滋賀県日野町で毎年開催される「グリムMTBフェスティバル」は、関西や中部から多数の参加者で賑わうお祭りレースとして、地元の青年達の運営で23年も続けらている。そんな郷土愛を感じるイベントをレポート。

今年も大勢の参加者で賑わったグリムMTBフェスティバル今年も大勢の参加者で賑わったグリムMTBフェスティバル

琵琶湖の南東にある滋賀県日野町は、鈴鹿山脈の西麓に位置する人口約23,000人の町。江戸時代に輩出した近江商人の中でもこの地方は日野商人と呼ばれ、全国に日野椀や薬の行商が盛んだった商人の町。日野菜というカブの一種が特産で、今も古き良き昔の町並みと稲穂が育つ町だ。

そんな日野町にあるグリム冒険の森で、毎年9月の初めに行われる「グリムMTBフェスティバル」は、多数の参加者で賑わうMTBイベントとして有名だ。初開催当時はアウトドアブームの只中で、自然を活かして若者を呼び込みたいという思いから始まったこの「グリムMTBフェスティバル」は、今年で22回目(23年目)の開催を数えた。

スタートに並ぶジュニアサーキットの子供達スタートに並ぶジュニアサーキットの子供達 こちらはキッズサーキット、海賊が約1名こちらはキッズサーキット、海賊が約1名


会場のグリムの森に作られたMTBコースを整備したのは、地権者やグリム冒険の森、森林組合の協力を得た地元有志と、商工会青年部。またイベントは日野町商工会青年部を中心に、地元関係団体や地元有志で実行委員会を組織し運営するなど、地元のバックアップによって運営される大会なのだ。

毎年満員となる人気ぶりで、今回も4時間耐久にチーム・ソロを合わせ135チーム約400名と、ジュニア・キッズ57名が集まった。昨年は台風で中止となった今大会、2年ぶりの開催を楽しみにしていたとの声も多く聞くことができた。

グリムMTBフェスティバルスタートグリムMTBフェスティバルスタート グリム冒険の森に作られたトレイルコースグリム冒険の森に作られたトレイルコース


楽しいコースで気合いも入る!楽しいコースで気合いも入る! テクニックのいる登り区間はパッシングポイントの一つテクニックのいる登り区間はパッシングポイントの一つ


9月2日の大会当日は曇りがちな天気ながらも、ピットには参加チームの多数のテントが張られ、活気のある会場になった。4時間耐久で使われる一周4kmのコースは、シングルトラックをメインとし登り下りを適度に織り交ぜた走って楽しいレイアウトだ。難しい区間は無いものの、スピードを出して速く走ろうとすればテクニックを要する走り甲斐のある名コースだ。

プログラムはまずはジュニアサーキットからスタート。続くキッズサーキットともにピットエリア周辺を回るコースなので、親御さんからの応援合戦がコース脇間近で繰り広げられた。優勝したジュニアの山口創平君・キッズの香月空良君には自転車が贈られて二人とも満面の笑顔。表彰はシャンメリーファイトで締めくくられた。

立命館大学チアリーダーによる応援が嬉しい!立命館大学チアリーダーによる応援が嬉しい!

4時間耐久は135チームが一斉にスタート!早くも一周目が完了する頃には順位を狙うシリアスチームからまったり走るお仲間チームまでがバラバラになって走る。思い思いのスタイルで楽しむのがMTB草レースのいいところだ。

レースの間はMCがチームピットに訪れてインタビューを行なったり、立命館大学チアリーダー部の応援が行われたりと楽しい時間が過ぎていく。フードブースも充実し、おにぎりやカキ氷、B-1グランプリに出品予定の近江シャモを使った塩麹焼きそばなど多数。またしゃくなげ大使を務めるお二人も来場し、日野町特産品をアピールしていました。

耐久レースはピットワークも大事だ耐久レースはピットワークも大事だ しゃくなげ大使のお二人が手にするのは日野町特産品しゃくなげ大使のお二人が手にするのは日野町特産品


私も皆さんが楽しげに走る耐久レースに参加しするためコースへ。森の中は汗が噴き出すほど蒸し暑く、登り下りとも気が抜けないので一周戻っただけでヘロヘロになってしまいました…。

終盤では通り雨が激しく降ったりと自然の厳しさを味わいながらゴールをめざし、総合優勝はMTBやクロスで活躍する地元選手の伊澤優大・広大選手の「Bee Club 兄と弟」。2位と同一周回の20周ながらもラップタイムで競り勝ち地元の意地を見せた。

伊澤優大さんは「兄弟で優勝できて本当に嬉しいです。グリムのレースにはチームで9年間出場し、地元のコースなのでコース上の石一つまで覚えるくらい練習してます。グリムMTBは今では珍しいシャンパンファイトやメダルの贈呈もある充実した大会なので、もっとたくさんの人に知ってもらいたいですね」と語ってくれた。

4時間耐久総合表彰ではシャンパンファイト4時間耐久総合表彰ではシャンパンファイト 総合優勝の地元明の伊澤優大・広大チーム「Bee Club 兄と弟」総合優勝の地元明の伊澤優大・広大チーム「Bee Club 兄と弟」


レース後にインタビューした大所帯の4チーム15人で参加した地元企業の谷口工務店さんは「社員、職人、お客さんチームで5回目の参加です。今年は一致団結する為にチームジャージを作りました。ジャージ代の半額と参加費は会社持ちで、企業PRも兼ねています」と毎年参加を楽しみにしているそうだ。

4チーム15人参加の地元企業谷口工務店の皆さん4チーム15人参加の地元企業谷口工務店の皆さん 大会の最後には大抽選会が行われて終了。MCからは日野町からのメッセージが読み上げられた。

「自分たちが生まれ育った街を、もっと活気のある街にしたい。若人が集まる街、若い力を生かせる街になってほしい。信じられているのだろうか、僕たちの力を?何か僕たちに出来ることはないだろうか?

そんな思いから「マウンテンバイクフェスティバル」が始まり23年の月日がたち、開始当時の思いを更に見つめ直し、私たち日野町に住む若者は、この日野町をもっと魅力のある若者の街にできるよう、それぞれの立場で頑張りたいと思います。日野町に住む皆さん、日野町を愛して下さる皆さん、どうかこれからも応援する意味でも、これらのイベントをはじめとして、私たちに力を貸してください」

メッセージが心に残る、また来年も参加したいと思わせてくれたイベントだった。


text&photo:Akihiro.NAKAO