2018/12/06(木) - 12:14
秋も深まる中、山梨県富士川エリアで開催された南アルプスロングライド。2日間に渡って行われたイベントの中でも、2日目に開催されたツール・ド・富士川ステージのレポート前編をお届けしよう。
2日間で走行距離190km、獲得標高2,900mを走破する南アルプスロングライド。日本を代表する山岳地帯の一つである南アルプスの麓を舞台に美しい紅葉と山梨のグルメを楽しむ事ができる国内屈指の山岳ロングライドイベントだ。
大会のメインイベントとなる2日目のツール・ド・富士川ステージは距離110km、獲得標高1900mを誇る山岳コース。一見、距離はそこまで長くないように思えるが、大きく3つの峠を登り、常にアップダウンが続くコースは予想以上の難関コースとなっており、非常に走りごたえのあるレイアウトとなっているのが特徴だ。脚力次第では最後の平林みさき耕舎へ至る登りをパスして92km地点でゴールすることも可能だが、山頂では夕焼け空に富士山という大会のハイライトとも言うべき絶景を広がっているため、ぜひ挑戦したいところ。
2年ぶりの快晴となった前日ライドに引き続き、清々しい秋晴れになりそうなツール・ド・富士川ステージ当日。まだ早朝ということもあり、遠く見える山々の稜線には靄のような雲が立ち込めるが、朝日が登るにつれて太陽光が雲を吹き飛ばし、世界が広がっていくかのように青空が広がり見せる。
とはいっても朝方は冷えるため、ウインドブレーカーを着込み、仲間と談笑しながらスタートを待つ。会場では1日目と同様に第0エイドと称し、ねじりがしとコーヒーが用意されているため、手持ち無沙汰にならず、各々優雅なスタート前のカフェタイム。そもそも南アルプスロングライドはスタート時間が他のロングライドイベントに比べそこまで早くないため、忙しくなりがちな朝の時間もすこしゆったりとした時間が流れているのだ。
そうこうしているうちに日も昇り、開会式の時間に。まずは富士川町の町長から美しい景色とグルメを楽しんで欲しいとの挨拶。そして続いてやまなしサイクリングプロジェクト青木理事長のパワー溢れる挨拶が行われ、続いてゲストライダーの今中大介さん、石垣美帆さん、エース栗原さんが次々に登壇。今日の意気込みを話していく。
最後には恒例となった掛け声が行われたのだが、今回は青木理事長の発案で、ツール・ド・富士川の”わ”ということで、大きく腕で輪を作ってポーズしようということに。参加者もゲストライダーも町長も一緒になって輪を作り、今日の成功を祈ったらスタートの時間だ。
1グループ20人ほどのメンバーで構成され、サポートライダーが3名ほどの付くという手厚いサポート体制。前日と同様に第1、第2グループは想定の時間よりも少し速めのペースで走る快速グループということだが、グループ間の移動は自由となっており、最初は速めのグループで出発して、途中で後ろのグループに合流していくというのもちろんオッケーだ。
第1グループからは今中大介さんとエース栗原さんがスタート。一つ飛ばして第3グループからは石垣美帆さんがスタートしていく。ゲストライダーの方々は参加者の方々と交流を図るため、前のグループからスタートし、真ん中あたりのグループに降りていきながらコースを走っていくようだ。
スタートすると富士川の河川敷を進んでいき、橋を渡りJR身延線に沿いながら進んでいく。この時点で平坦ということはなく、緩やかな登りとなっているあたり”やまなし”県じゃなくて”やま(しか)なし”県に改名したほうがいいんじゃないかという気分になってくる。しかし、この登りは地元のサポートライダーの方々からすればこれはほぼ平坦ということらしい。
久那土の集落を超えて進んでいく。このあたりの町並みは古き良き日本の里山といった風情で、田舎のおばあちゃんの家を思い出す。山と山に囲まれた地形というものに懐かしさを感じるのはどうしてだろうと思ったが、よく考えたら筆者の地元である群馬県の田舎町に似ているのだ。
そのまま甲州の奥座敷として知られる下部温泉郷へ向けて走っていく。温泉郷のあたりは武田信玄公の時代に金山衆が居住し金を掘っていたのだという。それらの歴史や金の採掘の過程を楽しめる甲斐黄金村・湯之奥金山博物館が建っており、ここが第1エイドステーションとなっている。
こちらのエイドステーションでは下部温泉おかみ会のお母さんたちが作ってくれた「ほうとう」が登場。太い麺ににんじんや大根、ごぼうなどの野菜が入っており、暖かい出汁とともに身体があたたまる一品だ。朝からしっぽり暖かく、塩気のある汁物を頂くことで少しギクシャクしていた身体も動きが良くなることだろう。加えてあんこがたっぷりと入ったかくし最中も用意され、ちょっとしたデザート気分でパクリと頂く。
暖かい食べ物を頂いて身体もホクホクしてくると少しエイドでゆっくりしたい気分になるが、まだまだ序盤。その気持ちをぐっと抑えて次なるスポットである身延山久遠寺に向けて出発である。下部温泉から富士川沿いに国道9号線をひたすら南下。走りやすい幅広の平坦路で思わずペースも上がっていく。しばらく行ったら身延橋を渡り富士川の対岸へ。そこから身延山久遠寺の入り口となる総門まではすぐそこだ。
総門を通過すると徐々に勾配が上がっていくヒルクライム区間。参拝客で賑わう門前町を横目にペダルを回していく。途中、立派な日本三大門の一つと呼ばれる三門で一休みした後、久遠寺本堂までの激坂に挑戦。体感で斜度18%ほどくらいではないかと思えるほどの激坂はもはや壁。足を止めたら最後、再スタートは難しいほどの傾斜だ。
ここまで大きな峠道こそなかったが、いくつかのアップダウンをこなしており、余裕がある状況ではない。それでも登っていく人々は表面こそいかにも苦しそうな表情を浮かべているが、内心はワクワクしているような、嬉しそうな方々が多いのが印象的だ。ヒルクライマーは厳しく攻められる状況で楽しくなってしまう人が多いのだなと再認識できる。
身延山ロープウェー乗り場を超えたあたりからは更に勾配が上がり、参加者の足にトドメを刺していく。流石に蛇行しながら走る人も増えてくるが、頂上付近からスタッフの方々が「もうちょっとですよ!頑張って!」と応援してくれるのでバイクを降りる人は少ない。応援のパワーは何気にすごい。
登り切ったら久遠寺の境内を徒歩移動。日蓮宗の総本山ということもあり、立派な本堂や五重塔など格式高い建築物が並ぶ身延山久遠寺。境内にはマスコットキャラクターの小僧(こぞう)くんもいて一緒に写真を撮ることができるのだ。ゆるキャラを置いているお寺というのも現代チックで面白い。因みに写真も近くにいる修行僧の方にお願いすることができ、観光ウェルカムなお寺である。
久遠寺からは少し下った後、少し登り、また下る。ツール・ド・富士川ステージはちょっと下ってちょっと登るというアップダウンのコースレイアウトが多く、地味に足を削っていく。平坦も全く無いわけではないが、だいたい少し登っている事が多いかも知れない。
ツール・ド・富士川ステージもまだまだ序盤。次回は富士川クラフトパークから本格的なヒルクライムに挑戦していく後半戦に突入。おいしい「こしべんと」も頂きました。後編に続きます。
text&photo:Kosuke.Kamata
photo:Gakuto.Fujiwara
2日間で走行距離190km、獲得標高2,900mを走破する南アルプスロングライド。日本を代表する山岳地帯の一つである南アルプスの麓を舞台に美しい紅葉と山梨のグルメを楽しむ事ができる国内屈指の山岳ロングライドイベントだ。
大会のメインイベントとなる2日目のツール・ド・富士川ステージは距離110km、獲得標高1900mを誇る山岳コース。一見、距離はそこまで長くないように思えるが、大きく3つの峠を登り、常にアップダウンが続くコースは予想以上の難関コースとなっており、非常に走りごたえのあるレイアウトとなっているのが特徴だ。脚力次第では最後の平林みさき耕舎へ至る登りをパスして92km地点でゴールすることも可能だが、山頂では夕焼け空に富士山という大会のハイライトとも言うべき絶景を広がっているため、ぜひ挑戦したいところ。
2年ぶりの快晴となった前日ライドに引き続き、清々しい秋晴れになりそうなツール・ド・富士川ステージ当日。まだ早朝ということもあり、遠く見える山々の稜線には靄のような雲が立ち込めるが、朝日が登るにつれて太陽光が雲を吹き飛ばし、世界が広がっていくかのように青空が広がり見せる。
とはいっても朝方は冷えるため、ウインドブレーカーを着込み、仲間と談笑しながらスタートを待つ。会場では1日目と同様に第0エイドと称し、ねじりがしとコーヒーが用意されているため、手持ち無沙汰にならず、各々優雅なスタート前のカフェタイム。そもそも南アルプスロングライドはスタート時間が他のロングライドイベントに比べそこまで早くないため、忙しくなりがちな朝の時間もすこしゆったりとした時間が流れているのだ。
そうこうしているうちに日も昇り、開会式の時間に。まずは富士川町の町長から美しい景色とグルメを楽しんで欲しいとの挨拶。そして続いてやまなしサイクリングプロジェクト青木理事長のパワー溢れる挨拶が行われ、続いてゲストライダーの今中大介さん、石垣美帆さん、エース栗原さんが次々に登壇。今日の意気込みを話していく。
最後には恒例となった掛け声が行われたのだが、今回は青木理事長の発案で、ツール・ド・富士川の”わ”ということで、大きく腕で輪を作ってポーズしようということに。参加者もゲストライダーも町長も一緒になって輪を作り、今日の成功を祈ったらスタートの時間だ。
1グループ20人ほどのメンバーで構成され、サポートライダーが3名ほどの付くという手厚いサポート体制。前日と同様に第1、第2グループは想定の時間よりも少し速めのペースで走る快速グループということだが、グループ間の移動は自由となっており、最初は速めのグループで出発して、途中で後ろのグループに合流していくというのもちろんオッケーだ。
第1グループからは今中大介さんとエース栗原さんがスタート。一つ飛ばして第3グループからは石垣美帆さんがスタートしていく。ゲストライダーの方々は参加者の方々と交流を図るため、前のグループからスタートし、真ん中あたりのグループに降りていきながらコースを走っていくようだ。
スタートすると富士川の河川敷を進んでいき、橋を渡りJR身延線に沿いながら進んでいく。この時点で平坦ということはなく、緩やかな登りとなっているあたり”やまなし”県じゃなくて”やま(しか)なし”県に改名したほうがいいんじゃないかという気分になってくる。しかし、この登りは地元のサポートライダーの方々からすればこれはほぼ平坦ということらしい。
久那土の集落を超えて進んでいく。このあたりの町並みは古き良き日本の里山といった風情で、田舎のおばあちゃんの家を思い出す。山と山に囲まれた地形というものに懐かしさを感じるのはどうしてだろうと思ったが、よく考えたら筆者の地元である群馬県の田舎町に似ているのだ。
そのまま甲州の奥座敷として知られる下部温泉郷へ向けて走っていく。温泉郷のあたりは武田信玄公の時代に金山衆が居住し金を掘っていたのだという。それらの歴史や金の採掘の過程を楽しめる甲斐黄金村・湯之奥金山博物館が建っており、ここが第1エイドステーションとなっている。
こちらのエイドステーションでは下部温泉おかみ会のお母さんたちが作ってくれた「ほうとう」が登場。太い麺ににんじんや大根、ごぼうなどの野菜が入っており、暖かい出汁とともに身体があたたまる一品だ。朝からしっぽり暖かく、塩気のある汁物を頂くことで少しギクシャクしていた身体も動きが良くなることだろう。加えてあんこがたっぷりと入ったかくし最中も用意され、ちょっとしたデザート気分でパクリと頂く。
暖かい食べ物を頂いて身体もホクホクしてくると少しエイドでゆっくりしたい気分になるが、まだまだ序盤。その気持ちをぐっと抑えて次なるスポットである身延山久遠寺に向けて出発である。下部温泉から富士川沿いに国道9号線をひたすら南下。走りやすい幅広の平坦路で思わずペースも上がっていく。しばらく行ったら身延橋を渡り富士川の対岸へ。そこから身延山久遠寺の入り口となる総門まではすぐそこだ。
総門を通過すると徐々に勾配が上がっていくヒルクライム区間。参拝客で賑わう門前町を横目にペダルを回していく。途中、立派な日本三大門の一つと呼ばれる三門で一休みした後、久遠寺本堂までの激坂に挑戦。体感で斜度18%ほどくらいではないかと思えるほどの激坂はもはや壁。足を止めたら最後、再スタートは難しいほどの傾斜だ。
ここまで大きな峠道こそなかったが、いくつかのアップダウンをこなしており、余裕がある状況ではない。それでも登っていく人々は表面こそいかにも苦しそうな表情を浮かべているが、内心はワクワクしているような、嬉しそうな方々が多いのが印象的だ。ヒルクライマーは厳しく攻められる状況で楽しくなってしまう人が多いのだなと再認識できる。
身延山ロープウェー乗り場を超えたあたりからは更に勾配が上がり、参加者の足にトドメを刺していく。流石に蛇行しながら走る人も増えてくるが、頂上付近からスタッフの方々が「もうちょっとですよ!頑張って!」と応援してくれるのでバイクを降りる人は少ない。応援のパワーは何気にすごい。
登り切ったら久遠寺の境内を徒歩移動。日蓮宗の総本山ということもあり、立派な本堂や五重塔など格式高い建築物が並ぶ身延山久遠寺。境内にはマスコットキャラクターの小僧(こぞう)くんもいて一緒に写真を撮ることができるのだ。ゆるキャラを置いているお寺というのも現代チックで面白い。因みに写真も近くにいる修行僧の方にお願いすることができ、観光ウェルカムなお寺である。
久遠寺からは少し下った後、少し登り、また下る。ツール・ド・富士川ステージはちょっと下ってちょっと登るというアップダウンのコースレイアウトが多く、地味に足を削っていく。平坦も全く無いわけではないが、だいたい少し登っている事が多いかも知れない。
ツール・ド・富士川ステージもまだまだ序盤。次回は富士川クラフトパークから本格的なヒルクライムに挑戦していく後半戦に突入。おいしい「こしべんと」も頂きました。後編に続きます。
text&photo:Kosuke.Kamata
photo:Gakuto.Fujiwara
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