2011/12/30(金) - 14:20
2009年6月のBa:kstage2009から丸2年。フィジークの2012年に向けたプレゼンテーションBa:kstage 2011が、イタリアのセラ・ロイヤルの本社に近い山あいの街フォリーナで開催された。前回同様、事前にどんなモノが出てくるのか知らされないまま世界中から集まった25名のサイクリングメディアだが、ドイツを中心に悪天候に見舞われフライトのキャンセルが続出。全員が揃ったのは当日の朝だった。
1時限目:斬新なデザインのサドル「クーヴァ」登場
天候に一抹の不安を抱えながらプレゼンテーションがスタート。
最初に登場したのは2009年に発表されたスパイン・コンセプトをさらに一歩進めたハイエンド・サドル「クーヴァ」。ドイツ語で「カーブ」を意味するこのニューモデルは、従来のサドルのように<表皮+クッション材+ベース>という構造を持たない。
Re:Flexと名付けられた、骨盤の動きへの追従性を重視したコンセプトのもと、樹脂素材の"フレーム"と熱成形された繊維方向の異なる3枚の"シェル"に、マイクロテックスのフォームが高温圧着される。このシェルにはそれぞれ切り込みや穴が開けられ、サドル本来のクッション機能を果たすとともに、内股の動きを妨げない"Wing Flex"機能も盛り込まれている。
またレールも一般的なU字状ではなく、アリオネK1に採用されていた∞(無限)をモチーフにしたメビウスレール(K1のそれとは異なり2次元鍛造アルミ製で、下から見ても∞を描く)というもの。そして本体とレールを繋ぐのが新たに開発された"チューナー"と呼ばれるノーズピース。クーヴァのパッケージには、硬さが異なる2種類のピースが同梱され、走る距離や走り方によってサドルのクッション性を調整することが可能になっている。
開発者のピエール-アンリ・メダス氏によれば「このRe:Flexコンセプトと、サドルの中間に支点を持たないメビウスレールで、左右のペダリングがよりスムーズになる」という。
今回発表されたのは3モデル。ベースデザインはアリオネ、アンタレス、アリアンテと共通だが、スパイン・コンセプトを進化形ということで、ネーミングもクーヴァ・スネイク、クーヴァ・カメレオン、クーヴァ・ブルとなっている。
気になる発売時期だが、ヨーロッパで9月、北米では10月の予定。その後順次デリバリーされるという。
2時限目:フィジーク・シューズの追加モデル
次に紹介されたのは、昨年のユーロバイクで発表されたフィジーク・シューズシリーズ。
既に2万足以上を売り上げたということで、他にはないネオ・クラシカルなスタイルと機能性を併せ持ったコンセプトが評価されているのだろう。
そして追加モデルとして、昨年から開発が進められていたアジア系人種(フィジークでは「日本人」そして「大きい」を意味する「Gフィット」と命名)が各モデルに追加されること、トップグレードのR1に標準装備されているシダスと共同開発のインソールが単体で発売されること、すでに他社のシューズ履くトップレーサーが装着していることなどがアナウンスされ、無事終了のはずだった。
ところが締めのスピーチをしていたシューズデザイナーのスティーブ・デラクルズ氏が「まだ未完成なんだが、どうしても見せたくて持ってきたモノがある」と後ろから取り出したのがシルバーのシューズ。
「95%まで出来上がっているからユーロバイクには間に合うと思う」というこのモデルは、R3をよりレーシングユースに振った軽量版。その名もR3-SLということで、席を立とうとしていたメディアは、大慌てでカメラを取り出しての撮影大会となった。
日本人に適した足型を採用するG-Fitシューズ
フィジークがシューズを開発するにあたり、当初から念頭にあったのがアジア系人種にもフィットするシューズだという。
そのサンプリングのためにフィジークのシューズデザイナーであるスティーブ・デラクルズ氏と、マーケティングマネジャーのアルベルト・フォンテ氏は、昨年のサイクルモード大阪そして関東地方のショップを回って、日本人の足型を150人ほどサンプリング。
その結果オリジナル(ユーロフィット)と比べて、以下のようにカスタマイズした足型が完成した。
1・前足部の幅を1~1.5サイズ分広くして全体にボリュームを持たせ、甲の圧迫を解消。
2・踵骨の細い日本人用に2mmほどヒールフォームを厚く。くるぶし付近のカットも改良。
3・ソールデザインはそのままに、左右の調整幅を取れるようにクリート穴の位置を変更。
「なぜ日本でサンプリングしたかというと、アジアの中でも日本はスポーツサイクリング大国だからです。日本人が満足するシューズなら、アジア全体で受け入れられるでしょう」(デラクルズ氏)。
9月のユーロバイクで発表予定のR3-SLについても、G-Fitの展開が予定されているという。
雨に祟られたテストライドとクーヴァの方向性
思わぬサプライズに興奮しながら昼食を終え、シューフィッティングを済ませて表に出ると、BMCから提供されたテストバイク(チームマシンSLR01とレースマシンRM01)にクーヴァが装着されていた。
ところが午前中、薄曇りだった空が暗くなった途端に大粒の雨が降りだし、しばしペンディング。延期も検討されたものの、明日の朝には帰国しなければならないメディアのためにコースを短縮して実施された。
翌日には太陽が顔を出し、1時間ほどのテストライドが行なわれた。同じ条件で通常のサドルと比較できなかったのは残念だが、見るからに薄いクーヴァなのに、腰の落ち着き具合というか座り心地は極めて普通で、程よくクッションが効いている感じなのだ。
走り出してからもウイング・フレックスがもたらしていると思しき、ペダリングのスムーズさを実感。ところどころ濡れている路面を避けつつ、スローペースでの試乗でしかなかったが、フィジークの目指す「サドルは第2のショーツになる」という一体感が、おぼろげながら理解出来た。
クーヴァシリーズの重量は、およそ220g。特に軽いわけではないものの「今はバイクが極限まで軽くできていますから、我々は人とバイクを繋ぐパーツとして何が必要かを考えています」というブランドディレクターのニコラ・ロジン氏の言葉に代表されるように「快適性を犠牲にして人間のパフォーマンスは引き出せない」というフィジークのコンセプトは、このクーヴァにも確実に受け継がれている。
テクノジェルを採用した枕で疲労回復
今回のプレゼンテーションには、バイクを提供したBMCのほか、ヘルメットとアイウエアのカレラなど協賛メーカーも参加したが、特に評判が良かったのがセラ・ロイヤルのグループ企業であるテクノジェル社が用意したピロー(枕)だ。
アリオネK1やに振動吸収材として使われているこの製品は、バイエル社との共同開発により医療機器の分野でも評価が高く、熱伝導率に優れているとあって、枕に採用されるや大人気となったのだという。
フィジークがサポートするいくつかのチームにも供給され、マッサージやレース後の休憩だけでなくホテル暮らしの続く選手達の体調維持に役立っているという。なかでもイヴァン・バッソ(リクイガス)は、移動用の小型ピローまでテクノジェルを使うほど気に入っていて「聖書とこれは遠征に欠かせない」と言うほどだという。
日本ではディーブレス( www.d-breath.co.jp/ )が輸入元となっており、かなりのヒット商品だという。
1時限目:斬新なデザインのサドル「クーヴァ」登場
天候に一抹の不安を抱えながらプレゼンテーションがスタート。
最初に登場したのは2009年に発表されたスパイン・コンセプトをさらに一歩進めたハイエンド・サドル「クーヴァ」。ドイツ語で「カーブ」を意味するこのニューモデルは、従来のサドルのように<表皮+クッション材+ベース>という構造を持たない。
Re:Flexと名付けられた、骨盤の動きへの追従性を重視したコンセプトのもと、樹脂素材の"フレーム"と熱成形された繊維方向の異なる3枚の"シェル"に、マイクロテックスのフォームが高温圧着される。このシェルにはそれぞれ切り込みや穴が開けられ、サドル本来のクッション機能を果たすとともに、内股の動きを妨げない"Wing Flex"機能も盛り込まれている。
またレールも一般的なU字状ではなく、アリオネK1に採用されていた∞(無限)をモチーフにしたメビウスレール(K1のそれとは異なり2次元鍛造アルミ製で、下から見ても∞を描く)というもの。そして本体とレールを繋ぐのが新たに開発された"チューナー"と呼ばれるノーズピース。クーヴァのパッケージには、硬さが異なる2種類のピースが同梱され、走る距離や走り方によってサドルのクッション性を調整することが可能になっている。
開発者のピエール-アンリ・メダス氏によれば「このRe:Flexコンセプトと、サドルの中間に支点を持たないメビウスレールで、左右のペダリングがよりスムーズになる」という。
今回発表されたのは3モデル。ベースデザインはアリオネ、アンタレス、アリアンテと共通だが、スパイン・コンセプトを進化形ということで、ネーミングもクーヴァ・スネイク、クーヴァ・カメレオン、クーヴァ・ブルとなっている。
気になる発売時期だが、ヨーロッパで9月、北米では10月の予定。その後順次デリバリーされるという。
2時限目:フィジーク・シューズの追加モデル
次に紹介されたのは、昨年のユーロバイクで発表されたフィジーク・シューズシリーズ。
既に2万足以上を売り上げたということで、他にはないネオ・クラシカルなスタイルと機能性を併せ持ったコンセプトが評価されているのだろう。
そして追加モデルとして、昨年から開発が進められていたアジア系人種(フィジークでは「日本人」そして「大きい」を意味する「Gフィット」と命名)が各モデルに追加されること、トップグレードのR1に標準装備されているシダスと共同開発のインソールが単体で発売されること、すでに他社のシューズ履くトップレーサーが装着していることなどがアナウンスされ、無事終了のはずだった。
ところが締めのスピーチをしていたシューズデザイナーのスティーブ・デラクルズ氏が「まだ未完成なんだが、どうしても見せたくて持ってきたモノがある」と後ろから取り出したのがシルバーのシューズ。
「95%まで出来上がっているからユーロバイクには間に合うと思う」というこのモデルは、R3をよりレーシングユースに振った軽量版。その名もR3-SLということで、席を立とうとしていたメディアは、大慌てでカメラを取り出しての撮影大会となった。
日本人に適した足型を採用するG-Fitシューズ
フィジークがシューズを開発するにあたり、当初から念頭にあったのがアジア系人種にもフィットするシューズだという。
そのサンプリングのためにフィジークのシューズデザイナーであるスティーブ・デラクルズ氏と、マーケティングマネジャーのアルベルト・フォンテ氏は、昨年のサイクルモード大阪そして関東地方のショップを回って、日本人の足型を150人ほどサンプリング。
その結果オリジナル(ユーロフィット)と比べて、以下のようにカスタマイズした足型が完成した。
1・前足部の幅を1~1.5サイズ分広くして全体にボリュームを持たせ、甲の圧迫を解消。
2・踵骨の細い日本人用に2mmほどヒールフォームを厚く。くるぶし付近のカットも改良。
3・ソールデザインはそのままに、左右の調整幅を取れるようにクリート穴の位置を変更。
「なぜ日本でサンプリングしたかというと、アジアの中でも日本はスポーツサイクリング大国だからです。日本人が満足するシューズなら、アジア全体で受け入れられるでしょう」(デラクルズ氏)。
9月のユーロバイクで発表予定のR3-SLについても、G-Fitの展開が予定されているという。
雨に祟られたテストライドとクーヴァの方向性
思わぬサプライズに興奮しながら昼食を終え、シューフィッティングを済ませて表に出ると、BMCから提供されたテストバイク(チームマシンSLR01とレースマシンRM01)にクーヴァが装着されていた。
ところが午前中、薄曇りだった空が暗くなった途端に大粒の雨が降りだし、しばしペンディング。延期も検討されたものの、明日の朝には帰国しなければならないメディアのためにコースを短縮して実施された。
翌日には太陽が顔を出し、1時間ほどのテストライドが行なわれた。同じ条件で通常のサドルと比較できなかったのは残念だが、見るからに薄いクーヴァなのに、腰の落ち着き具合というか座り心地は極めて普通で、程よくクッションが効いている感じなのだ。
走り出してからもウイング・フレックスがもたらしていると思しき、ペダリングのスムーズさを実感。ところどころ濡れている路面を避けつつ、スローペースでの試乗でしかなかったが、フィジークの目指す「サドルは第2のショーツになる」という一体感が、おぼろげながら理解出来た。
クーヴァシリーズの重量は、およそ220g。特に軽いわけではないものの「今はバイクが極限まで軽くできていますから、我々は人とバイクを繋ぐパーツとして何が必要かを考えています」というブランドディレクターのニコラ・ロジン氏の言葉に代表されるように「快適性を犠牲にして人間のパフォーマンスは引き出せない」というフィジークのコンセプトは、このクーヴァにも確実に受け継がれている。
テクノジェルを採用した枕で疲労回復
今回のプレゼンテーションには、バイクを提供したBMCのほか、ヘルメットとアイウエアのカレラなど協賛メーカーも参加したが、特に評判が良かったのがセラ・ロイヤルのグループ企業であるテクノジェル社が用意したピロー(枕)だ。
アリオネK1やに振動吸収材として使われているこの製品は、バイエル社との共同開発により医療機器の分野でも評価が高く、熱伝導率に優れているとあって、枕に採用されるや大人気となったのだという。
フィジークがサポートするいくつかのチームにも供給され、マッサージやレース後の休憩だけでなくホテル暮らしの続く選手達の体調維持に役立っているという。なかでもイヴァン・バッソ(リクイガス)は、移動用の小型ピローまでテクノジェルを使うほど気に入っていて「聖書とこれは遠征に欠かせない」と言うほどだという。
日本ではディーブレス( www.d-breath.co.jp/ )が輸入元となっており、かなりのヒット商品だという。