2022/03/31(木) - 15:51
三船雅彦さんとサポーターズクラブのゆめしま海道サイクリングをサポートしたのがマツダの新型SUV、CX-5フィールドジャーニーだ。マツダの誇るベストセラーモデルに追加されたアウトドア仕様の特別仕様車をサイクリスト目線で紹介しよう。走りにこだわるマツダと、サイクリングの相性とは?
すでに8年に渡って続いている三船雅彦さんとサポーターズクラブによるしまなみ海道ツーリング。広島に拠点を置く自動車メーカーであるマツダのサポートも当初から8年を数え、毎年サポートカーの伴走によってしまなみツーリングを支援してきた。かつてベルギーでプロレーサーとしてトップレースを走り、現在もパリ〜ブレスト〜パリなど長距離ブルベなどに挑戦を続ける三船さん。「走り続けること」をテーマに、生涯サイクリストの姿勢を貫いているレジェンドサイクリストだ。
マツダにはサイクリング好きな社員が多いこともあり、「サイクリングの楽しさを伝え、拡げていきたい」という三船さんの想いと、「サイクリストの皆さんに広島としまなみ海道の素晴らしさ、マツダ車の走る歓びを体感して欲しい」というマツダの想いが一致したからこそのコラボレーションだという。ツーリング中のメンバーを、最新のマツダ車がサポート。ライド中にクルマの試乗も可能で、メンバーはお互い助け合いながらライド&ドライブ楽しんだ。
今回の目玉は2021年11月に発表された新型車 マツダCX-5フィールドジャーニーだ。都会派SUVのイメージがあるCX-5に追加されたアウトドアテイストの特別仕様車で「ジルコンサンドメタリック」というカラーも渋い話題のモデル。一方、記事に登場したもう一台の赤いクルマは三船さんがマツダのサポートを受けて普段から乗っているCX-5だ。
CX-5は初代の登場からすでに10年が経つ息の長いベストセラーモデルで、グローバル販売台数の約3分の1を占めるマツダの基幹車種。新型となってもベースとなる設計や構造は大きくは変わらないが、マツダのクルマは毎年のようにマイナーチェンジすることで知られるとおり、CX-5も商品改良というメジャーアップデートを重ねて成熟したモデルと言えそうだ。
「フィールドジャーニー」は同時発表された3つの特別仕様車のなかでアウトドアテイストを取り入れたマツダ初のSUVとして、細部の造り込みや本格的なオフロード走行モードなどを採用したことで注目されるモデルだ。
マツダのクルマづくりに一貫しているのは「人馬一体感」というテーマに沿った設計思想。サイクリストがフレームジオメトリーやサドルの高さ、ハンドルの位置、クランクの長さなど、ライディングポジションに1mm単位で拘るように、マツダ車はドライビングポジションを重視した車体の設計を行っているという。
ライド中には即席のドライビングポジション講座が開かれた。シートに座った状態で脚を伸ばした自然な位置にアクセルやブレーキペダルがくる設計、ハンドルをくるくると回すことができる高さと位置への調整のしかた、死角の少ないミラーやピラーの位置などを重要視してクルマづくりをしていることなど、教えてもらったマツダのドライビングポジションへの妥協ないこだわりは、サイクリストのライディングポジションへのこだわりと共通する。
「乗車ポジションが大事なのはクルマも自転車も同じなんです。安全につながるドライビングポジションの重要性は、普段からライディングポジションにこだわるサイクリストの皆さんにはよく分かっていただけると思います」。と、ライドをともにしたマツダ広報本部の今井さんは言う。
三船さんにとってはすでに乗り慣れたCX-5だが、新型となったフィールドジャーニーと乗り比べての共通点や変化した点を訊いた。
まずは普段乗っているマツダCX-5に抱いている印象から教えて下さい。
三船:600kmのブルベなど、体力や脚力を使い果たした状態でクルマに乗って京都の事務所まで600kmを運転して帰るなんてことは日常的にあります(笑)。そんなときマツダ車の運転のしやすさは実感します。例えば脚が疲れた状態で、オルガン式ペダルのアクセルとブレーキは操作しやすさに優れている。これが他社が通常採用している吊り下げ式ペダルだと、脚が攣りそうになるんです。シートにピシッと姿勢良く座れて、ハンドルを握ればすべての操作系が適切な位置にくる。日またぎで東京〜大阪を往復してもほとんど疲れない。3時間、4時間乗ったときも肩や身体全体の疲れ方が全然少ないんです。
新型CX-5と、三船さんのCX-5の違いについては?
三船:メーターパネル周りの印象が変わりましたね。ライムグリーンのアクセントはインパクトがある。クルマとして進化している部分は多々あるけど、基本的には同じなので、運転しやすいですね。CX-5は目線の位置が高く運転しやすいSUVで、フィールドジャーニーは17インチホイールとオールシーズンタイヤ採用でタイヤに厚みはあるけど、ふわふわする感じもなく、走りはスムーズで快適です。ディーゼルエンジンの『スカイアクティブ』は静かすぎてガソリン車のイメージに近くて、パワフルで静かで快適。マツダ車なら僕はやはりスカイアクティブディーゼルを選びたいですね。僕のサイクルライフに欠かせないのがマツダ車です。
ライド中に教えてもらったマツダのクルマ哲学に感心し、十分な時間をかけて乗ってみたいと感じた。それならこの機会にと、帰京を兼ねての自走テストドライブを申し出たのだ。
CX-5で尾道から東京まで、高速道路メインかつ途中寄り道しながらの約800kmのドライブで感じたことを綴りたいと思う。
まず自分にとってクルマの評価は、常に自転車ライフとの相性によって考える。そしてクルマそのものの性能差を実感してきたのがツール・ド・フランスの帯同取材だ。今までにジロ・デ・イタリア含めグランツールを30回、自分で運転するクルマで随行撮影してきた経験では、走りの良さや疲れにくさに対しては、自ずと求めるレベルが高くなる。
毎夏に約6,000kmのソロドライブをこなし、しかもそれがレースプロトンを追いかけながらのアルプスやピレネー山岳を含む過酷なドライブ。レンタカーを駆使することになるが、欧州自動車メーカーの協力を得てコンディションの良い新車を借り受けてこなすこともある。
走行性能や長距離走行の際の疲れにくさ、安全性。そうした基本性能が低いクルマにあたった際はストレスが大きい。自分にとって東京までの800km一気ソロドライブは 「へっちゃら」ではあるものの、やはりクルマによって疲れ方の差がそれなりに出ることは知っている。
しまなみサイクリングを終えた翌日、自転車をCX-5に積み込み、東京へ向かってCX-5を走らせた。高速道路だけでは走行性能が把握できないので、浜名湖で高速を降り、三ヶ日周辺の山道や富士周辺の一般道路、そして普段のバイクライドエリアである埼玉の奥武蔵周辺でのドライブを追加し、CX-5をフルに走らせてみた。
ステアリングを握ってすぐに感じるのがシートの良さ。骨盤が立ち、背筋がすっと伸びる。運転中にすぐ自転車に乗っているような猫背になりやすい自分にとって、この「S字着座姿勢」を自然につくりだしてくれるシートに感心した。矯正感を感じることなく、楽な姿勢を保ちづづけることができた。
特別仕様車らしいアクセントが入ったシートはウレタン素材も改良されたという。内部のスウェード調素材には絶妙な背中やお尻のグリップ感がある。
身体の芯とハンドルの中心から両足を結ぶ中心線が一致し、自然な位置にくる。ドアミラーやフロントウィンドウのピラーも視界を妨げない位置にきていることがわかる。マツダのクルマは良くどのモデルもデザインが似ていると言われることがあるが、それには理由があって、こうした適正なドライビングポジションを追求すると、おのずと似た設計、デザインになるのだという。
クルージング&トラフィック・サポート機能といったドライビングアシスト機能の働きが優秀で、前走車に車間をとって自動追従し、東名高速程度のゆるいカーブなら、ほとんど自動運転のように走行レーンをトレースしてくれる。あまりにラクで、手放し運転ができそうなのだが、試しにハンドルを握らずにしばらく走っていると、警告が出る。「クルマに頼らず自分で運転してください」とでも言わんばかりに。
そして目を泳がせていると疲労していると判断して休憩を提案してくる。マツダのクルマは過剰なアシストはせず、ドライバーが運転するという意識をはっきりさせてくれるようだ。こうした挙動や注意喚起にメーカーとしての思想がでてくるのが面白い。
スカイアクティブのディーゼルエンジンは湧き上がるようなパワーで、ボディ重量に見合っていると感じる。山道でもトルクフルな走りで軽快。過激なスポーティさは無く、迫力あるフロントグリルのデザインの印象とは違う優しい乗り味だ。走り屋には物足りない点はあるかもしれないが、クルマを移動手段と考える人は不満を感じないだろう。
筆者は欧州で借りるクルマは必ずディーゼルを指定するほどのディーゼルエンジン好き。一方日本ではガソリン車を選んでいるが、スカイアクティブの走りの良さなら迷わず選ぶ。
標準仕様となるオールシーズンタイヤを履いていても、SUVの腰高さやフワフワ感は無い。路面の段差も自然にいなし、走りはスムーズ。Mi DRIVE(ミードライブ)モードによりセレクトレバーのワンタッチで選べるフルタイム4WDによるオフロード性能も非常に高いとのことだが、都会的な舗装路が中心であっても緩慢さは感じないだろう。
しまなみ海道でのサポートと東京までのドライブを通しての燃費はメーター計算で19.8km/Lと表示された。高速道路だけなら20km/Lはいくはずだ。原油価格高騰の時代、ディーゼルのこの経済性は魅力だ。そして横浜のマツダR&Dセンターに返却したが、800kmを走っても疲れがほとんど無いことに驚いた。CX-5はまさにロングツアラーだ。
積載能力についても検証してみた。自転車を車内に積むなら後席を倒してフルフラットにすれば丸ごと積めるようだ。そして前輪を外しての縦積みも試してみたが、サドルがルーフに干渉するためシートピラーごとサドルを抜くのが現実的なようだ(バイクサイズは48相当)。複数台積むならもちろんルーフキャリアを付けるのが現実的だ。
CX-5フィールドジャーニーにはリアハッチのボタンに触れること無く、センサーに足などで合図を送るだけでハッチが開閉するハンズフリー機能付きパワーリフトゲート機構が装備されていて、荷物で両手がふさがっているときにはありがたい。
トランク内のフロアボードも防水素材があしらわれて、汚れ物や濡れ物を積む際にも気兼ねないのはさすがアウトドア仕様。フロア下のサブトランクのスペースも大きく、あらかじめ用意しておきたい装備が収容できる。なおフロアボードは段差の無い面一(ツライチ)にもできるので、自転車の積み下ろしの際も引っかからない。
エンジンの鋳型のもととなる砂に由来する「ジルコンサンドメタリック」のカラーは渋く、光の当たり具合で色味が変化するのが、今スポーツサイクル界で流行っているアースカラーにも通じて面白い。
随所にあしらわれているフィールドジャーニーのアクセントであるライムグリーンの挿し色はアクティブなイメージで、今までのマツダ車に無いアソビ心を混じる。自然に溶け込むボディカラーでありながら視認性に優れたカラーを挿すことで、アウトドアギアらしいテイストがうまく演出されている。CX-5フィールドジャーニーは、活動的なサイクリストのライフスタイルに良くマッチしていると感じた。
すでに8年に渡って続いている三船雅彦さんとサポーターズクラブによるしまなみ海道ツーリング。広島に拠点を置く自動車メーカーであるマツダのサポートも当初から8年を数え、毎年サポートカーの伴走によってしまなみツーリングを支援してきた。かつてベルギーでプロレーサーとしてトップレースを走り、現在もパリ〜ブレスト〜パリなど長距離ブルベなどに挑戦を続ける三船さん。「走り続けること」をテーマに、生涯サイクリストの姿勢を貫いているレジェンドサイクリストだ。
マツダにはサイクリング好きな社員が多いこともあり、「サイクリングの楽しさを伝え、拡げていきたい」という三船さんの想いと、「サイクリストの皆さんに広島としまなみ海道の素晴らしさ、マツダ車の走る歓びを体感して欲しい」というマツダの想いが一致したからこそのコラボレーションだという。ツーリング中のメンバーを、最新のマツダ車がサポート。ライド中にクルマの試乗も可能で、メンバーはお互い助け合いながらライド&ドライブ楽しんだ。
今回の目玉は2021年11月に発表された新型車 マツダCX-5フィールドジャーニーだ。都会派SUVのイメージがあるCX-5に追加されたアウトドアテイストの特別仕様車で「ジルコンサンドメタリック」というカラーも渋い話題のモデル。一方、記事に登場したもう一台の赤いクルマは三船さんがマツダのサポートを受けて普段から乗っているCX-5だ。
CX-5は初代の登場からすでに10年が経つ息の長いベストセラーモデルで、グローバル販売台数の約3分の1を占めるマツダの基幹車種。新型となってもベースとなる設計や構造は大きくは変わらないが、マツダのクルマは毎年のようにマイナーチェンジすることで知られるとおり、CX-5も商品改良というメジャーアップデートを重ねて成熟したモデルと言えそうだ。
「フィールドジャーニー」は同時発表された3つの特別仕様車のなかでアウトドアテイストを取り入れたマツダ初のSUVとして、細部の造り込みや本格的なオフロード走行モードなどを採用したことで注目されるモデルだ。
マツダのクルマづくりに一貫しているのは「人馬一体感」というテーマに沿った設計思想。サイクリストがフレームジオメトリーやサドルの高さ、ハンドルの位置、クランクの長さなど、ライディングポジションに1mm単位で拘るように、マツダ車はドライビングポジションを重視した車体の設計を行っているという。
ライド中には即席のドライビングポジション講座が開かれた。シートに座った状態で脚を伸ばした自然な位置にアクセルやブレーキペダルがくる設計、ハンドルをくるくると回すことができる高さと位置への調整のしかた、死角の少ないミラーやピラーの位置などを重要視してクルマづくりをしていることなど、教えてもらったマツダのドライビングポジションへの妥協ないこだわりは、サイクリストのライディングポジションへのこだわりと共通する。
「乗車ポジションが大事なのはクルマも自転車も同じなんです。安全につながるドライビングポジションの重要性は、普段からライディングポジションにこだわるサイクリストの皆さんにはよく分かっていただけると思います」。と、ライドをともにしたマツダ広報本部の今井さんは言う。
三船さんにとってはすでに乗り慣れたCX-5だが、新型となったフィールドジャーニーと乗り比べての共通点や変化した点を訊いた。
まずは普段乗っているマツダCX-5に抱いている印象から教えて下さい。
三船:600kmのブルベなど、体力や脚力を使い果たした状態でクルマに乗って京都の事務所まで600kmを運転して帰るなんてことは日常的にあります(笑)。そんなときマツダ車の運転のしやすさは実感します。例えば脚が疲れた状態で、オルガン式ペダルのアクセルとブレーキは操作しやすさに優れている。これが他社が通常採用している吊り下げ式ペダルだと、脚が攣りそうになるんです。シートにピシッと姿勢良く座れて、ハンドルを握ればすべての操作系が適切な位置にくる。日またぎで東京〜大阪を往復してもほとんど疲れない。3時間、4時間乗ったときも肩や身体全体の疲れ方が全然少ないんです。
新型CX-5と、三船さんのCX-5の違いについては?
三船:メーターパネル周りの印象が変わりましたね。ライムグリーンのアクセントはインパクトがある。クルマとして進化している部分は多々あるけど、基本的には同じなので、運転しやすいですね。CX-5は目線の位置が高く運転しやすいSUVで、フィールドジャーニーは17インチホイールとオールシーズンタイヤ採用でタイヤに厚みはあるけど、ふわふわする感じもなく、走りはスムーズで快適です。ディーゼルエンジンの『スカイアクティブ』は静かすぎてガソリン車のイメージに近くて、パワフルで静かで快適。マツダ車なら僕はやはりスカイアクティブディーゼルを選びたいですね。僕のサイクルライフに欠かせないのがマツダ車です。
三船雅彦さんプロフィール
かつてランドバウクレジットやトニスタイナーなどベルギーのトッププロチームに所属し世界を舞台に戦ったプロロードレーサー。現在も「走り続けること」をテーマにパリ〜ブレスト〜パリなど長距離ブルベやシクロクロスレースを舞台に走り続けるほか、コーチとしてスクールなども開催。主宰する会員制「サポーターズクラブ」では日本各地でツーリングを企画し、会員たちとライドを楽しんでいる。
三船雅彦オフィシャルサイト
三船雅彦オフィシャルサイト
CW綾野編集長が尾道〜東京800kmでCX-5を試乗 長距離ドライブで性能をチェック
しまなみライドをサポートしたCX-5フィールドジャーニーを、尾道から東京まで約800kmをテストドライブしたのは取材を担当したシクロワイアード編集長の綾野真。ことの発端は、サポートカーの役割を果たしたそのクルマは横浜マツダR&Dセンターの所轄であり、船便で戻さなければならないと知ったから。ライド中に教えてもらったマツダのクルマ哲学に感心し、十分な時間をかけて乗ってみたいと感じた。それならこの機会にと、帰京を兼ねての自走テストドライブを申し出たのだ。
CX-5で尾道から東京まで、高速道路メインかつ途中寄り道しながらの約800kmのドライブで感じたことを綴りたいと思う。
まず自分にとってクルマの評価は、常に自転車ライフとの相性によって考える。そしてクルマそのものの性能差を実感してきたのがツール・ド・フランスの帯同取材だ。今までにジロ・デ・イタリア含めグランツールを30回、自分で運転するクルマで随行撮影してきた経験では、走りの良さや疲れにくさに対しては、自ずと求めるレベルが高くなる。
毎夏に約6,000kmのソロドライブをこなし、しかもそれがレースプロトンを追いかけながらのアルプスやピレネー山岳を含む過酷なドライブ。レンタカーを駆使することになるが、欧州自動車メーカーの協力を得てコンディションの良い新車を借り受けてこなすこともある。
走行性能や長距離走行の際の疲れにくさ、安全性。そうした基本性能が低いクルマにあたった際はストレスが大きい。自分にとって東京までの800km一気ソロドライブは 「へっちゃら」ではあるものの、やはりクルマによって疲れ方の差がそれなりに出ることは知っている。
しまなみサイクリングを終えた翌日、自転車をCX-5に積み込み、東京へ向かってCX-5を走らせた。高速道路だけでは走行性能が把握できないので、浜名湖で高速を降り、三ヶ日周辺の山道や富士周辺の一般道路、そして普段のバイクライドエリアである埼玉の奥武蔵周辺でのドライブを追加し、CX-5をフルに走らせてみた。
ステアリングを握ってすぐに感じるのがシートの良さ。骨盤が立ち、背筋がすっと伸びる。運転中にすぐ自転車に乗っているような猫背になりやすい自分にとって、この「S字着座姿勢」を自然につくりだしてくれるシートに感心した。矯正感を感じることなく、楽な姿勢を保ちづづけることができた。
特別仕様車らしいアクセントが入ったシートはウレタン素材も改良されたという。内部のスウェード調素材には絶妙な背中やお尻のグリップ感がある。
身体の芯とハンドルの中心から両足を結ぶ中心線が一致し、自然な位置にくる。ドアミラーやフロントウィンドウのピラーも視界を妨げない位置にきていることがわかる。マツダのクルマは良くどのモデルもデザインが似ていると言われることがあるが、それには理由があって、こうした適正なドライビングポジションを追求すると、おのずと似た設計、デザインになるのだという。
クルージング&トラフィック・サポート機能といったドライビングアシスト機能の働きが優秀で、前走車に車間をとって自動追従し、東名高速程度のゆるいカーブなら、ほとんど自動運転のように走行レーンをトレースしてくれる。あまりにラクで、手放し運転ができそうなのだが、試しにハンドルを握らずにしばらく走っていると、警告が出る。「クルマに頼らず自分で運転してください」とでも言わんばかりに。
そして目を泳がせていると疲労していると判断して休憩を提案してくる。マツダのクルマは過剰なアシストはせず、ドライバーが運転するという意識をはっきりさせてくれるようだ。こうした挙動や注意喚起にメーカーとしての思想がでてくるのが面白い。
スカイアクティブのディーゼルエンジンは湧き上がるようなパワーで、ボディ重量に見合っていると感じる。山道でもトルクフルな走りで軽快。過激なスポーティさは無く、迫力あるフロントグリルのデザインの印象とは違う優しい乗り味だ。走り屋には物足りない点はあるかもしれないが、クルマを移動手段と考える人は不満を感じないだろう。
筆者は欧州で借りるクルマは必ずディーゼルを指定するほどのディーゼルエンジン好き。一方日本ではガソリン車を選んでいるが、スカイアクティブの走りの良さなら迷わず選ぶ。
標準仕様となるオールシーズンタイヤを履いていても、SUVの腰高さやフワフワ感は無い。路面の段差も自然にいなし、走りはスムーズ。Mi DRIVE(ミードライブ)モードによりセレクトレバーのワンタッチで選べるフルタイム4WDによるオフロード性能も非常に高いとのことだが、都会的な舗装路が中心であっても緩慢さは感じないだろう。
しまなみ海道でのサポートと東京までのドライブを通しての燃費はメーター計算で19.8km/Lと表示された。高速道路だけなら20km/Lはいくはずだ。原油価格高騰の時代、ディーゼルのこの経済性は魅力だ。そして横浜のマツダR&Dセンターに返却したが、800kmを走っても疲れがほとんど無いことに驚いた。CX-5はまさにロングツアラーだ。
積載能力についても検証してみた。自転車を車内に積むなら後席を倒してフルフラットにすれば丸ごと積めるようだ。そして前輪を外しての縦積みも試してみたが、サドルがルーフに干渉するためシートピラーごとサドルを抜くのが現実的なようだ(バイクサイズは48相当)。複数台積むならもちろんルーフキャリアを付けるのが現実的だ。
CX-5フィールドジャーニーにはリアハッチのボタンに触れること無く、センサーに足などで合図を送るだけでハッチが開閉するハンズフリー機能付きパワーリフトゲート機構が装備されていて、荷物で両手がふさがっているときにはありがたい。
トランク内のフロアボードも防水素材があしらわれて、汚れ物や濡れ物を積む際にも気兼ねないのはさすがアウトドア仕様。フロア下のサブトランクのスペースも大きく、あらかじめ用意しておきたい装備が収容できる。なおフロアボードは段差の無い面一(ツライチ)にもできるので、自転車の積み下ろしの際も引っかからない。
エンジンの鋳型のもととなる砂に由来する「ジルコンサンドメタリック」のカラーは渋く、光の当たり具合で色味が変化するのが、今スポーツサイクル界で流行っているアースカラーにも通じて面白い。
随所にあしらわれているフィールドジャーニーのアクセントであるライムグリーンの挿し色はアクティブなイメージで、今までのマツダ車に無いアソビ心を混じる。自然に溶け込むボディカラーでありながら視認性に優れたカラーを挿すことで、アウトドアギアらしいテイストがうまく演出されている。CX-5フィールドジャーニーは、活動的なサイクリストのライフスタイルに良くマッチしていると感じた。
マツダ CX-5
グレード | XD Field Journey |
ボディカラー | ジルコンサンドメタリック |
エンジンタイプ | SKYACTIVE-D 2.2 |
トランスミッションタイプ | SKYACTIVE-DRIVE(6EC-AT) |
駆動方式 | 4WD |
消費税込価格 | ¥3,822,500(消費税抜価格 ¥34,755,000) ※メーカーセットオプション除く |
CX-5に関する情報サイト
https://www.mazda.co.jp/cars/cx-5/価格などの詳細はこちらでご確認ください
https://www.mazda.co.jp/cars/cx-5/grade/提供:マツダ photo&text:綾野 真