2017/05/08(月) - 15:20
プロ選手を目指し大学を休学、クラブチームへと飛び込んだ翌年、Jプロツアーチームの籍を勝ち取った那須ブラーゼンの下島将輝。大学2年生の頃から始めたサイクルロードレースに打ち込み、自身の武器を磨き続けるスプリンターが、今の気持ちを語る。
もう一度本気でスポーツに打ち込みたいと思った時に自転車に興味を持ち、ツール・ド・フランス山岳ステージの熱いバトルをテレビで見て、直感でこれをやるしかない!と即決。すぐにバイトを掛け持ちし、貯金したお金でロードバイクを購入。その後、大学に自転車競技部があることを知り、2回生からでしたが入部することを決めました。
忘れられないのは、初めて行った約100kmのロードトレーニング。当時、自転車競技は初心者とはいえ体力に自信のあった僕は、先輩や経験者の後輩を驚かせるような走りを見せてやろうと意気込んで練習に。序盤はそこそこ良かったものの、練習中盤を過ぎると体に力が入らくなり、後半には目の前がクラクラ…。
知識の無い僕はボトル以外ほぼ手ぶらで出かけるという無防備さでした。後輩には負けたくないというプライドも吹き飛び、周りに助けを求めるハメに。そこで1回生から入部した同期がくれた、バックポケットの中で蒸された、食べかけの生暖かい蒸しパン。これが最高に美味しくて、身も心も生き返ったことを鮮明に覚えています。
もともと競争事は好きでしたが、自転車競技にあった不思議な魅力。普通は絶対に美味しいはずのないあのパンが絶品に感じたように、長く辛いことの先に待つ、ごくごく小さなようでとても大きな幸せ。この辛さと達成感の絶妙なバランスに僕は取り憑かれていました。
辛い練習を耐えて、ロードレースで優勝できたら、どれだけ嬉しいんだろう。その勝つ姿を思い描き、自転車競技に無我夢中になりました。同期の部員が1つ年下という環境が自分には合っており、チーム内で絶対負けたくないという気持ちで練習にも熱が入りました。しかし、勝つことは想像以上に難しく、レースで表彰台にすら上がれない日々が続きました。
欧州遠征の行先は、ロードレースの本場、スペイン。この遠征で就職するかプロを目指すかを決めることにしました。そこで見た選手たちは、どこか練習やレースに対して余裕があり、競技を楽しんでいるように見えました。選手やレースのレベルの高さには圧倒されましたが、「日本人の持つ勤勉さがあれば、練習して強くなるとヨーロッパの舞台でチャレンジできるのでは」と率直に感じました。
帰国後は本気でプロを目指すため、就職活動を中止し、大学を1年休学することを決めました。1年本気でやってプロを目指す。強い気持ちで1年を過ごすと決意しました。この休学と同じタイミングで、偶然、僕の地元兵庫県川西市にできたのが、地域密着型チーム「コラッジョ川西サイクリングチーム」でした。
コラッジョ川西結成の情報を得たその日、すぐにチーム代表者に連絡し、翌日直接会って競技を本気でやりたいことを伝えました。そこで出会ったのが栂尾大知監督でした。自分は特に大きな成績はありませんでしたが、熱意を買ってもらいチームへ加入できることに。
それまで大学自転車部でのレースはほとんど個人で参加していましたが、栂尾監督から「ロードレースとは」「チームプレーとは」「プロ意識とは」という選手としての基本から徹底的に指導していただきました。着実に走りも良くなり、レースで表彰台には立てるように。しかし肝心の優勝はあと一歩のところで逃し、何度も2着に。
心が折れそうになることもありましたが、栂尾監督の熱心な指導もあり1年間全力で走り続けることができました。コラッジョ川西での1年間の練習は厳しいことが多かったですが、大きく成長することができました。そしてこの1年の走りを評価していただき、次のシーズンに「那須ブラーゼン」への加入が決まりました。
2位を繰り返した過去もあり、高いモチベーションで練習に取り組みました。そうしたスプリント練習が身を結び、チーム加入当初は「パンチャー」という脚質でしたが、いつしかチーム内で「スプリンター」として見られるようになりました。
そんな2016年シーズンの大きな転機となったのが、5月の「京都美山サイクルロードレース」でした。前年2位に入ったこのレースで、今回は勝ちを狙える感触があり、招待選手として出場する他チームのライバル選手と戦うことを恐れず、楽しみにしている自分がいました。非公式戦ということもあり、ブラーゼンからは吉岡選手と僕の2人の出場で、他チームに比べると数的不利な状況。
この状況で、チームの絶対的エース吉岡選手が、今回はスプリント勝負のためにアシストをしてやると言ってくれました。勝負を託される嬉しさとプレッシャーが入り混じりました。そして、レースは吉岡選手の完璧なアシストを受けてスプリント勝負に持ち込むことに成功。練習通りに最後のひと踏みまでもがききった結果、自身初のロードレースでの優勝を手にすることができました。
両手を挙げてゴールした時はこれまで味わったことのない、最高の瞬間でした。そしてそれ以上に嬉しかったのは、応援してくれている周りの人が自分のことのように喜んでくれたこと。これがなにより嬉しかったです。
この調子でもう1勝!と残りの2016年シーズンを戦いましたが、ここから勝つことができず。レースの厳しさからゴールにすら絡めないレースも多々あり、レースでエースを任されることの厳しさを味わいました。
そして勝てないまま迎えたJプロツアー最終戦おおいたクリテリウム。なんとしても勝負に絡みたいこのレースで、吉岡選手と勝ち逃げに乗ることに成功し、アシストをしてもらえる最高の展開に。最後は作戦通りスプリントになりましたが、3位という結果に終わりました。レース直後に勝負には絡めたものの、勝てなかった悔しさが込み上げてきました。
そんな今の自分のやるべきことは、常にベストな状態でレースを戦う準備をし、チームのために走り続けることです。今ある環境への感謝の気持ちを忘れず前に進み続ける姿を見てもらい、大経大、コラッジョ、ブラーゼンに入りたい!と1人でも多くの人が出てくることが1番の恩返しだと思っています。
最後になりますが、那須ブラーゼンは本当に沢山の人に支えられ活動できています。いつもありがとうございます。こんな素晴らしい環境の中、頑張るのは当たり前。必ず今年は結果を出して恩返ししたいです。「心の底からチームのために頑張りたい」とこれほど自然に思わせてくれるチームは他に無いと思います。いつも声援を送っていただける皆様に少しでも喜んでいただけるよう、日々精進していきます。去年果たせなかったJプロツアーでの優勝を、今年こそは取りたいと思います。
主な戦績
さらに待望のロードチューブレスタイヤ(700-23C、25C)をラインナップに追加。クリンチャーシリーズには新たに700-28Cサイズも追加されている。2016年4月にはRACE A EVO3 TUBULARをベースに、サイド部の耐パンク性能を強化した『RACE D EVO3 TUBULAR』も発売。ProTite Shield構造としたことで、サイド部のカットパンクを防ぐ。
本気で打ち込める自転車競技を見つけた大学2年生
僕が自転車競技を始めたのは大学2回生の時でした。それまで小学校時代はサッカー、中高6年間はバスケットボールに熱中し、大阪経済大学入学後は、バスケットボールのサークルに入りました。しかし、そこでは本気で競技をする雰囲気ではなく、どこか物足りなさを感じている自分がいました。もう一度本気でスポーツに打ち込みたいと思った時に自転車に興味を持ち、ツール・ド・フランス山岳ステージの熱いバトルをテレビで見て、直感でこれをやるしかない!と即決。すぐにバイトを掛け持ちし、貯金したお金でロードバイクを購入。その後、大学に自転車競技部があることを知り、2回生からでしたが入部することを決めました。
忘れられないのは、初めて行った約100kmのロードトレーニング。当時、自転車競技は初心者とはいえ体力に自信のあった僕は、先輩や経験者の後輩を驚かせるような走りを見せてやろうと意気込んで練習に。序盤はそこそこ良かったものの、練習中盤を過ぎると体に力が入らくなり、後半には目の前がクラクラ…。
知識の無い僕はボトル以外ほぼ手ぶらで出かけるという無防備さでした。後輩には負けたくないというプライドも吹き飛び、周りに助けを求めるハメに。そこで1回生から入部した同期がくれた、バックポケットの中で蒸された、食べかけの生暖かい蒸しパン。これが最高に美味しくて、身も心も生き返ったことを鮮明に覚えています。
もともと競争事は好きでしたが、自転車競技にあった不思議な魅力。普通は絶対に美味しいはずのないあのパンが絶品に感じたように、長く辛いことの先に待つ、ごくごく小さなようでとても大きな幸せ。この辛さと達成感の絶妙なバランスに僕は取り憑かれていました。
辛い練習を耐えて、ロードレースで優勝できたら、どれだけ嬉しいんだろう。その勝つ姿を思い描き、自転車競技に無我夢中になりました。同期の部員が1つ年下という環境が自分には合っており、チーム内で絶対負けたくないという気持ちで練習にも熱が入りました。しかし、勝つことは想像以上に難しく、レースで表彰台にすら上がれない日々が続きました。
疑問を抱く就職活動、プロを目指すことを決意
そんな僕がプロを目指したのは、3回生の冬でした。ちょうど周りは就職活動をし始める時期で、僕も周りと同じように就職活動をスタート。しかし、すぐに違和感を覚えました。自転車競技に熱中している今の自分は本気で就職活動しているのか?と常に疑問を持つように。その気持ちにけりをつけるべく、3月に当時大学自転車連盟が行っていた、欧州遠征に応募しました。欧州遠征の行先は、ロードレースの本場、スペイン。この遠征で就職するかプロを目指すかを決めることにしました。そこで見た選手たちは、どこか練習やレースに対して余裕があり、競技を楽しんでいるように見えました。選手やレースのレベルの高さには圧倒されましたが、「日本人の持つ勤勉さがあれば、練習して強くなるとヨーロッパの舞台でチャレンジできるのでは」と率直に感じました。
帰国後は本気でプロを目指すため、就職活動を中止し、大学を1年休学することを決めました。1年本気でやってプロを目指す。強い気持ちで1年を過ごすと決意しました。この休学と同じタイミングで、偶然、僕の地元兵庫県川西市にできたのが、地域密着型チーム「コラッジョ川西サイクリングチーム」でした。
コラッジョ川西結成の情報を得たその日、すぐにチーム代表者に連絡し、翌日直接会って競技を本気でやりたいことを伝えました。そこで出会ったのが栂尾大知監督でした。自分は特に大きな成績はありませんでしたが、熱意を買ってもらいチームへ加入できることに。
それまで大学自転車部でのレースはほとんど個人で参加していましたが、栂尾監督から「ロードレースとは」「チームプレーとは」「プロ意識とは」という選手としての基本から徹底的に指導していただきました。着実に走りも良くなり、レースで表彰台には立てるように。しかし肝心の優勝はあと一歩のところで逃し、何度も2着に。
心が折れそうになることもありましたが、栂尾監督の熱心な指導もあり1年間全力で走り続けることができました。コラッジョ川西での1年間の練習は厳しいことが多かったですが、大きく成長することができました。そしてこの1年の走りを評価していただき、次のシーズンに「那須ブラーゼン」への加入が決まりました。
自分の武器を磨き、手に入れた勝利
那須ブラーゼン加入後も、自分には実績や特別な才能を持たないことは自覚していました。主戦場となるJプロツアーの中には自分と同年代の選手やさらに若くても実績のある選手がたくさんいます。この先、プロとしてチームに必要とされる選手になるには何かを磨かなければならないと感じていました。そこで自分の武器はスピード。なかでも特に負けたくなかったのはスプリントでした。スプリント練習では誰よりも集中し、最後のひと踏みまで踏み続けることを意識しました。2位を繰り返した過去もあり、高いモチベーションで練習に取り組みました。そうしたスプリント練習が身を結び、チーム加入当初は「パンチャー」という脚質でしたが、いつしかチーム内で「スプリンター」として見られるようになりました。
そんな2016年シーズンの大きな転機となったのが、5月の「京都美山サイクルロードレース」でした。前年2位に入ったこのレースで、今回は勝ちを狙える感触があり、招待選手として出場する他チームのライバル選手と戦うことを恐れず、楽しみにしている自分がいました。非公式戦ということもあり、ブラーゼンからは吉岡選手と僕の2人の出場で、他チームに比べると数的不利な状況。
この状況で、チームの絶対的エース吉岡選手が、今回はスプリント勝負のためにアシストをしてやると言ってくれました。勝負を託される嬉しさとプレッシャーが入り混じりました。そして、レースは吉岡選手の完璧なアシストを受けてスプリント勝負に持ち込むことに成功。練習通りに最後のひと踏みまでもがききった結果、自身初のロードレースでの優勝を手にすることができました。
両手を挙げてゴールした時はこれまで味わったことのない、最高の瞬間でした。そしてそれ以上に嬉しかったのは、応援してくれている周りの人が自分のことのように喜んでくれたこと。これがなにより嬉しかったです。
この調子でもう1勝!と残りの2016年シーズンを戦いましたが、ここから勝つことができず。レースの厳しさからゴールにすら絡めないレースも多々あり、レースでエースを任されることの厳しさを味わいました。
そして勝てないまま迎えたJプロツアー最終戦おおいたクリテリウム。なんとしても勝負に絡みたいこのレースで、吉岡選手と勝ち逃げに乗ることに成功し、アシストをしてもらえる最高の展開に。最後は作戦通りスプリントになりましたが、3位という結果に終わりました。レース直後に勝負には絡めたものの、勝てなかった悔しさが込み上げてきました。
夢を追いかける、今が幸せ。日々精進し、恩返しをしたい
こうして過去を振り返ると、情熱だけで走り、大きな結果も出せていない大学時代の僕の背中を押し続け応援してくれた大阪経済大学(以下、大経大)と自転車部関係者の方々や、厳しくも選手を強くしたいという情熱のある指導で、1年で大きく成長させてくれた栂尾監督とコラッジョ川西関係者の方々。そして現在所属する那須ブラーゼンを作りあげてきた役員の方々、若杉社長、清水監督、スポンサー様、サプライヤー様、自分の時間を割いてでも会場まで応援に駆けつけてくださるファンの方々、いつも応援してくれる家族、その他にもここでは書ききれない本当に沢山の方々の支えの中で、自転車競技をできているのだと改めて実感し、感謝の気持ちでいっぱいです。そして夢を追いかける、今があることが幸せです。そんな今の自分のやるべきことは、常にベストな状態でレースを戦う準備をし、チームのために走り続けることです。今ある環境への感謝の気持ちを忘れず前に進み続ける姿を見てもらい、大経大、コラッジョ、ブラーゼンに入りたい!と1人でも多くの人が出てくることが1番の恩返しだと思っています。
最後になりますが、那須ブラーゼンは本当に沢山の人に支えられ活動できています。いつもありがとうございます。こんな素晴らしい環境の中、頑張るのは当たり前。必ず今年は結果を出して恩返ししたいです。「心の底からチームのために頑張りたい」とこれほど自然に思わせてくれるチームは他に無いと思います。いつも声援を送っていただける皆様に少しでも喜んでいただけるよう、日々精進していきます。去年果たせなかったJプロツアーでの優勝を、今年こそは取りたいと思います。
プロフィール
下島将輝 しもじままさき
1993年3月13日生
兵庫県川西市 出身
1993年3月13日生
兵庫県川西市 出身
スポーツがとにかく大好きで、中高6年間はバスケットボールに熱中。大阪経済大学に入学し、1年間はサークルでバスケをするが”競争”という面で物足りなさを感じる。もう一度本気でスポーツがしたいと悩んだ際に、自転車競技に興味を持ちそのまま同校自転車部に1年遅れで入部。競技の魅力に取り憑かれ、大きな実績は無かったが1年のハンデを取り返すために休学を決め、地元の地域密着型チームコラッジョ川西に加入。1年間で自転車の基礎から細かな戦略までを学び成長し、翌年那須ブラーゼンに加入しプロデビュー。
主な戦績
2016年 京都美山サイクルロードレースC1 優勝
2016年 ツール・ド・熊野プロローグ 8位
2016年 Jプロツアー大分クリテリウム 3位
2016年 ツール・ド・熊野プロローグ 8位
2016年 Jプロツアー大分クリテリウム 3位
Panaracer 「RACE EVO3」
2015年10月に発売されて以来、高評価を得ている「RACE EVO3」シリーズ。グリップ力と耐パンク性能に優れたハイバランスレーシングタイヤの「RACE」シリーズが耐貫通パンク性能をさらに強化してEVO3へと進化した。従来のケーシング補強材「PT」よりもさらに高い耐貫通パンク強度を誇る「ProTite」を採用、重量・基本性能はそのままに耐貫通パンク性能を24%向上させた。さらに待望のロードチューブレスタイヤ(700-23C、25C)をラインナップに追加。クリンチャーシリーズには新たに700-28Cサイズも追加されている。2016年4月にはRACE A EVO3 TUBULARをベースに、サイド部の耐パンク性能を強化した『RACE D EVO3 TUBULAR』も発売。ProTite Shield構造としたことで、サイド部のカットパンクを防ぐ。
RACE EVO3シリーズ ラインナップ
チューブラー | RACE D EVO3 | 700×23mm 黒/黒 290g | ¥10,734(税抜) |
RACE A EVO3 | 700×23mm 黒/黒 270g | ¥9,420(税抜) | |
RACE C EVO3 | 700×23mm 黒/黒 270g | ¥9,420(税抜) | |
700×26mm 黒/黒 310g | ¥9,420(税抜) | ||
チューブレス | RACE A EVO3 | 700×23C 黒/黒 280g | ¥7,860(税抜) |
700×25C 黒/黒 330g | ¥7,860(税抜) | ||
クリンチャー | RACE D EVO3 | 700×23C 黒/黒、黒/茶 230g | ¥6,173(税抜) |
700×25C 黒/黒、黒/茶 250g | ¥6,173(税抜) | ||
700×28C 黒/黒、黒/茶 270g [サイズ追加] | ¥6,173(税抜) | ||
RACE A EVO3 | 700×23C 黒/黒、黒/青、黒/赤 210g | ¥5,410(税抜) | |
700×25C 黒/黒、黒/青、黒/赤 240g | ¥5,410(税抜) | ||
700×28C 黒/黒、黒/青、黒/赤 250g | ¥5,410(税抜) | ||
RACE L EVO3 | 700×20C 黒/黒 175g | ¥5,410(税抜) | |
700×23C 黒/黒 180g | ¥5,410(税抜) | ||
700×25C 黒/黒 200g | ¥5,410(税抜) | ||
700×28C 黒/黒 220g | ¥5,410(税抜) |
提供:パナレーサー株式会社 編集:シクロワイアード