について詳しいアナウンスは無かったが、チェーンステーの基部はBBシェルを包み込むように成型されており、BB周辺のボリューム感は見た目にも剛性を感じる。
接合部分が広いことで応力の分散が図られ、ラグを使った接合法と比べ、「ビートボックス」と名付けられたこのBB周辺は重量剛性比で剛性が17%アップしているという。
専用のシールドベアリングを圧入する大径のBB30(ビービーサーティー)も継続的に搭載。ホログラムクランク以外の他社クランクとの互換性も保たれている。
高剛性と快適性が同居するテクノロジー
トップチューブはシートからヘッドに向かって、横方向に扁平しながらテーパーがかけられている。同じくダウンチューブもテーパーがかけられ、ヘッドチューブに向かって断面が三角へと変化。トップチューブとダウンチューブ、ヘッドチューブの接合部は非常にボリューム感が与えられており、横から見れば旧型との違いは一目瞭然だ。
シートステーはアルミ時代からキャノンデールお家芸であるアワーグラス型を継承しており、優れた振動吸収性を実現。ラウンド形状のスリム(直径13mm)な旧型から、横方向に扁平させたボリューム感あるデザインに変更されている。旧型もハードなプロレースの使用に耐える剛性を誇っていたが、新型は見た目にも力強さを増した。
切れ味の良いステアリングを実現するヘッド剛性
フォークは外観に変更は無いが、カーボン積層方法の変更により剛性が向上している。特にステアリング性能に大きな影響を及ぼす横剛性は、他ブランドを上回っていることが強調された。力強いヘッドチューブは上部がサイズダウンされたテーパー形状を継承し、余分な材料を排除することでステアリング性能と軽量性を両立させている。フォーク、ヘッドチューブ、ボリューム感あるトップチューブ&ダウンチューブの接合部。この三点がステアリングの切れ味の良さに大きく貢献している。
シートチューブをラウンド形状にすることでフロントディレイラーの調整幅が広がり、ノーマルからコンパクトドライブまで幅広くカバー。2001年にスタートしたホログラムクランクは継続して完成車に搭載される。
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旧モデルと比べて大幅に軽量化
フレーム作りにおいて高剛性化と相反する要素、それは軽量化だ。同じマテリアルを使用し、同じ工法で剛性を上げれば、当然重量はかさむばかり。バイクにおける永遠のテーマともいえるこの二点を、ニュースーパーシックスは見事に両立させてしまった。旧型と比べて大幅な軽量化を達成しており、設計の基礎となった56cmサイズで、塗装・ディレーラーハンガーを含めて900gジャスト。もちろんそれ以下のサイズでは900gを切ってくる。軽量性の面ではニュースーパーシックスの上をいく他社のモデルもあるが、プレゼンテーションで示された比較グラフによると、ニュースーパーシックスは、重量剛性比で他社のフラッグシップバイクを凌駕している。
ラグは一切使われておらず、ラインナップは8サイズ(48、50、52、54、56、58、60、63)と幅広い。クリス曰く、サイズ毎に最適化されたカーボン積層方法で製造されており、全てのフレームが最大限のポテンシャルを発揮出来るよう味付けされている。トラブル発生時の対処や、輸送時の取り回しを考慮し、今回はインテグレートシートポストの採用を見送った。
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CANNONDALE SUPERSIX Hi-Mod
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100周年を迎えるジロ・デ・イタリアでは、イヴァン・バッソ(イタリア)を筆頭に、リクイガスのライダーたちがマリアローザ目指してニュースーパーシックスを駆る。テストライドのインプレッションは次のページから。選手たちのコメントはリクイガス密着レポートにて随時更新していく。
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