2023/10/03(火) - 10:40
イタリアンブランドのウィリエールが発表する2024年モデルにフィーチャーする特集、第2弾はオールロードバイクのミドルグレード、RAVE SLだ。グラベルから舗装路までをフィールドとした守備範囲の広いバイクだ。
今回発表されたRAVE SL は、2021年秋に発表されたRAVE SLRの弟分。先に発表されたFilante SLと同様に、SLRグレードと同様の金型を使い、カーボン素材を調整することで手頃な価格を実現した。FilanteとRaveはもともと兄弟的な車種であり、同時期に共通のフォーマットで開発・製作されたバイクだ。
RAVE SLRは最大42mmのタイヤを装着できるクリアランスが備えられたグラベルレーシングバイク。同時にハイエンド級の軽量性と反応性を備えたオールロードとしても活躍するモデルでもあり、ロードからグラベルまでをターゲットにした一台。ZERO SLRとFILANTE SLRに採用されたのと同じHUS-MODカーボンを採用。ショック吸収性と耐久性に優れる液晶ポリマー、各方向への剛性を高める繊維メッシュを組み合わせた特殊な素材が用いられた。
その高性能バイクを、2022年のアンバウンド・グラベルでイヴァール・スリック(オランダ)が駆りプロクラスで優勝。世界最高峰のグラベルレースで最高の栄誉を獲得した。スリックの優勝バイクはロードコンポ(Dura-Ace)やFilanteバー+DHハンドル、ロードペダルを組み合わせた超レーシング仕様で、過酷なコースを歴代最速タイムで駆け抜けた。
ウィリエールには他にJENA(ジェナ)というグラベルカテゴリーのモデルをラインナップするが、RAVE SLRはグラベルレースにターゲットを絞ったトップモデルとして開発された。新モデルRAVE SLは、そんなSLRの血統を受け継ぐミドルグレードバイクだ。しかし同じフォーマットを用いながらもカーボン素材を調整したRAVE SLは、グラベルと舗装路をバランスよく守備範囲に収めるというもともとのRAVEのコンセプトにより近づいたと言えるかも知れない。
RAVE SLに採用されるカーボンマテリアルは「Viscoelastic(粘りと伸縮性のある)」 と表現される。カーボン組成は企業秘密とされるが、Filante SLと同様に液晶ポリマー等の特殊な成分は採用されないが、強度や剛性を保ちつつも振動吸収性に優れた快適な乗り心地を得たという。
ジオメトリーはレーシングモデルらしく、ロードレーサーとエンデュランスロード、グラベルバイクを参照して設計されている。リーチはロードモデルのFilante等とほぼ同じ設計だが、スタックハイトは高めに設定され、上体の起きたリラックスポジションが可能になっている。しかし同じくグラベルアドベンチャーモデルと言えるJENAとのちょうど中間に位置し、アップライト過ぎないライディングポジションを狙っている。
ケーブル内装を含め、エアロダイナミクスを意識したRAVE SLはグラベルセッティングでもロードセッティングでもマッチする。ロード用コンポーネントで組むも良し、グラベルコンポーネントで組むも良し、その両対応となっているバイクだ。フロントディレイラー台座は着脱可能な設計で、フロントシングル(1×)でもダブルでも組むことができる。タイヤクリアランスは1×の場合700Cで42mmまで、ダブルの場合は36mmまでと、組み合わせるコンポやセッティングによって変わってくる。
あくまでレーシング系オールロードとして軽快な走りを目指すRAVE SL。望めば一体型ハンドルのFilanteバーやZeroバーを組み合わせこともできる。前後のエンドにはスピードリリースではなく、シンプルなスルーアクスルが採用される。RAVE SLはオン・オフ問わず「オールロードバイク」としてピュアなロードレーシング以外のあらゆるシチュエーションで活躍してくれる。
グラベルバイクの人気が上昇しているが、大半の人の使用目的はオンロードで、流行りのグラベルにも対応したバイクにしておきたい、といったものだろう。あるいはロードバイクであってもレース等とは無縁で、どちらかというとツーリング用途だったり、用途自体を限定しないバイクとして捉えられているケースが多いようだ。
メーカー車のグラベルバイクの幅も広く、トレイルまでカバーするバイクから、シクロクロスレーサーやエアロロードバイクに近いバイクまであり、「未舗装路寄り」か「舗装路寄り」かの振れ幅が大きい。RAVE SLは「舗装路寄りのグラベルバイク」で、どちらも楽しみたいユーザーにぴったりだ。
イタリア発表会で用意されたRAVE SLもグラベルコンポで組んだモデル(ブラウン)と、ロードコンポで組んだモデル(ブラック)の2種が用意され、イメージを具体化してくれていた。どちらも楽しみたいユーザーならホイールを2ペア用意して差し替えれば両方を楽しむことができるというわけだ。
インプレでは走りの性格を確かめるべくロードセッティングメインで行い、Filante SLの同じ高原道路のアップダウンを走った。コーナーやダウンヒル、そしてグラベルも攻めて、フレームのキャラクターを把握するまで走り込んでみた。
Filante SLがフレーム重量1010gのところRAVE SLは1090gと80gほど重く、フォークも40g重い程度。グラベルバイクとしては十分な軽量さに収められているから、ロードコンポとオンロードタイヤ仕様のホイールで組まれたバイクも十分に軽いものだった。
筆者はFilanteでXSサイズがベストなところMサイズの試乗車に乗ることになってしまいベストサイズではなかったが、ポジションはややアップライト傾向で、その点は設計コンセプト通り。エンデュランスロード的に乗るのが好みの人ならロードモデルより5mm〜15mmほどハンドルは高い状態で良いが、筆者の場合は10mm程度のアップに抑えたいので、無理なくベストポジション(スタック)が出せる感じだった。その点「行き過ぎないコンフォート」なジオメトリーが好ましいと感じた。
そして見た目もロードバイクそのものに見える。気持ち、フォークが太かったり、タイヤクリアランスに余裕があるが、よくよく細部を見ないとグラベル系フレームだとは気が付かないだろう。
走り込んでみての印象は、走りは軽快だが、FilanteSLに乗った直後にRAVE SL乗り換えるとさすがに鈍さを感じてしまったというのが正直なところ。これはコンポやホイールを揃えて乗り比べなければ判らないぐらいの差なのだが、そこに純ロードモデルとの差はやはりあると感じた。RAVE SLの走りは十分に良いが、グラベルをターゲット外にする人はFilanteを選ぶ方が舗装路は気持ちよく走れる。いや、走ったときの軽快感に差がある、と言うべきか。
しかしそこまでロードバイクとして求めない人ならRAVE SLをロードで乗るのは十分アリだ。そしてフロント1×のグラベルコンポで組めばグラベルレーサーであり、日常使いのオールロードとして路面を選ばずに走れるし、フロントWで組んでおけば、ロードバイクとしても、ホイールを差し替えてグラベルバイクとして活用できる。どちらの組み方でもシクロクロス的な機敏な操作感も持ち合わせているので、マルチに楽しめるバイクになる。
言うまでもなくロードバイクとしては振動吸収性に優れた快適性重視の優しい乗り心地だ。とくに薄手のシートステーが効いており、路面の振動を逃しつつもトラクションがよく掛かる。しかし左右の剛性は確保されているので、荒れ気味の路面に対する味付けはベストだ。オンロードで感じた鈍さは、裏返せばオフロードでの快適性。路面からの振動を抑え込み、丸めてしまうフィーリング。それがViscoelastic素材からくるものなのだろう。
グラベル系バイクとしてカバーしない用途がキャンピング的な用途。フォーク脇やトップチューブ上のボルトオン台座はあえて備えていない。それは軽量化のためであり、走りの良さ・軽快さをスポイルしない意図があっての設計で、ウィリエールとしてはそれら用途にはJENA等があるという回答だ。
筆者がRAVE SLを手に入れるとしたら、汎用性の高いフロントダブルのグラベルコンポで組み、ホイールはオンロード用に32Cタイヤを装着した35mm前後のリムハイトのカーボンホイールと、700×40Cのグラベルホイールを初めから2セット用意して使い分ける。そしてロングツーリングに備えてフレームバッグやサドルバッグなどバイクパッキング用品も揃えて週末を心待ちにしたい。
組み方で未舗装路(グラベル)に寄せるか、舗装路(ロード)に寄せるかはユーザー次第。RAVE SLは文字通り道を選ばないオールロードバイクだ。
今回発表されたRAVE SL は、2021年秋に発表されたRAVE SLRの弟分。先に発表されたFilante SLと同様に、SLRグレードと同様の金型を使い、カーボン素材を調整することで手頃な価格を実現した。FilanteとRaveはもともと兄弟的な車種であり、同時期に共通のフォーマットで開発・製作されたバイクだ。
RAVE SLRは最大42mmのタイヤを装着できるクリアランスが備えられたグラベルレーシングバイク。同時にハイエンド級の軽量性と反応性を備えたオールロードとしても活躍するモデルでもあり、ロードからグラベルまでをターゲットにした一台。ZERO SLRとFILANTE SLRに採用されたのと同じHUS-MODカーボンを採用。ショック吸収性と耐久性に優れる液晶ポリマー、各方向への剛性を高める繊維メッシュを組み合わせた特殊な素材が用いられた。
その高性能バイクを、2022年のアンバウンド・グラベルでイヴァール・スリック(オランダ)が駆りプロクラスで優勝。世界最高峰のグラベルレースで最高の栄誉を獲得した。スリックの優勝バイクはロードコンポ(Dura-Ace)やFilanteバー+DHハンドル、ロードペダルを組み合わせた超レーシング仕様で、過酷なコースを歴代最速タイムで駆け抜けた。
ウィリエールには他にJENA(ジェナ)というグラベルカテゴリーのモデルをラインナップするが、RAVE SLRはグラベルレースにターゲットを絞ったトップモデルとして開発された。新モデルRAVE SLは、そんなSLRの血統を受け継ぐミドルグレードバイクだ。しかし同じフォーマットを用いながらもカーボン素材を調整したRAVE SLは、グラベルと舗装路をバランスよく守備範囲に収めるというもともとのRAVEのコンセプトにより近づいたと言えるかも知れない。
RAVE SLに採用されるカーボンマテリアルは「Viscoelastic(粘りと伸縮性のある)」 と表現される。カーボン組成は企業秘密とされるが、Filante SLと同様に液晶ポリマー等の特殊な成分は採用されないが、強度や剛性を保ちつつも振動吸収性に優れた快適な乗り心地を得たという。
ジオメトリーはレーシングモデルらしく、ロードレーサーとエンデュランスロード、グラベルバイクを参照して設計されている。リーチはロードモデルのFilante等とほぼ同じ設計だが、スタックハイトは高めに設定され、上体の起きたリラックスポジションが可能になっている。しかし同じくグラベルアドベンチャーモデルと言えるJENAとのちょうど中間に位置し、アップライト過ぎないライディングポジションを狙っている。
ケーブル内装を含め、エアロダイナミクスを意識したRAVE SLはグラベルセッティングでもロードセッティングでもマッチする。ロード用コンポーネントで組むも良し、グラベルコンポーネントで組むも良し、その両対応となっているバイクだ。フロントディレイラー台座は着脱可能な設計で、フロントシングル(1×)でもダブルでも組むことができる。タイヤクリアランスは1×の場合700Cで42mmまで、ダブルの場合は36mmまでと、組み合わせるコンポやセッティングによって変わってくる。
あくまでレーシング系オールロードとして軽快な走りを目指すRAVE SL。望めば一体型ハンドルのFilanteバーやZeroバーを組み合わせこともできる。前後のエンドにはスピードリリースではなく、シンプルなスルーアクスルが採用される。RAVE SLはオン・オフ問わず「オールロードバイク」としてピュアなロードレーシング以外のあらゆるシチュエーションで活躍してくれる。
インプレッション
グラベルバイクの人気が上昇しているが、大半の人の使用目的はオンロードで、流行りのグラベルにも対応したバイクにしておきたい、といったものだろう。あるいはロードバイクであってもレース等とは無縁で、どちらかというとツーリング用途だったり、用途自体を限定しないバイクとして捉えられているケースが多いようだ。
メーカー車のグラベルバイクの幅も広く、トレイルまでカバーするバイクから、シクロクロスレーサーやエアロロードバイクに近いバイクまであり、「未舗装路寄り」か「舗装路寄り」かの振れ幅が大きい。RAVE SLは「舗装路寄りのグラベルバイク」で、どちらも楽しみたいユーザーにぴったりだ。
イタリア発表会で用意されたRAVE SLもグラベルコンポで組んだモデル(ブラウン)と、ロードコンポで組んだモデル(ブラック)の2種が用意され、イメージを具体化してくれていた。どちらも楽しみたいユーザーならホイールを2ペア用意して差し替えれば両方を楽しむことができるというわけだ。
インプレでは走りの性格を確かめるべくロードセッティングメインで行い、Filante SLの同じ高原道路のアップダウンを走った。コーナーやダウンヒル、そしてグラベルも攻めて、フレームのキャラクターを把握するまで走り込んでみた。
Filante SLがフレーム重量1010gのところRAVE SLは1090gと80gほど重く、フォークも40g重い程度。グラベルバイクとしては十分な軽量さに収められているから、ロードコンポとオンロードタイヤ仕様のホイールで組まれたバイクも十分に軽いものだった。
筆者はFilanteでXSサイズがベストなところMサイズの試乗車に乗ることになってしまいベストサイズではなかったが、ポジションはややアップライト傾向で、その点は設計コンセプト通り。エンデュランスロード的に乗るのが好みの人ならロードモデルより5mm〜15mmほどハンドルは高い状態で良いが、筆者の場合は10mm程度のアップに抑えたいので、無理なくベストポジション(スタック)が出せる感じだった。その点「行き過ぎないコンフォート」なジオメトリーが好ましいと感じた。
そして見た目もロードバイクそのものに見える。気持ち、フォークが太かったり、タイヤクリアランスに余裕があるが、よくよく細部を見ないとグラベル系フレームだとは気が付かないだろう。
走り込んでみての印象は、走りは軽快だが、FilanteSLに乗った直後にRAVE SL乗り換えるとさすがに鈍さを感じてしまったというのが正直なところ。これはコンポやホイールを揃えて乗り比べなければ判らないぐらいの差なのだが、そこに純ロードモデルとの差はやはりあると感じた。RAVE SLの走りは十分に良いが、グラベルをターゲット外にする人はFilanteを選ぶ方が舗装路は気持ちよく走れる。いや、走ったときの軽快感に差がある、と言うべきか。
しかしそこまでロードバイクとして求めない人ならRAVE SLをロードで乗るのは十分アリだ。そしてフロント1×のグラベルコンポで組めばグラベルレーサーであり、日常使いのオールロードとして路面を選ばずに走れるし、フロントWで組んでおけば、ロードバイクとしても、ホイールを差し替えてグラベルバイクとして活用できる。どちらの組み方でもシクロクロス的な機敏な操作感も持ち合わせているので、マルチに楽しめるバイクになる。
言うまでもなくロードバイクとしては振動吸収性に優れた快適性重視の優しい乗り心地だ。とくに薄手のシートステーが効いており、路面の振動を逃しつつもトラクションがよく掛かる。しかし左右の剛性は確保されているので、荒れ気味の路面に対する味付けはベストだ。オンロードで感じた鈍さは、裏返せばオフロードでの快適性。路面からの振動を抑え込み、丸めてしまうフィーリング。それがViscoelastic素材からくるものなのだろう。
グラベル系バイクとしてカバーしない用途がキャンピング的な用途。フォーク脇やトップチューブ上のボルトオン台座はあえて備えていない。それは軽量化のためであり、走りの良さ・軽快さをスポイルしない意図があっての設計で、ウィリエールとしてはそれら用途にはJENA等があるという回答だ。
筆者がRAVE SLを手に入れるとしたら、汎用性の高いフロントダブルのグラベルコンポで組み、ホイールはオンロード用に32Cタイヤを装着した35mm前後のリムハイトのカーボンホイールと、700×40Cのグラベルホイールを初めから2セット用意して使い分ける。そしてロングツーリングに備えてフレームバッグやサドルバッグなどバイクパッキング用品も揃えて週末を心待ちにしたい。
組み方で未舗装路(グラベル)に寄せるか、舗装路(ロード)に寄せるかはユーザー次第。RAVE SLは文字通り道を選ばないオールロードバイクだ。
ウィリエール RAVE SL
フレーム重量 | 1090g |
フォーク重量 | 410g |
フレーム仕様 | メカニカル(1x仕様のみ)対応フレーム 電動(1x,2x仕様)対応フレーム FD台座取り外し可能(1x用プレート別売) |
タイヤクリアランス | 36mm(2x仕様)、42mm(1x仕様) |
完成車重量 | 8.6kg(105DISC Di2・FSAクランク/WHRS770・グラベル仕様) |
フレームサイズ | XS, S, M, L, XL |
カラー | ブラウン、ブラック |
価格 | フレームセット(ステンマS、バッラS付)税込¥473,000 シマノ105 Di2、WHRS770完成車 税込¥682,000 シマノDURA-ACE Di2、フルクラムRacing600完成車 税込¥968,000 |
提供:服部産業、photo&text:綾野 真(シクロワイアード)