2019/11/28(木) - 12:01
11月23日(土)、関東一円でチェーン展開する自転車ショップのセオサイクルが、大規模なロードレースイベント「セオフェス」を開催した。生憎の雨模様となったが、タフなサイクリストが千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイに集結し、シーズンの締めくくりレースとしてしのぎを削った。
関東在住のサイクリストであれば一度は黄色の看板を掲げた自転車屋を見かけたことがあるはずだ。セオサイクルは千葉県を中心に関東一円でチェーン展開を行う大規模な自転車屋であり、一般軽快車のみを取り扱う店舗もあれば、スポーツサイクルを取り扱う店舗もあるというマルチな展開を行っている。そんなセオサイクルが毎年恒例のロードレースイベント「セオフェス」を千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイにて開催した。
勤労感謝の日でもある11月23日は「天気予報よ、外れろ!」という淡い期待も虚しく朝から雨模様。車移動のお供として流していたJ-WAVEでは、一日中雨、気温は平年並みだというが、参加者は集まるのか不安も感じつつ、首都高を抜け筆者は袖ヶ浦を目指すことに。
袖ヶ浦フォレストレースウェイは圏央道の木更津東ICから車で10分。東京湾アクアラインが都内や神奈川県と、館山自動車道と圏央道が千葉県内とサーキットを繋ぐため、首都圏内から足を運びやすいのだ。自動車移動が選択肢にある方ならば、比較的アクセスしやすいクローズドサーキットだ。
朝7時に会場到着予定で車を走らせた筆者は、幸か不幸かは判断できないが、アクアラインの渋滞に捕まること無くスムーズにレース会場入り。一般の行楽客の数は控え目であることは間違いない。パドックの駐車場に車を停め、雨用の身支度を整えていると、続々とサイクリストたちが会場に集ってくる。私の不安は杞憂に終わった。想像以上にサイクリストはタフネスである。
晩秋の雨ということもあり、寒さが厳しいと思いきや、サーキットの温度計は10.9℃とJ-WAVEの情報通り、カッパを着用している状態では寒さを感じない。もちろん雨に濡れたら、冷えてくるはずだ。
セオフェスは午前中にエンデューロ(2時間と4時間)、午後に個人ロードレースが開催されるホビーレースイベント。朝の袖ヶ浦フォレストレースウェイに集結したサイクリストの殆どが、チームもしくは個人で時間耐久レースに参加する方々だ。チームメイトともに談笑しながら準備を進める人もいれば、結果を求めてローラー台でアップする人も。好天の時と比べて、準備が若干忙しいようだ。
開幕式と競技説明が行われたらいよいよエンデューロがスタートする。マヴィック、シマノ、ブリヂストンサイクル、日直商会のサポートカーが先導するパレード走行を1周した後、レースはローリングスタートとなる。2時間と4時間の選手が混在する大集団は、サポートとして参加しているブリヂストンアンカーの石橋選手と孫崎選手とともに袖ヶ浦フォレストレースウェイを駆け出し始めた。
袖ヶ浦フォレストレースウェイとは、FIA(国際自動車連盟、自転車で言うところのUCI)の規格に適合したサーキット。全長2,436mの中に14のコーナーが詰め込まれたコースとして四輪と二輪の愛好家から親しまれてる。最大斜度は4.2%とほどほど。なだらかな斜面だが、登っては下るを繰り返しており、パワーのあるレーサーは脚力で押し切れるフラットコース、初中級者には時間が経過するごとに険しくなってくるチャレンジングなコースだ。
前日より降り続く雨は時折弱くなるものの、止む気配は一切ない。筆者はレース中に雨があがるだろうと予想していたのだが、レース開始より1時間程度経過したところで強弱を繰り返す雨足に屈し「この日は一日中雨だ」と悟った。
雨天時のライドで気になるのは路面の水分。路面が濡れると滑りやすくなるのはサイクリストにとっては百も承知のことであり、集団も安全なスピードでコーナーに入っていく。ただ、袖ヶ浦フォレストレースウェイは高低差があるため、路面に落ちた雨粒は川となり低い位置に水が流れていき、水溜りとなってしまっていた。水しぶきを巻き上げながら走行していく様子は、さながら今年の世界選手権である。途中、消防車で排水を試みていたようだ。その様な状況下で黙々と走り続ける選手たちは非常に屈強である。
スタートラインからコースを一周してきたところで、「流石にピットウォールまで出て応援している人はいないだろう」なんて思っていたが、傘をさしてチームメイトを応援しているチームはいた。交代のタイミングを伝える必要もあるのだろうが、ハードなコンディションだからこそピットからの応援は励みになったはずだ。
とはいえ多くの人はピットガレージの下で雨宿りをしているため、選手交代ゾーンは空いている。普段のサーキットエンデューロではガレージ前に人が多くおり、走行帯との境目で選手交代するケースが多い。しかし、スペースが多くある今回は、SUPER GTの様に選手が走行エリアから外れ、ガレージ前で選手交代を行っていた。また、チームメイトも発見しやすかったに違いない。
ストイックに周回数を重ねていくエンデューロはフィニッシュを迎える。チェッカーフラッグを受けた選手の顔は様々で、厳しい状況で走りきった満足感を見せる方もいれば、安堵した顔の方、この日のハードコンディションを険しい顔で表現する方も。2時間のカテゴリーで優勝した選手はガッツポーズでレースを終え、4時間の優勝チームはバイクを掲げフィニッシュラインを通過した。
エンデューロが終了すると、セオフェスは個人ロードレースが次々と開催される。まず行われたのはキッズカテゴリーだ。2学年ごとにカテゴリーが分けられた小学生クラスでは、大人のレース顔負けのトレインを組むスプリントレースを披露。選手たちが真剣な表情をしているのは当然なのだが、ピットウォールに顔を出した親御さんの応援の熱が高い。もしかしたら、この日一番の激が飛んでいたかもしれない。5-6年生クラスではこの日最も熱いガッツポーズが繰り出された。
個人ロードレースは年齢や性別、脚力ごとにカテゴリーが分けられており、次々とレースが始まる。中学生やシニア、レディースクラスなどを含めた8クラスの選手たちがそれぞれの舞台でしのぎを削り合り、フィニッシュラインを越えれば健闘を称え合う。周りの選手はライバルだが、集団全員で展開を作り上げる仲間でもあると感じさせるロードレースの一幕を垣間見た。
セオフェスには毎年キッチンカーが訪れており、ケバブやハンバーガーなど様々なグルメが楽しめる。肉巻きおにぎりを推していたお店では、豚汁も用意していたが、午前中の早い段階で売り切れ御免になってしまったとか。やはり雨天でのレースは寒かったようだ。
また、50社を越える出展ブースが展開されているのもセオフェスの特徴だ。ピナレロやスペシャライズド、ビアンキ、フォーカスなど車体ブランドを始め、マヴィックやキャットアイ、カブトなどパーツやアクセサリーブランドも来場。注目のブランドのブースには雨を物ともせず、製品の詳細を伺うためにブースに足を運ぶ参加者もいたようだ。
各社試乗車を用意しており、雨天でも試乗はウェルカム。パドック内に用意された簡易試乗コースは常時使用可能で、レースの合間にはサーキットで最新バイクを楽しむことができる。最新バイクを雨天で走らせることができる機会は非常に珍しいケースではないだろうか。各社ディスクブレーキ搭載バイクが増加していく中で、雨天下でのディスクブレーキパフォーマンスを確認できたはずだ。
レースの進行と同時に次々と行われる表彰式。優勝者には自転車がプレゼントされるというカテゴリーもあったり、入賞者全員に協賛各社の製品が詰め込まれたギフトバッグが贈られたりと、セオフェスの入賞プライズは非常に太っ腹だ。最新機材の試乗もでき、レースで入賞できれば自転車グッズもたくさん貰える。このように充実したイベントは稀有な存在。首都圏のサイクリストは参加する価値は非常に高いはずだ。
レースやブース、表彰式に顔を出しているとあっという間に最終カテゴリーのフィニッシュを迎える。ハードウェットコンディションだったが救急車が出動することもなく、穏やかにセオフェスの幕は下りた。既に来年の開催も決定しているとのことなので、今から来年の11月21日の予定を空けておこう。来年こそは晴れると信じて…。
text&photo : Gakuto Fujiwara
関東在住のサイクリストであれば一度は黄色の看板を掲げた自転車屋を見かけたことがあるはずだ。セオサイクルは千葉県を中心に関東一円でチェーン展開を行う大規模な自転車屋であり、一般軽快車のみを取り扱う店舗もあれば、スポーツサイクルを取り扱う店舗もあるというマルチな展開を行っている。そんなセオサイクルが毎年恒例のロードレースイベント「セオフェス」を千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイにて開催した。
勤労感謝の日でもある11月23日は「天気予報よ、外れろ!」という淡い期待も虚しく朝から雨模様。車移動のお供として流していたJ-WAVEでは、一日中雨、気温は平年並みだというが、参加者は集まるのか不安も感じつつ、首都高を抜け筆者は袖ヶ浦を目指すことに。
袖ヶ浦フォレストレースウェイは圏央道の木更津東ICから車で10分。東京湾アクアラインが都内や神奈川県と、館山自動車道と圏央道が千葉県内とサーキットを繋ぐため、首都圏内から足を運びやすいのだ。自動車移動が選択肢にある方ならば、比較的アクセスしやすいクローズドサーキットだ。
朝7時に会場到着予定で車を走らせた筆者は、幸か不幸かは判断できないが、アクアラインの渋滞に捕まること無くスムーズにレース会場入り。一般の行楽客の数は控え目であることは間違いない。パドックの駐車場に車を停め、雨用の身支度を整えていると、続々とサイクリストたちが会場に集ってくる。私の不安は杞憂に終わった。想像以上にサイクリストはタフネスである。
晩秋の雨ということもあり、寒さが厳しいと思いきや、サーキットの温度計は10.9℃とJ-WAVEの情報通り、カッパを着用している状態では寒さを感じない。もちろん雨に濡れたら、冷えてくるはずだ。
セオフェスは午前中にエンデューロ(2時間と4時間)、午後に個人ロードレースが開催されるホビーレースイベント。朝の袖ヶ浦フォレストレースウェイに集結したサイクリストの殆どが、チームもしくは個人で時間耐久レースに参加する方々だ。チームメイトともに談笑しながら準備を進める人もいれば、結果を求めてローラー台でアップする人も。好天の時と比べて、準備が若干忙しいようだ。
開幕式と競技説明が行われたらいよいよエンデューロがスタートする。マヴィック、シマノ、ブリヂストンサイクル、日直商会のサポートカーが先導するパレード走行を1周した後、レースはローリングスタートとなる。2時間と4時間の選手が混在する大集団は、サポートとして参加しているブリヂストンアンカーの石橋選手と孫崎選手とともに袖ヶ浦フォレストレースウェイを駆け出し始めた。
袖ヶ浦フォレストレースウェイとは、FIA(国際自動車連盟、自転車で言うところのUCI)の規格に適合したサーキット。全長2,436mの中に14のコーナーが詰め込まれたコースとして四輪と二輪の愛好家から親しまれてる。最大斜度は4.2%とほどほど。なだらかな斜面だが、登っては下るを繰り返しており、パワーのあるレーサーは脚力で押し切れるフラットコース、初中級者には時間が経過するごとに険しくなってくるチャレンジングなコースだ。
前日より降り続く雨は時折弱くなるものの、止む気配は一切ない。筆者はレース中に雨があがるだろうと予想していたのだが、レース開始より1時間程度経過したところで強弱を繰り返す雨足に屈し「この日は一日中雨だ」と悟った。
雨天時のライドで気になるのは路面の水分。路面が濡れると滑りやすくなるのはサイクリストにとっては百も承知のことであり、集団も安全なスピードでコーナーに入っていく。ただ、袖ヶ浦フォレストレースウェイは高低差があるため、路面に落ちた雨粒は川となり低い位置に水が流れていき、水溜りとなってしまっていた。水しぶきを巻き上げながら走行していく様子は、さながら今年の世界選手権である。途中、消防車で排水を試みていたようだ。その様な状況下で黙々と走り続ける選手たちは非常に屈強である。
スタートラインからコースを一周してきたところで、「流石にピットウォールまで出て応援している人はいないだろう」なんて思っていたが、傘をさしてチームメイトを応援しているチームはいた。交代のタイミングを伝える必要もあるのだろうが、ハードなコンディションだからこそピットからの応援は励みになったはずだ。
とはいえ多くの人はピットガレージの下で雨宿りをしているため、選手交代ゾーンは空いている。普段のサーキットエンデューロではガレージ前に人が多くおり、走行帯との境目で選手交代するケースが多い。しかし、スペースが多くある今回は、SUPER GTの様に選手が走行エリアから外れ、ガレージ前で選手交代を行っていた。また、チームメイトも発見しやすかったに違いない。
ストイックに周回数を重ねていくエンデューロはフィニッシュを迎える。チェッカーフラッグを受けた選手の顔は様々で、厳しい状況で走りきった満足感を見せる方もいれば、安堵した顔の方、この日のハードコンディションを険しい顔で表現する方も。2時間のカテゴリーで優勝した選手はガッツポーズでレースを終え、4時間の優勝チームはバイクを掲げフィニッシュラインを通過した。
エンデューロが終了すると、セオフェスは個人ロードレースが次々と開催される。まず行われたのはキッズカテゴリーだ。2学年ごとにカテゴリーが分けられた小学生クラスでは、大人のレース顔負けのトレインを組むスプリントレースを披露。選手たちが真剣な表情をしているのは当然なのだが、ピットウォールに顔を出した親御さんの応援の熱が高い。もしかしたら、この日一番の激が飛んでいたかもしれない。5-6年生クラスではこの日最も熱いガッツポーズが繰り出された。
個人ロードレースは年齢や性別、脚力ごとにカテゴリーが分けられており、次々とレースが始まる。中学生やシニア、レディースクラスなどを含めた8クラスの選手たちがそれぞれの舞台でしのぎを削り合り、フィニッシュラインを越えれば健闘を称え合う。周りの選手はライバルだが、集団全員で展開を作り上げる仲間でもあると感じさせるロードレースの一幕を垣間見た。
セオフェスには毎年キッチンカーが訪れており、ケバブやハンバーガーなど様々なグルメが楽しめる。肉巻きおにぎりを推していたお店では、豚汁も用意していたが、午前中の早い段階で売り切れ御免になってしまったとか。やはり雨天でのレースは寒かったようだ。
また、50社を越える出展ブースが展開されているのもセオフェスの特徴だ。ピナレロやスペシャライズド、ビアンキ、フォーカスなど車体ブランドを始め、マヴィックやキャットアイ、カブトなどパーツやアクセサリーブランドも来場。注目のブランドのブースには雨を物ともせず、製品の詳細を伺うためにブースに足を運ぶ参加者もいたようだ。
各社試乗車を用意しており、雨天でも試乗はウェルカム。パドック内に用意された簡易試乗コースは常時使用可能で、レースの合間にはサーキットで最新バイクを楽しむことができる。最新バイクを雨天で走らせることができる機会は非常に珍しいケースではないだろうか。各社ディスクブレーキ搭載バイクが増加していく中で、雨天下でのディスクブレーキパフォーマンスを確認できたはずだ。
レースの進行と同時に次々と行われる表彰式。優勝者には自転車がプレゼントされるというカテゴリーもあったり、入賞者全員に協賛各社の製品が詰め込まれたギフトバッグが贈られたりと、セオフェスの入賞プライズは非常に太っ腹だ。最新機材の試乗もでき、レースで入賞できれば自転車グッズもたくさん貰える。このように充実したイベントは稀有な存在。首都圏のサイクリストは参加する価値は非常に高いはずだ。
レースやブース、表彰式に顔を出しているとあっという間に最終カテゴリーのフィニッシュを迎える。ハードウェットコンディションだったが救急車が出動することもなく、穏やかにセオフェスの幕は下りた。既に来年の開催も決定しているとのことなので、今から来年の11月21日の予定を空けておこう。来年こそは晴れると信じて…。
text&photo : Gakuto Fujiwara
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