2012/02/16(木) - 14:44
サイクリストにとって楽園ともいえる環境が広がる沖縄。沖縄では魅力的な環境を機運が高まっている。編集部は今の沖縄サイクリング事情をレポートするべく寒い東京を抜けだして沖縄へ飛び、サイクリスト目線からの取材を行った。
日本国内で唯一亜熱帯に属する南国、沖縄。1年の平均気温は22℃と平均して温暖で、一番寒くなる2月でも平均気温は16℃を超える。季節を問わず、碧い海や亜熱帯の深い緑を目に楽しみながらサイクリングを行うことができる。
サイクリングへの関心が年々高まっている沖縄では、レースやイベントなども多く開催されている。美ら島オキナワCentury Runやツール・ド・おきなわ、ECOスピリットライド&ウォークin南城市やシュガーライド久米島など、本島や近隣の島でいくつものイベントが開催されるようになった。
沖縄県の観光協会ともいえる「沖縄観光コンベンションビューロー」では、サイクリング・アイランド・オキナワ」と銘打ったPR活動を実施している。自転車で走って魅力のある沖縄に、イベントだけでなく、普段から走りに来て欲しいという願いを込めたキャンペーンだ。いわば自転車を使ったスポーツ・ツーリズム。沖縄を自転車で走ることで感じて欲しいというもの。
そこで今回、編集部では沖縄本島中部の恩納村を拠点に、北中部エリアのサイクリング環境の素晴らしさを体感するべく実走取材を行った。ロケは1月16~18日。夏用ウェアで走っているが、まったく素のままだ。
・海の上を走る「海中道路」を行く快走コースを走る
走ったコースは、恩納村を拠点に、うるま市の海中道路(かいちゅうどうろ)を渡り、平安座島、宮城島、伊計島など、本島北・中部の地区を中心に訪れてみた(地図参照)。今回の取材旅に同行してアドバイスをいただいたのは沖縄観光コンベンションビューローの福井英之さん。沖縄の観光に関するあらゆることをお仕事にする方の心強いガイドを得て、編集部の綾野・磯部がロードバイクで走りだした。
それではふたりが実際に走ったコースに沿いながら、魅力あふれるサイクリング環境と立ち寄りスポットをご紹介していこう。
拠点とした恩納村のホテル「リザンシーパークホテル谷茶ベイ」は、リゾートホテルでありながら美ら島オキナワCentury Runのオフィシャルホテルなどにも指定されているため、我々サイクリストの受け入れも慣れたもの。
自転車はクロークでも預かってもらえるが、客室への持ち込みもOKだった。ただしカーペットがオイルなどで汚れないようにビニールシートなどは予め用意して持っていった(それがマナーだ)。
この時期、冬とはいえ沖縄は温かい。晴れれば半袖で走れるし、雨でも寒くはないので自転車で走るのはそれほど苦痛じゃない。ロケ当日は曇りときどき晴れと、最高の天気ではなかったけれど、冷たい風と雪の関東から来ればそれだけで身も心も溶けるようだ。
半袖ベースの薄着にとまどいながら、国道58号線を走りだす。沖縄本島の「くびれ」になっているこのあたり。目指すは反対側の海岸線、金武湾側のうるま市、そして海中道路だ。恩納村から反対側の海岸線に出るには軽く山を超える。ちょうどいいウォームアップだ。ロードでの快走がテーマの走りなので、ふたりともレースウェアに小さめのバックパックという軽装だ。
レインギアを装備していれば安心だから、そのスペースがあればありがたい。他に持ち物はパンク修理キットとポンプ程度と、ロード練習スタイルと大差は無し。もっとも、今回は福井さんがレンタカーで随行してくれたが、極力頼らない方針だ。
・朝ご飯は100円そば?地元のローカルフードに触れる。
ところで、沖縄の郷土料理といえば真っ先に出てくるのが沖縄そばではないだろうか。琉球の方言では「すば」と呼ばれ、独特な食感の麺を和風のダシと一緒に頂く。てびち(豚足)やソーキ(スペアリブ)などをトッピングすることで「ソーキそば」「てびちそば」という様に名称が変わる。県民に愛され、沖縄で最もポピュラーなローカルフードと言えるだろう。
街中をサイクリングしていると実に多くのそば屋さんが見受けられる。朝から営業している「100円そば」の看板が出ているお店を発見。私たち取材陣もかぐわしいダシの香りにつられて立ち寄ることにした。朝食代わりだ。野菜天ぷらが乗った伝統スタイルの「すば」に、備え付けの島唐辛子を泡盛に浸けた調味料「こーれーぐす」をかけていただくと、なんともいえない風味豊かな味!
たったワンコインでこんなに美味しい思いができるなんて、沖縄でなければ体験することのできない食文化である。訪れたお店はいわゆる駅そばのような感覚で、店の前でズズッと豪快に立ち食いをするスタイル。自転車から離れる心配もなく気軽に立ち寄ることができサイクリストにもぴったりだと思う。食堂のおばちゃん曰く「普通のそばと手間も量もあんまり変わんないんだから!」だって。確かに、オトク(笑)。
取材したお店の裏手には高校があり、学生向けのスーパーボリューム弁当も店頭に並んでいた。メニューを見てみると、タコライスやチャンプルー弁当など東京ではまず見かけないメニューに驚かされる。ホテルの料理も素敵だが、こうした地元に愛されるお店で沖縄のディープな食文化に触れるのも、また一つの魅力だと思う。
・海中道路がつなぐローカルな島々を探訪
100円そばで腹ごしらえを済ませ、交通量の多いうるま市を抜け海中道路を目指して南下する。ビーチに沿った海岸線の道を走ると、やがて海中道路の入口へと到着した。海中道路は、沖縄本島と浜比嘉島、平安座島、宮城島、伊計島を結ぶ、その名の通りサンゴ硝の浅瀬を貫く全長4.7kmの道だ。海の中を潜るわけじゃないが、海の上につけられた道路は、視界を遮るものがなくて実に気持ちがいい。
私は今までにも海中道路を走った経験があったものの、いずれも天気が悪くその魅力を体験できずにいたが、この日はスッキリとした晴れ。左右に見渡す限り海が広がるダイナミックな光景に、抜けるような爽快な気分を味わうことができた。道路は片側2車線で、自転車が走るレーンと路肩も広く取られていて走りやすいのもサイクリストにとっては嬉しい。あまりメジャーな観光地ではないのでクルマも少ない。
海中道路の中心部分には道の駅ならぬ「海の駅」が設置され、爽快な景色を眺めながら一休みすることが可能だ。
こちらでは沖縄風天ぷらのお店が有名で、揚げたてを食べることができる。道の駅といえば地元グルメ!ということで、食いしん坊の取材班ふたりは、しっかりと名物の「もずく天」と「さかな天」の実食取材を敢行した。
沖縄の天ぷらはフリッターを思わせるようなダシの効いた厚い衣が特徴で、揚げたても相まってとっても美味しかった。ちなみにお値段は1つ100円ぐらい。安いっ!
海の駅で一休みした後は、海中道路を渡りきって平安座島へと渡る。平安座島は島の大半が石油貯蔵施設になっていて、沖縄の一大石油基地となっている。海中道路は本来この石油基地から本島へのパイプラインを敷設するため、また干潮時に浅瀬を徒歩や車で通行していた住民への見返り事業として建設されたという経緯もあるそうだ。大きな石油貯蔵タンクを横目に見ながら平安座島を通過して、伊計島を目指した。
伊計島は面積1.75平方キロ、自転車でゆっくり1周しても20分ほどの小島で、沖縄のローカルな雰囲気を色濃く残す島だ。本島とは近いながら観光コースからは外れているので、のんびりサイクリングを楽しむにはうってつけと言えるだろう。島のほとんどはサトウキビ畑が広がり、石垣と赤瓦の古民家も多い。サイクリング中、小さな漁村の集落のはずれに「オバー達の夕涼み所」と書かれた場所を見つけた時は思わず和んでしまった。
付近の宮城島、浜比嘉島も同様の環境が広がり、道路にはほとんどクルマも走っておらず非常に走りやすい。普段交通渋滞の多い東京の道路を走っている私には天国のように感じられた。
このエリアの島々は全て橋で繋がっているので、サイクリングで海中道路を訪れたら是非とも島めぐりを楽しんでほしい。
次回は伊計島から本島へと戻り、さらなる立ち寄りスポットと沖縄グルメを紹介します。
今回走ったコース(ルートラボ)
http://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=218493408b8c74a6c318e9bac2…
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO
取材協力:財団法人沖縄観光コンベンションビューロー
日本国内で唯一亜熱帯に属する南国、沖縄。1年の平均気温は22℃と平均して温暖で、一番寒くなる2月でも平均気温は16℃を超える。季節を問わず、碧い海や亜熱帯の深い緑を目に楽しみながらサイクリングを行うことができる。
サイクリングへの関心が年々高まっている沖縄では、レースやイベントなども多く開催されている。美ら島オキナワCentury Runやツール・ド・おきなわ、ECOスピリットライド&ウォークin南城市やシュガーライド久米島など、本島や近隣の島でいくつものイベントが開催されるようになった。
沖縄県の観光協会ともいえる「沖縄観光コンベンションビューロー」では、サイクリング・アイランド・オキナワ」と銘打ったPR活動を実施している。自転車で走って魅力のある沖縄に、イベントだけでなく、普段から走りに来て欲しいという願いを込めたキャンペーンだ。いわば自転車を使ったスポーツ・ツーリズム。沖縄を自転車で走ることで感じて欲しいというもの。
そこで今回、編集部では沖縄本島中部の恩納村を拠点に、北中部エリアのサイクリング環境の素晴らしさを体感するべく実走取材を行った。ロケは1月16~18日。夏用ウェアで走っているが、まったく素のままだ。
・海の上を走る「海中道路」を行く快走コースを走る
走ったコースは、恩納村を拠点に、うるま市の海中道路(かいちゅうどうろ)を渡り、平安座島、宮城島、伊計島など、本島北・中部の地区を中心に訪れてみた(地図参照)。今回の取材旅に同行してアドバイスをいただいたのは沖縄観光コンベンションビューローの福井英之さん。沖縄の観光に関するあらゆることをお仕事にする方の心強いガイドを得て、編集部の綾野・磯部がロードバイクで走りだした。
それではふたりが実際に走ったコースに沿いながら、魅力あふれるサイクリング環境と立ち寄りスポットをご紹介していこう。
拠点とした恩納村のホテル「リザンシーパークホテル谷茶ベイ」は、リゾートホテルでありながら美ら島オキナワCentury Runのオフィシャルホテルなどにも指定されているため、我々サイクリストの受け入れも慣れたもの。
自転車はクロークでも預かってもらえるが、客室への持ち込みもOKだった。ただしカーペットがオイルなどで汚れないようにビニールシートなどは予め用意して持っていった(それがマナーだ)。
この時期、冬とはいえ沖縄は温かい。晴れれば半袖で走れるし、雨でも寒くはないので自転車で走るのはそれほど苦痛じゃない。ロケ当日は曇りときどき晴れと、最高の天気ではなかったけれど、冷たい風と雪の関東から来ればそれだけで身も心も溶けるようだ。
半袖ベースの薄着にとまどいながら、国道58号線を走りだす。沖縄本島の「くびれ」になっているこのあたり。目指すは反対側の海岸線、金武湾側のうるま市、そして海中道路だ。恩納村から反対側の海岸線に出るには軽く山を超える。ちょうどいいウォームアップだ。ロードでの快走がテーマの走りなので、ふたりともレースウェアに小さめのバックパックという軽装だ。
レインギアを装備していれば安心だから、そのスペースがあればありがたい。他に持ち物はパンク修理キットとポンプ程度と、ロード練習スタイルと大差は無し。もっとも、今回は福井さんがレンタカーで随行してくれたが、極力頼らない方針だ。
・朝ご飯は100円そば?地元のローカルフードに触れる。
ところで、沖縄の郷土料理といえば真っ先に出てくるのが沖縄そばではないだろうか。琉球の方言では「すば」と呼ばれ、独特な食感の麺を和風のダシと一緒に頂く。てびち(豚足)やソーキ(スペアリブ)などをトッピングすることで「ソーキそば」「てびちそば」という様に名称が変わる。県民に愛され、沖縄で最もポピュラーなローカルフードと言えるだろう。
街中をサイクリングしていると実に多くのそば屋さんが見受けられる。朝から営業している「100円そば」の看板が出ているお店を発見。私たち取材陣もかぐわしいダシの香りにつられて立ち寄ることにした。朝食代わりだ。野菜天ぷらが乗った伝統スタイルの「すば」に、備え付けの島唐辛子を泡盛に浸けた調味料「こーれーぐす」をかけていただくと、なんともいえない風味豊かな味!
たったワンコインでこんなに美味しい思いができるなんて、沖縄でなければ体験することのできない食文化である。訪れたお店はいわゆる駅そばのような感覚で、店の前でズズッと豪快に立ち食いをするスタイル。自転車から離れる心配もなく気軽に立ち寄ることができサイクリストにもぴったりだと思う。食堂のおばちゃん曰く「普通のそばと手間も量もあんまり変わんないんだから!」だって。確かに、オトク(笑)。
取材したお店の裏手には高校があり、学生向けのスーパーボリューム弁当も店頭に並んでいた。メニューを見てみると、タコライスやチャンプルー弁当など東京ではまず見かけないメニューに驚かされる。ホテルの料理も素敵だが、こうした地元に愛されるお店で沖縄のディープな食文化に触れるのも、また一つの魅力だと思う。
・海中道路がつなぐローカルな島々を探訪
100円そばで腹ごしらえを済ませ、交通量の多いうるま市を抜け海中道路を目指して南下する。ビーチに沿った海岸線の道を走ると、やがて海中道路の入口へと到着した。海中道路は、沖縄本島と浜比嘉島、平安座島、宮城島、伊計島を結ぶ、その名の通りサンゴ硝の浅瀬を貫く全長4.7kmの道だ。海の中を潜るわけじゃないが、海の上につけられた道路は、視界を遮るものがなくて実に気持ちがいい。
私は今までにも海中道路を走った経験があったものの、いずれも天気が悪くその魅力を体験できずにいたが、この日はスッキリとした晴れ。左右に見渡す限り海が広がるダイナミックな光景に、抜けるような爽快な気分を味わうことができた。道路は片側2車線で、自転車が走るレーンと路肩も広く取られていて走りやすいのもサイクリストにとっては嬉しい。あまりメジャーな観光地ではないのでクルマも少ない。
海中道路の中心部分には道の駅ならぬ「海の駅」が設置され、爽快な景色を眺めながら一休みすることが可能だ。
こちらでは沖縄風天ぷらのお店が有名で、揚げたてを食べることができる。道の駅といえば地元グルメ!ということで、食いしん坊の取材班ふたりは、しっかりと名物の「もずく天」と「さかな天」の実食取材を敢行した。
沖縄の天ぷらはフリッターを思わせるようなダシの効いた厚い衣が特徴で、揚げたても相まってとっても美味しかった。ちなみにお値段は1つ100円ぐらい。安いっ!
海の駅で一休みした後は、海中道路を渡りきって平安座島へと渡る。平安座島は島の大半が石油貯蔵施設になっていて、沖縄の一大石油基地となっている。海中道路は本来この石油基地から本島へのパイプラインを敷設するため、また干潮時に浅瀬を徒歩や車で通行していた住民への見返り事業として建設されたという経緯もあるそうだ。大きな石油貯蔵タンクを横目に見ながら平安座島を通過して、伊計島を目指した。
伊計島は面積1.75平方キロ、自転車でゆっくり1周しても20分ほどの小島で、沖縄のローカルな雰囲気を色濃く残す島だ。本島とは近いながら観光コースからは外れているので、のんびりサイクリングを楽しむにはうってつけと言えるだろう。島のほとんどはサトウキビ畑が広がり、石垣と赤瓦の古民家も多い。サイクリング中、小さな漁村の集落のはずれに「オバー達の夕涼み所」と書かれた場所を見つけた時は思わず和んでしまった。
付近の宮城島、浜比嘉島も同様の環境が広がり、道路にはほとんどクルマも走っておらず非常に走りやすい。普段交通渋滞の多い東京の道路を走っている私には天国のように感じられた。
このエリアの島々は全て橋で繋がっているので、サイクリングで海中道路を訪れたら是非とも島めぐりを楽しんでほしい。
次回は伊計島から本島へと戻り、さらなる立ち寄りスポットと沖縄グルメを紹介します。
今回走ったコース(ルートラボ)
http://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=218493408b8c74a6c318e9bac2…
旅のアドバイザー
福井英之さん(沖縄観光コンベンションビューロー)
沖縄の観光・リゾート、コンベンション振興の推進母体として、沖縄県を訪れる人への様々なサポートを行う「財団法人沖縄観光コンベンションビューロー」に勤務。沖縄の観光にまつわるあらゆることをお仕事にしている福井さんは、沖縄の伝統的な手漕ぎ船競争「ハーリー」を愛する海の男。恩納村周辺に住んだこともあり、MTBでの自転車散歩も楽しむ44歳。
福井英之さん(沖縄観光コンベンションビューロー)
沖縄の観光・リゾート、コンベンション振興の推進母体として、沖縄県を訪れる人への様々なサポートを行う「財団法人沖縄観光コンベンションビューロー」に勤務。沖縄の観光にまつわるあらゆることをお仕事にしている福井さんは、沖縄の伝統的な手漕ぎ船競争「ハーリー」を愛する海の男。恩納村周辺に住んだこともあり、MTBでの自転車散歩も楽しむ44歳。
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO
取材協力:財団法人沖縄観光コンベンションビューロー
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